E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
目次へ戻る総目次へ戻る

「酸性雨/窒素酸化物調査プロジェクト」実践マニュアル

6. クラブ・同好会などにおける実践活動
目次へ戻る

6.1 パソコン同好会における実践報告

北海道苫小牧東高等学校 パソコン同好会顧問 矢嶋 裕之

6.1.1 実施のねらい

 本校は旧制中学校から引き続く北海道としては最も伝統の長い地域における進学校である。また,自主自律をモットーによく学び,そして,放課後の部活動も熱心な文武両道している生徒の多い学校です。本校科学研究部の部長を3年間務めた後,大学へ進学し,教員となって卒業後20年ほどして戻った私(以下,顧問とす)は,当時発足間もないパソコン研究同好会の顧問となった。生徒だった頃から地域における河川の水質分析に取り組んでいたため,関連した事項でもある酸性雨に関する興味もあったが,測定に使う実験器具が何もない中では生徒に昔の自分のレポートを見せて説明するのがやっとであった。しかし,一昨年(平成12年)ふとしたことからこの企画を知り,参加するチャンスを得た。そして,生徒に話したところ,実験器具などの提供も受けられることに強い興味を示したため,参加することとなった。そして,今年度は同好会が進めている地域を調べる活動の一貫として参加を希望したものである。

6.1.2 指導計画及び指導案

 本節では今年度の活動を振り返ってまとめることとする。

【4月】《引継》
 前年度の活動の中心を担っていた生徒が3年生に進級し,課外講習や模試に忙しくなってきたため,前年度の活動の報告と新入部員への引継をしてもらった。時間の関係もあり,口頭伝達と紙面での配布といろいろあったが,このことが今年度の活動の最終まとめの形態の決定へつながった。本校のパソコン教室にインターネット環境が配備される連絡も入り,生徒にも期待感が広まった。

【5月】《実測の開始》
 初めてレインゴーランドを見る生徒にとっては,どうしてもおもちゃのように見える。確かに小学校3年生の娘を持つ顧問の自宅には似たおもちゃがある。だから,生徒に『これは,おもちゃではなくて,ちゃんとした実験器具だ』という説明からしなくてはならず,顧問としてはやや辛い。ただ,その実験器具の取り扱いに慎重さを要することなどを実際に指導する中で,生徒にも実測に対する意気込みが出てきた。レインゴーランドの設置場所は昨年度と同様に本校屋上とした。しかし,実際に生徒に実験をさせてみると小さいカップをうまく移せず,途中で落としてしまうことが度重なり,採雨はできても思うように測定できないという事態が続いてしまった(前年度も同様であった)。

【6月】《定期考査と活動の低迷》
 前期中間考査があり,一時期部活動が禁止となる。だからこの時期雨が降っても測定はできない。顧問も大量な分掌業務がありとても手が回らない。今年は特にインターネット関連の会議が極端に多くなり,生徒の指導に全然時間が割けなくなった。そのため,中間考査後,生徒が活動を開始しようとしても顧問がつけないため,屋上の鍵を借りれず,実測はストップしたままとなってしまった。ただ,成分分析用のサンプルを効率よく集める装置を作らせ,理科の先生からビーカー4つを借用して少ない雨でもサンプルとして送るのに十分な量を確保する手だてを確立した。6月末から顧問も参加して,活動が再開する。

【7月】《サンプルの1回目の送付》
 7月3日と5日の降雨サンプルを広島大学の中根教授の元へ発送した。前年度は開始した時期がやや遅かったこととレインゴーランドだけではpHなどの測定後にサンプルとして送るだけの降雨が残らなかったため,降雪期に生徒が雪を集めてきて溶かして送ることしかできなかった(11月18日)。こうした前年度の経緯があったため,生徒も顧問も降雨のサンプルを期限内に送れたことに一安心したためか,あるいは7月中旬に行われる学校祭の準備が本格化したためか降雨サンプルを発送した後の活動はまた低迷してしまった。顧問も活動の様子が気になってはいたもののインターネット利用規程作りの大詰めの時期であったため,時間に追われる生活を余儀なくされ余裕がなかった。

