E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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「酸性雨/窒素酸化物調査プロジェクト」実践マニュアル

2. プロジェクトの運営
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2.1 参加校の募集

2.1.1 参加校の募集方法

 広域の参加校を前提とした活動を行う場合,プロジェクト開始の第一歩として参加校の募集方法を考えていく必要がある。多くの参加校を集める場合,プロジェクトの広報活動も含め,幅広く参加の募集活動を行う必要がある。教育関係者に広く見てもらえよう,どのようなメディアをどのように利用していったかをまとめる。
 まず,本プロジェクトでは募集要項を掲示し,そのページへトップページからリンクを張った。ただ,このページを参加校募集期間中に参加校以外の学校関係者が見る機会は少ないと考えられる。また,できるだけ多くの教育関係者に見ていただけるページということで,Eスクエアプロジェクトのトップページに参加校募集のお知らせを掲載していただき,そこから酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクトホームページ上の参加校募集要項にリンクを張った。
 過去に,参加校募集に関する問い合わせも含め,プロジェクトに関する問い合わせをいただいた学校については,募集がはじまると同時に電子メールを送って案内をした。
 インターネットにおける広報手段として,メーリングリストも活用した。教育関係のメーリングリストも,かなりの数が存在している。理科教育や環境教育など特定の分野を対象とするものや,地域に根ざしたものなどさまざまである。今回の募集においても,これまで同様これらのメーリングリストに,参加校募集のお知らせを配信した。また,メーリングリストは参加者以外からの投稿を受け付けない場合が多いため,参加校の先生方が参加しておられるメーリングリストに転載していただくようにお願いした。
 情報教育や理科教育など地域を基盤とする研究組織も数多く,活発に活動しておられるところも多い。特に本プロジェクト参加校の先生方が関わっておられる組織の会合などで,プロジェクトを紹介していただき,参加を勧誘いただくよう働きかけた。プロジェクトに参加しておられる立場から紹介いただくことで,具体的に活動の内容や参加のメリットを説明いただけるため反響も大きく,実際に今年度から参加いただいた学校があっただけでなく,インターネットの環境が整ったら参加したいという表明も何件かいただいている。
 また,会合などでプロジェクトを広報するためには,プロジェクトを紹介するリーフレットのようなものがあると有効である。本プロジェクトでも概要を示した印刷物を作成し,これを必要に応じて配布可能なように必要な場合はメーリングリストを通じて申し出れば送付してもらえるように準備した。
 申し込みの時期が特定期間のみであると,指導計画などの調整をつけにくく,興味を示しながらも参加できないという学校がある。こうした意味からも,プロジェクトの性質上可能であれば,いつでも参加申し込みを受け付けられる体制を敷くことも重要である。本プロジェクトでは,雑誌からの問い合わせ,掲載依頼などがあり,掲載後,紹介されたURL(本プロジェクトホームページ)へのアクセスも増える。そうした際に,継続して参加受け付け中であることは,活動を広げる意味で大きかったように思う。

2.1.2 参加のための要件設定

 参加校の募集に先立ち,参加のための要件設定を明確にしておくことが重要である。本プロジェクトでは,インターネットの教育利用環境を有する小学校・中学校・高等学校・特殊教育諸学校を対象に以下を設定している。

  • 酸性雨測定セットを保有していることが望ましい
  • インターネット接続環境を有すること(諸連絡や学校間の交流等に電子メールや電子掲示板を利用するため)
  • メールを随時送受信できる環境を有すること
  • 校長の承諾が得られて,学校で取り組むことができること
  • 測定結果を利用した実践(授業,クラブ活動,学級活動等)ができること
  • 実施報告書(A4用紙で6枚程度)を提出できること

 本プロジェクトは,環境教育という教科横断的な活動であるが,酸性雨や窒素酸化物の測定ということで,理科の教員でないと難しいと受け取られる場合が多かった。そこで,マニュアルを整備しており,興味/関心があれば,理科の教員でなくても充分に対応できる内容である旨もあわせて明記するようにした。
 こうした要件/共有事項を明確にしてこそ,その上で,各学校の自由な発想のもと様々な取り組みが行っていけることになる。

2.1.3 参加校間の意識の共有

 明確に参加要件として規定している部分以外でも,プロジェクトへの参加を通じて有意義な活動を行うためには留意すべき事項が多い。本プロジェクトをはじめとして,交流・共同学習では継続してこそ意味のあるものである。学内に根ざした活動として,担当者が転勤になった場合などにも継続できる体制が敷かれていることが望ましい。担当者がプロジェクトの意義を理解の上,プロジェクトでの活動/交流を基盤に,自分たちの活動や他校の取り組みを折に触れて学内でアピールしていく必要があるだろう(本マニュアルの事例も利用できるだろう)。実際,学内や地域でアピールを続けている学校では,機器破損時の修理・追加購入等,プロジェクト実施のための予算化等もうまくいっており,継続な活動へと結びついている。本プロジェクトでは,観測機器は原則として参加校に無償貸与している。しかし,どのような機器を利用する場合でもそうであるが,破損等の問題は生じてくる。従って,活動のための多少の予算化は事前に行っておく必要がある。将来的には,観測機器を含めて学校内で調達できることが望ましい。
 要件としても設定していることであるが,インターネットの利用頻度を上げてもらうよう啓蒙していくことも重要である。プロジェクト事務局だけが頑張ってどうなるものでもないが,活用のメリットを全面に出しつつ,アピールしていく必要がある。
 本プロジェクトによるインターネット利用場面は主に以下の5場面である。

