2.7 レイティングシステムの活用方法についての考察

(1) 小学校
1) 有害情報の閲覧防止
 今まで述べてきたように、小学校でレイティングソフトウェアを活用する目的として、授業中にサーチエンジンを児童に利用させる際に、児童の意図に反して不正なべージが突発的に表示されるのを防ぐという利点があげられる。また、児童が自由にインターネットを活用する際にも、レイティングソフトウェアは同じ理由から必要であると考えられる。
 ただ、このようなレイティングソフトウェアを普及させるためには、ソフトの性能向上や適応できるコンピュータの範囲拡大、設定や運用のしやすさなどが求められる。また、端末型ではなく、サーバー型の開発も求められている。

2) 有益情報の積極的利用
 現在、学校や各種教育機関あるいは個人で教育に役立つWebべージが作られ、またそれらのリンク集も数多く作られている。しかしこのような個人や組織の努力は、今のところ全国的な関連を持つまでには至っていないのが現状である。Webべージのポジティブなラベリングは、加速度的に増加するWebべージの中から教材リソースとして有効なものを発掘し、系統化することを意味する。また逆に、ラベル評価に基づいた新たなべージが組織的に作成されることになれば、今よりさらに教育上有益なべージが増加するものと考えられる・Webぺージの有益情報を積極的にラベリングし、教育利用のためのデジタルアーカイブを一括して収集・整理したり、また様々な教育機関に有益なべージの作成を促す統一的な組織が誕生すれば、インターネットの教育利用がより豊かなものになるだろう。

3) 家庭への普及と活用
 家庭でのレイティングソフトウェアの普及も重要なテーマである。今後、学校と歩調を合わせて各家庭でもインターネットを利用する機会が増え、それに伴って児童生徒が自由にインターネットにアクセスできる環境になる。その際、児童生徒が不用意に悪質情報にアクセスしないような方策を採ることが保護者としての義務となる。
 そこで、学校でのレイティングソフトウェアの運用で得られたノウハウを家庭にフィードハックすると共に、家庭での課題を再度学校でも同じ課題として、学校と家庭が一体となってそれらの課題を解決することが大切である。

(2) 中学校
 学校においてレイティングソフトウェアが最も必要な場面は、休み時間や放課後・夏季休業中等での生徒の自由な活用の場面である。こうした時には、常に教師がそばにいるわけではないので、その気になれば生徒が意図的に有害情報のべージにアクセスすることができてしまう。しかしながら現在の学校の中で最も生徒が多くインターネットを活用することができるのはこうした時間であり、その中で授業で与えられた課題をインターネットで解決する場面も非常に多い。
 また、授業中であっても、リンクなどによって生徒が意識しなくても有害情報のべージを見てしまう場合がある。こうした有害情報とのニアミスを防ぐという意味では授業での活用も有効であると思われる。

(3) 高等学校
 高校におけるレイティングシステムの利用は必須である。
 インターネットを利用する授業の場合、事前に情報モラルについて、2-3時間の学習を行うことによって、授業中に有害情報にアクセスすることはほとんど見られない。
しかし、偶発的なアクセスや放課後の自由時間については、有害情報へのアクセスが全くないとは言い切れない。そこで学校教育においては、レイティングシステムの利用は必然と考えられる。
 また、子供達を取り巻く環境は、家庭・学校・地域社会といった、大変広範囲に及び、そのいずれの場所でも、インターネットに触れる機会が多くある。したがって、この三者が歩調を合わせて、レイティングシステムなどの有害情報対策を実施することが大切である。そのための各方面からの調整を行ったり、提案がされる協議機関の設立が望まれる。あるいは、既存の機関を利用して、このことに対して対策しなければれならない時期が到来していると思われる。
 今後、メディアの融合が進展し、テレビ番組とインターネットの情報が融合するなどした場合、現在アメリカで法制化されているVチップのような機能をハード的・ソフト的に、テレビやパソコンに付加する必要が生じてくると考えられる。この場合のレイティングシステムも利用者の意思によって、フィルタリングの機能を選択できるシステムの方が、様々なレベルのユーザーに対応できるので、柔軟性という観点から広く普及すると考えられる。
 レイティングは世界を対象した情報ボランティア組織(NPO等)が担当するもことが望ましいと思われる。これによって学校教育、家庭、地域社会が共同で、子供たちを有害情報から守ることが可能となる。
また、現在のように情報過多の社会では、情報選択能力も非常に大切なリテラシーの一つである。学校教育では、この情報選択能力の育成を進めるために、インターネット利用授業において、生徒自らが自分で考え、有害情報のフロックを設定するなどの訓練も、別の意味での教育的効果を生むものと青えることができる。
 レイティングシステムは玉石混交しているインターネットやテレビ番組の適正な情報を収集するためになくてはならないシステムであり、今後の情報社会での青少年健全育成にとって、切り札的な機能を持つものといえる。

(4) 教育センター
1) 現状のIFSが抱える課題と解決方法
 教職員研修においては限られた時間内で実施しているので、IFSの操作性やプラウザの表示性能が重要になっている。また、IFSのインストールからアシインストールまでの研修をおこなう必要もあるが、コンピュータに馴れていない教師が操作に失敗しないシステムであることが重要である。またその時、パソコンに入っている他のソフトウェアの動作に影響を与えないシステムであることも大切である。現状のIFSを改善してゆく必要があるが、競合するソフトウェアをはずしたり、利用者手引き等のマニュアルの整備をするなどの対策をたてることで解決を図ってゆく。

2) レイティングソフトウェアが必要とされる業務
 児童生徒の実習やソフトウェアライブラリーの利用ではコンピュータを自由に使わせる観点からIFSを必要とする。教職員研修会ではIFSの機能と教育的効果の説明、教育利用の方法等の研修をおこなうために必要である。教育センターの研究業務では特に必要としてはいないが、サービスビューロを教育センターで管理したり、ホワイトリストの登録等の業務にはIFSが必要となってくる。

3) 将来のレイティングソフトウェアのあり方と方向性
 教育センターでは、ネットワーク上に100〜200台のコンピュータが設置され学校からのダイアルアップ接続や専用線による接続を受け入れインターネット利用している。どこの教育センターでも数年の内に同様な設備状況になってくることが考えられる。このような状況で個別にコンピュータに利用者登録したり、利用レベルの設定をすることは不可能である。
 従って、ファイアウォールまたは複数のプロキシサーバー等にフィルタリングシステム(サービスビューロを含む)を入れて、一括して次のような運用ができるようにする必要がある。

 ・研究室、研修室、ソフトウェアライブラリ、学校からの利用等の利用場所(プライベートIPアドレス)による異なるフィルタリングをおこなう。
 ・教育センターのサービスビューロは中核拠点のサービスビューロのデータで定期的に更新される。
 ・教育センターで登録したデータは中核拠点のサービスビューロに転送され、新たなラベル情報としてラベルデータベースに反映される。
 ・教育センターのサービスビューロのホワイトリストに学校の教師がラベルデータを登録できるような仕組みをつくる。

 なお、学校の校内ネットワークが拡大することにより同様な問題が発生するので、学校教育に適したシステムともなりうるものと思われる。

[目次へ戻る] [次のページへ]