E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  福井市明倫中学校

ネットワークカメラによるリアル映像の教育活動への利用
− インターネットライブ放送と教育利用 −

福井市明倫中学校
宇野秀夫・小川一成・佐々木浩哉・山岡美貴子
uno@fu-meiri.hakusan.ed.jp
キーワード ライブ中継 放送 ネットワークカメラ

インターネット利用の意図
 昨今のインターネットの普及に伴い,ほとんどの学校でWebを公開している。それに伴い,保護者・卒業生からのE-mailによる問い合わせや激励の便りも増えてきて,インターネットを通して学校と保護者,地域との連携が深められている。インターネットの活用が学校の教育活動の中に根付きつつある。
 一方,社会的状況に目を向けると,インターネットの回線の高速化が順調に進んでおり,より大きなデータ容量を持つ動画データやリアル映像もネットから配信されるようになってきた。また,IT技術の発達に伴い,インターネット=コンピュータネットワークという考えから,コンピュータがなくてもネットワークにリンクできるプリンタ,ビデオといった情報機器の開発にみられるように,インターネットはより広範囲に進化したネットワークへと変貌しつつある。本企画で実践活用するネットワークカメラの利用もネットワークの進化の一環に上げられる。そして,ネットワークカメラの利用としては天気共同観測の実践のように,定点観測によるインターネットライブ中継の利用も現在行われている。 
 本校では以上のようなネットワークの進化に伴い,リアル映像をより教育活動に生かし,インターネットライブ中継をより広範囲に行い,教育活動への利用を深めた。

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はじめに

ライブ中継を中心にした本研究を行うにあたり,次の3つの実践を行った。
実践例1  学校祭をライブ中継しよう
実践例2  素材の加工法を知ろう
実践例3  学校のライブスポットを紹介しよう

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1. 実践例1  学校祭をライブ中継しよう

(1) ねらい
 本校では地域の人々に開かれた学校づくりをめざして,学校開放週間,地域の人材ボランティアの活用など,様々な教育活動を展開している。学校の教育活動への理解と家庭や地域との連携を図っている。そこで,家庭や地域に公開している本校の教育活動である学校祭をネットワーク上で公開することとした。ネットワーク上で公開することで,学校と家庭,地域とのよりいっそうの連携を深めたいと考えた。
(2) 指導目標
 地域の人々や保護者へ学校祭の様子をWeb上でライブ中継をすることによって,学校の教育活動への理解を深めることができる。
(3) 利用場面
<1> ブラウザの検索機能を用いて,ライブ中継をしているWebを検索し,ライブ中継がどのようなものかを理解する。
<2> 学校祭やPTA講演会など,地域の方々への参加を促している教育活動を,ネットワークカメラを活用してライブ中継を行う。
(4) 利用環境

利用環境

ネットワークカメラ AXIS2001
NEC PC-VL800R87VALUESTALR-L

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2. 指導計画

第1次 ライブ中継って?                1時間
第2次 ライブ中継の準備をしよう           3時間
第3次 学校祭をインターネットでライブ中継しよう 5時間

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3. 学習の展開

(1) 第1次  ライブ中継って何?
 生徒達に「ライブ中継って知っている?」という疑問を投げかけた。インターネットを学習して間もない生徒達にとって,ライブ中継はもちろんなじみのない言葉である。そこで,インターネットの検索を活用して,ライブ中継がどのようなものかを調べさせた。夜空の天体観測,動物や植物の映像など,Web上から様々な情報を発見した。その映像からライブ中継とはどのようなものかを理解した。
(2) 第2次  ライブ中継の準備をしよう
 放送部の生徒達にとって,ライブ中継をする場合,どのような情報を公開するのか,どのような場所で行うのか,どのようなシステムが必要なのかを考える必要がある。特に,中継をしようとする場合,場所が重要になってくる。そこで,無線LANによる接続を行い,ライブ中継が行われる環境を整えた。
(3) 第3次  学校祭をライブ中継をしよう
 個人のプライバシーが保護され,地域に公開するのに相応しい教育活動が望まれる。学年の生徒一人一人が頑張ってつくりあげた学年発表,吹奏楽部の演奏など,放送部の生徒達が内容を判断し,ライブ中継を行う環境を整えた。それをもとに,学校祭の様子をビデオで記録しながら,ライブ中継を行った。

図1 ライブ映像を撮影している所
図2 学校祭のライブ中継
<図1 ライブ映像を撮影している所>
<図2 学校祭のライブ中継>
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4. 成果と課題

 放送部の生徒達にとってライブ中継することで,意欲的に活動するきっかけになったりメディアリテラシーを育成したりすることができた。また,学校の教育活動を地域に公開することで,より深くプライバシーを意識したり学校の教育活動を地域の方々へ理解を深める一つの手段となった。
 しかし,技術的な問題とプライバシーの保護を優先し,テストケースとして実施したため,音声はなく映像だけをWeb上に中継した。保護者や地域の方々にホームページ以外では,あらかじめライブ中継の予告をしていなかったために,十分に鑑賞してもらうことができなかった。

ワンポイントアドバイス

ネットワークによっては,セキュリティーの問題からネットワークカメラの映像をWebサーバーに送信できないようにしている場合がある。Web等のシステム管理者に許可を得て行う必要がある。
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1. 実践例2  技術・家庭科 素材の加工法を知ろう

