インターネット電子地図を利用した
協働学習環境の構築


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6. 運用評価

       インターネット電子地図を利用した教育を普及させていく場合には,そのサービスが多数の学校に安定して提供できる必要がある。サービスを安定して提供するためには,インターネット電子地図の機能を集中的に集約しているサーバーが,利用者からのリクエストに対して十分な速度で反応を返せることと,その反応を返すために十分なネットワークの帯域を確保できることが非常に重要となる。また,そもそも,学校からのアクセスパターンがどの様になっているかを知ることも非常に重要になる。

       ここでは,これらの性能的な評価を行うと共にその結果を示す。

6.1. 基本性能

       基本性能の評価を行ったインターネット電子地図の核となるサーバーは,以下の2つである。

      各サーバーの仕様を以下に示す。

       両者とも,OSとしてはLinuxを利用した。また,ウェブサーバーはapache1.3,データベースサーバーはPostgreSQL7.0を利用した。

       性能評価は,apacheの配布キットに付属するabコマンドを利用して行った。

      6.1.1. 静的なHTMLファイルのアクセス性能

         WWWサーバーとしての基本的な性能を評価するために,動的なページ生成やデータベース処理を含まない,静的なHTMLファイルのアクセス性能を確認した。1秒間に処理できるリクエストの回数を図 20に,それによって生じるファイル転送量を図 21に示す。なお,性能評価に利用したHTMLファイルの大きさは,518バイトである。

         図 20によると,1秒間当り1200から1600回のリクエストに応答することが可能であることと,図 21によると,それによるファイルの転送性能が8Mbpsから10Mbpsに達することが分かった。現在,5Mbpsの対外接続線を確保してサービスを行っているが,1台のサーバーで8〜10Mbpsの転送性能を実現できると言うことは,静的なHTMLファイルに対するリクエストであれば,1台のサーバーで十分に対処可能であることが確認できた。

         図 20,図 21で特徴的なことは,リクエストの並列度が1の場合には性能が大幅に低下するということである。これは,サーバーがデュアルプロセッサ構成であるため,同時に処理すべきリクエストが1個に限定されると,どちらか一方のプロセッサが遊んでしまうために発生する性能低下だと考えられる。また,並列度が30を超えると性能の向上が見られるが,これはHTTPの処理リクエストのキューが十分に埋まり,サーバーが絶え間なく処理を継続できるようになるために実効性能が向上するものと考えられる。

        図 20 静的なHTMLファイルのリクエスト処理性能

        図 21 静的なHTMLファイルの転送性能

      6.1.2. 画像のアクセス性能

         画像ファイルのアクセスは,サーバーの処理としては,基本的に静的なHTMLファイルと違いはない。ただし,ファイルの大きさが大きくなっている点に注意する必要がある。この評価で利用した画像はJPEG画像で,その容量は111067バイトである。1秒間に処理できるリクエストの回数を図 22に,それによって生じるファイル転送量を図 23に示す。

         評価結果によると,1秒間に80回程度のリクエストに応答することが可能であることが示されているが,この性能は,静的なHTMLファイルのリクエスト処理性能の20分の1でしかなく,静的なHTMLファイルに対して,リクエスト処理数が大幅に低下している。

         リクエストによって生じたデータ転送量(図 23)を見ると,70Mbps前後となっており,利用しているネットワークインターフェース100Base-TXの規格上の上限である100Mbpsの70%から80%近くに達しており,ネットワークの実効的な転送量の上限に達していることがわかる。これにより,リクエスト処理数の低下は,ネットワークの飽和によるものと確認できる。現実的には,サービスに用いる対外接続線の帯域幅は5Mbps程度であるため,実際に必要な要求性能の15倍以上の能力を1台のサーバーで提供できることが確認できた。

        図 22 画像のリクエスト処理性能

        図 23 画像の転送性能

      6.1.3. データベースを参照するページのアクセス性能

         インターネット電子地図のサービスでは,利用者からの要求に基づいて,データベースを検索し,その結果でHTMLページを作成する処理が頻繁に行われる。このような動的な生成処理を必要とするページのアクセスでは,リクエストに対して以下のような処理が必要であるため,その性能が低くなるという問題がある。

