第2部 交流学習 実践マニュアル |
交流学習において,それぞれの学習結果を評価してもらうことは,とても大切である。学校内だけでなく,外部への問いかけを重視した成果の確認にすべきである。実際には,次のような成果の確認が考えられる。
交流学習を実践していく中で,たくさんの外部人材とふれあう。資料提供に始まり,かなり深い部分についての考察,そして同じ運動や行動といった信頼する関係になっている場合が多い。しかも一度や二度ではなく,ごく日常的なの存在としての外部サポーターとなっている。
この人達に評価をしてもらうと,子どもたちの行っている活動について,深い見識や,専門的知識の中から,コメントをしてもらえる。ここで期待していることは,子どもたちが活動してきたことについて,ほめる部分に加えて,違う視点での考えの相違など,現実の厳しさを体験させることである。特に,環境を扱った学習材の場合は,極端な結論に陥りがちで,(大人が悪い,工場が悪い・・・等)自分たちの生活にまで振り返ることが難しい場合がある。そんなとき,外部の方の評価の言葉に,これらに気づかせるコメントがあれば,充実した「調べ学習」になるはずである。
また,自分たちは深く調べたつもりでも,先入観が先行して不本意な学習になっている場合もある。そんなときには,今まで子どもたちと関わったことのないような外部サポーターに評価してもらうことで,厳しい評価をもらえる。この場合,サポーターは,何も専門家である必要はない。Web上に発信したものを見て,メールで感想をもらうだけでも十分な効果がある。
特に何らかのテーマを持った共同学習の実践は,全国各地で行われており,よく似た実践したプロジェクトを経験した学校(教師,子ども)へ投げかけ,評価をもらう。単なる外部評価と違って,自分たちも経験した内容についての評価なので,その興味も大きいであろうし,自分と比較しながらの感想なので,もらった方もわかりやすい。
しかし,同じようなプロジェクトで,同じような学習材を調べたからといって,テーマが違えば,ピンとこない部分もあるだろう。特に,様々なプロジェクトは,多くWeb上に取り上げられているが,かえってそういう学校は,交流校が多すぎて慎重になっている場合もある。単なる評価をお願いするのは,それほど負担ではないと思うが,評価の部分をいい加減にしないためにも,早め早めに「評価のための交流校」という位置づけで,学校を選んでおくことも必要である。
メディアを利用した交流学習におけるオフラインミーティングの重要性は,他項で述べたが,ただの顔合わせでなく,学習材における子どもたちの共通体験の場であると共に,それぞれの学校で取り組んできたことを,お互いに共有する場としての意義もある。イメージとしては,共同学習発表会という位置づけである。
どこかの学校を会場として設け,単なるプレゼンテーションのための集会でなく,展示ブースを用意したり,体験コーナーを作ったりするのである。聞き手を椅子に座りっぱなしにするのではなく,聞き手も発表に参加する,または発表者が体験したことをいっしょに体験してみるなど,体験型の発表会である。
また,プレゼンテーションは1グループずつ時間を確保しなければならないので,かなりの時間がかかるが,展示会にすれば聞き手は,展示してある物を見て回ればいいので,交流学習のようにグループの数が多い時などは時間の節約にもなる。
会場は,やはり体育館のような広い場所がふさわしい。人数の関係,壁の多さなどの理由もあるが,個別の部屋を多くすると,同じ場所にいるという連帯感が薄れるからである。天気によっては野外も利用できる。特に学習材によっては,野外がふさわしい場合もある。
学校別のブースを用意し,形式は決めず,それぞれの学校で思い思いにまとめてくると,変化があって,新鮮である。模造紙あり,パネルあり,地図あり,パソコンあり。まとめ方が多様であるほど見る方は飽きない。学校ごとに見る時間を決め,発表する(見せる)時間にはグループのだれかが必ず待機して質問に答えたり,補足説明をしたりする。中には自分たちのグループを見てもおうと呼び込みを始める子どもも出てくるかもしれない。
これらオフラインミーティングの共同学習発表会は,そのまま評価にもつながる。聞き手に,どれだけわかってもらえたか,相手の学校やグループのしてきたことが自分たちの調べていることと関連づけられたかである。また,質問や意見にどう対応したかも評価の観点となる。そこで,プレゼンテーションと同じように質問の時間を設けたり,口頭で言いにくい子のために質問カードを用意し,質問や思ったことを自由に書いてもらったりする方法も考えられる。発表はやりっぱなしではなく,聞き手の反応や意見をしっかり出させて,それを次の調べ学習に生かせるようにすべきである。
せっかく多くの学校が,同じ学習材を使って学習をしたのだから,思いもそれぞれだろう。その思いを,同じ仲間として共有し,さらなる動機付けとするためにも,共同宣言や共同作品を残すとよいだろう。逆に言うと,この内容を子どもたちがどう表現するかによって,この交流学習が成功したがどうかがわかる。
そして,これらをきちんと大人達や,学習材に関係した団体,ゲストティーチャーや専門家などに返し,共に歩もうという姿勢,学習をまだ続けるぞという気持ちにつなげたいものである。