3.4 教育利用への適用

 今後、学校教育でブラウザソフトウェア上で動作するソフトウェアが授業等で活用されて行くに当たり、その適用領域と課題について考察した。

3.4.1 ブラウザソフトウェアとJava利用

(1) 適用の可能性
 Java言語が注目されている理由のひとつは、Java言語を利用することによって、従来Web上で公開されていた文字、音声、動・静止画像といった情報の他にプログラムを発信することができるということにある。つまり、Webの情報としてプログラムを送り、それぞれのWebブラウザでそのプログラムを実行させることができるようになった。これによって、従来までWeb上では実現が非常に困難であった対話的なコミュニケーションが実現できるようになったのである。また、さまざまなコンピュータが存在するWeb上でプログラムを実行させるため、Java言語で作成したプログラムコードは、アーキテクチャに依存せず、複数のオペレーティングシステム・プラットフォームをサポートしており、データも標準化されているという特徴を持っている。したがって、Java言語で作成したソフトウェアは、学校に導入されている既存のコンピュータ設備をそのまま活用して利用することができるものである。つまり、従来のソフトウェアの導入の場合と異なり、設備等の追加投資をほとんど必要とせず、さまざまなソフトウェアを導入することができる。限られた費用で運営・実施をしている現在の学校などの教育現場などで利用するソフトウェアとしては理想的なものであるといえる。

(2) 管理・運営・実施の効果
 Java言語で作成した教育用ソフトウェアは、学校などのコンピュータ教室を利用して授業等を行う学習支援者の負担の軽減にも寄与し、コンピュータの多様な利用および個に応じた利用をも支援するものでもある。つまり、多人数の学習者を対象に一斉に授業等を行う学校のコンピュータ教室などではすべてのコンピュータに同じ環境を構築することが必要とされる。従来のソフトウェアを利用する場合、コンピュータ教室の管理・運営をする学習支援者等は、事前に授業等で利用するソフトウェアをコンピューター台一台に導入しなければならない。利用したいソフトウェアの数が増えると手間もそれに比例して増え、設備等の追加投資を伴うことも起こる。このようなことが、学校などのコンピュータ教室の管理・運営・実施の面や技術的な面で大きな負担・障害となって、さまざまなソフトウェアをひとりひとりの学習者や、その時々の状況に応じて使い分けるといった、個に応じた利用、多様な利用がなかなかできないのである。
 しかし、Web上で動作するJavaアプレットなどの教育用ソフトウェアを利用すれば、この様相は一変する。Webブラウザが各学習者のコンピュータで利用できるようにしておくだけで、その都度必要なソフトウェアを事前にすべてのコンピューター台一台に導入する必要がなくなる。サーバに必要なWeb上で動作するさまざまな教育用ソフトウェアや情報、教材を一括して管理しておくか、インターネットに接続してあれば、その時の学習もしくはそれぞれの学習者に応じて、必要な教育用ソフトウェアを各学習者のWebブラウザ上で実行させることができるようになる。特に、Javaについてはセキュリティの面が充実しており、ネットワークで利用する場合に、非常に安定しており、安全性が高いことから学校への導入には最適である。

(3) 共同作成、共有利用の適用
 Javaアプレットなどの教育用ソフトウェアがWeb上で動作するということは、ある学校で作成されたものが、Webブラウザがあれば他のどの学校でも利用できるということを意味する。つまり、それぞれの学校で作成したJavaアプレットなどの教育用ソフトウェアが多くの学校で共用できるということである。そのためには一定の検索の手続きによってすぐ有効な情報が引き出せるような機能が必要である。さらに、そうして入手したWeb上で動作する教育用ソフトウェアすべてが、そのままの形で利用できるものばかりではない。それぞれが教授する学習者の実態にあわせて部分的にでも改変することができるような自由度の高さも必要である。また、このことはソフトウェア教材を自作するという行為を促すことにも寄与しよう。

3.4.2 教育ソフトウェアヘの適用

(1) 今後のソフトウェア
 近年の学校教育の傾向として、学習者が自主的に学習を進める能力を育成していくことが求めらている。従来のようなソフトウェアの1つの操作によって学習者の疑問が全てが解明するようなものではなく、学習者がソフトウェアに内在する情報についてじっくりと考えることができるようなもの。他の学習者などの知識や情報などを次々と連想して学習していくことができるソフトウェアが求められている。これにともなって、Web上で動作する教育用ソフトウェアも、学習支援者が学習者の学習実態を把握・評価できるできるだけでなく、学習者自身も、自己評価・自己確認が行えるようなものが望まれる。
 Webでソフトウェア教材を提供することは、技術的にはサーバで一括して情報・教材を管理することが想定される。したがって、学習者の活動記録、学習者の自主的学習の記録が容易である。学習支援者が学習者を評価し、実態を把握しながら教育内容を構成する上で、また、学習者が自己評価・自己確認を行う上で、非常に効果的である。

