E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  山梨大学教育人間科学部附属小学校

手作りバーチャルミュージアムを活用した教科・総合学習の展開

小学校4・5年生 社会科 図工科 総合的学習の時間
山梨大学教育人間科学部附属小学校
久保田勲 大村一也
kubota@aogiri.agr.yamanashi.ac.jp
キーワード 小学校,4・5年生,社会,図工科,総合的学習の時間「パソコンタイム」,
バーチャルミュージアム,Webページづくり,コミュニケーション,交流学

インターネット利用の意図
 本校では,情報機器のうち特にコンピュータの活用目的として,次の2点について重点化を図っている。
○表現ツールとしての活用:教科や総合学習の時間に獲得した学習成果や思いを,Webページとして保存する。
○コミュニケーションツールとしての活用:Webページを公開して,電子メールやテレビ会議,ネットミーティングなど,インターネットを通して学習を深化させる。
 そこで,図工科や社会科の時間に生じた思いや学習成果をWeb保存し,それをバーチャルミュージアムという形にまとめていく。このミュージアムを活用することで,授業時間をこえた活動が可能になり,多様な意見や感想を得て,ものの見方,考え方を深めていくことができると考える。

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1. 「手作りバーチャルミュージアム」

(1) 題材について

(a)実践例1「バーチャル美術館 自画像」<5年生図工科>設定の理由とねらい
<設定の理由>
 平成14年度から完全実施の新学習指導要領では,独立した鑑賞の時間が全学年でもてるようになった。独立した鑑賞の時間では,どんな作品を選定したらいいのか,鑑賞する作品の準備や,スライドやプロジェクターなどの機器準備に大変な労力と時間がかかる。そのため,なかなか独立した鑑賞の時間がもてないでいる実態があるのではないかと思う。そこで,コンピュータを活用して子どもたちが表現した作品をweb化し,それを図画工作科の独立した鑑賞の時間に利用することが有効であると考えた。webページ「バーチャル美術館 自画像」を使って自分たちの作品を公開し,それを同じ学級,他学級,他学年,他校の子どもたちと見合い,電子メールを使って感想の交流をする。「バーチャル美術館」を使いたくさんの作品をみて,他者と関わることで,子どもたちは,作品に対する見方や感じ方を深めることができると考えている。
 「バーチャル美術館 自画像」をweb化するにあたり,子どもたちが図工科の時間に描いた自画像をデジタルカメラで撮影しておく。自画像なので描いた本人と出来上がった自画像とを比べられるように本人と一緒に撮影するようにする。撮影した画像をワープロソフト(Microsoft社のWord2000)を活用して,デジタルカメラで撮影した画像を貼り付けて,それにがんばったことや出来上がった感想を入れてweb保存する。また,webページには,メールボックスをつけてメールでの感想が簡単に行えるようにしておく。Ccとして担任のe-mailを付加するようにする。描いた本人の顔がwebページに出てしまうので,描いた本人の名前はわからないようにする。また,保護者に事前にこのことの承諾を得ておく。

<ねらい>
○「バーチャル美術館 自画像」をweb化することにより,子どもたちの情報活用能力を高める。
○「バーチャル美術館」にある造形作品を鑑賞し,メールを使って交流することで,作品に対する見方を深める。

(b)実践例2「バーチャル郷土資料館」<4年生社会科>設定の理由とねらい

<設定の理由>
  自分たちのまちに残っている家具や道具などの移り変わりを調べWebページ(絵年表)にまとめる活動を通して,まちの人々の生活は,大きく変化してきたことを理解する。また,その時代に生きた人々の想いにふれ,まちの今後の発展に関心をもつようにする。
 そこで,子どもたちには,古くから残されている道具を中心に,自分たちの生活の変化に関する資料を探してきてもらうことにする。
 調べる内容は,次の通りとする。その他にもつけたしたいことがあったら調べてかまわない。
・道具の名前
・どこで見つけたか
・いつごろ使われていたか
・どうやってつかうか
・今の道具とくらべてどうか
・その他
 子どもたちが集めた資料を,時代や種類ごとに仲間分けをしたり,実際にその道具などを使った体験活動をしたりしながら学習を進めていく。
 できたら,みんなでコンピュータを活用して,インターネット上に資料館をつくり,多くの小学生に訪れてもらい,意見交流をしたり,自分たちだけでは集められなかった道具や,ある地方特有の道具などについて,交流校にも資料をだしてもらったりして,学習を深めていく。
  子どもたちには,本単元が始まってから,もう少しくわしく調べたくなったとき,どのようにすれば取材できるか事前に考えさせる。自分の家や近くのおじいちゃんの家などにあるものなら,すぐに調べ直すことができる。しかし,遠くの親せきの家にあったものや,旅行先の資料館にあったものなどは,もう一度見に行くことはなかなかできない。そこで,あらためて見学することが難しいものは,できるだけ詳しく絵にかいたり,写真やビデオにおさめておいたりするように勧める。学校でまとめていてわからなくなったら,どこへどのように問い合わせをすれば教えてくれるかも調べておくように伝える。
  もし可能であるならば,子どもたちが,その道具の前で説明している様子を,家の人にビデオにおさめてもらうこともよい。ビデオは動画配信できるように1〜2分くらいにまとめたい。

<ねらい>
○「バーチャル郷土資料館」をweb化することにより,子どもたちの情報活用能力を高める。
○「バーチャル郷土資料館」を訪れて,メールを使って交流することで,人々の生活の変化について見方を深める。

