E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  滝中学校

中学生のための情報・理科・国際理解・環境教育のためのカリキュラム開発

中学校1・2年生,理科・情報
滝中学校 メディア・コミュニケーション・センター 教諭
栗本直人・加藤雅樹
kurimoto@taki-hj.ac.jp・mkato@taki-hj.ac.jp
http://www.taki.ed.jp/

キーワード:中学校1年生,中学校2年生,情報教育,国際理解教育,環境教育,カリキュラム開発,総合評価,プレゼンテーション能力

1. はじめに

 本メディア・コミュニケーション・センターは,中高6年一貫の滝学園(愛知県江南市,http://www.taki-hj.ac.jp/)に,最先端のネットワーク機器と座卓形式のオープンターミナル室を備え,1998年に完成した。本年度より,中学校1・2年生(約290名・260名)に,情報・理科の授業の中で,情報教育,環境教育,国際理解教育などをすすめるための独自のカリキュラム開発を行った。本センターは,中学生・高校生からなるMC(メディア・コミュニケーション)クラブ(http://www.taki.ed.jp/)及び各クラスからなるMC係の生徒の運営となっている。このクラブは,地域のシニアの方々との異世代間交流・国際交流・自律プロジェクト(http://www.nextage.ne.jp/,東海スクールネット研究会http://www.schoolnet.or.jp/運営)を自主的に行い,カリキュラム開発のバックアップをはたしている。

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2. 単元名 環境問題について

2.1 目標
・電子メールの処理・Web検索・Webページ作成・プレゼンテーション能力の習得を行う。
・夏休みの課題として,「身の回りの環境問題」について調査・研究を行い,自宅の回りの環境問題について意識を高める。
・ネパールの同世代の中学生と交流を行う中で,異文化を体験し,国際理解を図る。さらに,ネパールのKathmandu市内の環境問題についても発表を行い,かかえている問題点について理解を深める。
・「身の回りの環境問題」についての発表を全員に行わせて,かつ生徒全員による総合評価を行う中で,自分のプレゼンテーション能力のチェックを行わせる。

2.2 利用環境
授業はメディア・コミュニケーション・センターで行う。本センターは,44台の座卓に,22台のノートPCが用意されている。放課後は,一般開放も行っている。

メディア・コミュニケーション・センター
メディア・コミュニケーション・センター
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3. 学習計画

時間

学 習 活 動

留 意 事 項

基本的なITスキルの習得(1学期10回分)

 

 

1回目:情報の授業の説明とスキルのアンケート調査  →どれくらいITスキルを入学前にもっているかを把握する。
2回目:パソコン機器とケーブルの接続の説明・注意 →センター内のルール,基本的なPC&ネットワークの基本操作を徹底する。
3回目:電子メールの設定(生徒1名1アドレス) →パスワード教育には注意する。
4回目:個人に電子メールを送る実習1 →@以下の意味及びメールサーバーとPCの関係を理解させる。
5回目:個人に電子メールを送る実習2 →チェーンメール,添付ファイルなどのマナーについても徹底させる。
6回目:メーリングリストの説明(クラスのMLへ送る実習) →メーリングリストの構造を理解させる。
7回目:学年のMLへ送る実習 →送る際に,自己紹介内容を入れて,あとで,データ処理を行わせる。たとえば,生年月日,趣味,クラブなど。その上で,発表する際の簡単な注意点を指摘して慣れさせる。
8回目:自己紹介メールの分析と発表資料作成 →夏休みの宿題をこなすために行う。

9回目:2人1組で,発表を行う。
10回目: Web及び検索エンジンの実習1
夏休みの宿題

→「身の回りの環境問題」について調査・研究を行う。

プレゼンテーション能力の育成(2学期10回分)

11〜12回目 国際理解教育とプレゼンテーションの体験

13回目 プレゼンソフトの説明を行う。

14〜16回目 「身のまわりの環境問題」発表資料の作成実習1〜3
17〜20回目 発表(クラス全員の総合評価)
21回目 総合評価の集計と分析







冬休みの宿題

→ネパールの中学生をご招待して,Kathmandu市の環境問題について発表をお願いした。また,日本側も英語のプレゼンを用意してお互いの簡単な交流会を開催した。
→プレゼンテーションソフトを利用して効果的なプレゼンテーション方法について解説をする。
→発表の際に,以下の項目について注意を促す。
1) 声の大きさ
2) 言葉の明瞭さ
3) 話す速さ
4) アイコンタクト
5) 相手の表情の確認
6) 経験度胸
7) 内容の難易度
8) 文字の使い分け
9) 発表内容の順番の工夫
10) 文字・図・写真などの使い分け
→冬休み宿題「『米国同時多発テロ』に関する新聞報道から自分の考えを述べよ」というレポート提出を求める。

Web作成を行い情報発信を行う。(3学期5回分)

22〜26回目 自分のWebページを作成する段階的課題解決型実習1〜5を行う。

→課題型の実習を行う際に,指示はすべて電子メールで行う。たとえば,「以下,簡単なWebページの見本を作りました。
1) ブラウザで見てみましょう。
2) このファイルを書き換えるには,どうしたらよいでしょうか?」
3) 2)のファイルを書き換えて,マイドキュメントの中に,index.htmlという名前をつけて保存しましょう。
4) サーバーに接続します。接続先は,IPアドレス=192.168.1.101のサーバー,アカウントは,自分の(A組1番なら,2001a01)アカウントそしてパスワードが必要になります。
5) 自分の領域(サーバー上の/export/home/2001a01)にweb-doc という箱=フォルダー=ディレクトリを作って,index.html というファイルをそのweb-doc というフォルダーの中にFTPしてください。そうすると,http://www.j1.taki.ed.jp/~2001a01/と,URLに自分のWebページが出現します。さあ,頑張りましょう。という問いかけ型にする。

