E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  三重県一志郡美杉村立太郎生小学校

低学年でもできる「自分を表現し,人の話を聞く」方法の研究
− 生活科における落花生栽培や各種行事での交流を通して −

小学校2年 生活科
三重県一志郡美杉村立太郎生小学校
森田雅浩
etarooad@etaroo.mie-c.ed.jp
http://www.mie-c.ed.jp/etaroo/

キーワード  小学校,生活科,インターネット,テレビ会議 学校間交流

「インターネット利用の意図」
 2年生において,年度初めから栽培をしている落花生を中心に野菜などの栽培活動(世話・観察等)を通して経験したことを元に,主にテレビ会議を活用して他校との交流を進めてきた。
 その中でも,表現力と聞く力の育成につとめてきた。自分を表現する方法として,絵・文字・言葉・動作などがあるが,これらの力と聞く力を総合的に身につける場としてテレビ会議による手法を取り入れたのである。
 テレビ会議をおこなうには,まず自分が発表する課題を的確に把握しなければならない。そして,いろいろと調べたことを図表や画像にまとめる。次に発表するための言葉(セリフ)を考えていかなければならない。そして実際にテレビ会議をおこなうときには,目の前にあるカメラの向こう側(遠く回線の向こう)にいる人たちにもよくわかってもらえるように,十分に意識をしながら話し方も工夫していかなければならない。また,たとえ聞き取りにくい環境の中においても,相手の話を集中してしっかりと聞くことによって,質問や感想もできるようになる。これらの活動を通して,「自分を表現し人の考えを聞く」ことのできる子どもを育てようと考えたのである
 今回は,インターネットのCu−SeeMeを使って,落花生栽培のまとめとしてのテレビ交流会をおこなった。5月に種まきをしてから,暑い中でも草ひきをしたり水やりをしたりしながら育ててきた落花生を収穫することのできた喜びを,太郎生小学校の子どもたちだけではなく,遠くの交流校の子どもたちにも伝えようと考えたのである。
 授業の中では,栽培経過についてはすでにテレビ会議で少し触れてあったので簡単に扱い,収穫時のようすや喜びを伝えることを中心とした構成にした。
 どのように伝えればよくわかってもらえるだろうかということをみんなで話し合った結果,収穫時の様子を劇にして表現するとともに,ビデオ画像も取り入れようということになった。ビデオは担任が撮影したものを利用したが,劇については,セリフから振り付けまで児童の手によって考えていった。また,これまでは担任がリードしながらのテレビ交流会が多かったが,今回は児童が司会・進行もするようにした。もちろん,進め方や言葉も児童が考えていった。

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1. 単元名  「太郎生の秋をさがそう」

(1) 単元設定の趣旨と指導について
 日頃の暮らしの中や通学路などで,子どもたちは五感を通して様々な秋の事象を子どもなりにとらえている。それらをより確かなものにするために,春から夏にかけて探検した町へ出かけていく。春から夏にかけて見てきた様子との違いから,秋らしさをとらえるとともに,いろいろな探検場所での人々とのふれあいを大切にする。地域の人々とふれあうことで,秋探しの探検がいっそう深まりのあるものになる。
 また探検の手段として乗り物を利用し,校区内でも学校から遠いところや校区外へと子どもたちの探検場所を広げていく選択も可能にしている。
 探検中に作物の実りを目にすると,子どもたちの思いは春から育ててきた自分たちの作物(落花生や大豆・赤米など)に向かう。それを受け止めて,取り入れ活動をする。収穫の楽しさを味わった子どもたちは,調理へと活動を広げていくことに意欲を示すだろう。いろいろな調理の仕方を調べるとともに,友だちと協力して調理しておいしく食べる。また子どもの願いによっては,取り入れからお祝いの祭りへと発展することも考えられるので,そのような活動への配慮もしている。
 本単元の活動を通して,季節の変化や特徴をとらえることができる豊かな感受性,自分たちで計画を立て,みんなで協力してものごとに積極的に働きかけていこうとする態度,体験したことをいろいろな人に知らせる情報発信能力や表現力などを育てたい。

