第3章●学校での取り組み

第1節 導入に当たって

 インターネットで国際交流を行う上で大切なことは,長く,深く交流が続けられることです。現実には,小学校からは,「何をやりとりすればいいの?」「言葉はどうすればいいの?」「子ども達にコンピュータが使えるのかな」などという声が聞こえてきます。そして,やってみたいけれど自分は英語もコンピュータもできないから,できる人がうらやましいとあきらめていないでしょうか。しかし,本当にそれでよいのでしょうか。小学校では,担任がほとんどの教科を担当しているので,特定の「できる」教師だけで交流を行うと,クラスが変わったり,担任が移動しただけて全く交流が行われなくなってしまい,あまり好ましくありません。学校をあげて取り組んでいくことが大切です。中学校などでも相手校との交流を密にするためには,学校をあげて交流に取り組んだり,教科全体で交流を行ったりしていくことが必要です。小学校と同じ様な場合もあります。しかし,導入するときにいくつかのポイントをクリアーすれば比較的簡単に交流できるのです。

 主なポイントは以下のような項目です。学校の中で取り組む体制作り,学校での位置づけ,教職員のまとめ方,交流内容の検討などがあります。以下これらについて述べていきます。

第2節 位置づけを明確に

 学校をあげてインターネットを使った国際交流に努めていくためには,すべての教職員が一致協力して,スムーズに交流できる雰囲気づくりが必要です。このためには,教職員が国際交流の有効性と大切さをよく知り,積極的に行おうとする意識の向上とその意識を有効に生かしていける組織作り,学校の全体計画への国際交流の位置づけ,年間指導計画への位置づけ・組み込みが大切になってきます。

 つまり,国際交流が学校の中でどのように位置づけられているかにより,交流の深まり方が違ってきます。インターネットを使った無理のない交流ですと,息長く苦にならずに楽しく続けられます。学校全体で盛り上げていくことが大切です。

第3節 国際交流の位置づけ

 国際交流は普通,国際理解教育の中に位置づけられます。国際理解教育は,これからの国際社会で生きていく上で必要な世界の人々や文化に対する理解を深め,互いに尊重し合い「世界の中の日本人」として国際社会に積極的に貢献する態度を育成するために,教育課程全般で行うものです。具体的には,基本的人権の尊重,自国及び他国の文化理解,国際協調・国際協力の実践的態度の育成の3つの観点を目指しています。国際交流は,どれにも当てはまりますが,特に二つ目,三つ目に位置づけられます。そして,特定の教科として割り振られておらず,全教育活動を通して行うことになっています。従って,国際交流は,すべての学校で特定の教科に偏ることなく行わなければならないものと考えて差し支えありませんし,すべての教職員が率先して行う必要があります。また,インターネットは直接相手と交流ができるので,国際理解教育のためにうってつけの手段(道具)となります。

第4節 計画の立案から実践までの手順

1)全体計画

 インターネットで国際交流を続けていくためには,曖昧なまま活動を続けていくのではなく,きちんと教育活動に位置づけておく方がうまくいきます。このためには,国際理解教育の全体計画の中に,インターネットを使った国際交流の重点や目標などを入れていきます。全体計画は,学校における国際交流の基本になるので大切なことです。具体的には,各教科,道徳や特別活動の重点に入れる,その他それと並列に国際交流の推進の項目を作り,その中に入れるなどが考えられます。その上で,各教科,領域等の年間指導計画の中にもどのような単元や領域で扱うか入れていきます。   

 特に必ずインターネットにふれ,それを具体的に使用していく方が実際の活動がしやすくなります。この中で,特別活動の児童活動や学級活動の中にも目標を入れておくとが学校全体で交流につとめたり,活動の時間を確保したりしやすくなります。また,総合活動の一環として計画的に,教科などに当てはまりにくい内容を位置づけていくことは大変有効です。特に中学校では,どの教科で,どんな活動をいつ行うかの内容の計画をたて,総合的にみていく必要があります。総合的にみていかないと活動内容が重なったり,一時期に多くの活動をするようになったり,活動がない時期が起きたりする事が考えられ,相手校に対しても迷惑になります。