次年度の準備

春休みの宿題

『米国同時多発テロに関する新聞報道』から自分の考えを述べよをWeb化させる。

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4. 学習における参考事項

4.1 使用教材の紹介
 本年度使用した教材は,東海スクールネット研究会の中学校部会で作成した ---インターネットで交流---「情報とコンピュータ」(http://www.schoolnet.or.jp/junir_txt/,教育家庭新聞社)である。これは,東海スクールネット研究会の中学校部会の先生方がカリキュラム開発の目的で独自に作成されたものである。

4.2 発表に対する総合評価
 発表に対する評価は,生徒同士の総合評価で行った。チェック項目は,次の10項目について,○,△,×の3段階評価で行った。<1>声の大きさ,<2>言葉の明瞭さ,<3>話す速さ,<4>アイコンタクト,<5>相手の表情の確認,<6>経験度胸,<7>内容の難易度,<8>文字の使い分け,<9>発表内容の順番の工夫,<10>文字・図・写真などの使い分けをチェックした。1人の発表に対して,残りの生徒が以下のような評価を集計した。
例) Nさんの場合

 
×
 
×
声の大きさ
19
18
2
経験度胸
34
5
0
言葉の明瞭さ
26
13
0
内容の難易度
31
8
0
話す速さ
32
7
0
文字の使い分け
28
9
2
アイコンタクト
33
6
0
発表内容の工夫
30
9
0
相手の表情
32
7
0
図など使い分け
33
5
1
 時間の関係でできなかったが,同じような発表をもう1度行って評価が向上すれば,効果が上がったことになる。また,いい加減な評価は,生徒達からの申告で,除去できることもわかった。
写真1:「川の酸性度」についての発表する様子
写真2:発表を聞きながら総合評価する様子
写真1:「川の酸性度」についての発表する様子
写真2:発表を聞きながら総合評価する様子

 写真1・2は,その発表風景と評価する様子である。また,クラスの全員の前で発表した生徒の感想(反省)としては,以下のようである。
例)N君の感想:『ぼくがプレゼンテーションをやってみて思った反省を書きます。よかったことは,前に出てしゃべるときに大きな声で,できたことです。少し緊張したけどしっかり発表ができました。特に感想を言うときの声が大きかったと思います。人のプレゼンテーションは,しっかり聞けました。でも少ししゃべってしまったのが残念です。それで,わるかったことは,紙をほとんど見ていて,アイコンタクトができなかったことです。それに,たまに詰まってしまうこともありました。感想と目次が書けていなかったので,口だけでしゃべることになってしまったことも残念です。でも,それを反省し,今はきちんと直している最中です。 ひとのプレゼンテーションの評価は,すべてきちんとやり,メモも書くことが多かったです。』

4.3 授業の公開(ストリーミングサーバー)
 当初,授業の様子を,Realのストリーミングサーバーで随時公開して,保護者の方々にご意見をあおぐ方向で検討・実施したが,マンパワー不足の問題で今後の課題となった。URLは,http://www.taki.ed.jp/ のTOPページからリンクがある。

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5. 今後考えるべき事

 今後考えるべき事は,生徒のEffective Communication能力とEffective Presentation能力の育成である。すべての教科の中からこれを育成するのに適したカリキュラムを探して開発することが重要である。生徒が自分自身の能力を自己評価(チェック)しやすいカリキュラム開発を行うことも重要である。
 また,指導要領のしばりがゆるくなったとき,カリキュラム開発は学校独自に行うことになる。それは,学校独自にカリキュラムスペシャリストの養成が必要になる。これは,学校の経営にとっては,重大な動きとなり,今から,これに対する対応をするのが重要な課題となる。

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6. 現状での問題点

 カリキュラムに関しては,試行錯誤しながら,積み上げてきた。1年終わったものに関して,フィードバックする方向で考えている。現状での問題点は,
1. パソコン部品の故障・サーバーの不調が結構起きたのでこのメンテナンスも重要な課題である。
2. パスワード管理の不徹底あるいは外部からのウィルス・アタック防御も重要な課題である。
3. ストリーミング・Webサーバー管理要員の不足は否めない。
4. 学校と保護者,MCCとMCクラブの連携の難しさ
などがあげられる。また,ストリーミングサーバーを維持するには,現状の128kbpsの2本では,回線スピードが遅く,外の同時使用には,なかなか難しい。
 今後においては,今回友好関係を確立したネパールの交流校とフェースツゥフェースの交流を定期的に行えるシステムを作りたいと考えている

ワンポイントアドバイス
・枠にとらわれず,生徒と対話しながら,生徒に無理のないカリキュラムを作ることが大切である。
・生徒のEffective Presentation & Communication能力をいかにすると高められるかを常に考えるとよい。
・教材はできるだけ自前で,プリントを作るなり自前の教科書を作成するとよい。

協力機関:東海スクールネット研究会
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