        • データベースの検索

        • 検索結果を利用したページの作成

         このように,インターネット電子地図の重要な機能ではあるが原理的に処理が遅くなる処理の性能評価を行うために,データベースを検索した上で動的にHTMLファイルの生成を行うページのアクセス性能を確認した。1秒間に処理できるリクエストの回数を図 24に,それによって生じるファイル転送量を図 25に示す。なお,性能評価で動的に生成されるHTMLファイルの大きさは,1475バイトである。

         図 24によると,1秒あたりのリクエスト処理数は300から350程度であり,静的なHTMLの評価と比較して,4分の1程度になっている。また,それによって生成されるHTMLファイルの転送性能も4〜5Mbpsと低めとなっている。対外接続線が5Mbps以上の帯域を持ち,データベース参照ページの利用頻度が非常に高い場合には,サーバーを複数設置して性能を向上させるなどの性能強化策が必要になるものと考えられる。

        図 24 データベース参照ページのリクエスト処理性能

        図 25 データベース参照ページの転送性能

         静的なHTMLの評価では,リクエストの並列数が1から2になると,処理性能が1.4倍弱しか向上しなかったのに対し,データベース参照ページの評価では,リクエストの並列数が1から2になると,処理性能が1.8倍近く向上していることが目を引く。これは,データベース参照ページの処理がプロセッサへの依存度が高いことを示しており,データベース参照ページの処理性能を向上させるためには,プロセッサの追加が効果的であることを示している。

      6.1.4. 地図の生成性能

         インターネット電子地図のサービスでは,利用者からの要求に基づいて,必要な地図を生成して提供する処理が非常に重要な位置を占める。地図の生成処理では,リクエストに対して以下のような処理が必要であるため,その性能が低くなるという問題がある。

        • 容量が比較的大きな画像を取り扱うこと

        • データベースの検索

        • データが記録されている地点に参照点を表示する

         このように,インターネット電子地図の重要な機能ではあるが原理的に遅くなる処理の性能評価を行うために,地図の生成を行うページのアクセス性能を確認した。1秒間に処理できるリクエストの回数を図 26に,それによって生じるファイル転送量を図 27に示す。なお,性能評価で動的に生成される地図画像のファイルの大きさは,58046バイトである。

        図 26 地図のリクエスト処理性能

        図 27 地図の転送性能

         図 26によると,1秒あたりのリクエスト処理数は10程度であり,他のどの種類のアクセス性能と比較しても,極度に低い性能となっている。しかしながら,それによって生成される地図画像ファイルの転送性能は4〜5Mbpsとなっており,転送性能の面では,データベースを参照するページとそれほど大差ないことが分かる。この場合も,対外接続線が5Mbps以上の帯域を持ち,地図のリクエスト頻度が非常に高い場合には,サーバーを複数設置して性能を向上させるなどの性能強化策が必要になるものと考えられる。

6.2. 利用特性評価

       インターネット電子地図のサーバーにどのような性能特性が要求されるかを明らかにするため,小学校で実証授業を行った際の,ネットワークの転送量やサーバーの負荷状態を評価した。評価は,利用状況がよく分かっていること,インターネット電子地図が活発に利用されれていることに重点を置き,以下の3対象に対して行った。

       なお,参考のため,小学校の午前中の基本的な授業時間帯を以下に示す。

       11月24日の粕屋中央小学校1は,データの入力に重点を置いてインターネット電子地図が利用された。12月14日の粕屋西小学校では,午前の前半の時間では,他の学校などにより既に入力されているデータの参照を行い,午前の後半の時間では,データの入力が行われた。12月19日の粕屋中央小学校2では,午前の前半と後半それぞれの時間で,異なるクラスが利用し,自分たちが既に入力したデータの参照と取り纏めの作業を行った。

      6.2.1. HTTPリクエスト回数

         それぞれのクラス(コンピュータ教室)のPCから1分間あたりに出されたHTTPリクエストの回数を図 28,図 29,図 30に示す。ここに示されているHTTPリクエストの特性は,データの参照主体か入力主体かといった,インターネット電子地図の利用形態によって分類することができる。

