E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
目次へ戻る総目次へ戻る

実践事例の報告  三重県立四日市西高等学校

国語科・社会科・英語科の連携による「比較文化」の授業
−パソコン・インターネットを活用したテーマ研究・発表と国際交流−

高校・全学年・比較文化・社会・国語・英語
三重県立四日市西高等学校
清水 豊
shimyuta@cty-net.ne.jp
http://www.bebop.gr.jp/~shimyuta/esq/estop.html
キーワード 国際交流,比較文化,異文化理解,韓国,グループ研究,プレゼンテーション,
Eメール,インターネット

インターネット利用の意図
 本校は全日制普通科高校であるが,各学年に1クラスづつ「比較文化・歴史コース」が設置されている。このコースでは「比較文化」「国際関係」「クロスカルチャー」などの学校独自科目が設置され,特色ある授業を行ってきた。これらの科目の独自性や特色をよりいっそう引き出すために,また,今後の教科情報や総合的な学習の時間などを視野に入れ,生徒自らが課題を設定し,調べ,意見を交換し,まとめ,成果を発信・共有するための手段を考えた時,インターネットの利用をおいて他に勝るものはないと考えた。

目次へ戻る

1. 「比較文化」におけるグループ研究とその発表

(1) 指導目標
(a)教科をまたがった総合的な視野に立ったものの考え方の育成とそれを実現するための授業の展開
(b)生徒が自分自身で問題意識を持ち,研究を深められる自発的学習態度の養成
(c)生徒が自分の研究成果を他の生徒や教員の前で発表できるようなプレゼンテーション能力の育成
(d)英語力の向上・国際的コミュニケーション能力の育成と異文化理解
(e)パソコンやインターネットなどIT活用能力の育成

(2) 利用場面
 この取り組みでは,各グループのテーマ設定や調べ学習,韓国とのメール交換,成果をwebページにまとめる,発表会などすべての場面を通じてコンピュータ・インターネットを利用した。

(3) 利用環境
(a)パソコン教室(windows98マシン42台,CATV回線によるインターネット常時接続)
(b)web作成にはIBMホームページビルダー,Netscape Composer,MS Word,メールはyahooメールのアカウントを取得させて使用。

目次へ戻る

2. 指導計画・案

2.1 1学年(1単位)
 2学年での韓国修学旅行に向けて,韓国の高校生との交流と異文化理解を目標とする。英語科・社会科の担当教員のチームティーチングにより実施。

(1)1学期
・2学期の韓国との本格的な交流に向けて,パソコン・インターネット・メール等の使用技能の習熟をめざす。
・7月28日に名古屋で開催される「World Youth Meeting in Nagoya 2001(以下WYM)」で,韓国の高校生と共同で異文化理解に関するプレゼンテーションを行う(クラス代表5名,残りの生徒は観衆として参加)。
・WYMでの発表に備え,来日する韓国の高校生と合同合宿をおこなう。(上記クラス代表5名)

4月

授業の概要説明,情報機器操作に関するアンケート(1時間)

5月

パソコン操作説明(1時間)
ワープロソフト(MS Word)操作説明・実習(2時間)
yahooメールアカウント取得,メールの基本操作説明・実習(1時間)

6月

韓国への自己紹介メール作成,送付(1時間)
WYMに向けたアンケート実施,メールの返事確認と返信メール作成(1時間)
韓国とのメールの交換,グループ分けなど(2時間)

7月

WYMへの取り組み(クラス代表5名,課外時間及び夏休みを利用)
・アンケートのまとめ,分析
・パワーポイントによるプレゼンテーションの作成
・韓国高校生との合同合宿・歓迎会などの準備,実施
・WYM当日の発表

※WYMについては,http://www.japannet.gr.jp及びhttp://www.japannet.gr.jp/w2001を参照。

(2)2学期
・1学期の韓国との交流の継続と異文化理解。
・韓国の生徒に対して本校の生徒をいくつかのグループに分け,それぞれのグループで独自のテーマを設定してアンケートや意見の交換を行う。
・テーマの設定については,Youth culture, Food, Holidays and Events, Language, Society and Cultureの5つのカテゴリーを各グループに割り当て,そのカテゴリーに関した具体的なテーマを設定させる。
・設定したテーマに関する調査を行い,成果をwebページにまとめ,意見交換を行う。
・使用言語は英語。

9月

授業の概要説明・グループ分け(1時間)

10月

韓国とのメール交換の継続,テーマに関する意見や資料の交換(4時間)

11月

韓国とのメール交換の継続,テーマに関する意見や資料の交換(適宜)
webページ作成のための調べ学習(3時間)
webページ作成(1時間)

12月

Webページ作成(1時間)

