E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  愛知県半田市立亀崎小学校

小学生にもできる国際貢献
〜ネパールの小学校との交流を通して〜

小学校6年生・総合科
愛知県半田市立亀崎小学校
 丹波信夫
nec00039@lec.netnfu.ne.jp
http://www.kamezaki-e.ed.jp/

キーワード:小学校6年,総合的な学習,国際理解教育,国際貢献,ネパール,ボランティア

インターネット利用の意図
 現在,我々は豊かな文明社会の恩恵にあずかり,インターネットの普及に代表されるIT社会を向かえようとしている。本校では校内LANが整備されインターネットを日常的に学習に活用している。
 しかし,ネパールの山間地には貧しい村が多い。小学校には電気も通っておらず,満足な学習環境が整っていない。そこには同じ小学生でありながらインターネット環境どころか文房具にも不自由している子どもたちがいる。
 日本の小学生はネパールについての知識はほとんどなく,ましてやそこの同年代の小学生がどのような生活をしているのか,どのような学校生活をおくっているのかをまったく知らない。また,自分達にも国際的に貢献できることがあるとは考えてもいない。
 そこで,ネパールの人々,子どもたちとインターネットによる交流やフェースツウフェースの交流を持つ機会を作ることによりお互いに理解しあい,同じ地球人としての自覚を持つことができるのではないかと考えた。

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1. 単元名 小学生にもできる国際貢献

1.1 目 標
・ネパールの子どもたちとの交流を通してネパールについて知り,自分たちにもできる国際貢献について考え実行することができる。
・ネパールの人々や子どもたちと交流を持つことにより同じ地球人としての自覚を持つ。
・交流するためにコミュニケーション能力を進んで磨き上げようとする。
・ネパールを理解し自分達でも国際貢献をすることができたという自信を持つことにより,他のアジアの国々についても進んで理解しようとする。

1.2 利用環境
・21台体制のコンピュータルーム・6年生普通教室にパソコン各1台
・学校図書館に児童用パソコン8台・CATVの回線による常時接続(1.5M)

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2. 学習計画

小単元
時間

学 習 活 動

留 意 事 項

ネパールについて知ろう
(6)

6月

1,ネパールについて詳しい人の話を聞く。
・ネパールの位置
・ネパールの地形,気候
・人々の生活の様子など
・子どもたちの質問

2〜5,ネパールについて図書資料やオンライン資料等で調べてまとめる。

6,調べてまとめたことを発表する。
・自分の調べた事を一人ずつみんなの前で発表する。

・ネパールを何回も訪問している人を学校に招く。
・ネパールの写真をふんだんに使ったプレゼンを行う。
・ネパールは世界最貧国のひとつであることをおさえる。
・人々が一生懸命に生きている様子を知らせる。
・ネパール関連の図書を用意しておく。
・ネパール関連のwebページのリンク集を用意しておく。
・調べるテーマは個人の興味関心を尊重する。
・同じくネパールについて調べている日本の交流校と情報交換をする。(メール,テレビ会議,web等)
・調べたことは画用紙かコンピュータでまとめさせる。
・コンピュータでまとめた子の作品は校内データベースに入れる。
・画用紙にまとめた子の作品は教室に掲示する。

ネパールの小学校支援宣言!

(3)

 

7月

1,ネパールの小学校の様子を知る。
2,同じ小学生として,自分たちでできる事を考える。
・募金活動
・文房具集め
・古長靴(山間僻地校希望)など
3,ネパールの小学校支援宣言をして,支援物資を集める。

・調べ学習でネパールの小学校について調べた児童のまとめをもとにする。
・自分たちが何気なく使っていた文房具がネパールでは貴重品であることや劣悪な学習環境について知らせる。
・普段,自分たちが物を大切にしているかどうかを見直させる。
・無理なく自分たちでできる支援の方法を考えさせる。
・集めた支援物資は8月にネパール訪問団が持っていく。
・カトマンズの小学校にはパソコンを持っていきインターネット環境の構築を,山間僻地校にはみんなが集めた文房具を持っていくことを知らせる。

ネパールの友達

(7)

 

9月

1,8月に支援物資を持っていったネパール訪問団の訪問時の様子を聞く。

2,カトマンズの小学校にEメールを書く。

3,ネパールからのお客様をどのように歓迎するか話し合う。
4,キラン校長と小学生2名の来日歓迎会をする。
5,ネパールの小学生に亀崎小学校の生活を知らせるとともに,ネパールとの違いについて聞く。
6,ネパールからのお客様のさよならパーティを企画する。
7,キラン校長と小学生2名のさよならパーティをする。

・ネパールの様子を写真をふんだんに使ったプレゼンにて知らせる。
・みんなの支援でネパールの小学生がどれだけ助かったかを報告する。
・日英翻訳ソフトの使い方を説明する。
・事前に指導者同士で打ち合わせをしておく。
・キラン校長と小学生2名が来日することにふれる。
・歓迎会の企画・準備・運営を自分たちでできるように支援する。
・学年集会でキラン校長と小学生2名の歓迎会を自主運営させる。
・小学生2名は約2週間,ホームスティをしながら亀崎小学校に通う。
・生活しながらお互いを理解する。
・さよならパーティの企画・準備・運営を自分たちでできるように支援する。
・楽しい思い出とともに,これからも友達として交流を続けていこうとする気持ちを大切にさせる。

友情の輪をひろげよう!
(11)

 