(1) ねらい
 従来の技術では音声を圧縮する技術が十分ではなかったために,途切れ途切れになり,コミュニケーションが成り立たないことが多かった。しかし,ストリーミング技術の発達によりネットワーク上から動画映像や音声を不特定多数の人々にリアルタイムに伝えることができるようになった。そこで,リアルサーバーを立て,授業の様子や取り組みの様子を交流校に示すようにした。
(2) 指導目標
 <1>金属棒材,亜鉛鉄板,不飽和ポリエステル樹脂の性質を知り,用途を考え,加工法を工夫することができる。
 <2>いろいろな素材の加工法をライブ中継を通して,交流校に材料加工の工夫を知らせることができる。
(3) 利用場面
  課題別グループ毎に金属棒材,亜鉛鉄材,不飽和ポリエステル樹脂の加工法を説明し,交流校に伝えるようにする。
(4) 利用環境

利用環境

ネットワークカメラ AXIS2001
NEC PC-VL800R87VALUESTALR-L   ソフト Realaudio v8.5

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3. 学習の展開

(1) 素材の特徴を調べよう
 技術・家庭科では,素材を加工して,身近な生活製品をつくる学習がある。素材として,金属棒材,亜鉛鉄板,不飽和ポリエステル樹脂を扱うこととした。生徒自身が素材の特徴を知りどのように加工するかという課題を持ち,調査をし,解決方法を考えるという過程を達成できるように,素材別グループを構成し学習を展開することとした。
 それぞれの素材の特徴が理解できるように,ブラウザの検索機能を活用しながらインターネット上で調べた。その結果,身近な製品にいろいろな素材の特徴が生かされて利用されていることに気づいていった。
(2) 素材の加工法を知ろう
 棒材加工,板金加工,注型加工法を研究した作業別グループの生徒が,作業グループに戻り,次の課題であるメホホルダーを製作するためにどの素材をどの箇所に用い,どのように加工するかを話し合わせながら製作させた。その際に,作業別グループの活動の様子をリアルタイムでライブ中継し,交流校である陽明中学校,上庄中学校に伝えるようにした。
 学習後,交流校の陽明中学校や上庄中学校からライブ中継の結果を知らせるメールが送付された。

図3 陽明中からみたライブ中継
<図3 陽明中からみたライブ中継>
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4. 成果と課題

 リアルサーバーを活用したライブ中継の試みは今回が初めてであった。この結果,動画の映像も音声も無事に届くことが確認され,交流学習に活用できることが実証された。
 本実践では交流校だけでなく本校の作業グループの生徒にも説明をしたため,十分に内容を伝えることができなかった。交流学習で活用する際には,カリキュラム,時間割,学習内容ともども,交流校との念密な打ち合わせが必要であることを実感した。次は,交流校からライブ中継をみての意見や感想がリアルタイムに戻ってくるようにしていきたい。

 ネットワークによってはセキュリティーの問題からリアルサーバーによるライブ中継ができないことがあるので,ネットワークの管理者に確認をしておくとよい。また,リアルサーバーでは特定多数の大人にみせることができるが,通信回線の速度の問題やCPUの機能の問題等から,コミュニケーションできる人数は20人程度であるので,地域の人に公開する場合はDSLなどより高速回線を考える必要がある。
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1. 実践例3  特別活動 ライブスポットを紹介しよう

(1) ねらい
 理科,美術,技術・家庭科などの優秀作品の展示と家庭からの鑑賞など,ライブ中継の映像を,地域に公開した方が学校への興味・関心を高める内容が多数ある。それに,生徒によるネットワークカメラによるライブ中継の取材をすることで,メディアリテラシーの育成を図りたいと考えている。ビデオなどの映像機器を通して,情報を収集し,選択し,活用し,創造するメディアリテラシーの能力の育成を図る。
(2) 指導目標
 校内ライブスポット探しやライブ中継により,放送部員のメディアリテラシーの育成を図る。
(3) 利用場面
  放送部の部活動で行う。
(4) 利用環境

利用環境

ネットワークカメラ AXIS2001  無線LAN メルコAir station WLA-LIIG
NEC PC-VL800R87VALUESTALR-L

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2. 指導計画

第1次 ライブ中継の計画を立てよう
第2次 学校内のライブスポットを中継しよう

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3. 学習の展開

(1) ライブ中継の計画を立てよう
 放送部の生徒達にライブ中継をするのに適しているスポットがないかをさがさせた。その際に,個人のプライバシーが保護されること,公開するのに適している教育活動であることなど,ガイドラインをもとにライブ中継の際に注意するべきことを話し合った。
(2) 学校内のライブスポットを中継しよう
図4 ライブ中継のWeb
<図4 ライブ中継のWeb>

 放送部の生徒達がライブ中継を行ったスポットとしては,校門前で生息しているヒマラヤ杉,ガーベラの花,ポスターなどの美術作品,技術・家庭科の作品などが,あげられた。これらをライブ中継した。

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4. 成果と課題

 ライブ中継することで,放送部の生徒達は撮影計画を立てたり,ガイドラインにそっているかなどを考えたりしながら,メディアリテラシーを育成していった。しかし,カメラの映像が鮮明でなかったり。わかりにくかった映像もあったりで,映像の中身について考えていく必要がある。

ワンポイントアドバイス

 ライブ中継をしたが,それに対してWeb上での視聴者はどのような意見を持っているかがわからなかった。ライブ中継の映像といっしょに掲示板等をつくるなり,工夫することで,コミュニケーション活動へつなげていくと更に効果的である
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