E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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実践事例の報告  宮崎市立池内小学校

ネットワーク活用での表現力の育成
−いろいろな人との交流を通して相手にわかりやすく伝えよう−

小学校4年・社会・総合的な学習の時間
宮崎市立池内小学校
水野 宗市souiti@ma3.justnet.ne.jp
キーワード 表現力,ネットワーク,テレビ会議,インターネット,ホームページ

インターネット利用の意図
 インターネット(ホームページの活用,掲示板の活用)やテレビ会議システム等を活用して他地域の学校や関係機関との交流の中で「自分の考えを相手にわかりやすく伝える」活動を日常的に行い,表現力を育成することをねらいとしている。

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1. 実践内容

(1) ねらい
 インターネット等のネットワークを活用した学習のキーワードの一つに「交流」があげられる。交流のよさとして,情報の収集やいろいろな考えにふれたりできること,相手に伝えるために自分の考えをまとめ・整理・発信していくことなどがあげられる。学習の中で交流を行うことにより,児童は主体的に学び,考え,他者の意見を聞きつつ自分の意見を論理的に組み立て,積極的に表現・主張できるようになる。これこそが「生きる力」につながると考え,「交流」を積極的に行っていくべきだと考える。
 本実践では,情報通信機器を用いたネットワークを活用し様々な人々との交流の場 (「同学年との交流」「異学年との交流」「大学との交流」「関係機関との交流」)を設定し,様々な手段を用いて,日常的に「交流相手に自分の考えをわかりやすく伝える」という活動を行うことにより,児童の表現力の向上を目指す。
 本研究で向上を目指す表現力について次のように整理する。
 a) 文字というメディアによる表現(書き言葉)
 b) 音声というメディアによる表現(話し言葉)
 c) 身振り,表情,動作など身体をメディアとする表現
 d) 図表,イラストなど画像をメディアとする表現
 これらの表現を次の4つの手段を通して育成していく。
 「ホームページの活用」・・・・a),d) 「交流掲示板の活用」・・・・a),d)
 「テレビ会議システムの活用」・b),c)「デジタルカメラ・ビデオの活用」・b),c)

(2) 指導目標
 様々な相手との交流の場を設定し,相手を意識しながら,様々な手段(ホームページ, 電子掲示板,テレビ会議,ビデオメール等)を用いて伝える場を設定し,日常的に活動 に取り組んでいくことにより児童の表現力の向上を目指す。

(3) 利用場面
(a) ホームページの活用
 毎日の学習の様子,栽培している植物(ケナフ,桜島だいこん)の成長の様子を画像と文で伝える。また,インパクサイト「FATEReS」のコンテストへの応募を行うことに より,学習意欲の持続も図っていく。
(b) 掲示板上での交流を通した表現
 テレビ会議システムを活用して交流している学校とインターネット上での掲示板を通して交流する。テレビ会議システムで交流している内容と連動しながら活用する。   
(c) テレビ会議システムを通しての交流
 植物の成長の様子や社会科の学習(私たちの県)等を通して,音声や動作などを含めながら相手に表現する。
(d) デジタルカメラ・ビデオの活用
 ホームページやテレビ会議システムを活用して表現する際に同時に用いてよりわかりやすく表現する。また,デジタルカメラ・ビデオの特性を生かしながら活用していく。

(4) 利用環境
(a) 使用機種 PC-98MateNX(コンピュータ室),FMV-6866(教室),NEC9821V13(教室)
(b) 周辺機器 デジタルカメラ ソニーMAVICA(4台) 無線ルータ
        テレビ会議システム(NTTフェニックスミニ)
(c) 稼働環境 コンピュータ室40台,教室2台   
※ PC-UNIXサーバを利用した校内イントラネット
※ ケーブルテレビによるインターネット接続,ISDN回線を利用した無線ルータの使用
(d) 利用ソフト ハイパーキューブ,インターネットエクスプローラ6,Front Page Express

