E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  石川県立小松工業高等学校

専門高校と小学校の協同学習

高等学校3学年・工業,小学校第5学年・総合的な学習の時間
石川県立小松工業高等学校 堀 進 平木外二,小松市立第一小学校 中川知成
キーワード 高等学校,小学校,課題研究,総合的な学習の時間,制御,ポートフォリオ

インターネット利用の意図
 本企画は高等学校と小学校が協同学習を行うものである。共に授業時間の中での活動であるためコミュニケーションをとる機会に制約が生ずる。高校生が小学校へ出向いて指導できる時はプレゼンテーションソフトを活用して行い,説明後プレゼンテーション内容をWebページ化することで小学生が振り返れるようにした。また,直接指導できない時やじっくり考えて返答したりする際に伝言板としてもWebページを活用した。

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1. 高校生による小学生へのロボット製作指導
図1 実践概要
図1 実践概要

(1)ねらい
 レゴブロックを用いたロボット製作では,小・中・高と年齢に関係なく計測・制御をテーマとした学習活動を展開できる。そこで,制御技術を学ぶ高校生が小学生へレゴロボットの製作を指導することで,高校生にとっては日々の授業での学ぶ意義や学習の達成感を味わえ,小学生にとっては導入部分での敷居が高いロボット制御の題材が創造性を育む学習につながることをねらった。

(2)指導目標
 高校生の学習,小学生の学習のどちらにも偏ることなく授業を展開し,高校生と小学生とのかかわりあいの中から,高校生については制御技術の理解の深まり,小学生については創造的な情報活用となるようめざした。毎回の授業の終了時,児童生徒に学習の記録を書いてもらい自発的な学習の振り返りにつながる環境づくりに努めた。

(3)利用場面
(a) プレゼンテーションソフトの活用
 毎回,生徒が児童へ説明する際プレゼンテーションソフトPowerPoint2000を使って行った。生徒が説明した内容の多くの部分を簡単な操作でWebページ化でき,児童が学習を振り返る時に利用可能となる。また,PowerPointを用いると説明の流れを考える時,スライド単位で構想するので教員とのやり取りが便利になり修正も容易となる。
(b) 電子メールおよびWebページの活用
 電子メール,Webページを用い場所と時間の制約を少なくしてコミュニケーションをとった。電子メールは児童が主体的にコミュニケーションをとっているとの自覚を持つことができ児童の関心も高い。授業後に生徒児童が書いた学習の記録から主だったものをWebページ上に載せることで,他の生徒児童と考えていることの共有化が図れる。また,学習の記録に分からなかったこととして児童が記入している内容に対して,生徒教員がじっくり考えてからWebページ上で回答できるようになる。

(4)利用環境
(a) 教室環境 インターネット常時接続,校内LAN
(b) 使用機種 Windowsコンピュータ 11台,液晶プロジェクタ
(c) 使用ソフト
「ロゴロボットコントロールシステム」ロゴジャパン株式会社(ロボット制御) http://www.logo.co.jp
「Microsoft PowerPoint2000」マイクロソフト株式会社(プレゼンテーション)
「Microsoft OutlookExpress」マイクロソフト株式会社(メール)
「Internet Explorer5.5」マイクロソフト株式会社(ブラウザ)

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2. 指導計画

 1学期から調整を進め,本校から数百メートル離れた位置に隣接する小松市立第一小学校の5年3組(中川知成教諭)と協同学習できることとなった。授業参加者は本校の生徒11人(工業科・課題研究)と小学校1クラス29人(総合的な学習の時間)である。
 本校と小学校での学習展開を表1に示す。協同学習は2学期から開始した。小松工業高校では金曜日の5,6限目(13:20〜15:10)が課題研究の授業である。そこで,第一小学校の金曜日5限目(13:35〜14:35)を本実践へ割り当てることにした。本校と第一小学校とで授業時間を重複させることができたので,学校行事などで都合が悪くなった日以外は小松工業高校の生徒が第一小学校へ出向くようにした。このような方針でも,数週間連続で第一小学校へ行くことができない状況が生じ,Webページでのコミュニケーションをフルに活用した。小学校では生徒と児童が直接コミュニケーションをとりながらレゴブロックでのロボット製作を行ない,インターネット経由でロボット製作中にうまく完成できなかったことや発展的な内容について情報交換することにした。

表1 高校と小学校の指導計画(高校38時間,小学校16時間)

高校生

小学生

時間

学習段階

学習活動

留意点

時間

学習段階

学習活動

留意点

課題 : 最も単純なレゴブロック製ライントレーサをつくろう!