(2) 国語を例にした言語系教科への適用
 言語教材、便覧・図録、写真、掛け図、ビデオ教材、音声教材など、従来それぞれ別個の教材として扱われていたものをデジタル化して統合し、学習者の興味、学習内容に応じて必要な情報が、自由に選択、検索、参照、場合によっては学習者の加工や再編集もある程度できるようにすることが望まれる。このような情報提供型のソフトウェアにおいて、学習者はあくまでも鑑賞者に徹するので、専門家の協力の下に質の高い情報をパッケージして、学習者が真の文化的実践にアクセスすることが可能になっていなければならない。また、知的機能の上達には限界があるが、マルチメディア化することによって、従来のものよりもよりも、わかりやすく、効率的に、学習者の意欲・興味を引き出すことが期待される。
 たとえば、社会の国際化に伴い日本語の習熟度がひとりひとり異なる帰国生の数が増加するなど、ひとりひとりの習熟度に応じて学習ができるような練習型のソフトウェアの必要性も決して低くはない。利用者が容易に改変することができる自由度の高い、さまざまな種類のソフトウェアが豊富にあって、自由に選べるようになることが望まれる。このような練習型のソフトウェアでは、学習支援者が学習者を評価し、実態を把握しながら教育内容を細かく構成し直す必要がある。また、学習者自身も即時的に自己評価・自己確認を行う必要がある。この点においても、Webでソフトウェア教材を提供することは、非常に効果的である。
 インターネット上での活用の一つの形態、であるサーバ型ソフトウェアにおいても更に期待される。教科書の各単元の最後にある「学習」には、その文を読んで「考えたことを話し合ってみよう」などとよく書いてある。書いてあるとおりに教室で活発な話し合いが行われることは現実にはなかなか難しい。Web上の「掲示板」等の機能を利用して、書き込んだ意見やその意見に対する疑問などが、即時的に全員が読めるようなシステムを構築することによって、教授者が「正解」を提供し、学習者がそれを覚えるという受け身の学習ではなく、学習者たちが自分たちで吟味し、探求し、「知識」を創りあげていくという方向に進むことが期待される。

(3) 情報教育への適用
 情報教育における難しい用語などをわかりやすい内容で提供するとともに、学習者が積極的に学習できる意欲、興味を引き出すためにマルチメディア的な要素が必要となる。Java等を用いたWeb上で動作するソフトウェアを活用することによりこれらのGUIやマルチメディアのコンテンツとなるビデオ、音声、画像等が扱いやすくなり、それらのソース提供が非常に容易となる。
 しかし、学習者が一方的にソフトウェアから情報を得るばかりでは、授業は成り立たない。情報教育では、インターネットに代表される情報の氾濫という実態の中でそれら情報をどのようにとらえるか、自分がそれらの情報を受け取ることによってどのように判断し、行動していくべきなのかを学習していく必要がある。
 したがって、ソフトウェアの機能のみで学習するものではなく、学習支援者からの支援、ソフトウェアからの柔軟な応答、学習者同士の情報交換や協力体制が学習効果をあげ、学習者の能力を向上させるようなものが望まれる。つまり、学習者一ソフトウェア、学習者一学習支援者、学習者一学習者間で双方向的な情報のやりとりもしくはコミュニケーションを容易に図ることができるソフトウェアが理想的といえる。
 インターネットを併用する場合には、学校と社会が直結することが想定される。そのため、ソフトウェアの活用方法のみの学習にとどまらず、使用上のマナーなど、コミュニケーションのあり方についても学習する必要がある。仮想的、シュミレーション的に、学校内の狭い範囲から徐々に広い範囲へと、学習者の実習範囲が広がっていくような実習が可能で、同時に、ソフトウェア的なフィルタリング効果があがるものが望まれる。

(4) 理科系教科への適用
 理科を含め多くの授業の中に写真や数値といった資料がかなり必要である。これらの情報についてインターネットを用いて最新の情報が得られるようになれば、探求心をかき立て意欲的に学習が出来ると共に、学習者が個別に分担して資料を収集することができる。
 現在、このような資料は静的な情報として一部提供されてきているが、学習者がみずから選択条件を指定して動的な情報の入手や視覚的な表現を伴った情報入手が可能となれば、更なる学習の向上にみ結び付けることが可能である。
 また、素朴な疑問や質問をネット上で電子掲示板にのせ、いろいろな意見や回答を内外から得ることが出来れば、双方向的学習が可能になる。
 さらに、科学の法則のシュミレーションや科学現象のVTRの画像を見せることは、難解な説明文を分かりやすくすることにつながる。Javaを活用することで、一斉授業の中でインストールなしにすぐに必要な画面を見せることが可能となり、学習者が、再度見たいと言う場合、サーバーに自分でアクセスすれば、見直すことも可能になり、個別化が期待できる。

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