E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  箕面市立萱野小学校

ネットワークを活用した小学校国語科学習指導
― 保護者・地域と協働で文学作品を読む ―

小学校第4学年・第3学年,国語科
箕面市立萱野小学校 渡辺信一
kayano_ele@maple.city.minoh.osaka.jp
http://www.city.minoh.osaka.jp/kayano-ele/home.html
キーワード 群読,ブックトーク,メールボランティア

インターネット利用の意図
 本実践は,小学校4年生と3年生の子どもたちが,詩の群読やブックトークを軸に,互いの活動を伝え合いながら,保護者・地域とともに文学作品を読み進めていくという総合的な学習活動である。本実践を展開するにあたって,子どもたち自身が学習活動を意識的に営むための「a.読みや活動の蓄積」,互いの読みを分かち高めるための「b.学習者どうしの伝え合い」,社会参加や生涯学習とつながる「c.保護者・地域との協働」の3つを柱に据えた。子どもたちと文学作品とを結びつけ,そこから生まれる読みと読みとを結びつけ,さらには学校と家庭・地域とを結びつけていくという,多様な「読みのネットワーク」を活用した。今回の活動を支え,その可能性を大きく広げたのがインターネットを含むコンピュータのネットワークであった。

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1. 単元名

『詩を群読しよう』,『ブックトークを楽しもう』(4年生)
『モチモチの木ランド ―とどけよう おはなしのたね―』(3年生)

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2. 指導計画

(ユニット1とユニット2は,指導計画共通)

ユニット1
詩を群読しよう(4年生・7月〜9月・7時間)
ユニット2
ブックトークを楽しもう(4年生・11月〜12月・18時間)

◇第1次 「群読」「ブックトーク」って何だろう?
・地域の人や教職員による群読・ブックトークを聞き,特徴や工夫をつかむ。
◇第2次 群読・ブックトークに挑戦!
・群読・ブックトークしてみたい詩を選び,グループに分かれて練習する。
◇第3次 3年生や地域のみなさんに聞いてもらおう
・3年生の教室やホームページ上などで群読・ブックトークを発表。
メールボランティアや地域の人,卒業生などとの交流。

ユニット3
モチモチの木ランド(3年生・1月〜2月・20時間)

◇第1次 お話のたねを見つけよう
・斉藤隆介『モチモチの木』を読み,自分の読み(お話のたね)を書く。
◇第2次 お話のたねを育てよう
・「モチモチの木ランド」で地域の人の影絵劇やブックトークなどを楽しむ。
・『モチモチの木』とつながりのある本を探して読む。
・インターネットなどで『モチモチの木』に関する情報を得る。
◇第3次 「モチモチの木ランド」でお話しよう
・自分のお話のたねをもとに,グループに分かれてブックトークを組み立てる。
・「モチモチの木ランド」に4年生を招待し,ブックトークを聞いてもらう。

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3. 学習の展開
ユニット1
詩を群読しよう(4年生・7月〜9月・7時間)
群読をホームページに紹介
↑群読をホームページに紹介
メールボランティアとの交流
↑メールボランティアとの交流

 4年生は児童数75名,2クラスの学年である。「詩を群読しよう」の実践は,TT担当が加わり,毎時間,担任と二人で各クラスを2分割して進めた。
◇第1次 「群読」って何だろう?
 群読のイメージを子どもたちに伝えるために,地域での読み語り活動を続けておられる「たんぽぽ文庫」のみなさんにご協力いただいた。教職員といっしょに披露した群読をもとに,詩の読みや群読の工夫についての子どもたちとの交流をホームーページや電子メールを活用しておこなった。
◇第2次 群読に挑戦!
 1学期に学習してきた詩のなかから群読してみたい詩を選び,グループを組んでの群読に挑戦した。互いの詩の読みをカードに書き出して交流し,群読の工夫を相談した。各グループの読みや群読の工夫は,ホームページに掲載して交流。
◇第3次 3年生や地域のみなさんに聞いてもらおう
 同じ時期に詩の学習をしていた3年生の教室(3クラス)で,各グループの群読を発表した。互いの発表を聞き合って気づいたことや3年生からの感想は,カードに記入して交流した。当日は,たんぽぽ文庫のみなさんもご参加くださり,各グループの群読についてのコメントをいただいた。
 また,録音した群読を音声データとしてホームページ上に掲載し,箕面市メールボランティアや卒業生へメールを送ったところ,さっそく,いろいろなメッセージが届き,電子メールを活用しての交流を持つことができた。

