E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
目次へ戻る総目次へ戻る

実践事例の報告  横浜市立大口台小学校

俳句プロジェクト
〜俳句作りを通して,地域の四季の移り変わり・人とのかかわりなどに目をむけよう〜

横浜市立大口台小学校  担当者:佐藤 幸江
ホームページ:http://www.netpro.ne.jp/~yukie/cec/
担当者メール:yukie@netpro.ne.jp
キーワード    小学校,6年生,国語,インターネット,電子掲示板,学校間交流

インターネット利用の意図
 一昨年度は「絵のリレー」の学校企画を行った。デザイナーの方に最初の絵を描いていただき,その絵の「形・色・テーマ」など気にいったところをイメージのもとにして自分の絵を描きあげ,インターネットで送り合った。小学生だけでなく高校生や専門家の方々との絵の交流を通じて,それぞれの絵のよさを感じ合ったり,自分たちのよさに気付いていったりした。この企画により,インターネットが他者の立場や考え方とふれあうチャンスを多くし,様々な価値観を学ぶ場となったと感じている。  
 そこで,今年度は,日本で生まれた文化である俳句に挑戦したいと考えた。本年度のプロジェクトは,一昨年度のコンセプトを継承しつつ,さらに参加する人や地域を増やし,継続して俳句作りを行なうことにより,地域による季節感の違いや人による感じ方の違い,さらには自分自身や地域を振り返り,よさを感じることができるようにし,それを表現に生かせるようにしたいと考えたのである。

目次へ戻る

1. 俳句っておもしろい!

(1)ねらい
 第6学年をむかえた子どもたちには,日常の会話や手紙など,人とのコミュニケーションの場が増え,的確で豊かな表現力が必要になってくる。しかし,子どもたちの実態は,語彙数も少なく,仲間たちだけで感覚的に分かり合ってしまうような雰囲気があるように感じている。
 そこで,まちの自然や生活の様子,学校生活の中で感じたことや観察したことなどを俳句にし,まわりの人やインターネットの電子掲示板を利用して読み合うことを通して,俳句で表現することの楽しさや人とコミュニケーションする楽しさを味わえる子どもたちを育てたいと考えた。
 ここでは,単に教科学習で終わることなく,子どもたちが継続して活動できるように 3つの学びの場を用意した。
・教 室…同年令の仲間・教室という閉じられた空間・決められた時間」の中
・インターネットの学校間交流プロジェクト「メディアキッズ」上
    …異年令の集団・バーチャルな空間・自由な時間
・オフ会…異年令の仲間・学校外の空間・自由な時間
(2)指導目標
・俳句作りを通して,日本語の表現の多様性を再認識するとともに,言語生活を豊かにする。
・作った俳句を発表することを通して,言語感覚を磨き,人とコミュニケーションすることを楽しむ。
(3)利用場面
 この学習においては,次のような学習場面でインターネットやコンピュータを活用している。
<1> 俳句を蓄積する=一人一台のコンピュータやWeb学級日誌=
一人一台のコンピュータ
本校のパソコンクラブが,「アインシュタインプロジェクト」から20台のノート型パソコンの寄贈を受けた。本学級がパソコンクラブの活動場所であるので,いつも教室の中にそれが置かれている。そこで,そのノート型パソコンを俳句帳代わりに使わせてもらっている。思い付いた俳句をどんどんフロッピーに蓄積していくのである。そのまま,メディアキッズにも送信することができるので,自由に「俳句作り→発表する」ということが楽しめる。
Web学級日誌
バディ・コミュニケーション(株)というところから提供されているコンテンツである。私たちが子どもの頃に紙ベースの学級日誌があったが,それをWeb上に再現したものである。日直が書くというルールなので,誰でもほぼ2週間に一回はパソコンに触るようになる。それを利用して,一日の記録のところに「今日の一句」を書くようにした。いつのまにか,たくさんの俳句が蓄積されていくことになし,いつでも友だちが作った俳句を読むことができる。

<2> オフラインの会でプレゼンテーション
近隣にある盲学校の理療祭で,本学級の俳句を発表させていただいた。(株)ジャストシステムの「はっぴょう名人」ソフトに俳句を貼っていき,プロジェクタを使って視力の弱い方々にも見ていただけるように大写しにした。また,全く目の見えない方々には,読んで俳句を紹介した。いらした方々から,俳句のできだけでなく,コンピュータの操作についても聞かれたり,すごいねと誉めていただいたりして,よい経験となった。

<3> 作った俳句を発表したり感想を出し合ったりする電子掲示板
インターネットの電子掲示板を利用した学校間交流プロジェクト「メディアキッズ」は,優しいインターフェイス・自由な雰囲気が,子どもたちに人気である。本学級の子どもたちは,5年生のときからこの掲示板を活用しているので,今回も何の抵抗もなくメディアキッズ上で自分の作った俳句を発表していた。インターネットによる時間・空間・世代を越えた交流が様々な違いを感じさせることとなり,それが刺激となって発想を豊かにしていくのではと考える。

(4)利用環境
<1> 使用機種
Power Macintosh(5210 1台,7100 2台)
Power Book 500 Senies 20台
Dyna Book Satellite1800 1台
<2> 周辺機器
プリンタ CANON BJS600  
デジタルカメラ SONY MAVICA
プロジェクタ EPSON
<3> 稼動環境

稼動環境

教室や廊下に分散配置。使いたいときに自由に使える環境作り。
<4> 利用ソフト
Web学級日誌/バディ・コミュニケーション(株)
はっぴょう名人/(株)ジャストシステム

