2. スクールニュースプロジェクト
──日本人学校を結んでの取り組み──
1. 交流のねらい
本校は今までに英語の授業だけでなく,国際交流委員会,英語クラブなどの活動でも,多くの国の中学生と交流を行ってきた。これらの活動は確かに英語のコミュニケーション力を身につけるには非常に有効であったが,交流を深めていき,相手の国の文化や歴史,自然について理解しようとすればするほど,言葉が障害になってしまうことは否めなかった。そこで,なんとか日本語でそれぞれの地域の生の情報を入手したり,交流したりできないだろうかと思っていた。
そんな折,日本人学校などの在外教育施設が全てインターネットに接続されたことで,それを利用したいくつかのプロジェクトが発足することになった。本校はそのプロジェクトのオーガナイザーとして,「スクールニュースプロジェクト」を提案し,運営している。
スクールニュースプロジェクトの目的は,世界中の日本人学校や補習授業校等の在外教育施設同士がスクールニュースを中心とした交流を通して,様々な地域の文化や生活の違いや共通点について話し合い,人間や異文化の理解を深めることであり,現在は17校が参加している。
2. 交流の方法
参加校は月に1度,予め決めておいた月別のテーマをもとにスクールニュースを制作し,本プロジェクトのホームページに掲載する。そして,他校の制作したスクールニュースと自分の学校のニュースを比較し,意見や質問があれば掲示板やメーリングリストなどを用いて意見交換などを行う。
交流の手段としては電子メールやメーリングリストの他,写真やイラストなどを積極的に取り入れたホームページを有効に活用するとともに,手紙やプレゼントなどの実物の交換も行うことで,バーチャルなコミュニケーションが実物と結びつく様に配慮した。
こうした活動を通して,自分の住んでいる地域や学校についての理解が自然と深まるとともに,同じテーマで制作された他国の日本人学校のページと比較を行うことで,それぞれの文化や生活の違いに気づき,自国の文化に誇りを持つとともに,他国の文化を尊重することのできる子供たちの育成を目指している。
3. テーマの設定と内容
月 | 内 容 |
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7 | スクールニュースプロジェクト参加校募集開始と決定 メーリングリストとホームページ開設 |
8 | 参加校同士の話し合い テーマや運用方法,スクールニュースの制作方法について |
9 | スクールニュース1(学校や学校生活の紹介をしよう) |
10 | スクールニュース2(普段の暮らしを紹介しよう) |
11 | スクールニュース3(文化や伝統,習慣を紹介しよう) |
12 | スクールニュース4(年末・年始の行事を紹介しよう) |
1 | スクールニュース5(自然や環境について考えよう) |
2 | スクールニュース6(外国から見た日本や日本人について話し合おう) |
3 | スクールニュース7(スクールニュースの感想を発表しよう) |
4. 交流の内容
1)交流方法
(1)ページの作成
参加校は月に一度,それぞれの学校ごとにスクールニュースのページを作成し,本校に設けられたサーバーに登録する。尚,ページ作成が困難な学校は,文章や写真などのデータを電子メールや郵便で送付してもらい,本校の国際交流委員会がページ作成を代行するとともに,作成方法について支援を行う。
(2)テーマの決定
スクールニュースのテーマは,参加校の教員同士がメーリングリストを使って話し合いながら決定する。
(3)メーリングリストと掲示板の用意
スクールニュースをもとにした交流ができるように専用のメーリングリストと掲示板を用意し,それぞれの環境に応じて利用してもらう。
(4)スクールニュースのホームページ
各学校で制作したホームページは本校のサーバーに登録し,一括して管理することで,月ごとや地域,学校名などから自由に表示できるようにする。また,どうしてもWWWの利用ができない学校については電子メールや航空便等でニュースを配信する。
図 1 スクールニュースのホームページ(5)掲示板の利用について
掲示板は,主に日本人学校や補習授業校,在外教育施設等の生徒同士や他の学校の生徒達が,ニュースの感想や月ごとのテーマに関する話し合いを気軽にできる場として設けてある。
(6)スクールニュースのメーリングリスト
電子メールが利用できる学校ではメーリングリストを用いた交流も行えるようにしてある。尚,このメーリングリストへの登録は,スクールニュースへ参加している学校のみとなっている。
2)実践の内容
(1)プロジェクトの運営
スクールニュースプロジェクトの運営や活動内容に関する話し合いや連絡は全て,本校で用意した専用のメーリングリスト上で行っている。基本的には本校からスクールニュースのテーマや内容について提案し,話し合いを行った後,各学校でスクールニュースを作成する。その後本校で登録作業を行った後,随時新着情報としてメーリングリストに案内を出したり,意見や感想を紹介したりする。また,技術的な質問や参加校からの提案などに対してもできるだけ速やかに対応する必要がある。こうしたプロジェクトリーダーの日常的な連絡や調整がプロジェクトを継続的に運用する上では非常に重要である。
