E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  取手市立取手第一中学校

国際交流を実現するための取手地区小中学校協働学習システムの整備
― 地域学習と国際交流学習の連携に向けた体制づくり ー

小学校・中学校,総合的な学習
取手市コンピュータ教育クラブ(取手市立取手第一中学校 理科教諭) 田鍋 文雄
連絡先E-mail fumiot@virgo.bekkoame.ne.jp
URL http://www.cect.net
キーワード 協働学習 電子掲示板 グループウエア TV会議

企画のねらい・目的
 地域の地理的特性と交通事情に学校間の交流が困難である取手地区各小中学校において,ほぼ全小中学校で実施されている「総合的な学習の時間」の「地域学習」に,ネット上の協働学習(掲示板・ML・BBS・テレビ会議など)の手法を取り入れることによって学習の効率化を図る。また,そのノウハウを蓄積することにより,「総合的な学習」に「国際交流」をリンクする手法を模索する。本年度はその基盤となるシステム整備を目的としている。
学校間交流の意図
 「総合的な学習の時間」の「地域学習」で取り上げている地域学習の学習内容には,小中学校の間での格差はほとんど感じられない。つまり,小中学校がお互いに知りえた情報を交換することにより,それぞれの地域の学習を取手地区全体に拡大することができる。
インターネット利用の意図

 自分たちの調査や取材で得た情報を整理したものを電子掲示板に発信し,またそこに返ってきた反応を分析することから,読み手のことを考えた表現手法を身につける。同時に,お互いの知りえた情報を交換することにより,自己の学習意欲を継続し,新たに問題意識を喚起するためのツールとして活用する。この活動においては,ホームページを情報収集の材料とせず,児童・生徒が自分たちで活動することにより収集した情報をいかに有効に活用するかに重点をおいている。
取手市コンピュータ教育クラブ活動の意図
 取手市には,以前から教育委員会指導課管轄のコンピュータ推進委員会があり,各小中学校の情報教育担当者が委員として活動している。しかしながら,この委員会の活動は教育委員会が各校の教育活動に関わるコンピュータ使用の全体像を掌握・管理するという機能しか果たしていなかった。全小中学校にコンピュータ環境が整備された平成8年度以降,委員会メンバーから「教育活動におけるコンピュータのより有効な活用法を研究したい。」という声があがり,市内教員有志の研究団体として発足した。以後,市内教員の希望者を対象とた研修会やメーリングリストによる意見交換を中心に活動,全校のインターネット接続が完了と同時に,「いかにインターネットを教育活動に活用するか」へとテーマは移行してきている。現在は,教育委員会のブレーン的な存在として活動している。

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実践事例

※実践事例の記述について
 本企画では,小中学校の協働学習を視野に入れたものである。実践事例には,実際に共同で授業をおこなった取手市立戸頭西小学校(以下,戸西小)と取手市立取手第一中学校(以下取手一中)のものを記述した。

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1. 単元について(取手一中)

1.1 単元名「ふと立ち止まって−小さな声を聞き取ろう。理想の町取手を目指して−」 
1.2 単元のねらい
 自分の生活する街について,興味関心をもって多面的に観察することにより,日常的に接しているものの中から自分の学習テーマを見出すことができる。(学習に対する創造的な態度)
 自分の設定した学習課題を解決するために必要な方法を見出し,見通しをもって学習テーマを追及することができる。(学習に対する主体的な態度)
 異なる考え方に触れることにより,自分の考え方を修正したり,あらたな学習テーマを見出すことができる。(柔軟なものの考え方)
 自分の学習テーマに対する追求の過程を分析し,場面に応じて必要な活動を見出すことができる。(学び方)
 自分の考えを適切な方法で表現し,正しく伝えることができる。  (表現の方法)
1.3 指導目標
 身近なところに学習テーマを見出しそれを追求することを通して,主体的に課題を追求する態度を身に付けさせる。
 多くの活動を通して,収集した資料や情報の信頼性を主体的に判断し,必要なものを取捨選択する態度を身に付けさせる。
 自分とは異なる立場にある人たちとのふれあいを通して,異なる文化や考え方を理解し受け入れることができる態度を身に付けさせる。

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2. 単元について(戸西小)

