E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  岐阜県川島町立川島小学校

河川実験施設と連携した河川に関する学習に関する動画コンテンツの開発
−「ふるさと川島」を伝える総合的な学習の時間での実践を通して−

小学校 総合的な学習の時間
埴岡 靖司
岐阜県川島町立川島小学校
hanioka@ha.shotoku.ac.jp

[キーワード]総合的な学習の時間,河川環境,研究施設との連携,動画コンテンツ

インターネット利用の意図
 「総合的な学習の時間」の実施にあたり,木曽川の中州に位置する本校にとって,衣・食・住すべての点において木曽川と大きな関わりがあり,川とは切っても切り離せない。
 そこで,河川の専門研究機関である「独立行政法人土木研究所自然共生研究センター」(以下,共生センター)の持つ河川に関する様々な調査結果や調査のノウハウを学校教育に生かし,まだ全国的にも少ない専門研究機関と連携した学習を考えた。共生センターには実際に行くことができるので,本校の特色である情報教育を生かし,動画等バーチャルの世界と本物の世界を体験しながら学習を進めることで,ねらいにせまりたいと考えた。

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1. 活動名(ねらい/指導目標/利用場面/利用環境/稼動環境等)

(1) 活動名 
 「かわしま たんけん隊」(4年 総合的な学習の時間)

(2) ねらい
 木曽川の調査を通して,川島町の河川環境等の自然の様子やくらしについて関心を持ち,外国の人へ伝えるために地図を作製することができる。

(3) 研究実践場面
 本活動を「2.指導計画」(表1)の項で述べる,第2次ユニット2「木曽川の生き物や植物について現状をとらえることができる。」ことをねらいとした学習である。第2次ユニット2の時数は,13時間である(表2)。

(4) 本実践に関わる主な利用機器等
 DOS/V機45台(OS Win98SE) デジタルカメラ(SONY マビカ 等)

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2. 指導計画,指導案(指導計画の中でのインターネットの利用場面等)

 本校では本年度,「総合的な学習の時間」の試行を90時間で行っている。「総合的な学習の時間」を,地域の中から課題を見つけて進めていく「総合チャレンジ」(75時間)と,情報リテラシーを育てる「基本チャレンジ」(15時間)として実践している。
 本活動の指導計画は,表1である。本実践研究に関わってのユニットの詳しい指導計画は,表2である。
 特に2次では,ユニット2の学びの方法知を生かし,ユニット3ではそれぞれの課題に沿って問題解決できる場にしていこうと考えた。

表1,2
図1 教室で学ぶ様子
図1 教室で学ぶ様子

 本研究実践では,表2の2時間目,7・8時間目にWeb教材を使用した。その他,授業時間外は,自由に閲覧できる環境整備をし,時間を見つけて学習に取り組むことができるようにした(図1)。教室に1台あるコンピュータを活用したり,昼休み開放されているコンピュータ室を利用したりした。

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3. 学習の展開(具体的な場面,内容/エピソード/効果等)
図2 活動前のアンケート
図2 活動前のアンケート

(1) 学習の事前アンケート
 木曽川の学習を進めるにあたり,児童の興味がどこにあるのかアンケートを実施した。
 まず,「川の水」「川の形」「川の生き物」の中で興味があるのは,「川の生き物」であることが分かった。川の生き物の中でも「魚類」に興味を示す児童が多いことが分かる。(図2)
 そこで,「魚」を観察のきっかけに,木曽川の環境を学習する教材作成をすることを考えた。「魚から考える」教材を使っての学習のあと,その学びを生かして,植物や鳥類等の興味のあるところを自分で学んでいく学習過程を仕組んだ。

(2) まずは,魚を捕ってみよう(第2時から第5時)
 事前のアンケートや聞き取りから,児童は,魚を捕った経験がほとんどないことが分かった。
 そこで,調査にあたってのWeb 教材を作成し,授業で活用する時間を計画した。児童は,校外での観察を何度も経験している。しかし,河川の生き物を対象に調査することは初めてのことである。また,実験河川では絶えず継続実験が行われているため,特別に配慮することもある。それらを総合的に考え,Web 教材の内容(コンテンツ)を考えた。(表3)
 そこで,共生センターでの学びを深めるため,授業はもとより,授業以外の学校生活の時間や家庭でも見ることができるような環境を整えた。