  • メーリングリスト(連絡事項,意見交換など)
  • Web画面からのデータ登録
  • Web画面によるデータ表示/ダウンロード(活用)
  • チャット大会への参加
  • 掲示板(意見交換など)

 大規模プロジェクトでは,連絡事項はメーリングリストを通じて行うことが基本となる。電話,FAX,郵便などを併用すれば,連絡はより周知徹底されるが,事務局の負荷増大により,プロジェクト自身がうまく回らなくなる。従って,メーリングリストは最低でも1日1度,できれば3度程度確認を行う必要がある。学校に1つのアドレスしかなく,そのアドレスで参加する場合には,学内のメール管理者と事前に調整を持っておく必要がある。メールの流量が多くなる場合もあるからである。最近のメールソフトでは,メールのヘッダ情報から自動的にフォルダに振り分ける機能がついているものが多い。メール管理者と調整の上,それらの機能をうまく活用できるとよいだろう。
 インフラとしては急速に整備されてきており,完全な整備を待ちたい。幹事校としては,その効果的な活用に向けて情報提供,情報交換を働きかけていくべきである。

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2.2 参加校のための情報・基盤整備

2.2.1 マニュアルの整備

 本プロジェクトでは,観測に必要となる必要最小限のマニュアルを作成し,それ以外の活動については,その都度メーリングリストを利用して連絡を行ったり,参加校の自由裁量にまかせてきた部分が多い。実際に活動する上で,酸性雨や環境問題に対して率先して指導できる教員のいる学校では,のびのび自由な活動が行われ,すばらしい実践が数多く残されてきた。しかし,逆に,プロジェクトに参加し観測をはじめてみたものの,その後どのように活動を進めていけばよいのか,あるいはどのようにデータを利用していけばよいのか,実践が進まなかったという意見もあった。
 本プロジェクトでは,酸性雨と窒素酸化物(NOx)について,小学校用の簡易測定器及び中・高等学校用の測定機器と分けており,その各々,計4種類のマニュアルを準備している。これらの測定マニュアルは,オフラインの会合があれば都度配布し,意識の共有に努めるとともに,ホームページにも掲載し,必要なときにいつでも参照できるように配慮している。

2.2.2 交流の場の設定

 これまでの活動におけるアンケート調査でも,参加校からの要望として,参加校同士の交流を深めたいという声が多い。本プロジェクトでは,これまでにも交流を目的とした電子掲示板を設置するなどしてきたが,あまり積極的な活用は行われないままであった。
 電子掲示板は,Webを読むことができる環境があれば,だれでも読み書きできる仕組みであり,個人のメールアドレスを持たない児童・生徒にも自由に書き込みができるという利点がある。しかし,発言はよほど誰かに返事を期待するような書き方をしない限り,だれに当てて書いているのかわかりにくく,学校間の交流や生徒同士の交流の手段としては,なかなか具体化しにくかった。
 児童・生徒同士の交流は,環境学習を進める上では不可欠である。環境問題を解決するためには,理論を学ぶだけでは解決はあり得ず,個々人の努力と実践が必要である。そのとき,個人としての努力には限界があるかもしれないが,仲間同士の交流を深め,行動の輪を広げていくためのコミュニケーション能力を高めることで,より確固たる実践力を得ることができると考えられる。
 児童・生徒用のメーリングリストの設置も考えられるが,まだ児童・生徒が自由にメールを読み書きできる環境が整っている学校は少なく,本プロジェクトのように大規模になると参加校すべてに改善を求めていくには時間がかかる。そこで,主たるシステムとしては,Webの画面上での「チャット」を利用する場を設定している。具体的な実践のようすについては,実践活動の報告を参照されたい。

2.2.3 各種の情報発信

 「このプロジェクトに参加して活動をすればこのようなメリットがある」ということを示すことができるように,できるだけ具体的な事例を盛り込んだ形で,実践をしていく上での情報提供を行うことも重要である。
 酸性雨の調査も7年を経過し,かなりの数のデータが蓄積されてきた。これらのデータをまとめることによって,学術的にも意義のある情報を明らかにすることができるのではないかと考えられる。今年度の事務局の活動として,データの分析を進め,その学術的な価値を示し,「酸性雨・窒素酸化物(NOx)調査プロジェクト」社会的な意義を明らかにしていくことを目指した。また,同時にそれを参加校に示すことで,このプロジェクトでデータを集める意義を示し,参加校の観測を継続していく上での動機付けにしたいと考えた。
 雨が降るたびにデータを集め登録することは,根気のいる作業である。それを継続していくためには,データが増えると,このようなことが明らかになってくるという「目標」が設定されていることが望ましい。これまでに蓄積されたデータの分析から,学術的にも意味のある結果が示されれば,観測数の少ない学校でも,これから測定数が増えデータの蓄積が進めば,同じような解析の方法によって自分たちの地域の環境のようすを,自分たちの集めたデータをもとにして考えることができるようになるという「目標」ができる。雨の観測も「目標」を持って,観測自体に意義を感じることができるようになると考える。
 参加校の募集に際しても,「このような方法でデータを蓄積して分析を行えば,自分たちの身の回りの環境を,ここに分析したような視点で捉えることができる。」ということが明らかであれば,「身の回りの環境について,このような分析をしてみたいと考える方は,どうぞご参加ください。」という動機付けをしやすいだろう。このようにしてプロジェクトに参加することのメリットを明らかにすることは,参加校を増やす上でも重要だと考えている。

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