         インターネット電子地図をデータの入力主体で利用したのは,粕屋中央小学校1と,粕屋西小学校の午前の後半である。また,データの参照主体で利用したのは,粕屋西小学校の午前の前半と,粕屋中央小学校2である。このような利用形態に分類してリクエスト回数を調査すると,データの参照主体の場合には,1分間に30回から60回程度のHTTPリクエストが発生しており,データの入力主体の場合には,1分間に10回から30回程度のHTTPリクエストが発生していることが分かる。

         データの参照時はHTTPリクエストが多く,データの入力時はHTTPリクエストが少ないという結果は,データの参照はマウスのクリックだけで行えるため,短時間に多数の参照を行えるのに対して,データの入力は説明文の入力など,1つあたりの処理に多くの時間を要することから容易に説明できる。

        図 28 HTTPリクエスト回数(粕屋中央小学校1)

        図 29 HTTPリクエスト回数(粕屋西小学校)

        図 30 HTTPリクエスト回数(粕屋中央小学校2)

         HTTPリクエスト数が多い時間を選択し,10分間程度のリクエスト回数を平均した場合には,1分間あたりのHTTPリクエスト回数としては,参照の場合には50回程度,入力の場合には20回程度になる。

      6.2.2. データ転送量

         WWWキャッシュサーバーを設置した系(図 31)でのデータ転送量を評価する場合,2つの部分に分けて評価する必要がある。図 31の(B)地点で示されるインターネット(ISDN)を通じて転送されたデータ量と,図 31の(A)地点で示されるWWWキャッシュサーバーから提供されたデータ量を付加した実質的なデータ転送量である。ここでは,図 31 (B)地点のインターネット(ISDN)を通じて転送されたデータ量の評価を示す。

        図 31 ネットワーク構成

         インターネット電子地図のサーバーからコンピュータ教室のPCに転送されたすべてのデータの転送量を図 32,図 33,図 34に示す。64Kbps一回線のISDNの最大実効転送速度を7KB/秒程度と考えると,1分あたりの転送量の最大値(限界値)は420KB/分となる。初期の実証授業である図 32では,まだ転送量が最大値に達していないが,図 33では瞬間的にではあるが最大値に達し,図 34では,長い時間帯で転送量が最大値に達している。

        図 32 データ転送量(粕屋中央小学校1)

        図 33 データ転送量(粕屋西小学校)

        図 34 データ転送量(粕屋中央小学校2)

         小学校における授業の現場では,大きな問題はなかったものの,インターネット電子地図の参照に若干待たされる印象があった。その印象は,図 34のデータによって,数値的に裏づけされている。この結果では,22台程度のPCが利用される小学校においても,インターネット電子地図を快適に利用するためには,64kbpsのISDNの一回線ではインターネットの接続帯域が不足していることと,ADSLの利用などによりインターネットの接続帯域が増加すると,サーバーへのアクセス量が現在よりも確実に増加するであろうことを示している。

6.3. 地図画像の生成

      6.3.1. 地図画像の転送量

         データの転送特性をより詳しく調査するため,6.2.2節で調査したデータ転送量のうち,地図画像だけに注目したデータ転送量を図 35,図 36,図 37に示す。6.2.2節の図と比較すると,転送量やその変化パターンがほぼ同一なことが分かる。これは,インターネット電子地図サーバーからコンピュータ教室に送られるデータのほとんどが地図画像によるものであることを示している。これは,プロジェクト参加校のコンピュータ教室に設置しているWWWキャッシュサーバーの効果によるものと考えられる。

         インターネット電子地図から転送されるデータのうち,容量の大きな物には,写真などの画像データと地図画像データがある。写真などの変化の無い画像データは,一度利用されるとWWWキャッシュに蓄積されサーバーから転送する必要が無くなるのに対して,地図画像はリクエストがあるたびに毎回新しく作り直されるため,キャッシュすることができずサーバーから転送する必要がある。このため,インターネット電子地図サーバーからの転送量のほとんどを地図画像の転送が占めることになったと考えられる。

        図 35 地図画像の転送量(粕屋中央小学校1)

        図 36 地図画像の転送量(粕屋西小学校)

        図 37 地図画像の転送量(粕屋中央小学校2)

