E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  野田市立岩木小学校

地域のリーダー的教職員育成モデルの構築
− 先生方による地域協力団体組織作りマニュアル −

野田市立岩木小学校 桑原辰夫
tatsuo@tohkatsu.or.jp
http://www.max.hi-ho.ne.jp/nodanet/
キーワード  ネットデイ組織,校内LAN

企画の目的・意図
 2006年には,すべての学校にLANが構築され,しかも各学級に 2台のコピュータが設置され,どの教室からでもコンピュータが道具として利用される環境を整備することが計画されて久しい。また,平成11年度から郵政省(現総務省)と文部省(現文部科学省)による「先進的教育ネットワークモデル地域事業」が始まり,平成13年度末までに全国の学校の約1割(約4,000校)の学校が高速専用回線によりインターネットに接続され,学校内LANが整備されることになっている。しかし,それ以外の約36,000の学校のLAN整備に関しては,各学校(地方自治体)等で独自にケーブルを敷設する計画となっている。ルータやハブを利用した簡易的な LANをすべての教職員が敷設するための知識を有しているはずもなく,また,地方自治体に対し,独自予算での敷設を期待することはできないと言わざるを得ない。
 一方,インターネットの先進国であるアメリカにおいては,全学校の高速回線への接続がほぼ完了している。国策による予算の配分だけでなく,地元の企業等やボランティア等による「ネットデイ」と言われる活動によることはすでに知られている通りである。このように,国内の一部の大規模校4,000校以外の約36,000校が,校内LANを整備するためにはネットデイ等のボランティアの協力が不可欠と考えられる。すでに群馬県の「インターネットつなぎ隊」や千葉県の「柏インターネットユニオン」等活発に活動しているボランティア団体が存在し,地域の学校の LAN構築に貢献している。しかし,全国津々浦々にそういった団体が存在するはずもなく,そういった団体に頼ることができない実数はかなりの数に及ぶと考えられる。
 ところで学校に LANが整備されたときにそれを利用するのは教員であることは言うまでもない。 LANが整備されても,それを利用しようとする意識の高揚がなければ利用されることはない。特に,多くの学校ではネットデイ等に頼らなければならない現状から考えて教員が中心となって行われるネットデイでなければ,その後の利用を望めるばずもない。
 そこで,それぞれの地域において,
1) ネットデイ組織を確立するためには,どのようにしたら良いのか。
2) 地域リーダーを育成するための組織作りは,どのようにすればいいのか。
3) ネットワーク構築に関して,どのような研究を行うことが有効か。
等について調査研究することで,既存のボランティア団体が存在しない地域においても,地域の協力でネットワーク環境を構築できるよう,地域のリーダー的な教員を育成するためのモデルの構築とそれを公開することは,大変有意義なことと考えた。

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研究の目標
 市内在住又は在職の教職員を中心とした地域協力団体を組織するとともに,本校又は他校を対象としたネットデイを行う。それにより,教職員が中心となった地域リーダーの育成に関するモデルを構築する。
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1. 実践内容

(1) 地域協力団体(野田ネットワーク研究会)の立ち上げ
 市内の「情報教育推進委員」及び市教育研究会の「情報教育部会」から,本研究の趣旨に賛同してくださる方々を募った。次に,賛同してくださった教員が持つ人的ネットワークからメンバーを増やすようにした。
 会員が10名を越えることが確実になった段階で研究会準備委員会用のメーリングリストを設置した。これによって会員の交流が活発になっていった。このメーリングリストでの交流から,地域協力団体の名称が「野田ネットワーク研究会」となった。

(2) 例会(off会)による研修
 野田ネットワーク研究会という名称が決まってからも少しずつ会員が増えてきた。そこで,オンラインによるメーリングリストでの交流をメインとしながらも,研究会としてはオフラインによる例会が不可欠であると判断し, 6月より例会を開くようにした。
 以下は例会によって研修してきた内容である。

 6 月 第 1回研究会の開催
・ Webの作成計画
・ メーリングリスト設置 研究会準備委員会メーリングリストを改めて,野田ネットワーク研究会メーリングリストとしてリ・スタ ートさせる。
 8 月 第 2回研究会の開催
・ LAN研修 Linuxサーバによるネットワーク構築の実技研修を2日間実施してサーバ機として設定できるようにした。
 講師:千葉県市川市立第二中学校 林 教諭
 9 月 第 3回研究会の開催
・ Web作成の実技研修 野田ネットワーク研究会のWebを立ち上げるきっかけとした。
 講師:野田ネットワーク研究会会員 須田 教諭
 10月 第 4回研究会の開催
・ ネットデイ開催準備の研修 千葉県柏市立第五小学校ネットデイ事前工事に参加して,実際の工事内容や事前準備に必要な内容を研修した。
 11月 第 5回研究会の開催
・ 研究会のWeb立ち上げ
・ LAN実技研修 講師:千葉県柏市立中原小学校 梅津 教諭
・ ネットデイ開催準備の検討 野田市の小学校にインターネット接続回線(ADSL 一部ISDN)が12月に引かれることになり 1月中に岩木小学校でネットデイを開催することを決める。
 1 月 第 6回研究会の開催
・ 岩木小ネットデイ開催 詳細は次項を参照
 2 月 第 7回研究会の開催
・ 尾崎小学校ネットデイ開催
・ 研究の総括 これまでの活動状況の総括とこれからのネットデイ開催予定を検討する。