【8月】《夏期休業》
 昨年度は秋以降の開始であり,北海道における降雨期のある長期休業としては初めてであった。顧問が新教科『情報』の現職教諭等講習会の講師を務めている事もあり,観測場所を本校屋上から学校近隣にある生徒の自宅の庭先に一時的に変更することも考えたが,生徒の意見も取り入れ,顧問出張中は自主活動となった(早い話が活動しないということ)。本来,一番活動に制約のない時期だが,平成14年度の夏までは前述の講師の役務を担っており仕方がない。本州と異なり,8月中旬から授業が開始したが,この頃から新入部員が急増し,同好会設立以降,最大人数を要することとなる(本校では,インターネット利用講習会を受講した生徒は教員が同席さえすれば自由に使えることとなっているが,生徒が誤解して入部したものであった)。この時期に入部してきた生徒は,同好会の一部の者と顧問がこのような活動をしていることは知らない。

【9月】《パソコン教室管理規定の変更とパソコン同好会》
 9月初め,パソコン教室に電話回線が引かれ,インターネット接続が完了した。しかし,実際に生徒が授業や放課後に利用を開始したのは10月に入ってからであった。ただ,インターネットの利用開始は同好会に思わぬ影響を与えることとなる。本来,酸性雨のpH測定などは理科実験室で行うべきだが,本校ではこの取り組みをパソコン研究同好会の活動として行っているため,当時パソコン教室の片隅で行っていた。しかし,インターネットの利用開始以後,顧問又は別の教員が同席しないとパソコン教室で活動できないこととなり,放課後の会議や課外講習のため,同好会は活動の希望はあってもできないこととなる。午後5時を過ぎれば顧問がつける日はたくさんあるのだが,遅い時間から活動を始めると生徒の帰りのバスがなくなるなど諸事情があり,雨が降っても測定は翌日あるいは数日後となり,屋上の鍵を借りてレインゴーランドの回収に行くと,傍らのビーカーにはカラスの糞が浮いていたり,風によってレインゴーランドが傾いたり倒れたりしていてうまくいかないことが多かった。また,9月下旬から以前から考えていたこの1年間の活動のまとめと地域を調べるという本来の同好会活動の目標の達成のため,ウェブ化して作品をまとめるプランについて生徒と話し合いを始めた。

【10月〜11月】《活動は低迷のまま,降雪期を迎える》
 本校ではパソコン機器整備委員会がインターネット利用規程案を作成し,職員会議での議決を経て決定したのだが,その規程案の実務的作成は顧問の私がした。当初,顧問がつけない日の同好会の活動が制約されることはわかっていたのだが,それ以上に何でもできてしまうインターネットを生徒だけで使っていて何かトラブルに巻き込まれたり,逆に何かトラブルを発生させてしまったら学校という公共機関だけに大変な事になると考え,教員の同席を求める規定案にした。しかし,このことがこれほどまでの停滞や低迷を招くとは思っていなかった。10月以降,屋上の鍵の管理やパソコン教室への顧問同席などのため,降雨調査は進展がほとんどない。また,降雨サンプルの発送も9月に2検体を追加分析のために発送したのが最後であり,現在,顧問自宅の冷蔵庫には10月11日の降雨サンプル1本と空の容器とが一緒に入ったままである。

【12月】《まとめ,そして,季節は降雪期》
 昨年度は雪が降ったある日,生徒が外に出て行って大急ぎで雪を集めたこともあった。しかし,その後,屋上に設置して降雪を集めるために右図のような手製の装置を生徒と一緒に作った。しかし,屋上の鍵の管理をめぐる点と屋上に施してある耐水(防水)膜の管理上の問題から特に冬季は鍵を貸してもらえなくなり,作った装置はほとんど使われていない。降雨としての観測は終わったため,今後はこれまで1年以上観測地点としていた本校屋上を別の場所に移すつもりでいる。12月初旬の後期中間考査を終え,どこに観測地点を移したら良いかを話し合わせており,正月明けに報告を受けることになっている。活動のまとめを担当している生徒は現在自宅のパソコンでホームページビルダーの利用練習をしており,これも1月以降少しずつ進むものと思われる。

【1月〜3月】《実践のまとめ》
  今年度は昨年度と異なり,ある程度形に残るものとして活動のまとめを作る予定である。具体的にはウェブ化させてプレゼンテーションに近いものを考えている。そして,それを4月の新入部員の勧誘に役立てたいと思っている。

