第2部 交流学習 実践マニュアル |
参加各校の事情として,学校行事等で交流学習に集中して活動できない時期があったり,様々な活動が理解できず戸惑ったりして,子どもたちの意欲が停滞することがある。各校の教育課程を尊重した上で,子どもたちの意識を交流学習に向けるための方策として,以下のような対処法を例示する。
電子掲示板は,各校で時間的な余裕や融通がきくときに,随時見ることができるので便利である。この点は,教師間のメーリングリストも同様である。しかし,お互いの意思を細かい部分まで伝えることは難しい。
交流学習をすることになり,子どもたちは自分たちの情報を発信することは理解できても,具体的に「何をすればいいのか」「どんな内容をあげればいいのか」等,戸惑いもある。また,「誰と交流するのか不安」「どんな人たちか知りたい」という思いを持つ子どももいる。こうして相手のことがわかるにしたがって,活動が意欲的になっていく。
教師を含む相互理解を目的として,TV会議を行う。担任双方が親しい雰囲気で話し合い,和やかに会議を進行させることを中心に据えて自己紹介をするとよい。「TV会議で話をした○○さんに見てもらおう」と,特に相手を意識して「情報カード」に書き込みができる。双方の都合のよい時間帯にTV会議で顔を合わせ,班単位でも意識する相手を増やしていくとよい。
学校全体の取り組みとしては,交流学習にあまり慣れていない学校や学級に対しては,特にTV会議は有効である。「情報カード」に載せる内容やデジタルマップの作り方等を視覚と聴覚によって会得することができる。
TV会議で顔を知り,話をすると,次の段階に意識が進む。子どもたちは直接会って交流をしたくなる。オフラインによって教師間で確認し合うことはあるが,子どもたち間では時間的に非常に難しい。そこで,社会見学などの機会を利用して,オフライン会を行う。子どもたちの意識は,これまで話はしても会ったことのない交流の相手へと向いていく。オフライン会に向けてのTV会議は交流に対する意欲を高めてくれるだろう。
日常的にやりとりをするのは意識の停滞を生む場合と,継続性を保つ場合との両面につながる。毎日のように考えをやりとりしたい子どもたちも中にはいる。チャットで相手を意識しながら,日頃の何気ない情報を交換することで,意識が継続し,交流が図れる可能性もある。その子どもたちが校内では,グループ内で交流学習に対する意識を広げる役割を果たすだろう。
各校から届いた自己紹介カードやメッセージをパソコンのある教室や廊下にコピーを取って複数箇所に掲示するとよい。他学年の子どもたちや兄弟関係で掲示物に対して,話題が出るに違いない。
教室では子どもたちの目の高さに掲示し,チャットの内容や「情報カード」の閲覧の時にチャットネームと対応させて見ることができるようにしたい。TV会議には掲示物を会議中でもすぐに見える位置に貼り直し,趣味や名前などを確かめられるようにするとよい。
「情報カード」で,学校に呼びかけのあったものは,廊下に掲示し,子どもたちに応えようとする意識が生まれるようにしたい。
様々な学校行事が年度当初から計画される中で,学習発表会などの保護者が参加する行事は学習に関する意識を喚起・継続するのに有効である。日頃の学習活動を発表する機会として,交流学習の紹介をすれば,自己の活動を見つめ直し,今後,自分たちがどんな活動を作っていけばよいか考えることもできる。発表を見た保護者の学外者としての評価やアドバイスも功を奏する。それを受けて,子ども同士や子どもたちと教師の話し合いが深まっていく。同様に外部人材からの評価も活動を活性化させてくれるだろう。
学習活動では,子どもたちの自然な考えの流れを大切にしていきたい。反面,期間が限られている場合や,学期の区切り,交流相手校の学校行事等,多くの事情が絡んで来た場合などに,マイペースでいては交流は進まない。ある程度,子どもたちの考えを少し先回りしたり,期限を切ったりするときもあっていい。共通の作業をし,日程に区切りをつけ,集中して活動する。教師側の意識も子どもたちの意識と同様にめりはりがついて活動が進む。
交流学習を実施していると,その学習中に予想外の突発的なトラブルが起き,学習が停滞したり,悪くすれば完全に中断したりする状況が想定される。ここでは,その対処方法を紹介する。
交流学習中に,中心となる教師が長期出張や入院等で学校現場を離れることになった場合,次のような対処方法が考えられる。
交流学習では,学校の複数学年で参加する場合が多い。そこで,長期出張中は他の教師が協力し合うティームティーチングによる学習時間の確保によって,学習の継続ができる。しかし,中心的な教師の長期出張は,どうしても活動の停滞をまねくし,複数学年であってもほとんど学年ごとの活動をしていると,十分なことができないのが現実である。
当たり前のことであるが,「総合的な学習の時間」の活動として行う場合,子どもたちの日頃からの課題解決意欲や自力解決能力の育成が重要となってくる。また,情報機器を利用する場合,子どもたちのメディア・リテラシーの育成も大切なポイントとなってくる。
このことを心がけて指導していれば,自主的な活動が継続できる。
Webツールである電子掲示板やメーリングリストを用いて,教師不在に対応することも考えられ,教師が長期出張の場合も出張先から電子掲示板やメールを使って子どもたちへの支援ができる。現場にいるときに比べて活動が停滞する面もあるが,より子どもたちの「自分たちがやらなくちゃ」という使命感・責任感が出てきて,個々の子どもに成長が見られることさえある。
教師の長期出張中,特に密に子どもたちの支援を交流校の教師にしてもらう。
活動が進み,交流学習の相手校の友だちが見え出すと,Webツールの掲示板から相手の学校の子どもに活動の報告や呼びかけなどができるようになる。それができると,教師側の支援よりも子どもたちが真摯に受け止め,対応する姿も見られる。
参加校のいくつかが比較的近い距離にあると,それらの学校の教師に学校に来てもらい,子どもたちの指導をしてもらってもよい。これは,子どもたちのサポートだけでなく,交流校においては教師のメディア・リテラシーへのサポートも当然必要となってくる。このことは交流校が各流域に複数あるメリットである。
新しい交流のために新しい機器を使うことは多い。学校によりその機器の利用について不慣れな場合,トラブルも生じてくる。また,Webツールの使用法やデジタルマップ作りの機器の利用で,自力解決できない場合のサポートとして次の方法を採るとよい。
機器の不調の場合,一番のサポートはメーリングリストによるサポートである。メーリングリストで症状を訴えサポートを頼めば,他校の先生から取り扱いについてアドバイスをもらい解決できるということもある。
パソコンなどの不調の場合,どうしても実機を見てもらわないと正常に戻らない複雑な場合もある。公開授業の際など,パソコンが不調なら利用しているシステムの開発・管理運営の担当者の支援をもらえるように事前の連絡を取り合うことも必要である。
事前に交流計画があり,それにのっとって実施していくが,予定日変更の学校行事が交流学習に支障をきたす場合がある。また,活動が頻繁化するために学校行事に重なることもある。この場合,やはり各学校の教育計画に大きな影響を及ぼすことなく,お互いの学校を尊重し,活動の調整を図っていくことが大切である。