(5) 実施体制(交流の場の設定)
 「同学年の児童との交流」
 (熊本県上村小学校,静岡県上島小学校,鹿児島県古仁屋小学校)
 ・・・植物の成長(桜島だいこん)や社会科等の学習における内容での交流を行う。同じ内容等共通な点が多いことが長所である。
 「異学年児童(5年生)との交流」(富山県水橋中部小学校)
 ・・・植物の成長(本校「ケナフ」,相手校「お米」)について日常的に交流を行う。上学年の立場から,発表を違った視点で見てもらうことができる。
 「大学生との交流」(宮崎大学)
 ・・・児童が知らないことなど,広い視野からの視点で見てもらうことができる。
 「関係機関(博物館等)との交流」
 ・・・専門的な立場から,詳細な情報を教えていただいたり,助言していただける。

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2. 指導計画
(◎・・・日常的活動,○・・・単発的な活動)
  学習活動 留意点
1

リテラシー育成を中心とした活動
◆ホームページの活用
 ◎「がんばり日記」「ケナフ日記」の作成
 ○インパクサイト「FATHeRS」のコンテストへの応募
◆掲示板の活用
 ◎交流掲示板への書き込み

◆テレビ会議の活用
 ◎週1回のテレビ会議
(富山県水橋中部小)
 ○同学年との交流(熊本上村小)
 ○関係機関との交流(福岡マリンワールド)
◆デジタルカメラ・ビデオの活用
 ○ビデオメールの作成

・デジタルカメラの活用の仕方,ホームページ作成手順を実践を通して覚えるようにする。
・コンテストへの応募も取り入れ,意欲を高める。
・パスワードの入れかた,文字入力の仕方について実践を通して覚える。
・ローマ字入力を基本とする。
・交流校との実践(全体的)を通しながら,テレビ会議特有の雰囲気になれる。
・ケナフの成長の様子をわかりやすく報告するように視点を与える。
・知らないことを教えてもらったり,質問したりする活動を経験する。
・相手を意識しながら,自分のことを自己紹介する。
2



3

交流相手への表現を中心とした活動
◆ホームページの活用(継続的活動)
 ◎「だいこん日記」の付加

 ○インパクサイト「FATHeRS」のコンテストへの応募
◆掲示板の活用
 ◎交流掲示板への書き込み

◆テレビ会議の活用 
 ◎週1回のテレビ会議
(富山県水橋中部小,鹿児島県古仁屋小学校)
 ○社会科の学習(私たちの県)での交流
 ○宮崎大学との交流


◆デジタルカメラ・ビデオの活用
 ○10秒自己紹介の作成
(交流校に向けて)
 

・伝える内容を整理しながら作成していくように助言する。工夫した表現等を全体の場でとりあげ,工夫を促す。
・文字の色,形,大きさを工夫して伝えたいことを強調する方法を紹介する。
・掲示板への書き込みをした後,わかりやすいか読み返すようにする。
・画像を取り入れた表現を行う。
・植物の成長(ケナフ,桜島大根)を画像と言葉で内容を工夫しながら報告するようにする。
・相手の話を聞いて,質問するようにする。
・相手の発表も参考にしながら,自分の伝えたいことを整理する。
・自分たちが作成したホームページを見てもらい,良い点・修正した方がいい点などを教えてもらう。
・10秒と時間を区切り,伝えたいことを整理しながら,自己紹介を行うようにする。
・自己紹介ビデオを見て修正をする。
 
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3. 学習の展開

(1) 週1回テレビ会議
 毎週金曜日の朝の時間を活用して15分〜20分の交流を行う。内容については, 植物の成長の様子を中心に行い,児童の自由な考えを生かして交流を進めていく。

学習活動 教師の支援
1 めあてを確認する。 
 植物(ケナフ,桜島大根)の成長の様子などを工夫して伝えよう
2 伝える内容について話し合う
 ・役割分担
 ・必要なものの準備

3 植物の成長の様子等を伝える。



4 相手の発表を聞く。
5 質問,感想を発表する。
・どのように伝えると相手にわかりやすいかを工夫するように助言する。
・デジタルカメラなどを自由に活用させる。
・機器の準備を行う。
・応対の仕方に困ったときには助言する。
・相手に伝えたいことなどを自由に伝えるようにする。
・質問したい内容等を意識しながら聞くようにする。
・できるだけ進行は児童に任せる。