2)組織作り

 学校の中で誰が中心となって推進するかを明確にすることは,職員全体で取り組むためにも必要なことです。基本的には,国際理解に関する部が中心となることが適当です。その中でも深く進めていく場合,いくつかの班に仕事内容を分担した方が円滑に活動できます。そこでは,活動内容や授業方法を研究する班や翻訳者や相手校とのやりとりの中心となる班など決めた方が機能しやすくなります。特に相手校との窓口になる人は複数いた方がよいなどとしっかり決めておくとよいと思います。これは,相手校や翻訳者と絶えずきちんと意志の疎通を図り,思い違いを起こしたり,迷惑をかけたりしないために必要です。

 職員の組織は,小学校では,学年を中心に,中学校以上では,教科を中心にメンバーの構成を考えていくことになります。

3)職員研修

 もっとも大切なのは,各教職員の交流に対する意識の向上で,インターネットを使った国際交流の意義についての研修などが必要です。そして,教職員をしっかりまとめるためには,すべての教職員が意欲的に積極的に活動できるような組織作りと目的や内容をはっきりさせていくことが大切です。また,コンピュータやインターネット,メールなどについての研修を直接体験することを中心に十分行っていくと,理解力が深まり,授業での活用も期待できます。小学校や中学校の教科により,コンピュータなどにまだ慣れ親しんでいない場合に,インターネットをとても難しいものと考え,交流に二の足を踏む場合が多いからです。また,自分で使ってみることで,活動に対する理解も深まり,新しい発想の考えが浮かんでくるものです。また,実績のある他校の参観なども有効です。

第5節 交流内容

 具体的には,前の章を参照ください。相手のあることですので,相手との相談が必要ですが,その他の方法で,あらかじめ,こちらの内容を示しておいて,それの返事を待つ方法もあります。いずれにしても難しく考えず,身近なことでできる範囲で考えてみるとよいです。自分達の様子を知らせたり,わからないことを聞いたり,お互いの感想を伝え合ったり,作品を交換したり,楽しく交流することを中心に考えてみるとよいです。更に一人一つの手紙にこだわらず,子ども達の活動も絵が中心であったり,グループや学級単位で一つのものを作ってもよいと思います。内容によっては,そのまま送っても翻訳することもなく相手にこちら側の意図が伝わっていくと思います。いずれにしても難しく考えなければ,子ども達からも新しいアイデアが次から次へと出てくることと思います。子ども達は遠い国の人と交流することが楽しみです。また,内容は,多くならないようにしたり,学年間のバランスも考えて,計画するとよいです。内容により,各教科に当てはまるものや特別活動の児童活動や学級活動に扱えるものもありますが,どの教科にも当てはまりにくい活動のものもあります。このようなとき総合活動として考えていくとよいと思います。このときは,継続的に,計画的に,年間を通じて行うことが可能で深く交流していくときには,特に有効です。また,中学校では,各教科にはっきり分かれている内容はよいのですが,教科がわかりにくい場合,教科毎の連携をしっかり取るようにしていかないと,同じ様な内容をだぶって行ってしまうことになります。このほか,中学校以上では,直接英語などでメールの交換や複雑な内容をやりとりすることも可能なので更に交流が広がります。

第6節 留意点

 基本的な計画を立て組織を作ることが最初に行わなければならないことであるのはもちろんですが,その先何をすることが必要でしょうか。当然考えられるのは,相手校探しと翻訳者の確保です。特にこのとき注意が必要なのは,校内に英語が得意な教職員がいない場合,相手校との定期的な打ち合わせに翻訳者が必要になることです。子ども達に円滑に交流させるためには,相手校との十分な打ち合わせが必要で,インターネットで直接行うことになりますが,このときのやりとりが相手国の言語に合わせて行うことになるからです。従って,子ども達の作品の翻訳だけでなく,打ち合わせにも翻訳者は必要なわけです。また,相手国の生活習慣や社会の様子などについても教師は,調べて知っていた方が円滑に交流を進める上で役立つと思います。又,中学校の場合,どの程度のことが校内で翻訳可能かのか,あるいは,子ども達が自分でどのくらいまでなら翻訳できるのか,など考えておく必要があります。


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