      6.3.2. 地図画像のリクエスト回数

         HTTPリクエストのうち,地図画像の生成を要求するものだけの推移を図 38,図 39,図 40に示す。これらの図から,1分間あたりのHTTPリクエスト回数は高々10回程度で,平均的には5回以下ということが分かる。6.1.4節の評価で明らかなように,サーバー1台あたりの地図のリクエスト処理性能は,1秒あたり10回程度である。したがって,1分あたりに換算すると,600回程度の地図生成を行うことが可能で,1つの学校のコンピュータ教室からの平均的なリクエスト回数が,1分あたり5回程度と仮定すると,サーバー1台あたり,120校程度の学校の同時利用に対応することができると考えられる。

        図 38 地図画像のリクエスト回数(粕屋中央小学校1)

        図 39 地図画像のリクエスト回数(粕屋西小学校)

        図 40 地図画像のリクエスト回数(粕屋中央小学校2)

6.4. システム負荷

       UNIXの1分間単位のロードアベレージを指標として用いた,地図サーバーのシステム負荷の変化を図 41,図 42,図 43に示す。システム負荷の変化の様子は,6.3.2節の地図生成リクエスト数のそれと酷似しており,基本的に,地図の生成処理がシステム負荷を押し上げているものと考えられる。

       サーバーの負荷は,最大で0.1から0.2程度と,基本的に大きな余裕を持ってサービスを行えていることが示されている。

      図 41 システム負荷(粕屋中央小学校1)

      図 42 システム負荷(粕屋西小学校)

      図 43 システム負荷(粕屋中央小学校2)

       なお,一校単位での利用程度では,データベースサーバーのアクセス量が少なかったようで,負荷は数値的に現れなかった。このため,データベースサーバーの負荷グラフは省略している。

6.5. WWWキャッシュの効果

       本プロジェクトでは,各小中学校にWWWキャッシュサーバーを設置した。その効果は大きかったようで,実証授業で10台から20台のPCでインターネット電子地図を利用しても,適度な反応で利用することができた。ここでは,各学校に設置したWWWキャッシュサーバーの効果を定量的に評価する。

      6.5.1. WWWキャッシュを含めた画像データの転送量

         WWWキャッシュは,データ内容に変化のない,特に画像データなどに効果が大きい。ここでは画像データに注目し,図 31の(A)地点で示されるWWWキャッシュを含めた転送量を評価する。

         インターネット電子地図サーバーからインターネットを通してクライアントPCに転送された画像データと,各小中学校に設置されたWWWキャッシュサーバーからクライアントPCに転送された画像データの転送量の変化を図 44,図 45,図 46に示す。

         データの参照が重点的に行われた図 45の午前の前半と,図 46の午前の前後半における転送量が多いことが確認できる。特に図 45の前半では,5700KB/分のピークを記録しており,64kbpsのISDN一回線で本来供給できる転送速度の13倍程度の転送速度を提供できたことを示している。データの参照の様に,多数の端末で同時に短い時間間隔で情報を参照する場合,WWWキャッシュの効果が大きく現れていることが示されており,これは,実証授業中における生徒や教師の感覚的な評価にも符合している。

        図 44 WWWキャッシュを含めた画像データの転送量(粕屋中央小学校1)

        図 45  WWWキャッシュを含めた画像データの転送量(粕屋西小学校)

        図 46  WWWキャッシュを含めた画像データの転送量(粕屋中央小学校2)

      6.5.2. WWWキャッシュを含めた全データの転送量

         前節では画像データのみに着目したが,ここでは全体的な評価として,すべてのデータを対象としてWWWキャッシュを含めたデータの転送量の評価を行う。

         インターネット電子地図サーバーからインターネットを通してクライアントPCに転送されたすべてのデータと,各小中学校に設置されたWWWキャッシュサーバーからクライアントPCに転送されたすべてのデータの転送量の変化を図 47,図 48,図 49に示す。

        図 47  WWWキャッシュを含めた全データの転送量(粕屋中央小学校1)

        図 48  WWWキャッシュを含めた全データの転送量(粕屋西小学校)

        図 49  WWWキャッシュを含めた全データの転送量(粕屋中央小学校2)