 以上が4月〜12月の酸性雨調査の活動の報告と1月〜3月の活動予定である。本校パソコン研究同好会の生徒のうち,顧問の私と一緒にこの活動をしているのは僅か3名であり,他の多くの者はワープロ検定のための練習やイラスト作成など各自のテーマでパソコンを道具として利用している。生徒のインターネット利用も始まり,ある者は早速インターネットを活用して情報検索したり,自分のホームページ作成をしている。ただ,顧問が同席しないとパソコン教室での活動はできないため,以前に比べると活動が全体的にも鈍っている。

6.1.3 活動を進める上での評価の基準

 授業と異なり同好会での活動のため,評価をするという場面はないが,一般的には次のようなことが想定されるのではないだろうか。

(1)降雨観測をして,酸性雨の問題を身近な問題としてとらえることができたか。

(2)降雨観測をする中で生じた疑問をインターネットを利用して関連情報を集めることによって解決あるいは解決への糸口をつかめたか。

(3)定量分析(測定)を繰り返す事によって,計測機器の扱いになれていったか。

(4)計測結果を使ってプレゼンテーション用の作品にまとめることができたか。

(5)全国的な企画に参加して,見ず知らずの人とメールなどを用いて意見交換などを積極的に行えたか,また,その結果,新たな発想が生まれたか。

6.1.4 支援者・協力者との関係

 支援者や協力者にあてはまるかどうかわからないが,本校のパソコン研究同好会としては苫小牧市環境保全課の職員の方に意見を聞いたり,電話やFAXでのやりとりを続けている。実は,平成12年度の夏休み前の時期に苫小牧市で行われた酸性雨調査(苫小牧市環境保全課実施)に同好会として参加したのがそもそもの発端だった。この調査では0.1%のBCG溶液を使ってpH測定をするものであった。そして,その後,本企画に参加して降雨のpH・伝導率の測定を始めることとなる。しかし,測定を続けるうちに塩素濃度がいつ測定しても0%であることに生徒も顧問も疑問を持つようになり,苫小牧市環境保全課との連携が再び始まる。本校屋上からは広々と広がる太平洋が望める。そんな海岸に面した苫小牧で降雨に含まれる塩素濃度が0とはどうしても思えない。自宅から持参した食塩で食塩水を作り,計測器で計測するという簡単な実験ではそれなりの値を示し,計測器の問題ではないことがすぐわかった。加えて,環境保全課の方も0ではないはずとの意見ではあったが,保全課でもそれ以上の具体的なデータは持っていないらしく,顧問としてはお手上げとなる。そこで,今年度1回目の降雨サンプルを発送する際に中根教授に塩素濃度についての分析もお願いした(結果は最近ダウンロードして得られた)。

6.1.5 教育実践活動における留意点

 本校パソコン研究同好会では各種のウェブコンテスト(ホームページコンテスト)用の作品作りに取り組んでいる。その指導中で顧問が常々口にしているのは『単に書籍で調べた内容をまとめた』作品ではなく,『自らが体験したことを通して得られた内容をもとにしてまとめた』作品を重視したいということである。苫小牧市の酸性雨調査に参加したり,本企画に参加させていただいたのも実体験を得るためである。科学研究部のような部活動であれば更に進んだ取り組みに進化させていくことも可能だが,実験器具などのないパソコン教室での活動ゆえ,これが限界であった。留意点(問題点)は次のようになる。

《定点観測に関すること》

(1)本校ではインターネット利用開始以後,パソコン教室の利用は顧問等教員が同席しなければならなくなった。活動の場所を別の場所に変えるなど生徒だけでも活動が継続的に行える体制づくりが急務である。

(2)レインゴーランドの設置場所について,本校でも多くの学校同様屋上であった。これは,降雨のある前からあらかじめ設置しておいた方が正しく観測でき,そして,学校の屋上はあまり人が立ち入らないためであった。しかし,屋上への鍵の管理の面でかなり制約が多く,顧問がつけないときは測定できないことが多々あった。学校に百葉箱のような観測点を作るなど,生徒だけの自主的な観測ができるような準備も必要である。

(3)多くの学校では屋上や校庭など一ヶ所での観測であると思われる。無理のない長期間での活動スタイルとしてはこれが好ましいが,レインゴーランドあるいは別の測定器具を多数用意して同日多点観測はできないか。以前,苫小牧市で実施した酸性雨調査でも同じ日の降雨でも地域によってpHの値にかなりの差があった。これを全国的に実施するとどんな結果になるだろうか。環境汚染の進み具合の縮図となって現れるのではないかと考えている。