 週1回のテレビ会議(図1)では,一人一人の児童が表現活動に取り組めるように,group to groupでのテレビ会議を行うことにした。当初は,ケナフの葉っぱの数,大きさなどについて簡単に述べる程度であった。交流の中で,相手校よりいろいろな質問を受けてその場で答えられないことなどの経験を経て,ケナフの色の様子や葉っぱの形,ケナフにきている虫のことなど,より詳しく説明しようとする態度に変わっていった。また,回数を増やすにつれ質問に対して応対する事ができたり質問したりできるようになった。(図2)

週1回のテレビ会議の様子(図1)
質問をする児童(図2)
週1回のテレビ会議の様子(図1)
質問をする児童(図2)
撮影する児童(図6)
撮影する児童(図6)

(2) 10秒自己紹介
 交流している学校に自己紹介ビデオを作成して送ろうということになり,デジタルカ メラを活用して「10秒自己紹介」を行った。
 普段,なかなか時間を意識していない児童にとって,時間を区切って行うことは時間についての感覚を養う上でも有意義であった。また,だらだらと自己紹介するのではなく,自分のアピールポイントをできるだけ短く的確に伝えようと児童はそれぞれ内容等も自分なりに考えながら「10秒自己紹介」に取り組んだ。できあがった各自の「10秒自己紹介」ビデオを見て次のような感想を述べた。

・ ○○くんは,しっかりとカメラを見ているのでこちらに話しかけているように思えるのでよい。(カメラを見ていないと話しかけていないみたいだ)
・ 言葉は,ゆっくりはっきりと話す方が聞き取りやすい。
(言葉が早いと聞き取りずらい)
・ 最後まで,はっきりと話したほうが良い。(語尾が聞こえない人がいた)
 その後,ほとんどの児童から「先生,もう一度自己紹介を撮り直したい」という意見が出た。そこで,前述の内容等を再度確認して,撮り直しを行うことにした(図6)。撮り直した後には,再度見直しそれでよいかを確認して,次の児童へと進んでいった。各グループでお互いに批評しながら,主体的に活動を進めていった。
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4. 成果と課題

(1) 「明日のテレビ会議は何を話そうか」などグループ内で相談する声が聞こえるようになった。デジタルカメラは誰の役割か,各自の分担等を自分たちなりに考えて決めるようになっていった。また,ホームページ作成についても自分たちで話し合いながら内容等を決め,表現の工夫を行っていった。
(2)  相手にわかりやすく伝えるためにどのように伝えればよいのか・・・数字を使う,たとえを使った文を取り入れる,などのことを意識しながらホームページの作成や電子掲示板の書き込みを行うようになった。そして,その意識は日頃の日記や授業中の発言などにも少しずつ見られるようになってきた。
(3) 当初は,相手の話を聞いたり質問されたりしても,沈黙しておりなかなか応対できなかったが,活動を続けるうちに相手が話したことに相づちを打ったり,質問をしたりすることができるようになってきた。
(4) 各メディアを通じて表現する力も日常の「書くこと」「話すこと」の指導が重要である。「書く」「話す」という基礎的な力を教科学習と連携しながらしっかりと養っていくことにより,表現力を向上させることができると思う。そのために,今後も基礎的・基本的な力を養う日常的な指導と情報通信機器を活用したネットワークを通した実践的な交流活動を組み合わせ,継続的な活動を続けていくことが必要である。
(5) 表現力が向上していることをどのような点で判断していくかという視点をよりはっきりとさせ,評価の観点を整理していく必要がある。

ワンポイントアドバイス
○ 教師自身のネットワークの広がり
  教師自身が,様々な学校や関係機関の先生方との交流を広げ,自身のネットワークを広げていく必要がある。
○ 年間を見通した計画の作成と交流相手との打ち合わせどこでどのような交流を行っていくのか,どのようなテーマで交流を進めていくのかを考慮し,年間計画を立て,それをもとにして交流する相手と十分な打ち合わせを行っていくことが大事である。

【参考文献】
○「新しい教育課程と学校作り(3)自ら学び考える力の育成」山極隆・無藤隆 編
○「情報社会を生き抜くプレゼンテーション技術」林コ治 編 (ぎょうせい)

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