E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  山形県東村山郡山辺町立鳥海小学校

IT時代を見据えた児童一人一人のためのインタ−ネット活用の実践研究
−−地域と学校の融合のもとで児童の課題解決のためのインタ−ネットを利用した
協同学校の運営 「Beans School」−−

小学校5・6年 総合的な学習・教科
山形県東村山郡山辺町立鳥海小学校
教諭 東海林 新司・新目  巌
tokairin@ma2.justnet.ne.jp
http://toki.ed.niigata-u.ac.jp/~tokairin/Index.html
キ−ワ−ド 小学校,5・6年,総合的な学習の時間
豆,遠隔地交流学習,協働学習,地域学習

インターネット利用の意図
 2002年より新学習指導要領が実施される。完全週5日制の下,各学校が「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し,児童に豊かな人間性や自ら学び自ら考える力などの[生きる力]の育成などをねらいとしている。
 これを見据えながら鳥海小学校では「そばウガリプロジェクト」をはじめとする遠隔地協働交流学習を展開してきた。<写真1参照>食物に目を向け,地域に学び,他校との交流を柱にし,情報教育,国際理解教育,環境教育など様々な学習を融合させた学習である。本校ではインタ−ネットを利用した学校間交流は日常的におこなわれるようになってきたが,児童同士が互いの名前を呼び合うまでの親密な交流にはいたっていない。そこで本研究では,新潟県長岡市立表町小学校などの日本国内の複数学校やジャカルタ日本人学校などとの協働学習を足がかりにして,これまで以上の交流学習に発展させ,その成果をWeb上に「Beans School」として公開していく。

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1. 単元名「ビ−ンズ倶楽部」

1.1 目標
○ 自分たちで活動計画を立てたり,活動内容を考えたりするなど,目あてを持って,意欲的に栽培活動や調理,調べ活動等に取り組むことができる。
○ 活動を通して見つけた課題や疑問などについて,解決の方法を考え,追求し,結果について判断し,取り組みを振り返るという体験を通して,一人一人がものの見方や考え方を身につけることができる。
○ 地域の人々や交流校の仲間たちなどとの触れ合いを通して,人々との関わり方や自己表現力を高めることができる。
○ 豆の学習を通して,日本の食糧問題や環境問題・日本食の良さ・地域の願い・地域の良さについて触れながら,これからの自分の生き方を考えることができる。

1.2 利用場面
 調べ学習では検索ツ−ルとして,交流学習ではコミュニケ−ションツ−ルとして,まとめの学習ではホ−ムペ−ジづくりなどでインタ−ネットを利用する。毎朝のメ−ルチェックなど日常の生活の中に定着できるよう教師が配慮していく。また,情報メディアは時と場合によって効果的な方法を選択させながら使用させていく。インタ−ネット上の情報は正確な情報ばかりでないことを理解させたり,電子メ−ルのマナ−なども指導する。

1.3 利用環境
児童用Windows98seパソコン5台,Mac1台  教師用WindowsNT4.0パソコン1台
WindowsNT4.0server1台 液晶プロジェクタ−1台 USBCCDカメラ アンプ
DVDプレ−ヤ− ビデオカメラ ビデオデッキ 動画取り込みソフト他
ISDN回線2本 アナログ回線1本

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2. 指導計画

2.1 単元について
 今回の「ビーンズ倶楽部」という単元は,児童が「豆を栽培して豆料理を作って食べたい。豆について調べたい。」という願いから,児童が話し合って決めた単元である。具体的な活動についても,児童の話し合いで計画・実施されている。
 このように児童がテーマを決め,児童の発想で取り組む児童中心の活動を行っていく今回のような場合には,次のような具体的な成果が期待できる。
○ 自分たちのアイディアがそのまま活動となることで,学習に対する意欲が高まる。
○ 自分たちで計画し活動することで学習に対する積極性が生まれる。
○ 活動の目的を自分たちで考えることで,計画性が高まる。
○ 自分たちで成し遂げたという成就感が味わえる。
反面,次のような危惧がある
◇ やりたいことはやっても,やりたくないことはしなくてもいいという感覚ができる。
◇ どうやってもいい(活動計画)ということから,内容もいいかげんになりやすい。
 さらに,児童は,「豆の栽培〜調理〜試食〜まとめ」という活動の計画を立てている。
この計画からは,次のような具体的な成果が期待できる。 
○ 豆の成長にあわせて根気強く世話する。世話の大変さを体験する。
○ 地域の方に世話の仕方や調理の仕方を学ぶ。地域の人の温かさと知恵に学ぶ。
○ 地域の人々に料理を試食していただくことで,地域の人に活動を理解していただく。