(4)本校では問題にはならなかったが,多くの生徒で一台のレインゴーランドを使って観測している学校では責任があいまいになりがちである。観測当番表などを作成し,降雨があった場合,確実に採取できる工夫が必要である。

《観測結果の利用に関すること》

(1)本校の場合は観測結果を使ってウェブ作品など何かをまとめるという行程だったので,測定データはいろいろと利用されたが,観測が主体の学校では測定結果がその後あまり利用されないことが多い。本企画では参加校はインターネットを介してデータを入力して全国的な分布のあり様を見ることができた。しかし,それにとどまることなく測定結果を利用した独自の取り組みも可能であろう。また,せっかく測定したデータを本校でも同好会の活動として作品作りに利用はしたが,校内外を問わずデータの公表は全くしていなかった。多くの方に知ってもらう取り組みも必要であったと今反省している。

(2)本校の場合,9月までは校内でインターネットを利用できるところがなかったので仕方がないが,やはり測定データの入力は当番を決めて行う体制が必要である。本校では顧問単独か顧問と残っていた生徒が顧問のノート型パソコンからデータ入力をした。今後はパソコン教室からの入力となるだろう。

(3)昨年度も今年度も本校では観測や測定を実施し,データ入力までは行えたが,全国的なデータをダウンロードして全国的な状況と本校が得たデータとの比較までは至らなかった。顧問としては今年度最も生徒に期待した取り組み内容だったが,インターネットの利用開始時期が若干ずれ込んでしまったとはいえ,全く手つかずというのは残念である。全国的な企画に参加しているのだから,参加意義を十分理解した自主的な活動を今後期待するものである。

《その他,本企画一般に関すること》

(1)昨年度はメーリングリストを顧問は積極的に利用した(当時,校内でインターネットを利用できなかった生徒が掲示板等を利用できなかったのは仕方がないが)が,今年度は昨年度と異なりメーリングリストによる配信がほとんどなかったように思う(あるいは単に顧問が今年度登録申請をし忘れたせいなのか)。メーリングリストの活用や掲示板の活用は新たな発見につながることが多いので積極的でありたい。

(2)(特に昨年度は)顧問も生徒も全国的な企画は初めてだったため,初体験のことばかりで与えられた課題はこなしたと自負しているが,それ以上の自主的な取り組みまでは至らなかった。例えば本企画に参加している高校間での協働実践を目指した取り組み(たとえ,その実現までは至らなくても)に挑戦するなど幅広い広がりを示唆する様に実践は前向きでありたい。

(3)生徒も顧問もよくわからなかった本校における降雨に含まれる塩素濃度が数ppmとわかり,手元にあった測定器で0%となっても仕方がないことはわかった。この経験は生徒にとっても顧問にとっても大きな収穫であり,先日もダウンロードした分析結果を片手に調べている生徒を見かけ,顧問としては最高の喜びだと感じた。サンプルを分析していただいた学校はこの分析結果を元にした更なる取り組みが可能ではないか(ただ,現実的には教室レベルを超え,研究室レベルになってしまうため,難しいとは思うが)。

6.1.6 終わりに

 12月下旬に実践報告書作成の依頼を受けたため,生徒たちとのディスカッションなしで顧問の視点からの報告書となった。中には,生徒の目から見ると違って見える点も多々あるかもしれない。本稿で述べてきたように,本校で酸性雨の調査に参加したのは生徒の希望からわき起こったというより,顧問の誘いに生徒が乗ってきて始まったものである。そのため,その活動もこれまでのところ,どうしても顧問主導であることが多かった。今後は名実ともに生徒が主体である活動となるように努めていきたいと思っている。

目次へ戻る

6.2 科学部における酸性雨調査とその活用

福島県いわき市立中央台南中学校  小泉 俊夫

6.2.1 実施のねらい

(1) 学校周辺に降る酸性雨の状況を知るとともに,国内の同じような調査をしている学校と結果を比較し,学校周辺の環境の実態について理解させる。
(2) 学校周辺の酸性雨のデータを得ることにより,校内の総合的な学習の時間における基礎資料とする。