ユニット1
ユニット2
ブックトークを楽しもう(4年生・11月〜12月・18時間)
ブックトークをホームページで発信
↑ブックトークをホームページで発信

 群読をとおしてつながりのできた3年生に,自分たちのおすすめの本を紹介しようということでブックトークに取り組んだ。
◇第1次 「ブックトーク」って何だろう?
 学習をスタートするにあたって,保護者と教職員がブックトークについての共通理解を得たうえで子どもたちをサポートしていけるよう,「PTA 本と親しむ学習会」を設定。学習活動への導入として,学校図書館司書と教職員によるブックトークをおこなった。
◇第2次 ブックトークに挑戦!
 全員が持ち寄ったおすすめの本を「ぼうけん」「ふしぎ」「いきもの」の3つに分類し,4〜6人のグループに分かれてのブックトークに取り組んだ。メンバーが紹介する本を読み込み,それぞれの本のつながりを考えながら,楽しいブックトークになるよう工夫した。
◇第3次 3年生や地域のみなさんに聞いてもらおう
 3年生の教室で,各グループのブックトークを発表した。互いの発表を聞き合って気づいたことや3年生からの感想を記入したカードをもとに,自分たちの活動を振り返った。校内読書週間にはブックトーク発表会を開催し,校外へはインターネットのホームページを活用して発信した。

 

学習活動

留意点

1

・ブックトークの概要をエディターを使って入力し,テキストファイルとして保存する。

・ブックトークの概要をホームページにリンク。

2

・ホームページ上で,互いのブックトークの概要を読み合い,コメントを交流する。

・メールボランティアや卒業生に,今回のブックトークの活動を紹介するメールを送る。

・友だちからのコメントをもとに,自分たちの活動を振り返る。

・伝えたかったことや,工夫したことがわかるように書く。

ユニット2
ユニット3
モチモチの木ランド(3年生・1月〜2月・20時間)
インターネットコーナーで情報を得る
↑インターネットコーナーで情報を得る

 4年生の群読やブックトークを聞かせてもらった3年生は,その経験を「モチモチの木ランド」づくりに生かしていった。3クラス91人が学ぶ学年棟に『モチモチの木』につながる本を集め,自分の読み(お話のたね)をもとにしたブックトークをおこなった。
◇第1次 お話のたねを見つけよう
 斉藤隆介『モチモチの木』を読み,初発の感想をカードに書き込んだ。その感想をもとに,『モチモチの木』のお話を読んでいこうということで「お話のたね」と名付け,全員のたねを分類して学年棟に掲示した。
◇第2次 お話のたねを育てよう
 お話のたねを育てるため,学年棟を「モチモチの木ランド」に変身させ,地域の方の影絵劇や保護者による読み語りを楽しんだ。インターネットコーナーでは,ホームページを活用して必要な情報を探した。一人読みコーナーでは,自分のたねの肥料になりそうな本を選んで読み,『モチモチの木』とのつながりを探し出した。
◇第3次 「モチモチの木ランド」でお話しよう
 昨年度『モチモチの木』を学習している4年生をゲストに,お話のたねをもとにしたブックトークをおこない,互いの読みを交流した。「モチモチの木ランド」での活動のようすは,ホームページに掲載することにより,保護者や地域へ発信するとともに,メールボランティアや卒業生など,さまざまな人との交流を楽しんだ。

ユニット3
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4. 成果と課題

 ひとまとまりの「言葉のネットワーク」としての拡がりをもつ文学作品を,子どもたちは,保護者・地域とともに,さまざまな活動や伝え合いを含む多様な「読みのネットワーク」を活用して読み深めていった。そこに,コンピュータネットワークを組み込むことにより,「a.読みや活動の蓄積」,「b.学習者どうしの伝え合い」,「c.保護者・地域との協働」を活性化し,子どもたちの読みをさらに確かで豊かなものにしていくことができた。

a.読みや活動の蓄積
 「詩の群読」では詩の内容や群読の工夫,「ブックトーク」では本の紹介,「モチモチの木ランド」では本と本のつながりをホームページ上にテキストデータとして蓄積していった。各グループの群読の録音は,音声ファイルに変換して掲載した。子どもたちの読みや活動を電子データとして蓄積しておくことにより,いつでも学習の流れを振り返ることができた。今回はコンピュータ室での活動だったが,校内LANが整備され,学年教室でのインターネット利用が可能になれば,さらに有効に活用できるであろう。

b.学習者どうしの伝え合い
 「詩の群読」のようにグループでおこなう活動を取り入れたことにより,子どもたちどうしの伝え合いを活性化することができた。「ブックトーク」も,グループ内で互いが紹介する本を読み合うことにより,読書の幅を広げ,読みを深めることになった。「モチモチの木ランド」では,見つけた本を伝え合うことが,子どもたちにとっての大きな楽しみとなっていたようだ。また,4年生と3年生との間での,学年を越えた伝え合いの場を繰り返し設定することにより,活動への意欲や達成感を高めることができた。

c.保護者・地域との協働
 学習をスタートさせる前の段階から,保護者・地域との打ち合わせや学習会を持ったことによって,より充実した学習活動を展開することができた。また,ホームページ上に子どもたちの活動のようすを掲載しておくことによって,学習のねらいや意義を把握していただけた。電子メールによる交流も含め,リアルタイムでの情報のやりとりによって,学習活動への速やかなフィードバックがなされた。

ワンポイント・アドバイス
 「活動記録」や「振り返りカード」など紙に書かれた情報と,「ホームページ」など保護者・地域と共有できる電子情報とが相互に関連づいていくような活用のしかたを工夫する。

ご協力いただいた団体
 「たんぽぽ文庫」,おはなし会「とんとんとん」,箕面市メールボランティアのみなさん

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