E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  山口市立大殿小学校

小学校「総合的な学習の時間」における英語活動の可能性を探る
− インターネットの活用,ネイティブ・スピーカーとの交流を通して −

山口市立大殿小学校
古谷尋伸
E-mail a02t@ohdono-e.ymg.ed.jp
キーワード 英語活動,ネイティブ・スピーカー,ITコーディネータ

インターネット利用の意図
 「総合的な学習の時間」では,子どもたちが主体的に活動することが大切であるが,インターネットを利用することにより,子どもたちの自ら考え,選択し,判断する力を育成することができると考える。また,いろいろな世界との関わりも広がり,意欲的・継続的な学習が期待できる。
 インターネット利用では,いろいろな情報を収集するだけではなく,世界に向けて情報発信することもできる。そいて,E-mailで世界の人々との交流も可能になるなど,子どもたちの英語活動の幅を広げてくれるものである。
 インターネット利用に関しては,小学生という発達段階を考慮すると,実体験(ネイティブ・スピーカーとの会話やふれあい等)も大切にしながら,必要最小限度の利用にとどめるようにしたい。

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1. 企画の概要

(1)ねらい
 小学校における英語活動の可能性,有効性を明らかにするとともに,来年度から本格的に実施される「総合的な学習の時間」を進める上での参考となる研究実践を行う。
 英語活動を進めることによって,日本とは異なった文化,生き方等に接することができ,そのようなちがいを認め合える気持ちが児童に芽生える。また,外国の文化に触れることによって,日本独自の文化のよさを見直す機会にもなるものと考えられる。
 それから,インターネットの利用により,正しい発音に触れる機会を多くするとともに,児童の情報収集・発信能力の育成を図る。

(2)利用場面
・外国の文化や日本の文化に関する情報収集
・英語の発音や英会話学習ができるホームページの活用
・E-mailによる情報交換

(3)インターネットの利用環境
 本校は,文部科学省が進める「先進的教育用ネットワークモデル地域事業」のモデル校の指定(平成15年度末まで)を受けており,衛星を介していつでも自由にインターネットに接続できる環境にある。現在,視聴覚室にはサーバー機を含め21台のコンピュータ,図書室には図書管理用ソフトが稼働するコンピュータ1台,理科室に1台,職員室に2台のコンピュータが全て校内LANで結ばれている。
 また,クラス担任一人でコンピュータを使った授業を進めることは難しい面もあるということから,コンピュータ操作に堪能な1名の保護者の方にITコーディネータとして勤務していただいている。この方は,T・Tという形で,担任とともに児童の指導にあたっていただくとともに,コンピュータの諸設定やトラブルへの対応,ネットワークの保守・管理等をしていただいている。

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2. 指導計画
  企画全体 4  年 3  年
1学期     ・「えいごリアン」視聴
・英語活動への導入(全校児童対象)として,Genki Englishという元ALTの2人組(リチャードとウィル)を講師に招き,英語学習と研究協議
            
 
・PTA学年行事「たなばた交流会」(6人の外国の方を招いて) ・留学生との交流会
夏休み     ・英会話学習用ソフトの選定,購入,インストール作業
    ・研究会参加,教材開発
2学期

        
 


 
・英会話学習
(英会話スクール講師による)月2回程度
・アメリカ人ゴードンさんとの交流(ゴードンさんから青い目の人形やアメリカについての話等)
・「えいごリアン」視聴


・留学生との交流会
3学期 ・研究のまとめ
・研究集録の作成
・英会話学習
・E-maiでの交流
・「えいごリアン」視聴
・公開授業[指導案]
・留学生との交流会
      ・来年度の英語学習の教材開発,年間計画作成  

第3学年 英語活動学習指導案

1 活動のねらい
  「提案する・誘う」表現に慣れ,世界のいろいろな国やスポーツに興味を持つ。
2 準備物
 ・「えいごリアン」のビデオ  ・世界地図  ・国旗のカード(自作)
 ・スポーツのカード(自作) ・学習プリント
3 本時の展開

活動の流れ
使用する英語(T:教師,C:児童)
教師の働きかけ
1 「えいごリアン」を
 視聴する。(15分)
2 会話練習をする。
What shall we do?
Let's 〜.



3 世界のいろいろな国のスポーツを知る。
 ・クリケット
 ・サッカー
 ・少林寺 
 ・カバディ
 ・弓道
 ・セパタクロウ 
 ・モンゴル相撲
 ・カポアエロ
4 ホームページのゲーム「スポーツ兄弟,世界へ!!」をする。
5 世界の国のスポーツで会話練習をする。


6 学習を振り替える
What shall we do today?  
Let's clean our room.
T:What shall we do today?   
C:Let's study English.     
T:There are many computers. So, what shall we do on them?
C:Let's use computers.
T:Let's study world sport.
We will study 8 different country's sports.
First, we will study 8 different
spots. The first one is 〜. The next one is 〜.
Next, we will study 8 different
countries. The first one is 〜 The next one is 〜.
T:This is the eigorian homepage. What shall we do now?
C:Let's play a game.
T:Today we will play this game.

T:What shall we do in England?
C:Let's play cricket.
T:What shall we do in Brazil?
C:Let's play capoeira.
C:What shall we do? T:Let's finish


・Please give me your answer.
・Let's say it.(いっしょに言いましょう)
  
・必要に応じて日本語での説明を加える。
 

・Let's say it.


・Let's say it.