         画像データの転送量が多いため,全体的な転送量の基本的な変化は,画像データのそれに対応していることがわかる。データ参照が重点的に行われた図 48の午前の前半と,図 49の午前の前後半では,それぞれ10分程度にわたって,800KB/分から2000KB/分程度の転送量が継続的に生じている。これは,データ参照に重点を置く授業では,単純な64kbpsのISDN一回線では大幅に転送能力が不足し,授業を遂行するためには,少なくとも2倍から5倍の転送能力を持つインターネット接続が必要であることを示している。最近では,ADSLなどの安価で高速なインターネット接続サービスも提供され始めているが,64kbpsのISDN一回線で接続している学校がほとんどのように見受けられる。したがって,インターネット電子地図を利用した授業を円滑に行うためには,WWWキャッシュサーバーの導入が必要不可欠であると考えられる。

6.6. サーバーのキャパシティ設計

       インターネット電子地図を多くの学校で利用してもらうためには,多数の学校から安定して利用できるサーバーを運用することが重要となる。その基礎的な準備として,サーバーのキャパシティ設計について考える。

      6.6.1. サーバー性能

         サーバー側の性能上の制約条件となるのは,単位時間あたりの処理能力が最も低い機能の能力であり,それは地図画像の生成能力であると考えられる。

         6.3.2節で明らかなように,実証授業で得られた1分間あたりの地図生成のリクエスト回数は高々10回程度で,平均的には5回以下ということが分かる。一方,6.1.4節の評価で明らかなように,サーバー1台あたりの地図のリクエスト処理性能は,1秒あたり10回程度である。したがって,この能力を1分あたりに換算すると,600回程度の地図生成を行うことが可能で,1つの学校のコンピュータ教室からの平均的なリクエスト回数が,1分あたり5回程度と仮定すると,地図生成サーバー1台あたり,120校程度の学校の同時利用に対応することができる。一般的には,インターネット電子地図の利用登録校が100校になったとしても,ある一時に利用している学校はその数分の一に限定される。このため,利用登録校が急速に増加しない当面の間は,現在のシステム能力で十分に対処できるものと考えられる。

      6.6.2. ネットワーク性能

         本プロジェクトに関連して小中学校のインターネット接続状況を調査したところ,少なくとも福岡県下では,64KbpsのISDN一回線のみを利用している小中学校がほとんどであった。この状況がしばらく続くと仮定すると,インターネット電子地図サーバーが接続されている5Mbpsの帯域では,80校程度の学校に対して,同時にサービスを提供できることになる。

         本年度の実証授業においても,学校側のネットワーク性能は64KbpsのISDN一回線だけを利用したが,64KbpsのISDNの帯域一杯で利用されている時間帯があることが記録されている。この現象は,本来発生しているはずのリクエストが,ネットワーク帯域の制限により抑えられている可能性があることを示すものである。特に42台のPCを導入している中学校で行われたインターネット電子地図の実証授業では,インターネットの接続性能がボトルネックとなって,インターネット電子地図を快適に利用する上で,大きな制約があったことが報告されている。

         前述の様な,太いネットワーク帯域に対する潜在的あるいは明示的な要求があるため,ADSLなどの普及とそれに伴う学校等のインターネット接続帯域の拡大に伴って,学校あたりのサーバーに対するネットワーク帯域の要求量が急速に増加することが考えられる。このような要求の増大には,サーバー側のネットワーク帯域の増加によって対処する必要がある。しかしながら,ネットワークの接続料は高価であるため,サーバー側のネットワーク帯域の増加には,運営資金の調達などの課題がある。

      6.6.3. 要求増大への対処

         インターネット電子地図は,以下のような項目により,サーバーへの要求が次第に増大するものと考えられる。

        • 利用校の増大

        • 利用者のインターネット電子地図の利用への慣れ

        • 利用校のインターネット接続速度の向上

        • 登録された(参照できる)データの増加

        • インターネット電子地図の指導案の整備と利用単元の拡大

         また,インターネット電子地図の特性上,学校以外の利用者の参照が多数発生する場合が考えられる。

         このような,サーバーへの要求の増大に対処するためと,地図画像生成サーバーに何らかの障害が発生した場合に,教育現場に多大な混乱を生じることなどを考慮し,現在2台以上の地図画像生成サーバーで負荷分散したシステムへの移行を行う作業を進めている。



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