E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  岡山市立平福小学校

球体パノラマ画像を活用した共同学習の設計と展開
−体験!探検!発見! 瀬戸内デジタルマッププロジェクト−

岡山市立平福小学校
対象:5・6年 男子30名 女子10名  計40名
指導者:三宅 貴久子
キーワード:環境教育,総合的な学習,コラボレーション,インフォメーション画像,
遠隔共同学習

インターネット利用の意図
 子どもの情報活用能力の育成と地域理解の深化と郷土への愛着心の育成をねらって,瀬戸内海を舞台にプロジェクト型の交流学習に取り組む。個々の興味・関心・問題意識のもとにテーマを設定し,自分の調べた身近な地域環境の実態について,電子掲示板上で情報交換をする。さらに,互いの環境の実態をリアリティーをもってとらえることができ,子ども自らが意欲的に個々の追究の目を広げ,深める効果的な支援の一つとして,球体パノラマ画像を活用する。それによって,子どもたちのコラボレーションの質的な高まりが期待できるのではないかと考えた。そのなかで,自分なりの身近な地域環境に対しての考えを構築し,瀬戸内海の実態を多くの人たちへ伝えるともに,少しでも身近な地域環境に対しての能動的なかかわりを働きかけるために瀬戸内デジタルマップを制作し,公開する。

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1. 単元名「瀬戸内デジタルマッププロジェクト」

(1) ねらい
 5,6年の合同学習における環境学習では,1学期は体験活動を重視し,身近な自然「旭川」を調査・研究の舞台として個々の興味・関心・問題意識のもとに追究活動を展開し,水にかかわる様々な問題点を浮き彫りにしていった。その学習を通して,「水を大切にする思いをもっと多くの人たちに伝えるために自分にできることを考え,行動していかなければならないのでは・・」という思いが子どもたちの心のなかにわき上がってきたのである。特に,今年度の子どもたちは,旭川から瀬戸内海へと視野を広げ,瀬戸内海の実態に興味・関心をもつとともに,旭川や瀬戸内海の実態を地域や瀬戸内海に面した人々に知ってもらい,ともに身近な環境について考え,少しでも改善できるように行動していくことを提案したいと考えていた。
 そこで,同じ瀬戸内海に面した学校である富来小学校の子どもたちとの交流を支援し,子どもたちの思いや願いの多くの人たちに伝える手段として,デジタルマップを製作し,発信していくという単元を構想し,実践に取り組んだ。

図1 旭川の球体パノラマ画像
(図1 旭川の球体パノラマ画像)
図2 FCISの電子掲示板
(図2 FCISの電子掲示板)
図3 校内のコンピュータ環境
(図3 校内のコンピュータ環境)

(2) 指導目標
● 瀬戸内海の自然・歴史・文化等の様々な視点から見つめ直したり,川と海のつながりに目を向けたりして,未来の瀬戸内海のあるべき姿について,自分なりの考えをもち,自分たちが身近な環境にどのようにかかわっていけばいいかについて仲間とともに考え,思いや願いをもって行動することができる。 
● 瀬戸内デジタルマップの共同制作活動において,電子掲示板(ネットワーク広 場),インターネットメール及びテレビ会議等を利用して,他校の友達と情報交換しながら情報を集めたり,整理したり,自分にとって必要な情報を選んだり,マップを作って発信したりする力を身につけることができる。

(3) 利用場面
 課題設定場面において,まず身近な環境の球体パノラマ画像(図1)をみて,個々の気づきをその画像のなかに埋め込んでいく。そして,交流校と画像を交換し,相手校の画像や気づきをみることによって,双方の環境を比較し,様々な疑問点を見つけだし,テーマを設定した。その後,インターネットによる交流学習を開始し,共通の課題ごとに会議室を立ち上げ,追究活動に取り組んだ。

(4) 利用環境
  他校との交流については,FCIS(学校間交流支援ソフト)の電子掲示板を活用した。瀬戸内海に面した学校の子どもたちが参加しているネットワークである「瀬戸内キッズ」に参加し,そのなかの富来小学校の子どもたちとの交流を軸に学習を展開した。
  そして,各会議室のメンバーの顔を会議室内に貼り付け,子どもたち同士が互いを身近に意識しあえる工夫を試みた。

(5) 稼働環境
 64KBのISDN回線で接続
●情報通信インフラ
〈校内サーバ〉
WindousNT server 4.0
〈クライアント〉
Windous95 
 デスクトップ型(22台)
 ノートブック型(3台)
※LANシステムを構築
 Peer to Peer 型 
〈プリンタ〉
〈デジタルカメラ〉
 23台(35万画素)
 6台(230万画素)

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2. 指導計画
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3. 学習の展開
球体パノラマ画像を見た子どもの感想
球体パノラマ画像を見た子どもの感想
(球体パノラマ画像を見た子どもの感想)
図4 瀬戸内デジタルマップ
(図4 瀬戸内デジタルマップ)

