E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  新潟県長岡市立表町小学校

学校と地域の歴史をつなぎ,未来と世界とを結ぶFuture Schoolの実践

小学校6年・総合的な学習
新潟県長岡市立表町小学校
教諭 篠田 賢一
shinoda@ginzado.ne.jp
http://www.kome100.ne.jp/omotemachi-es/
キーワード 未来の学校,NetMeeting,交流学習,共同学習,地域学習

インターネット利用の意図
 学校は地域の力に支えられている。当校は今年度創立130周年を迎え,学校の歴史を振り返る貴重な機会である。そこで,地域の歴史と学校との歴史の関連や時代背景を地域の方と対話を通し取材し,情報機器を使ってまとめ,データベース化する。
 これをベースに,過去2年間交流してきた山形県の鳥海小学校やインドネシアのジャカルタ日本人学校とインターネットを利用しての共同交流学習を行う。過去の出来事や伝統から未来に目を向け,学校の枠や国を越えた未来の学校「Future School」を創造したいと考えた。
 また,インターネットを中心にさまざまな情報メディアを活用しながら,学校と地域のあり方,他校のよさ,海外との交流から,将来の学校像を提案する。

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1. 単元名 「未来の学校をつくろう」

(1) 授業のねらい
○ 学校の歴史に対して興味をもち,その時代背景や地域の出来事とのかかわりを自ら考え,調べようとする力 【問題発見の力】
○ 学校と地域の歴史のかかわりをもとに,自分が将来どんな学校にしていきたいのかを他者や他校と交流しながら考える力 【問題解決の力】
○ 調べ,まとめたものを下級生,地域の方,他校に分かりやすく伝えるために,情報機器の特性を考え自ら表現する力 【自己表出の力】
(2) 利用場面
 最終的には全ての活動に対して,もっとも効果的な情報メディアを子供が選択できるようにする。どのような情報メディアがどういった特性をもっているかを教師の方で指導し,ある程度全員が使えるようになってから自由に選択させる。
 特に,インターネットにおいては,コミュニケーションツールと検索ツールの2つに焦点を当てるようにし,使えないときのバックアップ体制と全ての情報が正しいとは限らないという前提で使うように指導する。
(3) 利用環境
児童用Window2000パソコン20台,教師用Window2000パソコン1台,
CATVケーブル1.5Mbps,液晶プロジェクタ1台,LANケーブル100m(NetMeeting用)
USBCCDカメラ,スピーカー

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2. 指導計画
2.1 指導計画(全70時間


 



活 動 内 容
 

情報メディアの利用場面
 
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○ 学校に残っている写真や資料を調べて,当時の学校の様子を想像する。保護者や地域の方にも取材する。
 ・ビデオに録画しよう。
 ・100周年のときはどうだったのかな。
 
○ 大まかな年ごとに整理し,学校と地域の様子を結びつけ,現在と比較し,関連性を探る。
 ・現在の様子はデジタルカメラで撮影しよう。

○ 他校の友達に自分たちの活動を紹介し,お互いの活動に対して協力しあう。
 ・自分CMや自分たちの活動CM紹介
 ・他校に協力のお願い
       
○ 全校児童や地域他校に,自分たちの活動を紹介する。
 ・全校には,紙芝居やパンフレットにしよう。









○ 自分の歴史と学校の歴史のつながりを考える。
 ・ぼくの成長物語や学校誕生物語をつくってみよう。
 ・親の願いと地域の願い。

○ 他校との交流を通して,他校の誕生の様子を知り,今の学校と自分のつながりを考える。
 ・表町小は歴史ある学校なんだ。
 ・表町小は自学の精神。ジャカルタ日本人学校は国際人をめざしているんだ。
 ・ジャカルタ日本人学校は日本の学校とどんなちがいがあるのかな。