2.1 単元名「進め!取手大捜査線。作ろう!取手大辞典。」
2.2 単元のねらい
 取手という場所についての興味・関心の中から,自分の学習テーマを設定し,問題の解決や探求活動に主体的・創造的に取り組むことができる。(学習への主体的・創造的な態度)
 よりよく問題を解決していくために必要な方法を見つけ,見通しをもって,学習テーマを追求することができる。(学び方,ものの考え方)
2.3 指導目標
 一人一人が積極的に学習テーマを設定して問題解決に取り組むことを通して,学習への主体的・創造的な態度を身に付けさせると同時に,問題解決の方法を自ら選択し,見通しをもって学習テーマを追求するといった「学び方やものの考え方」をさらに育てたい。 
2.4 インターネットの利用場面
 基本的な考え方は取手一中と同様である。それ以外に,保護者と教職員をメンバーとする戸西小独自のメーリングリスト「たけのこメール」を活用した。
2.5 インターネットの利用環境
回線種類 INS64k 1回線(ダイヤルアップ・ルータ)
サーバー NTサーバー(Windows NT v.4.0 SP5,プロキシ・サーバ)
先生用クライアント Windows 95
生徒用クライアント Windows 95 10台
LAN回線 10/100 Base T

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3. 学習計画・指導案

3.1 学習計画の作成にあたって
 取手一中の学習計画は,1学年の「総合的な学習」のものである。この学習では,同一テーマを3年間継続することを前提とし,各学年ごとに下記の学習計画に基づくサイクルで実施できるように考慮した。戸西小の学習計画は,5学年の後期(11月から3月まで)の5ヶ月間のものである。各校それぞれの考え方で作成したものの中から,協働学習化できる活動を模索した。学習計画中の太字は協働学習化されたところである。
3.2 学習計画(取手一中・70時間扱い)

段階

活動内容(およその時数)

具体的な生徒の活動



学習のテーマ探し(3)

学習テーマの決定(1)
学習のグループ編成(1)

・小学校時の地域学習を振り返る。
・自宅付近の様子を友だちとくらべる。
・自分が興味を持ったテーマを絞り込む。
・類似テーマごとにグループを編成する。

調

学習方法についての学習(3)

基礎知識の学習(3)

・必要な手法について学習する。
(インタビュー,・アンケート調査など)
・書籍やパンフレットなどから,学習テーマに対する情報を集める。




地域での調査活動
実地踏査
聞き取り調査(6)

・地域で調査したい内容を絞り込む。
・調査する方法を決定し,活動計画を立てる。
・地域での調査活動を実施する。




調査活動のまとめ(5)

意見交換(2)

・グループ内で分担し,コンピュータを活用してまとめを行う。
・意見を求めたいものを,電子掲示板に掲示する。
・返された意見について考える。




他の地域との比較(3)

発表会(2)

意見交換(2)

協力校に向けて発信する。
協力校の意見について考え,自分たちの考えを修正する。
・学習を総括する意味で,自分たちの学習の成果を発表する。
・発表に対する意見を分析する。




学習全体の振り返り(2)

次の活動に向けて(2)

・学習の過程を振り返り,探求の過程について再度考える。
・次の学習に向けて,新たな興味関心を探る。

3.3 学習計画(戸西小・50時間扱い)

段階

活動内容(時数)

子どもたちの活動



学習テーマ探し(3)

題材名の決定(1)

・たけの子マップ(ウェビング)を作成することによって題材に触れ,自分の学習テーマ探しをする。
・友だちや教師と話し合い,題材名を決定する。




仮の学習テーマの設定(1)
グループづくり(1)
学習テーマの設定(2)

学習計画づくり(6)

・自分の仮の学習テーマを設定する。
・同質の学習テーマを設定した友だちとグループをつくる。
・グループ内でお互いの仮の学習テーマを比べたり,意見の交換を行い,最終的な自分の学習テーマを設定する。
・問題解決に必要な方法を見つけ,活動計画を立 てる。





学習テーマの追及(9)
授業研究実施

中間発表会とその準備(7)

学習テーマの追及(9)

・活動計画に基づいて調査活動を行う。
(電子掲示板による情報収集・アンケート)
(現地調査)
(ホームページによる情報収集)
・これまでの成果をまとめ,発表する。
意見の交換を通して自分の学習を振り返り,活動計画を修正し,再度調査活動を行う。




発表会の準備(6)

たけの子発表会(2)

まとめ(3)

・調査した結果やわかったこと,新しい問題意識などをまとめる。
・友だちや保護者にたけの子タイムで追求してきたことを発表する。
・今年1年のたけの子タイムの活動をまとめる。

3.4 学習指導案(展開部分・一部抜粋)(授業研究時・戸西小)

コンピュータ室(T1)

