E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  秋田市立川尻小学校

授業づくりを支援するWebページの改善・開発と活用
― インターネット環境,LAN環境を活用した実践交流の在り方を求めて ―

小学校1年〜6年:総合的な学習の時間・生活科
・社会科・理科・特別活動・ふるさと教育
秋田市立川尻小学校 佐藤 好久
kws-es4@edu.city.akita.akita.jp
http://www.edu.city.akita.akita.jp/~kws-s/
キーワード 小学校,総合的な学習の時間,データベース,ふるさと教育

インターネット利用の意図
 当校では「ふるさと教育」を基盤にすえ,地域の環境を生かした授業や体験的な活動の在り方を工夫してきた。この取組の中,指導案や指導資料(シート等),子供たちの自由研究等々,実践から生まれた各種のデータが蓄積されてきた。
 学校週五日制の完全実施を目前とした今,「生きる力」をはぐくむことが全国津々浦々の学校の課題となっている。当校では,これらの実践データをデータベース化し,LANやインターネットといったネットワーク環境を活用しながら,一人一人の違い(興味関心・問題意識・既有体験・学習スタイル等)に応じた支援活動を工夫・改善していくことこそが「生きる力」を育てる近道であると考え授業改善・経営改善を進めている。
 今回,「かしわっ子学習(当校の「総合的な学習の時間」の名称)」,生活科,社会科,理科,及びクラブ活動を対象として,指導活動や学習活動を支援するデータベースを改善・開発するとともに,これらを活用した授業や活動の在り方,これを踏まえた実践交流や活動交流の在り方を工夫・改善してきた。
 以下,4年の「かしわっ子学習」における実践例を通して,取組の一端を紹介する。

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1. 音楽劇にチャレンジ!(伝えよう 私たちの町 川尻むかし物語)

(1) ねらい
<1> 児童に関して
・ インターネット・LAN環境を活用して音楽劇に必要な情報(知識,データ等)を取得したり,情報交換したりしながら創作・表現活動を進めていく。
・ 音楽劇の創作・表現を通して地域に伝わる文化のよさを実感し,伝統表現に対する興味・関心を高めたり,見方・考え方を広げたりする。
・ 地域に伝わる文化や伝統づくりに参加したり,交流の仕方を考えたりする。
<2> 教師に関して
・ 地域の伝統文化を生かした表現活動を題材として,インターネット・LAN環境を活用しながら必要な情報を取得したり,実践情報を公開・交換したりすることで,地域の伝統文化を生かした「表現活動」の在り方を追究する。
・ 地域の教育力を活用した「総合的な学習の時間」の在り方を追究する。

(2) 利用場面
<1> 創作・表現に必要な知識やデータを取得したり,活動過程において情報を交換したりする場面(「どんな動きを」「どう」作っていったらよいのか 等)
<2> 秋田音頭についての情報を取得し,文化的な背景や踊り方についての見方を広げたり興味・関心を高めたりする場面
<3> 表現の改善・発展の仕方を考える場面

(3) 利用環境
<1> 使用機種  PC9821-Xa20(3台),PC98Mate(4台),FMV-6766CL7(4台),IiyamaM533MS4(4台),PROTON MX433CS-S(1台) ,VAIO PCV-R30(1台)
<2> 周辺機器  デジタルカメラ(10台),デジタルビデオ(3台),MO(3台),イメージスキャナ(2台),DVDRAM(1台),カラープリンタ(4台)
<3> 稼働環境  コンピュータ室,図書室,音楽室,多目的室
<4> 利用ソフト Word,Excel,Access,一太郎,パワーポイント,ホームページビルダーVer6,インターネットエクスプローラ6.0 等

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2. 指導計画
(総時数 45時間)   ※ ★は,データベースに関わる事柄
   

学 習 活 動

教師のかかわり

評価の観点




(2H)

2

















1.オリエンテーション
★映像データベース等を活用し,これまでの体験を想起しながら計画を立てる。
「ヤートセの秋田音頭をもう一度踊りたいな。」
「今度は劇に挑戦したい。」
「歌もいいよ。」
「音楽劇にしたらみんなのやりたいものが全部できるよ。」
「学習発表会で,学校のみんなや地域の人たちに見てもらおうよ。」
「川尻の昔のことを調べて,劇を作ったらどうかな。」