10月

11月

1,ネパールの小学校にメールを出す。
2,これからのネパール支援について考える。
・ストリートチルドレンについてのレポートをまとめ,発表する。
・学年全体から児童会へ
・児童会から地域へ

3〜7,学校祭で「ネパール展」を開く準備をする。

8〜10,「ネパール展」を開く。

11,「ネパール展」の反省をする。

・ネパールの友達と一緒に過ごした日々を思い起こさせる。
・きめ細かい支援は相手とのコミュニケーションが大切であることを実感させる。
・支援活動を学校全体へ,学校全体から地域へと広げる活動を支援する。
・事前にPTAや地域のコミュニティにも児童の支援活動について説明をしておく。
・自分たちでも国際貢献できる自信を持たせる。
・「ネパール展」を開くことにより,今まで自分たちがしてきた活動を全校の児童に知らせる。
・わかりやすい展示にするためにはどうすればよいか考えさせる。
・展示に必要な物を作らせる。
・当日の当番と係りを決めさせる。
・地域の人々にも開放して見ていただく。
・低学年にも親切にネパールについて説明できるように支援する。
・「ネパール展」での様子をネパールの交流校に知らせる。
・「ネパール展」の反省会をすることにより,ネパールについてのまとめをする。

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3. 学習の展開

3.1 ネパールについて知ろう
 ネパールについて詳しい人の話を聞いて,子どもたちは驚きの連続であったが,人々が一生懸命に生きている様子は伝わった。その後,ネパールに関して子どもたちが調べたテーマは国家的なことから生活にかかわることまでさまざまなものがあった。調べた事をお互いに発表していく中でネパールを支援しようという機運が盛り上がってきた。

図1.集めた文房具の梱包
図1.集めた文房具の梱包
図2.文房具を贈呈
図2.文房具を贈呈
図3.ネパールの少女と授業
図3.ネパールの少女と授業
図4.楽しく交流
図4.楽しく交流

3.2 ネパールの小学校支援宣言!
 子どもたちが集めた文房具は大きなダンボール2箱になった。
 8月,この文房具と中古パソコンを持って6年生の担任3人がネパールを訪問した。
 ネパールの首都カトマンズから1時間飛行機に乗り,さらに2日間ヒマラヤの山を歩いて,山間僻地のラクチュン村に到着した。
 ラクチュン村の小学校でみんなが集めた文房具を手渡した。村をあげての子どもたちへの歓迎のメッセージをもらい,今後の交流を誓い合った。
 また,臨時に日本語の授業を行い,明るいラクチュの子どもたちの笑顔も見ることができた。
 さらに,ラクチュン村からカトマンズに戻 り,ホーリーガードン・スクールを訪問した。ここでは中古のノートパソコンを贈呈してインターネットでの交流を約束した。また,9 月にはキラン校長先生と小学生2名の来日の打ち合わせを行った。

3.3 ネパールの友達
 9月16日,ネパールよりキラン校長先生と4年生のルジナさん,5年生のスザナさんの小学生2名が来日した。3人はホームスティ をしながら2週間,亀崎小学校に通った。
 ネパールの小学生2名は6年生のクラスに入り同じように授業を受けた。最初は双方とも緊張していたようであったがすぐにフレンドリーになり,いろいろな方法でコミュニケーションを取り合い遊んでいた。
 また,児童主催でお互いの文化を紹介し合う「文化交流会」を開催した。
 日本からは,「祭囃子」「柔道」「日本舞踊」を披露した。ネパールからは「ネパリダンス」の披露があった。
 キラン校長先生には,簡単な「ネパール語会話」の授業をしていただいた。さらに,多くの児童の心を打った「ストリートチルドレンについてのスピーチ」もしていただいた。
 2週間がたちお別れの日,涙ぐみながらのさよならとなった。

児童の感想の一部

私はスザナとルジナと会えてとてもよかったです。生活習慣がちがう2人からいろいろなことを学びました。コミュニケーションの仕方や人を思いやるやさしい心も学びました。お別れの日はとてもつらかったです。

図5.ネパリダンスの実演
図5.ネパリダンスの実演

3.4 友情の輪をひろげよう!
 校内学習発表会では「ネパール展」を開き,全校児童・地域の人たちにネパールを紹介した。
 その内容は「ネパールについて調べたこと」「ネパール語講座」「ネパール風フルーツの食べ方」「ネパリダンス実演」「ネパリ民謡ロッソンピリリ実演」「ストリートチルドレン」である。
 また,地域の方々にストリートチルドレンの実態を訴え,多くの支援金を集めることができた。

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4. 成果と今後の課題

 ネパールという国が子どもたちにとってとても身近な友だちの国になった。
 ネパールの小学校に対して自分達にもできることを考え実行することにより小学生でも国際貢献できる自信と達成感を味わわせることがでた。さらに,ネパール支援の輪を全校から地域へと広げることもできた。
 また,交流するためにコミュニケーション能力を自ら磨き上げていこうとする態度をも見ることができた。
 ネパールの子どもたちも日本の子どもたちと交流する中で新しい学習の方法を得たものと思う。
 今後においては,今回友好関係を確立したネパールの交流校とフェースツゥフェースの交流を定期的に行えるシステムを作りたいと考えている。

ワンポイントアドバイス
・ヒマラヤの奥地には郵便が届かない。ネパールは郵便事情が悪く,支援物資は自分で持っていくのがベストである。
・ネパールISPの上流は細く,TV会議はむずかしい。

協力機関:東海スクールネット研究会
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