(2) 単元の目標
<1> 秋の町を探検して,春の町との違いに気づくとともに,秋が実りの季節であることに気づくことができる。
<2> 春から育ててきた作物が収穫の時期にきていることがわかり,その成長を喜びながら収穫し,収穫した作物のことを友だちと協力して発表したり,調理して楽しく味わったりすることができる。

(3) テレビ会議と交流校について
 2年生においては,1学期からテレビ会議(電話回線・インターネット)をおこなってきた。その相手校については,昨年度までにおいて交流をしてきた学校に加えて,インターネットを使って探した学校もあった。今回テレビ会議をおこなう学校は,共に昨年度までも交流をしてきた学校である。

【香港日本人学校大埔校】
 香港・新界地区に4年前に開設された学校。日本人学校の他に,国際学級も有する日本人学校である。昨年度は,5年生がクリスマスのプレゼント交換をきっかけに,日本と香港の正月の違について,お互いがそれぞれの土地で調べ上げたことを元に交流学習をおこなった。また,それぞれの国の正月グッズを交換することによって,より理解を深める手だてとした。

【中原小学校】
 千葉県柏市内にある学校。昨年度は,5年生が「月プロジェクト」による交流学習をおこなった。世界各地から月の画像を集め,同じ日に緯度や経度の違いでどのような見え方をするのかなどを比べてみた。本年度は,6年生が太郎生小学校と同じ作物「落花生」を育てながら,その過程を交流することを計画した。また低学年の子にもわかる発表の仕方を工夫し,今回の授業に向けての取り組みを進めている。
 本年度は2年生と6年生の異学年交流をおこなうことによって,お互いの学校間のより深い交流と理解をはかろうと考えた。
 高学年の児童が低学年の児童に説明をするためには,それなりに言葉や内容を考えておこなわないとうまく通じない。低学年の児童にしてみれば,高学年の児童に説明をしてわかってもらえたときの満足感は,今後の学習において大きな自信となるだろう。そのような観点から,いろいろと話し方や内容を工夫するところに,双方メリットのある授業になると考えている。
 また,この授業をきっかけとして今後これまで以上に深まった交流に発展させていこうと考えている。一例として,遊びや習慣などの身近な課題を通して,それぞれの国を再認識するような授業を組んでみたい。

 
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2. 学習計画(18時間)

【第1次】 出かけて みよう  10時間
<1> 秋の町探検の準備をしよう(2時間)
<2> 秋の町探検に出かけよう(8時間)
【第2次】 できたよ できたよ とりいれだ  8時間
<1> よく育ったね ラッカセイ(1時間)
<2> 楽しかったねラッカセイのとりいれ(4時間)
<3> よろこびをつたえよう(1時間・・・本時)
<4> おいしく食べよう(2時間)

(1) 本時の指導
<1> 本時の目標   ラッカセイがたくさんとれた喜びを伝えよう
<2> 準備物     発表用の画像・資料  落花生の実物と模型
<3> テレビ会議参加校 千葉県柏市立中原小学校6年生 香港日本人学校大埔校6年生

(2) 指導過程

 
学  習  活  動
指 導 上 の 留 意 点





1.あいさつ。
 ○お互いにあいさつをする。
  「こんにちは,こちらは太郎生小学校です・・・」
   太郎生小→中原小→大埔校



2.ラッカセイを育ててきた様子を発表する。
 「○月○日,種まきをしました」
 「○月○日,花が咲きました」等

 「感想や質問を聞かせてください。」

3.収穫の喜びを伝える。
 「皆さんは,ラッカセイが土の中に実を付けることを知っていましたか。」
 「畑で落花生を抜いたら,土の中からたくさんの落花生が出てきてびっくりしました。」
 「たくさん落花生がとれて,うれしかったです。」
 「感想や質問を聞かせてください。」