 
     

4

小学生へ説明する準備をしよう

・レゴブロックの組み立てテクニックをつかもう

・これまで学習してきたことのどれだけがレゴブロックで実現できるか調べることを第一とする

・できるだけシンプルなロボット,できるだけシンプルなプログラムでライントレーサを作ることを目標とする

2

・コンピュータ内臓ブロックとパソコンの連携方法をつかもう

2

・ブロックでライントレーサを組み立てよう

6

・ライントレーサ用プログラムを検討しよう
★インターネットの利用

1

小松工業高校へお願いしよう

・小松工業高校へ電子メールを送ろう
★インターネットの利用

・自分たちの状況が伝わるメールとなるようアドバイスする

課題 : ロボット製作を分かりやすく説明しよう!

課題 : 究極のかしこいロボットをつくろう!

2

小学生へロボット製作の基本を説明しよう

・組み立てテクニックを説明しよう
☆PowerPointの利用
★インターネットの利用

・多くのメディアの中からPowerPointを選択した理由をはっきりさせる

・基本的なプレゼンテーションテクニックを伝える

・説明ストーリーを考えてからスライドを作成する

・プレゼン内容および児童の分からなかったとに対しての回答を速やかにWebページ上で発信する

1

レゴブロックに馴染もう

・レゴブロックで車をつくろう

・最初にもつ印象をよくするように配慮する

・児童が自由に組み立てれるようにする

2

・パソコンとレゴブロックの連携方法を説明しよう
☆PowerPointの利用
★インターネットの利用

1

基本操作を身につけよう

・パソコンでレゴブロックに学習させよう
☆ロゴロボコンの利用

・児童にパソコン操作でつまずかないように慎重に様子を窺う

2

・前進,後退,スピード調整のプログラムを説明しよう
☆PowerPointの利用
★インターネットの利用

1

プログラミングをマスターしよう

・前へ進む,あるいは後ろにさがるプログラムをつくろう
☆ロゴロボコンの利用
★インターネットの利用

・Webページに関心を向けさせる

・ライントレーサに必要なものを強調する

・作成するプログラムで毎回完結させる

・プログラムとロボットの動作を対比させながら作業する

4

・繰り返しプログラムを説明しよう
☆PowerPointの利用
★インターネットの利用

2

・前進後進を繰り返すプログラムをつくろう
☆ロゴロボコンの利用
★インターネットの利用

4

・ライトセンサーと判断するプログラムを説明しよう
☆PowerPointの利用
★インターネットの利用

2

・黒の線,緑,黄の線で直進する車が止まるようにしよう
☆ロゴロボコンの利用
★インターネットの利用

課題 : ライントレーサをつくろう

2

ライントレースコンテストを企画しよう

・実現可能なコースを調べよう

・一方向のみに旋回するコースでできるだけ複雑なものを考える

1

究極のかしこいライントレーサをつくろう

・ロボットをデザインしよう

・個人作業でなく班毎に協力して進めるように伝える

・班内で係り分担をして各自の役割を明確にする

2

小学生へ的確にアドバイスしよう

・コンテストの内容を説明しアドバイスする
☆PowerPointの利用

・児童とともに作り上げるような雰囲気作りに配慮する

2

・ライントレーサを製作しよう
☆ロゴロボコンの利用
★インターネットの利用

 
 

1

現状を整理しよう

・班毎に現状報告するプレゼンテーションを準備しよう
☆PowerPointの利用

・伝えたいことを明確にさせる

・ソフトの技におぼれないようにすることを伝える(音,動き)

2

・児童の報告会に参加しよう

1

・プレゼンテーションを行おう
☆PowerPointの利用

 
 