(2) コンピュータ利用環境と利用場面
  本校では,約120台のWindowsマシーン,Mac OSマシーンがすべてネットワークで接続されている。内40台が情報教室に,20台が視聴覚室に集中配置してある。他は,教室,特別教室,教官室に分散配置してある。また,ノート型Windowsマシーン15台(ノート型)については,無線LANを利用し,校舎内,敷地内で自由にネットワーク利用ができる環境にある。
  電子メールについては,教官と3年生以上のすべての子どもたちが個人アカウントをもち,自由にメール交流ができる。
 本実践では,主に週1時間,総合的な学習の時間として設定された「パソコンタイム」の時間を活用してwebページづくりに取り組み,各教科の時間枠の中で,メール交流などを行っていく。「パソコンタイム」におけるwebページづくりでは,基本的にコンピュータにバンドルされているワープロソフトを活用して,入力されたテキストに,デジカメで撮影した画像やスキャナーで取り込んだ絵などを貼り付けていく。webページには,必ずメールボックスを用意して,メールを使ってのコミュニケーションが簡単にできるしかけにする。

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2. 指導計画
(1)実践例1「バーチャル美術館 自画像」の指導計画(総時数12時間)

過程

子どもの活動の流れ

活動の様子


1.図画工作科の授業での表現

・自画像の表現(5年2組)


2.webページづくり

・作品をデジタルカメラで撮影し,それをワープロソフトに貼り付けて,自分が工夫したことやがんばったことを付け加えてwebページを作成。
・自分のページの最後には,メールボックスをつけた。(Ccとして担任のアドレスも添えた。)


3.バーチャル美術館での鑑賞
<1> 自分の学級の作品で鑑賞
<2> 他学級の作品の鑑賞
<3> 他校の作品の鑑賞

・電子メールを使って感想の交流を行った。
・授業時間だけでなく休み時間なども使って感想の交流をした子どももいる。

 

 

・自分たちが感想のメールを出すだけでなく,他学級や他校の子どもたちからの感想も読んだ。

(2)実践例2「バーチャル郷土資料館」の指導計画(総時数13時間)

学習活動と内容

1.オリエンテーション<1h>
(1)1枚の古写真から,今と昔のまちのちがいに興味をもつ。   
(2)古い道具を調べてみよう
(3)(長期休業中に調べた資料の確認をする。→何を調べたか?)

2.「しちりん」を使うことによって,昔の人の苦労や工夫について考える。話し合う。<3h>
(1)「しちりん」でモチを焼く体験をする。(2h)
(2)「しちりん」を使ってみての感想を話し合う。(1h)
○火をおこすのがとてもむずかしい。昔の人は毎日使っていて大変。
○火の加減を小さな空気取り入れ口で調節するには,こつがあるようだ。
○「しちりん」は持ち運びに便利で,炭をとっておけばまた,使える。

3.調べてきた道具を仲間分けして,その移り変わりについて知る。<7h>
(1)どのように分けるか話し合う。(1h)
○時代別
○道具別

4.グループごとに,その移り変わりをwebページにまとめよう。(3h)
○もりこむ内容?   
○使いやすいところや使いにくいところは?
・人々の知恵や工夫
・人々の願い
○レイアウトと作成分担

5.作成・・・・・・バーチャル郷土資料館をつくろう(3h)
○スキャナーなどを使って,資料のデジタルデータ化を行う
○ワープロソフトをつかってデータを編集する。
○メールボックス作成する。
○web保存をする。

6.バーチャル郷土資料館を訪れて,人々の生活の変化や人々の願いについて理解を深める。<2h>
(1)担当資料の紹介と他の資料の読み取り
(2)人びとが地域の変化やくらしの発展を願ってきていることに気づく。=ふりかえりシート

7.webに公開し,他校の人と交流をしよう。
<パソコンタイムや休み時間を使ってチェック>

8.バーチャル郷土資料館を利用してもらおう。
 他校の仲間に資料を提供してもらい,より中身の充実した資料館にしよう。

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3. 学習の展開

実際のバーチャルミュージアムの例 
URL http://133.23.71.201/kyoudo/shiryoukan.htm ←「バーチャル郷土資料館」

子どもがつくった「バーチャル美術館」
仲間におくったメールの一例
子どもがつくった「バーチャル美術館」
仲間におくったメールの一例
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4. 成果と課題

 ミュージアムづくりを通して,学習成果や思いをweb化することの有用性を得た。
○社会科学習などで今まで行われてきた新聞づくりやパンフレットづくりの活動にあわせて,子どもたちの表現方法の選択肢が増えた。
○発表時間や掲示スペースを気にすることなく仲間とコミュニケーションを図ることができるようになった。
○学級を越えた交流が可能になり,様々な人から多様な意見や感想をもらうことができるようになった。
○作成したものをデジタルデータとして,手軽にコンパクトに長期保存することができる。また,既存データへ挿入,削除が可能になり,作成内容の高まりが期待できる。
 今後は,これまでの成果をふまえ,さらなるコンピュータ活用をめざしていく。Web・電子メール・テレビ会議システム・ネットミーティングなどを使い分けながら,子どもの目でとらえた事象について,VTR画像など動画を配し,意見交換を行い,コミュニケーションの輪を広め高めていくコラボレーション活動を展開していきたい。

ワンポイントアドバイス
○個々のwebページにメールボタンをつけることで,コミュニケーションがすすむ。
○カーボンコピーを利用して,指導教師もメール交流の輪に入り,評価に役立てる。

参考文献
本校「平成13年度初等教育公開研究会研究紀要」(2002)pp128〜135

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