(2)本校のスクールニュースの制作
本校では,国際交流委員会の生徒たちが交代でスクールニュースを作成している。まず,それぞれの月始めに編集会議を開き,大まかなページ構成と役割分担を決める。その後,分担にしたがってそれぞれの担当の生徒がデジタルカメラやメモ帳を持って取材を行い,それぞれのページを作成し,互いのページをリンクする。
こうした活動は,毎月行われる定型的な作業のため,ほとんど生徒たちが自主的に行っており,教員は最初の編集会議と最後の確認に立ち会う以外は,ほとんど手を出す必要がなくなっている。
(3)他校のスクールニュースの制作支援
海外の日本人学校などは,それぞれに事情が異なり,ホームページの制作ができない学校もある。そうした学校からは電子メールで文章や画像が送られてくるので,それをもとに,本校の国際交流委員会の生徒たちがホームページを制作し,登録を行っている。
(4)スクールニュースをもとにした交流
毎月作成されるスクールニュースは,共通のテーマで作成されているため,それぞれの国ごとの違いや共通点などがわかりやすく,それをもとにした話し合いも行いやすい。また,当然のことながら全て日本語で行えるので,文化や自然など難しい内容についても話し合いを行うことができるのも大きな特徴である。こうした交流はメーリングリストや掲示板を使って行われ,その記録もホームページ上で公開している。
(5)カード,プレゼント交換
スクールニュース12月号のテーマである「年末・年始の行事を紹介しよう」に連動した特別企画として,「年末のカード・プレゼント交換プロジェクト」を実施した。急な呼びかけにも関わらず8校が参加し,各学校から本校に,沢山のクリスマスカードや絵葉書,プレゼント,そして学校の様子を紹介するビデオテープが届けられた。本校ではそれを参加校に均等になるように分割して梱包し,それぞれの参加校に配布した。普段は電子メールなどを使ったバーチャルなコミュニケーションであるが,こうした活動を取り入れることで,相手の心を込めた手作りのカードや,それぞれの国の特徴がよく表れたプレゼントなどの実物を見ることができ,体験と結び付けることができるとともに,お互いの学びへの親近感を抱かせるのに非常に有効であった。
図 2 カードプレゼント交換
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5. 成果と課題
スクールニュースプロジェクトを始めて,半年が経とうとしているが,今までの国際交流活動では得られない以下のような成果をあげることができた。
1)日本語で交流できるために,テーマも自由に設定でき,話し合いなどの内容も深めることができた。
2)多くの参加校と共同でプロジェクトを行うことは,1対1の交流よりは調整などに多くの手間を要する部分もあるが,同時に複数の学校と交流することが出来,それぞれの文化等を比較したり話し合うのに,非常に有効であった。
3)毎月テーマを変えることで,継続的な交流が可能になった。
その反面,次のような問題点も明らかになった。
4)その国の文化や伝統などを日本人の目を通して紹介されるため,本当に現地の人たちが考えていることとは異なる場合がある。
5)プロジェクトリーダーは,緊密な連絡や支援など多くの時間を費やす必要がある。
6)月に1度のニュース作成というのは忙しい時期などは,参加校にとって負担になってしまう。
6. これから始める方へのアドバイス
1)国際交流などの相手がいる活動を継続的に行うためには,担当者同士の緊密な連絡と,事前の準備が必要である。
2)自分の都合と相手の都合が必ずしも合致しない点を忘れずに。
3)相手の立場に立った交流を行うことが重要である。
7. その他
1)スクールニュースプロジェクト参加校一覧
広州日本人学校・大連日本人学校・ボンベイ日本人学校・カラカス日本人学校・グァテマラ日本人学校・リオデジャネイロ日本人学校・プラハ日本人学校・ミュンヘン日本人学校・アムステルダム日本人学校・チューリッヒ日本人学校・シンガポール日本人学校・バトルクリーク補習授業校・シャーロット補習授業校・ミラノ日本人学校・ハンブルグ日本人学校・サンパウロ日本人学校・前橋市立第四中学校
2)実施時期
平成9年7月〜平成11年3月(予定)
3)運用システム
Mail Server (PANIX + Sendmail)
Web Server (Free BSD + Apache)
Proxy Server (FreeBSD + Squid)
Client (Windows95 × 30)
4)本校のデータ
学校名:前橋市立第四中学校
作成者:折田一人(orita@daiyon-jhs.maebashi.gunma.jp)
スクールニュースのホームページ
http://www.daiyon-jhs.maebashi.gunma.jp/jsn