E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  大阪養護学校

障害児スポーツ大会のネット中継
− ストリーミングやアルバムを利用して −

大会運営担当者:大阪養護学校スポーツ大会実行委員会
田中 眞
ネットワーク担当者:大阪養護教育コンピュータ研究会
丹羽 登
ホームページ:http://maido.ceser.hyogo-u.ac.jp/~sports/
担当者メール先:nobchan.niwa@nifty.com

キーワード:養護学校 高等部 情報教育 ネットワーク ストリーミング ライブ中継

インターネット活用の意図
 本会では,大阪の養護学校間のスポーツ大会を実施してきた。その中で1999年度と2000年度にはmaidoプロジェクト(障害児のネットワーク活用研究会主催)の一環として,大阪の養護学校サッカー大会の途中経過やニュースを写真付き掲示板などを利用して行った。インターネットを通して,この様なメジャーではないスポーツ大会が,世界中で見ることが可能である。
 そこで,この様な地域密着型の障害児スポーツの中継という新しい企画を通して,スポーツ大会に参加した選手,そしてストリーミング配信に協力した生徒達が自信をもって続けていけるものにしていく。
 また,教員を中心としたスタッフの充実を図るために,これらの研修会を開催し,技術の獲得と各学校でのネット中継を行っていく上での課題等を明確にしていく。

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1. 障害児スポーツ大会のネット中継

(1) ねらい
 インターネットを利用したスポーツ大会の中継を利用して,ネット上での様々な課題を学習していくと共に,ホームページの製作やメールの利用,掲示板の利用を行っていく。 
  また今回の企画を通して,インターネットでの技術的な面について,研修会を通して教員が,各養護学校でネット中継が出来るように技術UPをはかる。

(2) 実施内容
 本企画は,大会実行関係を「大阪養護学校スポーツ大会実行委員会」が行い。ネット中継は「大阪養護教育コンピュータ研究会」が中心となって実行した。また学校での生徒指導については,大阪府立茨木養護学校の丹羽登が担当者として実施し,その校内体制の整備については,茨木養護学校情報教育推進員会のメンバーが中心となって行う。

 実施内容として,主として下記のことを行った。
  ビデオや写真等についての,肖像権や個人情報の保護の観点から検討
  撮影方法等の教員研修
  デジカメ&無線LANをつかっての撮影及びデータ転送の教員研修
  ストリーミングの教員研修
  デジカメ等の使い方の生徒指導
  Webページ作りの生徒への指導
  ストリーミングの生徒への指導
  本委員会以外の会が主催する大会を使ってのネット配信のテスト
  養護学校サッカー大会でのストリーミング配信と写真の配信
  掲示板等を通しての選手間交流

 なお,ネット配信のテストとして,他団体が主催した「第1回大阪府障害者スポーツ大会(2001.6.3)」の様子を録画し,問題点等を検討した。また「大阪養護学校スポーツ大会実行委員会」主催の大会は,バスケットボール大会とサッカー大会があるが,バスケットボール大会は写真配信と後日編集後にオンデマンドストリーミング配信を行った。
 今回のメインであるライブ配信については,2月10・11日の両日に行われるサッカー大会で実施する。ライブは配信については回線の速度の関係やパソコンの処理能力の関係から64Kの速さで接続するため小さな画面での配信とするが,編集後のオンデマンドは配信については,ADSL等のブルードバンドの普及に伴い,300K程度の速さについても配信する。

・大阪養護学校スポーツ大会実行委員会

6月
20日
 大阪養護学校バスケットボール大会役員会
7月
4日
 大阪養護学校バスケットボール大会監督者会議
7月
20日

 大阪養護学校バスケットボール大会開催

11月
30日
 大阪養護学校サッカー大会役員会
1月
16日
 大阪養護学校サッカー大会監督者会議及び役員会
2月
10日
 大阪養護学校サッカー大会(OBの部)
2月
11日
 大阪養護学校サッカー大会(現役の部)

・大阪養護教育コンピュータ研究会(本企画関連のみ記述)
6月16日 第1回委員会(ネット中継を行う大会の決定及び必要機器の確認)
7月19日 無線LANを活用したデータの送信研修
7月20日 バスケットボール大会の写真・VTR撮影

写真1 バスケットボール大会
写真2 バスケットボール大会
写真1 バスケットボール大会
写真2 バスケットボール大会
8月
24日
 第2回委員会(2学期の予定確認)
9月
22日
 教員対象のテレビ会議及びストリーミング研修1
12月
15日
 ビデオ編集及びストリーミング研修2
1月
19日
 第3回委員会(2月に向けての準備および今後の予定)
2月
5日
 ネットワーク中継説明会
2月
9日
 ネットワーク中継の試行
2月
10日
 大阪養護学校サッカー大会(OBの部)ネット中継
2月
11日
 大阪養護学校サッカー大会(現役の部)ネット中継