○ 将来社会に役立つ大人になるために,今必要なことは何かを議論する。
 ・他の学校の友達とメールやテレビ会議で話し合おう。

○ そのために今の学校に必要なものを考える
 ・学校同士がもっと気軽に話し合えるといろいろな考えが聞けていいなあ。
 ・ぼくたちにはいろんな可能性があるんだ。

○ 20年後の学校や自分を考え,話し合う。
 ・自分たちの考えた未来の学校をホームページで紹介しよう。
 ・20年後,自分はこんなことをして社会に役立っていきたい。
 ・山の学校はこれからも残していきたい。
 ・学校のデザインもしようかな。
 ・ネット上に学校を創ろう。

ホームページ上で,必要な情報をTOPページに掲載し,協力を求める。



デジタルカメラ,スキャナを使い,データをデジタル化する。また画像を修正する。

NetMeetingで自己紹介・学校紹介を行う。
メールで打ち合わせをし,個人データは郵送する。

ホームページを作成する。
できあがったものは,交流相手校に紹介し,意見をもらう。












自分が経験した学校行事を中心に映像にまとめ,ホームページで紹介する。
卒業した先輩の話をビデオに撮影し,要点をまとめる。


ジャカルタから送られてきた米をもとに,調理実習を行い,すぐに動画としてホームページに載せ,雰囲気を伝える。



自分一人で地域の人にプレゼンテーションする内容と手段を考える。


様々なメディアを使って,最も効果的な方法でプレゼンテーションをする。

2.2 今までの活動
今までの活動 今年度最高学年として130周年を迎える節目の年である。そこで,過去から現在,未来へと学校と自分をみつめる活動をしていく。
 まずは地域の中にある学校という観点で地域と学校の歴史のかかわりをさぐっていきたい。次に自分と学校の歴史をかかわらせ,保護者や地域の願いを考え,今の自分と学校を見つめる。そして最後は未来の学校と自分に夢をもち,今必要なものは何かを友達や他校と交流しながら提案していく。
 今年度は,個人間交流に焦点をあて,他校の友達と1対1の交流に重点をおく。相手の考えを受け入れながら,自分の考えを積極的に表現できる子供にしていきたい。
 交流対象校は,山形県鳥海小学校,ジャカルタ日本人学校,加茂南小学校である。

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3. 学習の展開(インターネットを活用した授業場面)(13/70時間)

(1) ねらい
・自分のCMを友達とかかわり合いながらつくることを通し,自分の良さを発見する。
・自分自身のことを端的にまとめ,他者に対して効果的に紹介する方法を考える。
・他者の考えや発言を自分なりに受け止め,はっきりと自分の考えを表現する。
(2) 展開の構想
 今年度は一人一人の課題設定を大事にしたいことから,個人同士の交流を中心にする。
 今までは電子メールやビデオ,DVDなどの間接的な手段として交流していたので,今回は今後継続的に行う個人間の交流の最初であることから,できるだけ直接的な交流によって自分を表現させたいと考えた。
 そこで,NetMeetingと呼ばれるテレビ会議ソフトを使い自己PRをする。相手校はジャカルタ日本人学校である。
 事前に子供たちには1分程度の自分CMを考えているが,本時ではさらに時間制限を設け,30秒程度で印象に残るような自己紹介を指示する。そのときに友達のアドバイスを参考にし,自分自身のよさを焦点化させたい。また,NetMeetingの情報機器の特性を考え,あまりはっきりと映らないことや大きな声でないと音が届かないことなどをおさえ,それに対応した活動になるように働きかける。
 また,相手校のCMに対して,一人ずつ自分なりの考えや意見を述べる機会も設け,交流のマナーを守りながらもはっきりと自分の考えを述べる力を付けるようにする。
 そして,友達同士で本時の交流を振り返り,自分の表現方法はどうだったか,また相手校の表現方法でよかったところなどを話し合い,様々な状況での自己紹介のあり方を考えるようにする。
(3) 展開