写真2 豆腐屋さんへ質問
写真2 豆腐屋さんへ質問

○ 地域の人の豆腐・みそ作りへの願いに気づく。
  <写真2参照>
○ 栽培・調理の技術が身に付く。
○ 仲間と協力して活動できるようになる。
○ 地域の人々の願いや思いから,自分のこれからの生き方を考えることができる。
反面次のような危惧がある
◇ 食べることだけに執着してしまい,学習に深まりがなくなる。(地域の願い・社会問題にまで目がいかなくなる。)
そして,豆についての疑問から,個別に課題を追求していくという計画からは, 次のような内容への発展が考えられる。
○ 豆の栄養面への発展(畑のお肉といわれている)
○ 豆腐・納豆・みそという日本の伝統的な食文化への発展。<写真3参照>
○ 豆の自給率1パーセント以下というわが国の農業の問題。
○ 遺伝子組み替え大豆といった輸入豆についての問題。
○ 有機栽培・減農薬栽培という農法への発展。      
○ 環境問題・社会問題を通して,自分のこれからの生き方を考えることができる。
○ 自己決定や自己選択することで,自分の活動に責任を持つようになる。
○ 「自分でできた」という自信・成就感を味わうことができる。
 このように,この単元は,たくさんの可能性を秘めている単元であると言うことができる。児童が行う活動に合わせて,様々な付加価値にも触れさせ,幅広い学習ができるように支援していきたい。

2.2 指導計画(72時間) <図1参照>

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3. 学習の展開

(第3部 本時2/15時間)本時の活動 <図2参照>

(1) ねらい
○ これのまでの活動の中で感じた疑問や自分なりの課題を発表しあうことで,自分の課題を確かめ,これからの個人研究の方向性を確認して,HP作りに向けて意欲的に追求活動に取り組むことができる。
○ 友達が持っている疑問や課題について,意見を言ったりアドバイスしたりするなど,友達などと関わりながら追求活動に取り組むことができる。
(2) 研究テーマに関わる個別目標(後述)
(3)活動過程(授業時間45分)

写真1 これまでの活動 写真3 豆腐つくり
写真1 これまでの活動
写真3 豆腐つくり
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学習構造図 (72時間)
図1 年間計画
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本時の活動

(1) ねらい
○これのまでの活動の中で感じた疑問や自分なりの課題を発表しあうことで,自分の課題を確かめ,これからの個人研究の方向性を確認して,HP作りに向けて意欲的に追求活動に取り組むことができる。   
○友達が持っている疑問や課題について,意見を言ったりアドバイスしたりするなど,友達などと関わりながら追求活動に取り組むことができる。

(2) 研究テーマに関わる個別目標 

研究テーマに関わる個別目標
(3) 活動過程(授業時間45分)
図2 本時の活動
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4. 成果と課題

  「そばウガリプロジェクト」から「コ−ンプロジェクト」,「POTATO ROAD2000」,「Beans School」と実践を重ねてきたことによって以下の様な成果と課題が明らかになった。

写真4 NetMeeting
写真4 NetMeeting

4.1 成果
(1) 児童の課題を解決するための場を学校だけでなく地域,交流校と広げながら活動することによってさらなる課題への深まり,人的ネットワ−クの広がりがみられ充実した学習へ発展することができた。
(2) 交流学習においては,初期の段階では学校対学校の交流でしかなかったが,次第に学級対学級,個人対個人のように相手の顔が見える交流に発展してきた。また,自校や交流校という単位で課題を解決するのではなく,学校の枠を取り払ったグル−プによっての課題を解決する場面が見られるようになり,遠隔地を意識させない協働学習が成立した。
(3) 交流の手段はインタ−ネットに主軸をおいてきたが,それのみにたよらず,場に応じた交流手段を選択する児童が見られた。複数の手段で相手と関わることができるようになった。
(4) 毎日のメ−ルチェックなどにみられるようにコンピュ−タの操作だけでなく,自主的に情報機器や情報に接しようとする態度が児童に定着してきた。
(5) 交流学習を進めるにあたり,自校の教師だけでなく他校の教師との授業のための話し合いや情報交換を必要な時,必要なだけ行うことができた。本来なら出会うことがない交流学校の教師と協働でプロジェクトを進めた体験は今後のIT技術の進歩の中でも貴重な経験となった。

4.2 課題
(1) 多量の児童のポ−トフォリオから活動の評価などを行う手法を深めていく必要がある。
(2) 回線の容量などインフラの整備について学校間に格差がでてきた。

写真5  地域の方に豆栽培を教わる
写真5  地域の方に豆栽培を教わる

ワンポイントアドバイス
・地域の現状に応じた素材や人材を探す。<写真5>    
・交流学習は互いに信頼できる学校をつくることから始める。
・NetMeeting<写真4参照>などのオンラインで使用するソフトは事前テストを十分に行い,仮に本時でうまくいかない時を考えてバックアップ体制を用意しておく。
・最良の方法が準備できなくても最善の手を尽くす。

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