(3)3学期
・研究の成果を,クラス全員の前で発表する。(グループ別)
・それぞれの発表について,クラスの生徒全員で相互評価を行う。
・まとめたwebページを韓国に送り,感想・意見などを交換し,今後の交流につなげる。

1月

Webページ作成(1時間)
発表の準備(原稿作り,役割分担など)(1時間)
発表と評価(1時間)

※2月以降は国語科担当者による独自内容。

2.2 2学年(2単位)
 夏休みの韓国修学旅行に向けて,韓国やアジアに関する興味・関心を引き出し,理解を深めることを目標とする。

(1)1学期
・ワープロソフト・ホームページ作成などについての講習。
・クラスを9グループに分け,グループごとに「韓国」に関するテーマを設定し,書籍・インターネットなどを通じて研究する。
・研究の成果をウェブページにまとめる。
・発表会。グループ別にプレゼンテーションを行う。
・発表とwebページについて,評価シートを使い,グループ単位で相互評価。

4月

授業の説明・機器操作に関するアンケート(1時間)
「文化」とは(講義,1時間)
パソコン操作説明(1時間)
ワープロソフト(MS Word)操作説明・実習・課題提出(2時間)
グループ研究についての説明・グループ分け・テーマ選定(1時間)

5月

図書館にてグループ研究・調査(3時間)
webページ作成講習(ホームページビルダーなど)(3時間)

6月

webページ作成(図書館の調査研究と並行)(4時間)
研究発表会(2時間)
webページ評価会(1時間)

 〈研究発表会〉授業時間を利用して,発表会を実施。2時間の授業時間を利用し,作成したwebページを利用して研究成果についてグループ別に発表。発表グループ以外のグループによる相互評価を実施。校長・教頭その他の先生方に傍聴と評価を依頼。
 〈web評価会〉発表会だけでは,作成したwebをお互いにじっくりと見る時間がないので,別時間でwebの評価会を実施。
※この学年は教科別に教員が単独で授業を担当することになったので,2学期以降は各教科の担当者が独自内容を実施。ただし,2学期担当の国語科教員は,クラス担任として韓国修学旅行に同行したこともあり,韓国でグループ別にデジカメで画像を撮影させ,その画像を使ってグループ別に韓国修学旅行に関するパワーポイントファイルを作成させ,プレゼンテーションを実施した。また,3学期後半には,担当者3名のTTにより論文集作成を予定している。

2.3 3学年(2単位)
 「比較文化」の授業の総決算として,グループ別テーマ研究・発表,論文集の作成を目標とする。英・国・社の担当教員3名によるチームティーチングにより実施。

(1)1学期
・ワープロソフト・ホームページ作成等についての講習
・クラスを9グループ程度に分け,「比較文化」あるいは「異文化理解」を大きなテーマとして,グループごとにテーマを設定し,書籍・インターネットなどを通じて研究する。
・パソコンを使ってwebページにまとめ,発表会を行う。
(授業計画は,上記2学年1学期とほぼ同じため省略)

(2)2学期
・「比較文化」あるいは「異文化理解」を大きなテーマとして,各個人ごとにテーマを設定し,書籍・インターネットなどを通じて研究する。
・成果を論文にまとめる。
・中間発表会。一人約5分で,論文のテーマ・骨子の説明,現在までの進行状況報告,質疑応答などを行う。
・論文の最終提出はワープロソフトで作成したもので行い,そのデータを使って,自分たちで論文集を作成・製本する。

目次へ戻る

3. 学習の展開

 今回の取り組みを通してさまざまな場面で,生徒が意欲的に,主体的に取り組み,成し遂げた後の達成感を実感し,感動する場面があった。そのような生徒の生の声を感想の中からいくつか取り上げてみる。