4.千葉県のラッカセイの話を聞く。
  ※柏市立中原小学校
 「太郎生小学校から質問します。」


5.外国の野菜や果物の話を聞く。
  ※香港日本人学校大埔校

 「太郎生小学校から質問します。」



6.まとめ
 ○感想の発表とお礼を言う。
 ○お互いにあいさつをする。
  「きょうは,ありがとうございました。いろいろなことを勉強できてうれしかったです。」
  「また,これからもいっしょに勉強しましょうね。」
   太郎生小→中原小→大埔校

○司会進行は太郎生小学校でおこなう。
○香港日本人学校大埔校からは,中国語(広東語)のあいさつも入れてもらう。



○児童が描いた絵をカメラで写しながら説明させる。
○相手校には,太郎生小学校のホームペ ージにある画像を見ながら授業を進めてもらう。



○児童が作った落花生の模型を使って発表させる。(劇)
○ビデオで撮影しておいた画像を挿入する。






○千葉県や中原小学校での落花生栽培の様子を,簡単に説明してもらう。
○話を聞くときは,メモを取らせる。


○落花生が香港の町で売られている様子や,食べ方などについて説明をしてもらう。
○香港の子どもたちが普段食べている珍しい野菜や果物についても発表しても らう。



○その場で何人かの子を指名する。
○これからも継続して交流をおこなっていく意欲付けをする。



























※今回の授業については,担任は児童の指導に当たり,コンピューターは他学級の教師が担当する。これは,「きめ細かな教育に対する加配教員」がいるので,他の学級の指導にも協力体制を組むことができるからである。
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3. 学習の展開

 落花生収穫の喜びを伝えるテレビ会議を,千葉県柏市立中原小学校・ホンコン日本人学校大埔校との間でおこなった。授業中,大埔校のコンピューターがたびたびフリーズ状態になり,少し進行が妨げられることもあったが,太郎生小学校の子どもたちによる落花生栽培についての取り組み・収穫の時の劇を発表した。教室からの映像だけではなく,収穫の時に撮影したビデオ画像も送ることができ,中原小学校や大埔校からは子どもたちの気持ちや雰囲気がよくわかったという言葉をもらった。
 中原小学校からは,千葉県内における落花生栽培の様子(栽培をしている市町村別収穫量等)を教えてもらった。相手は6年生ということで,太郎生小学校の2年生にしてみれば少し難しい言葉もあったようだ。しかし,2度ほど説明を繰り返してもらううちに,理解も進んでいったように思われた。
 大埔校からは,香港での落花生販売の様子を写真を使って教えてもらった。また,香港で売られている珍しい野菜(白菜仔・通心菜)や果物(スターフルーツ・龍珠果)も,実物を使って見せてもらうことができた。

<授業の様子>
授業の様子
<香港の野菜と果物>
白菜仔
通心菜
(白菜仔)
(通心菜)
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4. 成果と課題

○相手校において,コンピューターがフリーズするということか数回起こった。これは,本校においても以前あったことである。これらのトラブルを防ぐためには,複数台のコンピューターを用意すること。また回線のトラブルを回避するためにも,現在使用しているCATVの回線のほかにISDN回線への切り替えもできるようにしておかなければならないだろう
○異学年交流の場合,往々にして高学年の児童の言葉が難しいということが起こってくる。今回の場合太郎生小学校は2年生で,中原小学校と大埔校の児童は6年生であった。事前の交流を通して,高学年は低学年にもよくわかるような言葉を選んで話すこと,低学年においては相手によくわかってもらえる話し方をするように練習してきた。これは,やはり場数を踏むことによって解決していくことであろうと考える。
○複数校(3校以上)でテレビ会議をおこなう場合,どうしても発表校と視聴校に立場が分かれてしまう。授業後の話し合いで視聴校の学習権保障が問題になったが,発表するだけが学習ではなく,聞き取りにくい状況下でもしっかりと聞くことも学習であると考える。内容をどこまで把握できたかが問題となろうが,この授業の一幕だけでなく,何回と繰り返される長いスパンで児童を見つめていきたい。
○1時間の授業の中で,相手校が2つというのは,時間的に無理があった。相手校を1つに絞って,お互いに十分な時間を設定した上での交流が望ましいと思われる。

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