(1)テーマ「瀬戸内デジタルマッププロジェクト」
 旭川は,岡山三大河川の一つであり,本校はその河口域に位置している。目の前には,旭川の水が注ぎ込む児島湾がみえる。そこは,もう瀬戸内海なのである。
 子どもたちは,身近な旭川の水や生き物などを自分の興味・関心・問題意識のもとにテーマを設定し,追究活動に取り組んでいくなかで,自分たちが出した家庭排水やごみなどによって,旭川や旭川の河川敷が汚されていることを実感する。そして,その汚された水が,瀬戸内海に注ぎ込むことから,「瀬戸内海の水はどうなのだろうか?」と新たな疑問に直面するのである。
 水を川から海へのつながりで捉えさせ,その水の実態に迫るためにネットワークを利用して交流学習に取り組もうと考えた。その際,見知らぬ相手の地域環境をよりリアルに受けとめることによって,子どもたちの追究の目を鋭くすることができると考え,球体パノラマ画像を活用しようと考えた。

(2)実践のポイント
<1> 互いの環境の実態のリアリティーを感じる工夫
 他地域との比較学習といっても,実際はその場所へ行って調査するわけではなく,ネット上の情報交換によって,自分なりに情報を関連づけて他地域の環境の実態を構築していくわけである。また,自分たちの地域についても,子どもたちは,自分の興味・関心のある場所・ものに対して調査・研究を取り組むのであって,それは点としての情報にとどまる。それを俯瞰的に見て,他の事象と関連づけることによって,より実態を明確にとらえることができると考える。今まではそれを情報交換等で,友達と情報を共有化するなかで関連づけを図ってきた。それを何とか映像とリンクできないかと考え取り組んだのが球体パノラマ画像である。
 球体パノラマ画像は,左右360°のパノラマではなく,上下の空間まで完全に実際の空間にいるのと同じイメージに再現する。しかも,その画像の中の任意のスポットポイントに,他の画像,音声,テキストなどの様々な情報を張り付け,それらをリンクすることができる。実際にこの画像を課題設定段階で子どもに見せた。子どもたちは,「わあー,学校の前が海だ」「きっと自然がいっぱいのところだな。平福とは違うなあ。」と口々にぶやいていた。そして,「児島湾は,児島湖ができてずいぶん海岸線がかわってきていると思う。富来はどうなのかな?それによって,何か影響はなかったのだろうか?児島湾の漁師さんたちは,魚が減ったといっていたと先輩達に聞いたけど・・・」と個々の興味・関心・問題意識のもとに自分のテーマを決定していった。
<2> データベースとしてのデジタルマップ
 デジタルマップを制作する時,昨年度制作したマップを見て,問題点を出し合った。その時,「自分が欲しい情報をすぐに見れる方が,みんなも見てくれるんじゃないかな。」という意見が出た。
 そこで,今年度は,インデックスをつけて,このデジタルマップにどのような情報が入っているか一目で分かるように工夫した。これによって,自分たちのデータベース的なものにもなり 今後の学習に活用できると考える。

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4. 成果と課題

(1)情報活用能力の向上

図5 瀬戸内ネット
図5 瀬戸内ネット

 子どもたちは,瀬戸内海に面している 大分県の富来小学校の子どもたちと「海」,「祭りと昔話」,「歴史」,「地形」の4つの会議室のなかで,情報交換をし,デジタルマップ制作へと学習を展開していった。オンライン上での情報交換は,時には自分の思いとのずれを感じたり,返信されてこないメールにやきもきしたして,学習が停滞したときもあった。しかし,「どのようにしたら自分の思いが伝えられるのだろうか」と考え,時にはFAXやテレビ会議等の手段と組み合わせながら,相手の状況を理解した上で,情報交換を継続していった。また,マップ制作では,自分たちが集めた情報を整理し,必要な情報を選択し,マップにアップする情報ページを作成していった。
 その際,必要とするグラフや画像などについて,使用許可を依頼する電子メールを関係機関に送り,承諾を得ることも自ら進んで取り組んでいた。マップ制作という学習活動において,情報活用の実践力はもちろんのこと,社会へ参画する態度や電子掲示板の仕組み等の科学的な理解を育成することができたと考える。

(2)社会への参加・貢献の態度育成
 最終的には瀬戸内海に面した地域にはすばらしい自然や文化遺産が残されていることが分かり,よさを大切にしたいという思いを高めるとともに,生き物や砂浜の減少等の問題点の原因の一つが自分たちの生活にあることを実感し,自分たちにできることを取り組んでいくことの重要性を感じ,日常的に行っているクリーン作戦や食器ふき作戦などの行動を校内外へ広げようと行動していく姿がみられるようになった。

ワンポイントアドバイス
1.交流学習の目的を明確にするためにも,子どもたちの課題設定は重要である。
 できるだけ,交流相手の地域環境がリアリティーをもって感じれるような工夫が必要である。
2.電子掲示板の活用において,テーマ別の会議室を設けて,相手との共同意識を高めるために相手の顔が見える掲示板の工夫などが重要である。

利用したURL:実践をまとめているホームページ http://www.ymginfo.org/users/kikuko/
教育工学協議会全国大会(富山大会)の発表プレゼン                     http://www.ymginfo.org/happyo/toyama/index.html

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