★1学期に体験した表現活動の楽しさを想起できるように,ビデオ記録をデータベース化しておく(問題意識に応じて見たい部分をすぐ検索・表示できるように)。
・見通しを持った話し合いができるようにするために,4つの
・キーワードを提示する。
○発表する方法○発表の場
○発表する相手○発表の内容
・教師が役割分担をし,子供の発表をまとめて板書したり,つぶやきを拾い上げたりして,子供の思考を整理する。

 

・自分の考えをもって話し合いに参加することができたか。



   

・表現方法の一つとして,オペレッタを紹介する。
(★映像データベースの活用)

 




(7H)







 



調

2.昔のこと(土地の様子や人々の生活)について調べる。
「田舎のおじいちゃんに手紙を書こう。」
「おとなりのおばあちゃんは,いろいろなことを知っていそうだよ。」
「インターネットで調べよう。」
「図書館に,昔の道具の本があったよ。」
3.調査してきたことをまとめる。
・新聞にまとめる。
・学年全体で,今と昔の違いについて話し合う。
「学校の周りが全部畑だったなんてすごいね。」
「おじいちゃんが一生懸命書いてくれてうれしかった。」

4.調べたことをもとにシナリオをつくる。

・昔の人々の生活や町の様子を調査することで,地域の人々との触れ合いを深め,地域に関心をもてるようにする。
・保護者の協力を得て,調査活動の安全を確保する。
・訪問時のマナー等について事前指導を行う。
★前年度までの児童が作成したリンク集も活用するように助言する。☆児童作成リンク集
・各自作成の新聞や学級でまとめたものを掲示しておく。
★調査結果を,後で活用できるようににデータベース化しておく。
・質問内容を事前に「ふるさと先生」に伝え,子どもの実態にあった話をしたり,実際に踊ってもらったりしていただけるように依頼しておく。
・シナリオの内容を公募し,まとめておく。

・進んで調べていたか。
・地域の人々や友だちのよさに気付いたか。
・今と昔を比べながらまとめたり,考えたりしたか。
・課題をもって参加したか。
・川尻に対する地域の人の思いを感じ取ることが。




(31H)










5.シナリオを発表する。
6.役割を考え,分担する。
「役者は,絶対必要だよね。」
「川尻秋田音頭を覚えたい。」
               (秋田音頭を継承)
「体育で勉強した表現を劇に入れたらおもしろそうだよ。」
「小道具や衣装・背景なんかを作るスタッフも必要だよ。」

・劇の内容がイメージできるように,朗読する。
・自他の変容に気付き,活動に意欲がもてるように,項目別自己評価カードを用意する。
・興味別でチームを選択できるようにするために,記述式の希望カードを用意する。

・シナリオに関心をもち,劇作りに意欲をもつことができたか。




(31H)











 

 




 







 







 

7.役割のチームごとに,活動の計画を立てる。
・ 役者隊(役者・場面転換の歌と踊り・ナレーション)
・かしわスターダンサーズ (秋田音頭)
・変身チーム  (身体表現)
・手づくりアート (音響・小道具・大道具)
8.計画にしたがって準備を進める。
「秋田弁って難しい。もっと上手になりたいな。」
「踊りの型がよくわからない。ふるさと先生に,もう一度教えてもらえないかな?」(写真1参照)
「○○を表現しているように見えるかな?他のチームの人にも見て欲しい。」
「こうすればいいと思うよ。」
9.中間発表会
「他のチームは,ずいぶんがんばっているな。ぼくたちも,練習方法を変えてみよう。」
「伝えるって,難しいね。」
10.計画を修正し,準備を進める。
「どうしたらうまく伝わるか考えよう。」
「自分たちの演技をVTRにとってみたらどうかな?」
「他チームと息を合わせよう」
11.音楽劇「川尻昔物語」を発表する。
12.これまでの学習の振り返りをする。


・自分たちの発表の様子を振り返り,改善点を話し合い修正する。(★映像データベースの活用)
・秋田県子ども芸能祭で演技を発表する(かしわダンサーズ)。

 

・チーム名を自分たちで考えることで,活動意欲を喚起する。
・活動見通しをもてるよに「活動計画カード」を用意する。
・実行委員会を組織し,チーム同士の連携を促進する。
・子供の要望に応じて,VTRを用意したり,ふるさと先生との連絡調整をしたりする。
・自分たちの活動の歩みが分かり,コミュニケーションを図れるようなチームごとの掲示板を用意する。(SOSカードなど)
★「ふるさと先生」の踊り方を録画し,後の練習で活用できるようにデータベース化する。