1

ライントレーサを仕上げよう

・ライントレーサの改良を行おう
☆ロゴロボコンの利用

・出来上がった班は他の班を応援するように伝える

2

ライントレースコンテストを運営しよう

・最終調整のアドバイスをしよう
・コンテストを協力して盛り上げよう

・児童が一生懸命に行っているのを感じとれるように配慮する

1

ライントレースコンテストに参加しよう

・限られた時間で最終調整をしベストをつくそう
☆ロゴロボコンの利用

・優勝しないと意味がないなどと考えることのないように指導する

2

学習を整理しよう

・報告書を書く準備をしよう

・自分自身へ問いかけれるような環境作りに配慮する

1

学習を整理しよう

・学習を振り返ってみよう

・Webページや学習の記録をもとに今後の学習に活かせるようにする

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3. 学習の展開
図2 高校生がPowerPointで説明している様子
図2 高校生がPowerPointで説明している様子
図3 高校生が直接CRTで説明している様子
図3 高校生が直接CRTで説明している様子
 小学校での活動では,児童2ないし3名で1班とし10班構成で作業を行った。1班あたりレゴブロック1セット,パソコン1台の環境で,高校生11名が各班をサポートしながら授業を進めた。図2はPowerPointのスライドショーを利用して生徒が児童へ説明している様子(movie1.mpg)で,図3はそれに加えてパソコンのCRT上で補足的に解説している様子である。基本的にはこのスタイルで学習活動を行い,授業の終了後に児童生徒とも学習の記録シート(sheet1.htm,sheet2.htm)へ記入した。授業後,PowerPointのプレゼンテーションデータをWebページ上(./webpage/index.htm)へ載せるとともに,児童が学習の記録シートで分からなかったこととして記入した内容に対して同Webページ上で回答した。基本となる説明を終えた後,線に沿って動くライントレーサの組立てに入った。複数の班が行き詰まったあたりで現状報告会を設けた。児童の希望で図4で示すようにPowerPointを用いた。報告会後ロボットを調整し図5のコンテストに臨んだ(movie2.mpg)。スタート直前まであきらめかけていた班が期待通りに動いたりするなど,児童の願いと意気込みが生徒に直接伝わるコンテストであった。
図4 小学生が現状報告している様子
図5 ライントレースコンテストの様子
図4 小学生が現状報告している様子
図5 ライントレースコンテストの様子
○生徒・児童の感想から

小学生から
・ただのブロックだと思ってたけど,アイデア一つでぜんぜんちがうってみんなのみてて思った。
・こんな楽しい授業があったことがわかった。
・光センサーで黒と白の見わけができるなんて思わなかった。黒以外に色の見わけができるのか。もしできるんだったらやってみたい。
・分かりやすく話すことができなかったけどゆっくり話すことができた。協力できなくなったけど今はちゃんとできるようになった。みんなに発表を聞いてもらってうれしかった。
・全体的に男女を問わず声が大きくて私たちのグループも練習時よりも大きな声で発表できました。高校生の人たちからもいい意見が出てきたのでうれしいです。
高校生から
・今日あらためてプログラムの使い方が身についたと思う。自分も子供たちも理解できた。
 黒いところで止めるところを考えさせるのはいいやり方だと思う。
・けっこう楽しんでやってくれているから,こっちもうれしいし,小学生なのにわかってやっているってことがすごいと思った。
・教える立場に立ってみて自分たちで勉強しているだけでは気づかなかったところや,教えてみて初めてわかったことも最近になってだんだんわかってきた。
・まだまだ教える立場として未熟なことが多いなあと思った。
・だんだん教えるコツがつかめてきて小学生のみんなも積極的に理解しようとしてくれるようになってきた。質問に対してもあせらず冷静に答えることができるようになってきた。

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4. 成果と課題
 2学期最後に児童生徒へアンケートを実施した。その結果を図6と図7に示す。小学生の結果を見ると班毎の協同作業で苦労していること,創造的な自分のアイデアを表現する際になかなかうまくいかなかった様子が表れており,教員側で感じ取っていた印象と一致している。高校生の結果では,高校で受ける他の授業の見方までは変わっていないものの,教える立場に立つことでの効果が表れている。
図6 小学生のアンケート結果
図6 小学生のアンケート結果
図7 高校生のアンケート結果
図7 高校生のアンケート結果

 小学生の評価は小学校側で,高校生の評価は高校側でそれぞれ独立して行った。児童生徒とも学習の記録シートへ毎時間記入し,それを小学校と高校で共有した。高校ではさらに授業準備中のメモやビデオデータなどを蓄積しポートフォリオ化することを目指した。また,教員が考えた評価規準をもとに評価基準表を作成し区切りのよい所で生徒に自己評価をしてもらった。高校生は課題研究の授業なので評定まで必要となることから,学習記録シートの内容や生徒の自己評価結果などを参考としつつ先の評価基準表を用いて評定を導き出した。
 今回の実践では学習評価に踏み込んだ小学校の教員と高校の教員間の協力までには至らなかった。また,高校側の評価で評価規準を作成するのは教員のみで行ってしまい,生徒とともに考える機会を設けなかった。高校生がもっと主体的に活動し,より教育効果が高まることを目指して,これらについて今後検討ないしは改善していく必要がある。

ワンポイントアドバイス
・地域ネットワークセンター,学校ネットワーク関係者の調整でスムーズに協力依頼を実現できる。
・小学校での総合的な学習の時間に専門高校との協同学習を取り入れると,お互いにとって学習効果が高まる可能性を秘めている。
 農業高校と小学校,工業高校と小学校,商業高校と小学校

参考URLなど
実践中に使用したWebページ  http://www.kth.ed.jp/pub/lego/
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