 この間,サーバーの分散設置やDDNSの利用,RealSaverの設置や実験を平行して実施。

・生徒への指導(大阪府立茨木養護学校)
 学校内において週2時間,教科「情報処理」の時間にWebページの作成を9月より実施する。タグの付け方,それらの意味など基礎的な部分を中心に行う。
 9月12日より,大阪府教育委員会,社会福祉法人「プロップステーション(http://www.prop.or.jp/)」,商工労働部雇用推進室対策課,大阪府健康福祉部障害保健福祉室就労支援課などと一緒に「情報チャレンジドコース」モデル事業を実施し,「プロップステーション」で就労に結びつくためのWeb作り,イラスト作りについて,「プロップステーション」の講師による授業を行う。実施回数は下記の13回。
実施時間 午前10:00〜12:00 午後1:00〜3:00 計4時間
実施場所 プロップステーション 神戸事務所
実施日: 9月12日(水),
 10月13日(土),20日(土),24日(水),31日(水)
 11月17日(土),21日(水)
 12月 1日(土), 5日(水)
 1月30日(水)
 2月 2日(土), 6日(水),16日(土)
 これらの実施と平行して,学校内においても週2時間,Webに載せる写真の修整や容量の調整,全体的なデザイン修正などWebページ作成について指導を行う。
 11月に学校での学習成果をまとめて,テレビ大阪主催のホームページ甲子園(http://www.tv-osaka.co.jp/hp-koshien/)に参加したところ,「私のお気に入りの店・おすすめの店」という作品で「テレビ大阪賞(2位)」を受賞。
 3学期に入り,視覚障害者や聴覚障害者の使用も考慮したWebページ作りの必要性とそのためのアクセスビリティーについて指導を行う。
 2月のネット中継を機会に,ネット中継の仕組みと方法(ライブ中継とオンデマンド配信)について指導を行う。

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2. 指導計画(学習は2時間を一つの単位として授業を行っている)

単元名 :Webページの作成
指導時期:2学期
指導計画:HTML言語について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2時間
       タグの利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2時間
       (文字の拡大やセンターリング等)
       Webページ作成ソフトを利用した作成・・・・・・・6時間
       (テーブルやリンク,色の変更などを中心に)
       グラフィックソフトを利用したイラストの作成・・・4時間
       (Webに載せるための最適化やベクトルデータの扱い等)
       グラフィックソフトを利用した写真の修整等・・・・4時間
       (レイヤーを利用した調整やアルバム作り等)     

上記には,「情報チャレンジドコース」モデル事業での学習内容は除いた。

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3. 学習の展開例

「グラフィックソフトを利用した写真の修整」
展開

 
学習内容 指導上の留意点 準備物等


 
各自がデジカメを持って校内を撮影する。(被写体は問わない)
15分間
・フラッシュ撮影の禁止
・撮影前に承諾を得る
・手ぶれに注意
デジカメ

 


・撮影してきた写真をメモリリーダーを通して見る


・露出不足や露出オーバーなどの写真の感想を述べる

・ソフトを使っての露出調整方法を学習する
・レイヤーを利用した露出調整を学習する。
・デジカメのデータをそのままでは見ることが出来ないことに気づかせる
・意図した写真と異なることに気づかせる
・明度・彩度・コントラストの調整を教える
・明度等の調整だけでは綺麗に修正できないことに気づかせる
・パソコン
・液晶プロジェクター
・メモリーリーダー


・PaintShopPro



・Webページに修正した写真を載せる


・著作権・肖像権について簡単に学習する
・カット&ペーストなど,様々な方法で写真を貼ることができるようにする
・他人の写した写真の無断使用禁止や被写体の人への承諾の必要性について指導する
・Dreamwerver
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4. 成果と課題

 予想していた以上にストリーミングが難しいものだと思われているようで,教員の関心がまだまだ低い。また大阪養護学校スポーツ大会主催以外の大会は,主催者が違うことと参加者に養護学校以外の児童生徒がいるため,配信の許可が間に合わないため断念した。
 また陸上競技や水泳といった個人競技は,どうしても個人情報の課題をクリアーしなければならない。そこでサッカー大会後のオンデマンド配信では,メンバーを限定したパスワード式のページによる配信を行うことにした。
 ストリーミングの配信ということで,容量の大きいサーバーの準備が必要であるが,配信用に準備していたサーバー不調で調整が7月下旬までかかってしまった。
 試験的に64Kの視聴を行ってみたが,スポーツは動きが速いため画像がぼやけたり,画面が小さいなど不評であった。ライブは配信で大きな画面を配信することは,まだまだ問題が多く難しいが,ADSL等のブロードバンドが急激に普及する中なので,オンデマンド配信については,300K〜500Kの速度を行うことにした。ま低速度での環境やパソコン初心者を考慮して,今後は当初考えていたリアルサーバーだけではなくウインドウズ・メディアエンコーダーによる配信も考えていく必要がある。
 今年度のサッカー大会は,茨木養護学校の近くで行うことが出来たため,ICOM社のご協力の下,無線LANを経由して,インターネットに配信することが出来た。

<参考>7月無線LAN講習会資料

無線LANの利用

                                       大阪府立茨木養護学校 丹羽 登

1.無線LANって何?
 LANを構築する時,一般的にケーブル(現在の主流はカテゴリー5)を使うが,ケーブルの敷設が難しい場所での使用や携帯性などの面から,無線を利用してLANを構築しようとしたもの。各会社ごとに独自規格の物を出していたが,現在はIEEE802.11bという国際規格に基づき各社が最大11Mの速さで接続できる無線LANを販売している。
 有効距離は,室外100m,室内30m程度
 接続の形態
 ・アドホックモード(アクセスポイントを使用せずに直接無線LANアダプタ間接続)

 ・インフラストラクチャモード(アクセスポイントを使用しての接続)

2.盗聴及び混線防止のために
<1> BSS-ID/ESS-ID(Base Service Set / Extended Service Set )
 グループIDで,BSSはアクセスポイントでしか通信が出来ない。
ESSは,ローミングを使ってアクセスできる範囲
<2> WEP(Wired Equvalent Privacy)・・・・ データ暗号化の仕組み
 上記のIDだけではセキュリティー上危ないので,データを暗号化して送受信するようにしたIEEE802.11bで定義されている。現在は,40ビット長の暗号が主流だが128ビット長のものも出てきている。

3.体への影響と校内LANとの接続
 ペースメーカー装着者などへの影響が,明確にされていないので利用には注意が必要。また,暗号化出来るとはいえ,不安な点もあるので現在の時点では,公的なネットワークにはつながない方が良い。

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