目次へ戻る

2. 指導計画  <年間>
 

教室

メディアキッズ上

オフラインの会

6月
7月
8月
9月

俳句日記の取り組み
暑中見舞いで俳句作り
国語『どんな言葉』の学習

   

 

10月

11月
12月
1月

2月

秋の俳句作り

宮が瀬小に送る俳画作り

Web学級日誌今日の一句

正月の俳句作り
学級俳句カルタ大会
今後の予定
*海外の学校との交流
*専門家による添削

発表
高校生の絵手紙
継続的に発表

 

盲学校理療祭で発表
宮が瀬小文化祭

 

札幌雪まつりで一句

目次へ戻る

3. 学習の展開

<1> 学習のきっかけ作り
 まずは,同じ体験から出発したいと考えたので,「俳句日記」をつけることで,自分達の表現力の弱さに気付かせた。さらに,国語学習を通じて「言葉」には微妙なニュアンスの違いがあることや,人によって「言葉」をどのような場面で使うかが違っているということに気付かせた。
<2> 俳句に挑戦
 それらの気付きをもとに,生活の様子や学校生活で見つけたり感じたりすることは,みんな違うことを確認し,それを「俳句」の表現に生かしてみようということで,秋の俳句作りに取り組んだ。しかし,ただ作るだけでは長続きしないと感じた教師は,本校が5年前から参加しているインターネットを活用した学校間交流プロジェクトの「メディアキッズ」で作った俳句を発表しようと考え,子どもたちに提案した。子どもたちは,今までも「ソフトクリエータプロジェクト」や「札幌雪まつりプロジェクト」で「メディアキッズ」を活用したり,「アニメとゲームの部屋」などは休み時間に個人的にアクセスしたりするなどしてなじみがあるため,すぐにやってみようということになった。

学習活動

指導上の留意点

1,本時の学習内容を知る。

目と心のアンテナを働かせて

2,学校の周辺を歩いて,俳句の素材を集める。
3,短冊に作った俳句を書く。

4,メディアキッズ上で発信する。

5,今後も継続して俳句作りに取り組むことを確認する。

・前時の国語学習を想起させ,本時の学習意欲を高める。

,秋の俳句を作ってみよう!

・安全に留意する。
・できた短冊は,すぐに廊下に掲示し,互いに鑑賞しあえる環境を作っておく
・時間がない場合は,イキイキタイムや休み時間などを利用させる。
・どんな発見があり,それをどんな表現につながるか楽しみにしていることを話す。

<3> 起こったことは…
 神奈川県の宮が瀬小学校・和歌山大学附属小学校・ 福井県春江小学校・札幌新川高等学校などとの交流を通して,様々な学びが見られた。
 例えば,高校生から送られてきた「絵手紙」から,「俳画」を思い付いてそれを近隣にある盲学校の理療祭で発表させていただき誉められたことが,俳句作りに自信となった。また,はじめのうちは本校の子どもたちからの「俳句を見てください」という発信が多かったのが,だんだん他校の子どもたちも作って発信するようになると,地域による生活様式や気象現象のとらえの違いに,おもしろさを感じるようになった。

高校生の絵手紙
理療祭での発表
<高校生の絵手紙>
<理療祭での発表>

 さらに,電子掲示板上で知り合った子が,メディアキッズのイベントの「札幌雪まつりの雪像作り」で感動的な出会いがあるなどということがあり,その後の「メディアキッズ」での交流が盛り上がった。
 子どもたちが,休み時間などのちょっとした時間を利用して電子掲示板に送るには,15文字という分量も適当であったようで,メディアキッズ上では9月から1月までの間に,約100通のメールのやりとりが行なわれた。

 

ノートパソコンに向かう <ノートパソコンに向かう>

目次へ戻る

4. 成果と課題
 インターネットが,俳句を作る時に「読み手」を意識して作るという意欲や発想をかきたてる場になっただけでなく,「夏→秋→冬→春」と継続していく俳句を作っていく刺激ともなったことがうかがわれる。
秋の俳句

柿がなり さるかにばなし 思い出す
秋の夜 そらの宝石 美術館
西の空 燃えて沈むよ おてんとさま

  お正月の俳句  

お年玉 子どもの方が 金もちだ
大吉で 今年もいいこと あるのかな
初もうで 心の中も 入れ代わり

  雪まつりで一句  

さっぽろの 夜景にとけこむ 雪像だ
マイナス2℃ 雪像つくりで あつくなる

 今後は,日本に古くからある文化としての俳句そのものにも,興味をもつ子どもたちも出てくるであろう。そういう子どもたちには,インターネットを通じて俳人や俳句を愛する人々との交流などが実現できればと考えている。 また,俳句は日本のみではなく,海外の俳句人口は4百万人と言われているので,国際的な俳句の交流も行いたいと考えている。

ワンポイントアドバイス
表現力を磨く方法の1つに,定型詩である「俳句」はぴったりである。しかし,継続して作っていかないと,かなかその力は伸びていかない。「もっと,作ってみたい!」「もっとうまく表現したい!」と継続していく意欲を高めるのに,インターネットは大いに活用場面があると感じた。交流校や活用するホームページなどをうまく組み合わせていくと,大変おもしろい実践ができると思う。

参考URL
神奈川県立盲学校   http://www.edu.city.yokohama.jp/ss/yokomou/
メディアキッズ      http://www.mediakids.or.jp/
Web学級日誌      http://www.kids.buddy.gr.jp/

目次へ戻る

前のページへ次のページへ このページの先頭へ戻る


CEC