・活動の意欲を持続させるために,中間発表会を設定する。
・お互いの表現を見た感想や思いを素直に伝えたり,友達の意見を受け入れたりできるような場作りをする

 

・意欲が高まるよう,これまでの取組を賞揚する。
・データベースを活用するよう助言する。

・振り返りの場を設定し,自分たちの成長に気付き,努力を認め合えるようにする。

・自分らしさを大切にして役割を選択することができたか。
・見通しをもって計画を立てることができたか。
・友達と協力しながら,課題を解決しようとしたか。
・視点をもって,友達の発表を見たり,よさに気付いたりすることができたか。
・他のチームと協力しながら活動することができたか。
・表現する喜びに浸ることができたか。



(5H)

発 展

・これまでの取組をまとめ,来年からの活動を考える。

★データベースを活用しながら,活動を振り返るように助言する。

・これまでの取組にも基づいていたか。

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3. 学習の展開

 以下に,第4次について,展開の概要を紹介する。

(1) 指導計画第4次(「今度〜をやってみよう!」)から

<1> ねらい
・ 地域の伝統文化を生かした表現活動に対する取組をまとめ,来年からの活動を考える。(子供)
・ 地域の伝統文化を生かした表現活動や地域の教育力を活用した「総合的な学習の時間」の在り方を追究する。(教師)
<2> 展開(45時間扱いのうち5時間分)

 

学 習 活 動

教 師 の か か わ り












(5H)

1.他校の子供たちに秋田音頭やそれに対する取組を紹介する。
・紹介の重点や表現の仕方を考える。
・役割を分担して準備する。
2.「音楽劇川尻音頭物語」への取組を踏まえて,次年度の取組を考える。(踊り,おはやし,役者隊,チームアート等々の活動,衣装のデザイン等々)
3.話し合った事柄の概要をまとめてWeb等に掲載する。

★映像データベース(学習発表会や子ども芸能際等を記録)を活用するよう助言する。
★NetMeeting,Phoenix,E-mail等を活用した交流もできることを知らせる。
・「ふるさと先生」に意見を聞く機会を設定する。

 

・話し合った事柄をまとめて,企画委員会で発表し,全校的な活動にしていくよう助言する。

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4. 成果と課題
写真1 ふるさと先生から踊り方を教えていただく子供たち
写真1 ふるさと先生から踊り方を教えていただく子供たち

(1) 成果について
<1> 児童に関して
・ 必要な情報を効果的に取得できるデータベースの有効性や必要性を実感し,取組が活発になってきた。また,何が課題なのか,解決へのステップや役割分担をどうしたらよいのか,解決に必要な情報をどこからどう取得したらよいのか等々,問題解決能力が高まってきた。
・ 表現活動の楽しさを実感するとともに,伝統を継承することの意義やそのために必要な学びの重要性についての理解が深まってきた。
・ 自分たち取組が地域の文化を守り発展させていくことになることを実感できた。また,今回の学習をさらに発展させたり他の活動に広げたりしようとする意欲も高まってきた。
<2>教師に関して
・ 「伝統芸能」の授業への位置付け方を検討したりするためのデータベースの有効性・必要性を実感し,「伝統芸能」を位置付けた「総合的な学習の時間」のカリキュラム開発が促進された。
・ 授業を通して「伝統芸能」を継承・発展させたり,学校全体の文化として位置付けたりする手だての在り方が明確になってきた。

(2) 今後の課題
<1> 地域の歴史・文化・芸能等の掘り起こしや教材化を継続し,データベースを充実させるとともに,データベース機能を改善しさらに使いやすいものとしていく。この際,これらの使用例,活用例も充実させていく。

<2> 地域の歴史・文化・芸能を素材とした表現活動を媒介とした交流活動の在り方を追究していく。

【ワンポイントアドバイス】
<1> 地域に埋もれている芸能や表現活動を授業に取り入れ,子供たちとともにその姿や意味を考え直すことで新しい文化としてよみがえらせることができる。また,この過程で多くの方々の考えや力が生かされ,新しい地域づくりにもつながる。
<2> 授業等の活動から生まれた資料(動画,静止画像,テキスト等)をデータベース化しておくことで,その単元におけるふりかえりはもちろん次年度以降の学習においても有効に活用できるようになる。

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