学習テーマ

・他校の子ども,保護者との交流(電子掲示板)
・市民へのアンケート調査の集計
☆前時に行った取手一中とのテレビ会議の録画も活用させたい。

取手市の自慢の食べ物を調べよう。

学習テーマ

・他校の子ども,保護者との交流(電子掲示板)
・取手警察署員から聞いた「パーク・アンド・ライド」という言葉の意味をホームページで調べる。
☆参考となるホームページのURLを学習リンク集に登録しておく。

ふれあい道路の渋滞マップをつくろう。

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4. 学習の展開(授業研究時)

4.1 戸西小と取手一中とのテレビ会議
戸西小と取手一中とのテレビ会議 取手の名物である「奈良漬け」をテーマとし,その学習をしている戸西小の児童から生産している現場で実際に聞き取り調査をした取手一中の生徒へ質問するという形でテレビ会議が進行した。「自分たちの地域でのアンケート調査の中では,取手の名物で第1位は奈良漬だった。」という報告は中学生については有用な情報であり,また「奈良漬を作っているところには酒蔵があった。」という報告は,小学生の活動方針を大きく左右した。
 戸西小の生徒にとって,テレビ会議は初めてで新鮮な驚きを感じていたようであった。しかし,中学校1年生を相手にしても,自分たちの学習活動の報告は堂々たるものであった。

4.2 電子掲示板による子どもたちの意見交換
 市内全小中学校に共通して導入されているグループウエア(StudyNote)は,メーリングリストとして同一メールを参加全校に配信するという形で,インターネット上の電子掲示板とは異なる電子掲示板をクライアント機に提供してくれる。本年度の企画実施会し直後にコンピュータクラブで取得したドメイン(cect.net)上でメーリングリストを作成し,市内全校をメンバーとした電子掲示板「とりで広場」を子どもたちに開放した。
 地域についての学習を展開している学校がほとんどであるため,ひとつの掲示が行われると,その直後に多くの反応が返ってきていた。地域的にさまざまな条件の学校間では,まったく違った情報が生徒によって収集されており,学年の格差を心配していた教師側にとっては,「うれしい誤算」となった。現在,掲示板上では,「取手市のイメージ」「取手の交通事情」「取手の名前の由来となった砦」についての活発な意見や情報交換が行われている。本企画のテーマとなった小中学校の協働学習が,その姿を現してきている。

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5. 成果と課題

5.1 小中学校協働学習について
  取手市は,市としての教育情報センターを持っていないが,小中学校をインターネットで結んだ協働学習が,共通のグループウエアの活用による電子掲示板による情報交換という形で実現することができた。ただし,これを実現するために取得したドメインの維持運営のあり方が,今後に向けての最大の課題としてのこった。
5.2 地域学習から国際交流へ
 地域学習は「総合的な学習」のなかでは大変取り上げやすい題材である。しかしながら,単独校だけで長い間継続すると,地域の素材も底をついてしまう恐れがある。これを取り除くものが,近くの学校との交流である。自分の課題についての追求が進んでいき,多くの意見や情報を交換し合っていくと,子どもたちの興味は大きく日本全国・世界各国へと広がっていくことを,今回の実践で感じ取ることができた。そこで最大のネックとなるのが,教師の意識がそこに向かないことである。しかし,地道な実践を続けることにより,近い将来,これが「子どもたちのために」と取り払われることと思われる。この企画を実践してみて,少なくとも取手市内にはその息吹を感じ取ることができた。これが,この企画での最大の収穫であった。

☆ワンポイント・アドバイス
 このような協働学習のシステムは,グループウエアを持たなくても,CGIの知識があれば比較的簡単に実現することができる。また,CGIの知識がなくてもフリーウエアを用いて簡単に作ることができる。
 あまり興味を示さない先生であっても,実践することで子どもたちの真剣なまなざしを見れば,やってみようという勇気がわいてくるものである。
 「インターネットは人と人をつなぐひとつのツールであり,学習のすべてではない。ただし,これは時差や国境・年齢を感じさせない有効な教育用ツールである。」と感じた。

☆参加・協力校等
授業研究実践校 取手市立取手第一中学校,取手市立戸頭西小学校
指導案執筆者  取手市立戸頭西小学校 教諭 桜井一成,石塚康英
授業実践協力校 取手市立取手第二中学校,取手市立戸頭東小学校,取手市立寺原小学校
取手市立小文間小学校,取手市立取手小学校
授業研究協力  取手市教育委員会,シャープシステムプロダクツ
掲示板用メーリングリスト参加校 取手市立の全ての小中学校
参考URL       http://www.cect.net/netcon.html

 
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