「すごくおもしろく感じたのはキーボードで文を作成しているときでした。だんだんキーボードをたたくのが早くなってきているのがわかってうまくなってきてるのかなぁとか思ったりしました。たいへんだったけど,自分たちのホームページができてくるというのはうれしかったです。」(2年男子)
「はじめは,本当に先が心配でした。珍島という珍しい他の班では思いつかないようなテーマに決まったときは,心配よりも,先がとても楽しみになりました。文献がなかなか見つからず,四苦八苦して,前回作った文がうまく保存されていなかったり,画像の取り入れ方がわからなかったりと苦戦しました。でも,各ページができあがり,リンク張りはとても楽しかったです。リンクが張れて文字の色が変わったとき,班員みんなが,そのたびに歓声を上げました。そして完成した時は,とても嬉しかったです。発表は緊張して,声がいつもより高かったです。」(2年女子)
「今回の比文の授業では,パソコンのことをいろいろと学びました。けれども私はパソコンよりももっと大切なことを学んだと思います。それは,グループで何かを作るということの難しさです。グループで何かをするということは,与えられたことをするのではなく,自分たちで分担を決めなければなりません。今回,私たちのグループはそれが全くというほどできていませんでした。またこのような機会があれば,今回の反省を生かしたいと思います。」(2年女子)
「私は,もともと英語は得意ではない。言いたいことは,たくさんあるのに言葉が出てこなくて頭の中がパニックになって,黙り込んでいた。この悩みを去年ワールドユースに参加した,先輩に相談した。先輩は,「とにかく,単語だけでもいいから自分から積極的に話をしたら,絶対わかってくれるから,自信もちな。」と言って励ましてくれた。私は,本当に単語だけで通じるのかなぁと思いながら,彼女たちに話しかけた。わかりにくい英語なのに,彼女たちは私に,ゆっくりわかりやすく答えてくれた。私が,理解するまでずっと話してくれた。話が通じたとき私は,とてもうれしい気持ちになった。私は,それから彼女たちの話に答えようと,懸命になれない英語やジェスチャーをいれたりしながら,話していた。私は,ずっとそうやって彼女たちと夜に家族の話や学校のこと,いろいろな話をすることができた。いつの間にか,自然に私の中に英語が身についていた。こんな感覚はじめてだった。合宿が進んでいくにつれてこれを実感していた。いつしか,日本語で話していても英語に聞こえたりして,とてもへんな気分になった。もしかしたら,言葉の壁を気にしていたのかもしれない。確かに壁は厚い。でも,その壁を破らなければ,たくさんの人とめぐり会うことができないんじゃないかと思った。一生懸命に言葉を伝えようとすれば,人には伝わることをこの合宿で彼女たちに教えられた気がした。とても,素敵な一日だった。このワールドユースに参加して,感じたことはたくさんあった。自分の世界が広がった。それに,一番の宝物ができた。かけがえのない友達だ。彼女たちとずっと友達でいたいと思った。本当にワールドユースに参加してよかったとおもった。」(1年女子,WYM・合同合宿にクラス代表として参加)

目次へ戻る

4. 成果と課題

 生徒における成果は,上記感想みられるように,1(1)で示した指導目標をほぼ達成できたと考えている。指導目標に上げてはいなかったが,今回の取り組みでコラボレーションの重要性や意義について認識した生徒がたいへん多かったことは特筆すべき点であると考える。
 対生徒以上に成果が感じられたのは,教員の意識や取り組みの変化である。残念ながら全学年でTTの実現はできなかったが,1年では英社のTT,3年では3教科の担当者による年間を通じてのTTが実現した。従来までの教科別講義形式からの脱却がはかれ,それがある程度の成果を収めたことで,来年度以降の比較文化の授業を今回のような形式で継続していくための道筋ができた。また,今回TTを行った教員やそれ以外の教員の中にも,自分の教科での単独授業やホームルーム活動などにパソコン・インターネットやグループ研究,プレゼンテーションを取り入れるなどの波及効果がみられ,学校全体として情報機器やインターネットを活用する授業が増加した点も大きな成果であった。
 課題としては,単位数が少ないために研究内容の充分な深化とその成果の共有が難しいことと,各教科からの授業担当者が毎年変わるので,来年度の担当者によっては取り組みの継続が難しいことである。

ワンポイントアドバイス
・校内外に志を同じくする仲間を見つけ,あるいは感染,増殖させる。
学校も情報化が進み,個人的にパソコン・インターネットを活用する教師は確実に増えているが,いざそれを授業で活用するとなると,いったいどうやったらよいのかわからない,というのが現状であろう。このような潜在的な仲間を一人でも多く見つけだし,仲間にすることである。そういう人たちとともに,Eスクエアの授業実践例などを参考にとにかくパソコンを使った授業に取り組んでみることである。最初は教員が修学旅行や遠足等で撮影したデジカメ画像を見せるだけでもいいと思う。次はそれをパワーポイントやWEBページにまとめてみたり,同様のことを生徒に取り組ませてみたり,少しずつ試行錯誤しながら取り組んでいけばよいと思う。百里の道も一歩から。

〈参加・協力校〉
 韓国:新亭女子商業高校(一昨年度より比較文化の授業でメール交流を継続)
 日本:福井県立福井商業高校,名古屋市立西陵高校,名古屋市立若宮商業高校,名古屋市立緑高校,南山国際高校,三重県立川越高校,三重県立いなべ総合学園高校,菰野町立菰野中学校,松阪市立松阪中部中学校,中京大学宮田研究室

目次へ戻る

前のページへ次のページへ このページの先頭へ戻る


CEC