表3 単元指導計画とデジタル資料の関連
表3 単元指導計画とデジタル資料の関連
図3 大型画面で学ぶ
図3 大型画面で学ぶ
授業の展開は,表4のようである。

表4  第2時と第3〜5時との授業展開の関連

表4  第2時と第3〜5時との授業展開の関連

図4 Web 教材の画面例
図4 Web 教材の画面例

 活動直後のアンケート「学校でパソコンを使って「魚のとり方」を調べてから,今日実際に川で魚を採りました。パソコンで調べたことが,今日,魚を採る時に役に立ったと思いますか?」によると,「役に立った・どちらかといえば役に立った」が35人(37人中),「あまり役に立たなかった」が2人(37人中)と,94.6%の児童が役立ったと考えている。児童は,「魚を採る時にパソコンを見ていて,足で追いかける時がパソコンでは強くしていたので,強くしてみました。そうしたら,結構大きい魚が採れました。」とポイントを理解し,活動していたことが分かる。たもの扱いを動画にしたことで,言葉と動きを頭で理解することができた。そして,魚を採取することができたことで,活動に大きな満足感が得られた。(図5)また,持ち物等,画像で紹介することで,家庭で学習してきて準備する姿も見られた。
 また,魚の観察では,「動き(ひれ)(口)」「色」「うろこの働き」に興味を示して観察した。この観察を手がかりに,次の活動につなげた。(図6は,観察時,児童が撮影)
  この活動を通して,Web 教材が児童の「学びの連続性」を支える大きな要因となった。困ったら,Web を見れば解決できるのではないかという,方法知が身につき始めた。

 

図5 魚の採取の様子
図6 興味を持ったところを撮影
図5 魚の採取の様子
図6 興味を持ったところを撮影
(3) 魚の住環境を調査する活動の事例(第7時から第9時)
 現地での学習後,興味を持った部分をもっと調べたいという願いを大切にして学習を進めた。
図7 魚観察への入口画面
表5 指導計画とデジタル資料
図7 魚観察への入口画面
表5 指導計画とデジタル資料
 そこで,興味を持ちそうな部分を事前に考え,Web 教材を準備した。「実際に魚を採取した環境調査を進めて確かめたい。」と動機付けができるように,魚の体が環境によって大きな影響を受けることを教材化した。写真や説明文は共生センターの職員から提供を受け,小学生向けの文章に小学校側で直し,再度共生センター側でチェックをお願いした。
図8 Web 教材から調査へ(「うろこ」から水質を考える例)
図8 Web 教材から調査へ(「うろこ」から水質を考える例)
 授業の流れは,図8のようである。まず,Web 教材で内容を学ぶ。次に,調査方法を理解して調査する。44%の児童が難しいと感じた水質調査にも,無言で取り組み,「川をきれいにしたい。」という意識を持つことができた。これは,96%の児童がWeb 教材が役立ったという回答から,事前の学習が生きて働いた,と考えられる。
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4. 成果と課題
図9実際の学習とコンピュータを使った
学習の組み合わせは,よく分かりました

 活動から,次の成果と課題が得られた。
○児童の回答,図9から,実体験とコンピュータと組み合わせた学習が内容理解に効果的であった。
○「魚のすむ環境が数値を使って表せた。」「川島の水質が分かった。」(内容知の深まり)
○「インターネットを使うと解決できそうだ。」
「共生センターで聞くといい。」(方法知の深まり)
●教育現場の考え方と研究所の考え方をつなぐ第3の機関が必要。
今回,考え方をつなぐ機関として大阪大学の協力や,Web教材作成への技術援助としてNGO先進的教育情報環境整備推進協議会の協力がその機関となった。

ワンポイント・アドバイス
 わが町の施設のわが町の先生。Web に出てくる人が現場で説明してくださることが,子どもの達成感をより深めた。小学生では,Webに出てくる人も大切ではないでしょうか。

参加・協力校等の名称,参考文献,参考URL,引用等 
協力機関  独立行政法人土木研究所自然共生研究センター
大阪大学大学院人間科学研究科
NGO先進的教育情報環境整備推進協議会
 参考URL http://ibuki.ha.shotoku.ac.jp/school/kawashima/cec_13/index_cec.htm

 
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