(3) 岩木小ネットデイの開催
 ネットデイを初めて開催するためには,最低限なにをすべきかを示す。
1) 学校内外にネットデイ開催の気運を高める
 これまでの野田ネットワーク研究会による活動とは別に,岩木小職員に校内 LAN敷設への意識を高める必要から,既存の職員室LAN利用を推進し,LAN利用率を4月当初は30%であったものを1月現在では80%へと引き上げた。また,夏季休業中には,千葉県情報教育センターや野田市教育委員会によるコンピュータ実技研修へ岩木小職員が積極的に参加するように勧めてきた。その結果,職員の日常会話にネットワークやコンピュータリテラシーに関する内容が毎日聞かれるようになってきた。
 また,ネットデイによる校内 LAN敷設が,野田市内では初めての試みになることから,今後の展開も考慮して,岩木小の保護者とPTA 役員のOBによって組織されている「岩木小おやじの会」にも協力いただけるように働きかけた。
 以上のような活動によって,学校・保護者・地域の三者連携によるネットデイ開催を準備した。

2) 校内LANの工事計画を立案する
 今回の岩木小ネットデイの場合,事前に LAN敷設工事に関わった経験を持っている人数の割合が全体の参加者の20%であった。こうした状況で詳細な計画案を立てて説明してもかえって「私にはできない」といった雰囲気が生まれてくる可能性があった。そこで,計画案としては以下のものだけにした。

○おおよその作業分担
 北校舎の横通線班
  野田ネットワーク研究会,5・6年生職員,桑原  記録者 石山先生
南校舎縦通線班
  岩木小PTAおやじの会,1〜4年生職員,野口先生  記録者 松本先生

○時程
 9:00〜9:20   作業開始前打合せ
 9:30       作業開始
 12:30頃      昼食(各作業内容によって適宜お取りください)
 18:00(予定)  作業終了
 ※休憩は適宜お取りください。湯茶等を家庭科室に準備しておきます。

 機材の調達は野田ネットワーク研究会メーリングリストによって各会員が持っているものを借用することにした。岩木小職員には脚立と充電式電動ドリルの 2点だけを持ってきてもらうようにした。

3) 実際の工事
 岩木小の校舎配置は以下のようになっている。
図 1 真上から見た校舎配置

図 1 真上から見た校舎配置
図 2  真横から見た校舎配置
図 2  真横から見た校舎配置

 LANケーブルの通線は次のようなった。
・基幹線(縦通線)総延長約300m
 南校舎 1階職員室〜校長室〜事務室〈HUB〉〜 2階視聴覚室〈HUB〉〜
 2階通路(天井)〜北校舎 2階言語教室〈HUB〉〜 3階 3年2組〈HUB〉〜
 4階プレイルーム〈HUB〉
・支線(横通線)総延長約200m
                  〜 6年プレイルーム〜プリンタ
                  〜 6年1組〜コンピュータ
                  〜 6年2組〜コンピュータ
 4階 5年プレイルーム〈HUB〉〜 6年3組〜コンピュータ
                  〜 5年1組〜コンピュータ
                  〜 5年2組〜コンピュータ
                  〜 5年3組〜コンピュータ
 工事としては2回実施している。
 1回目は「事前工事」として「岩木小PTAおやじの会」の中から 4人の方が参加し,岩木小職員が 3人加わった。
 実施した内容は,以下の通り。
・ 縦通線ができる配管を探す。
 校内LANによる縦通線は校舎内にある煙突用の配管を活用することが多い。しかし,岩木小の煙突用配管は各階でセパレートになっており,この配管を活用するには一度校舎の屋上へケーブルを送り,再度,下に降ろしていくしかない。これではケーブルが風雨によって劣化しやすくなってしまう。
 そこで,校舎設計時の図面から縦に伸ばせる別の配管を利用できるかどうかの検討から始めた。その結果,電話線用の配管とテレビのアンテナ線用配管が使えることが分かった。
・ 南校舎 1階職員室から 2階の視聴覚室まで通線できるように紐を通しておく。
 LANケーブルが事前工事の時点では業者から搬入されていなかったため,紐を通しておくことにした。当日はこの紐にケーブルを結びつけて引っ張ることで簡単に通線が完了できた。
 2回目が「ネットデイ」として行った作業である。以下にその時の様子を示す。
横通線の作業横通線の作業:天井のパネルは各教室の前ドアと教室の中間地点を外した。
前ドアの上を外した理由はケーブルを教室内に引き込み,コンピュータを教室前面に設置するためである。

 

 

 

 

縦通線作業縦通線作業:3階から4階へケーブルを上げる作業中。テレビアンテナ用配管に一度ワイヤを通して,その先端にケーブルを結びつけて引っ張った。

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2. 成果と課題

 野田市内にネットデイによる校内LAN敷設工事が初めて行われたことが第一の成果である。この事実が,今後,市内のネットワーク環境を構築する上で推進力となるだろう。また,市内に教職員によるネットデイを行える団体が生まれたことは第二の成果であると思う。今回のネットデイは極小規模であったことは否めない。しかし,学校と保護者と地域が連携して,校内LAN敷設の経験がほとんどない者たちが結集して工事を完了させた。全国の多数の地域では,今回の我々の通った道筋を踏まなければネットワーク環境構築は現実問題としてできないのではないかと思える。
 今後は,地域協力団体として「野田ネットワーク研究会」が単にネットデイのボランティア団体としてだけ機能するのではなく,教師として,ネットワーク環境を有効に活用する実践レベルの活動を志向していくことが必要になってくる。この側面を充実させることが本当の意味で「先生方による地域協力団体組織作り」となると思うからである。

ワンポイントアドバイス
 校内LAN敷設工事を実施する上で一番重要な点は,実はその学校の校長先生が校内LANを理解して頂けるように説明できることである。
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