・ホームページでどのゲームをするか指示する。
・必要なことはメモするよう指示する。
・児童同士での練習場面も用意する。


 
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3. 学習の展開

3.1 留学生との交流を中心とした3年生の実践
 年間を通して,NHK学校放送番組「えいごリアン」を継続視聴をし,学期に1,2回程度,ネイティブ・スピーカーを招き,交流会を各クラスごとに行った。
 2学期からは,インターネットを利用して,「えいごリアン」のホームページにあるゲームを楽しんだ。以前は,ヘッドフォンがなかったので,一斉にこのゲームをやると各コンピュータからの会話や音楽でよく聞き取れなかったが,ヘッドフォンを購入してからは,この問題は解決された。
 ネイティブ・スピーカーとの交流は,第1回目をイギリスからの留学生と7月に実施した。2学期には,オーストラリアからの留学生と2回行い,同じ留学生と3学期にも交流を予定している。

(1)第3回目の交流まで事前活動(11月29日〜12月15日)
 留学生の国,オーストラリアについてインターネットや,図書館で借りてきた本(学校の本だけでなく,図書館司書の先生が県立図書館からも借りてきたものも含む)などで調べて,それぞれ自分の興味あることをまとめた。(8ッ切り画用紙)また,ローマ字と日本語の両方が書いてある名札をコンピュータで作った。そして,各班で自分の調べたことを班の人に発表した。

(2)本校教員による英語活動(1月24日)[指導案]
 3学期に入り,オーストラリアの日本人学校に赴任経験があり,ある程度英語が話せる教員が3年生のクラスで英語を多く取り入れた英語活動を試みた。
○ 学習プリントの[学習をふりかえって]より

 ぼくは,カメルーンは,ぜったいサッカーと思っていたら,やっぱりサッカーでした。今日の勉強は,前よりもちょっと楽しかったです。ゲームをしながらクイズとかして,勉強の紙に書いたりしてとても楽しかったです。

 子どもたちの感想からも,「えいごリアン」のホームページのゲームを自由にやるだけよりも学習課題に向かってゲームに取り組む方が楽しいことが分かる。
 ゲームをすることは,どんなやり方をするにしても,子どもたちにとっては楽しいものである。しかし,そのような利用の仕方では,合ったか間違ったかに一喜一憂する程度の楽しさに終わってしまう。
 やはり,目的意識,課題意識を持って「えいごリアン」のホームページを利用し,ゲームなどの後には,学び取ったことを発表したり,ゲームでとり上げられていた会話を練習するなどの活動をすることがより充実した楽しい学習になるものと考えられる。

3.2 ホームページがもたらした4年生とゴードンさんとの交流会
 アメリカ人のゴードンさんが本校を訪問されることになったきっかけは,本校のホームページで,本校が保管している青い目の人形のことを目にされたことである。この青い目の人形というのは,戦前,アメリカの子どもたちから日本の子どもたちに贈られた一万体あまりの人形の1つで,現存するのは数十体と言われている。
 ゴードンさんの奥さんは日本人で,日本語もかなり堪能である。今回の来日の目的は,本校同様,青い目の人形を保管しているいくつかの日本の小学校を訪れることであった。
 ゴードンさんが来校されるに当たって,子どもたちは,事前に図書やインターネットで青い目の人形やアメリカについて調べた。当日は,ゴードンさんから青い目の人形やアメリカの話を聞いた後,子どもたちから多くの質問が出された。最後に子どもたちが「もみじ」をリコーダーで演奏し,「We Are the World.」を英語で歌った。
 ゴードンさんは,帰国後,交流会のことをホームページで紹介された。自分たちのことや写真が世界に向けて発信されたことに子どもたちは感激し,その後,ゴードンさんとメールをやり取りすることになった。

 

ビル・ゴードンさんのホームページ
ビル・ゴードンさんのホームページ
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4. 研究の成果と今後の課題

 今回の実践で,ネイティブ・スピーカーを招いた活動は大変有意義であった。担任が行う英語活動よりも,子どもたちは一生懸命に英語を聞き取ろうとするなど集中して学習に取り組むことができたし,外国への興味・関心を抱かせることができた。
 インターネットの利用においては,「えいごリアン」のホームページは,子どもたちが興味を持って取り組むことができ,英語活動への意欲化を図る上で有効であった。
 また,外国の情報などを収集するために,インターネットを利用したが,調べたことをまとめる上で写真は大いに役に立った。しかし,文章は大人向けのホームページがほとんどで,小学生には理解しにくいものが多かった。そして,コンピュータを利用する際にいろいろなトラブルが発生するなど,担任だけでは対応できないことも多かった。
 本校はこれまで2年間,緊急地域雇用対策の利用やPTAからの援助等でITコーディネータの方とともにコンピュータ活用を図ってきた。コンピュータ利用に関しては,現在,利用できる者と十分に利用できない者が混在する時期である。コンピュータを使った学習を指導できる教員にとっても,ITコーディネータの方の存在があれば,それだけ余裕をもってより充実した学習活動を展開することができるはずである。
 今後の小学校におけるコンピュータ活用を推進していく上では,子どもたちへの教育に関心があり,専門的な知識もあるITコーディネータがぜひとも必要である。
 これまでは,学校の情報化を進めていく上で,ハード面(物)には,かなりの予算措置がとられてきた。これからは,高額なハードがさらに活用されるよう,ITコーディネータ等(人)の雇用にも十分に予算化が図られるよう文部科学省や教育委員会に期待したいものである。

ワンポイント・アドバイス
・小学校でコンピュータを使った学習を進める上では,システムの管理,諸設定,トラブル対応等のできる専門的な知識を持ったITコーディネータの存在は大きい。また,その方が本校のように担任とT・Tという形で積極的に子どもたちへも指導ができる方であれば最高。

参考文献
・平成13年5月25日付「日本教育新聞」マルチメディア教育特集

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