学習活動・子供の意識・思考
○教師の支援 ●評価

1 今日の学習内容を伝える。
 ○ジャカルタ日本人学校の友達と自分CM発表会をしよう。

2 発表内容を精選する。
 ○野球が好きだから野球のことだけを伝えよう。
 ○ジャカルタ日本人学校の友達に名前を覚えてもらおう
 ○自分の作品を見せるだけにしようかな。

3 テレビ会議で自分CMを発表する。
 ○大きな声で発表しよう。
 ○自分のことを分かってもらえたかな。

4 ジャカルタ日本人学校のCMを聞く。
 ○メモをしながら聞こうかな。
 ○あの子の発表はおもしろいなあ。

5 両校の総合的な学習の内容を紹介する。
 ○表町小は,130周年の歴史を振り返る活動をしています。
 ○ジャカルタ日本人学校は,米作りの活動をしています。

6 自分発表を振り返る。
 ○ジャカルタ日本人学校の友達は自分の夢をしっかりもっているんだなあ。

○自分CM発表の目的を伝える


○1分→30秒の時間設定で発表しなければならない状況をつくる。
●友達の協力を得ながら,自分のよさを焦点化することがで きたか。
○もしテレビ会議ができないときはすぐにビデオ撮影に切り替える。
●発表を聞きながら自分なりの考えや感想を発表できるか。
●相手の内容に対して,自分の気持ちを素直に表現することができたか。













●自分の発表のよかったことや改善点を考えたか。


●友達の発表のよさを次回に活用しようとしているか。
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4. 成果と課題

(1) 情報メディアによる表現方法の多様化と仲間意識の向上
 過去2年間の交流学習の経験から,すでに子供たち自身がNetMeetingによるテレビ会議の有効性を認識していた。だからこそ,ジャカルタ日本人学校や山形県の鳥海小学校とのテレビ会議で,各自がパフォーマンスや特技を披露するなどインターネットでの間接交流においても多種多様な表現方法で,自分をアピールする行動へと発展することができたのである。また,メール,ホームページ,手紙,ビデオなどその都度どの手段をつかって相手に伝えるのがいいのかを子供たちが判断し,行動できるようになり,以前よりも頻繁に交流することができるようになった。
 このように,直接会わなくてもインターネットによるリアルな交流で,子供同士が積極的に自己表現し,相手とかかわろうとすることが分かった。
(2) イベントから日常へのコミュニケーションの変化
 従来の交流学習は,子供たちにとって一つ一つのやりとりがイベントとしての単発的な活動として意識され交流を継続することが難しかったことがある。2,3か校の学校との交流で交流対象を明確化でき,「自分たちの未来の学校をプレゼンしよう」と常に相手を意識した交流が可能となった。このように相手を明確化することにより,インターネットでも日常的なコミュニケーションが可能であることが分かった。
(3) 個人内の振り返りとDVDでの思い出作り
 今までは,発信した情報を振り返ることがほとんどなかった。今回「未来にも残したい学校のあり方」という明確なテーマを一人一人がもっていたため,積極的に他校の友達から「ホームページの印象や工夫した方がいい点はありませんか」などとメールでアンケートをお願いする場面も見られた。このように,自分の情報の価値を高めるために,常に自分の情報を振り返える必要性があることを子供たちが認識してきたのである。
 また,ホームページと映像中心で記録を残してきたことで,DVDで高画質な状態の思い出として残すことができた。
 今後の課題として残るのは,成果が数値的な形で表すのが難しかったことがある。子供たちの内面の変化,成長の記録についてもできるだけ,数値的なデータで表されるような客観的資料による考察が必要である。

ワンポイントアドバイス
・子供同士,教師同士が協力しあえる交流学習は,2,3か校で行った方がよい。
・NetMeetingなど微妙な条件で動くソフトは,単純なシステムとバックアップ体制を。
・DVD-Rへの書き出しがうまくいかないときは,システムの再インストールが有効。
・活動ごとの子供の評価を数値的な方法で行うと変容のグラフ化ができる。
・時と場と気持ちによりメディアを選択し,活用できる力をつけることが大切

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