6.2.2 指導計画及び指導案

(1) 科学部におけるデータ収集

降雨→科学部(酸性雨班)によるpH測定 →送信
→データの掲示

(2) 総合的な学習の時間

       活 動 内 容

 6

16

ガイダンス

 6

30

個人テーマの決定及び計画

 7

 7

個人テーマの決定及び計画

 9

 9

環境調査

10

20

環境調査

11

17

環境調査

12

15

環境調査

 1

19

データの分析とまとめ

 2

16

データの分析とまとめ

 2

18

発表

6.2.3 活動を進める上での評価の基準

 (1) 自分たちで決めた課題と活動内容を,最後までやり遂げることができたか。
 (2) 活動計画どおりに学習活動を進めることができたか。
 (3) 課題や活動内容を決めたときの見通しや予想は正しかったか。
 (4) 書物やインターネットなどを利用して,調べ学習を行えたか。
 (5) 自然にふれたり,何かをつくったり,ボランティアに参加したりするなどの,新鮮で心の残る体験をすることができたか。
 (6) 人にあったり,施設を訪問したりして,地域の人たちと新しい人間関係をきずくことができたか。
 (7) 学習を進めることによって,問題になっていたことが解決したり疑問が解けたりしたか。
 (8) 学習して得られた知識を,自分で考えてレポートなどにまとめることができたか。
 (9) 学習活動の成果を発表し,自分の考えを他人に伝え,また,他人の考えも聞くことができたか。
 (10) 友達と協力し合って学習を進めることができたか。

6.2.4 支援者・協力者との関係

(1) 酸性雨窒素酸化物調査プロジェクトについて
   ・ 他地域との比較
   ・ 調査方法や内容についての問い合わせ 
(2) 福島工業高等専門学校について
   ・ 『総合的な学習の時間支援計画』における市内の気温測定への参加
   ・ 市内の他校との比較
   ・ 調査方法や内容,酸性雨等の環境についての問い合わせ

6.2.5 教育実践活動における留意点

(1) 正確な酸性雨データの測定を行う。
(2) 科学部における酸性雨データを全校生へ情報として伝える。
(3) 酸性雨データの総合的な学習の時間での有効な活用方法を指導する。
(4) 他地域との比較を行うことにより酸性雨測定を通して広い視野に立って考えることができるようにする。

目次へ戻る

6.3 部活動に取り入れた酸性雨測定の実践
山口県秋穂町立秋穂中学校

6.3.1 実施のねらい

 本校の部活動は現在全員加入の原則のもとに実施されている。しかしながら既成の部活動に興味が持てない生徒や人間関係がうまくいかず途中で挫折する生徒も存在する。それらの生徒を引き受ける部として科学部が設けられてきた。勿論最初から科学が好きで入部する生徒も存在する。こうした生徒達に追求したい課題を発見させることを目的として様々な活動を行ってきた。現在,軌道に乗っているのは絶滅危惧種のカブトガニに関する諸活動である。こうした中で環境問題について生徒達の意識は高まっている。酸性雨の測定は身近に環境問題を考えるきっかけとなると考え日々の活動に取り入れることにした。

6.3.2 指導計画及び指導案

6月


7月

担当者の決定と操作方法の指導
調査結果報告の方法の指導
測定開始
得られたデータについて考察を行う。

      (本校で測定し登録したデータ)

本校で測定し登録したデータ
 指導案
○ ねらい
・ 酸性雨の説明ができる。
・ 得られたデータから現状を理解することができる。
・ 環境改善のためにどんなことが必要か意見を言うことができる。

○ 準備 測定用具 インターネット閲覧のできるコンピュータ
取得したデータを印刷したプリント

流れ

 学習活動

 教師の援助

 評価

導入
 

 

 

 

展開

教師の説明を聞き今日の課題をつかむ。

 

 

 

酸性雨についてインターネットを利用して調べわかったことを発表する。

測定をした生徒から測定方法について聞く。

測定結果について酸性雨かどうか判断する。

他はどうかインターネットに登録してあるデータを閲覧する。
 

酸性雨の問題を解決するためにはどうすればいいのか考え文にし発表する。

教師のまとめを聞く。

測定器具を見せこれで何をするのか問い興味が持てるようにする。

・酸性雨とは何か

・酸性雨のどこが問題なのか。

・秋穂にも酸性雨が降るのか。

該当するHPが見つからない生徒には遠隔操作で指示を行う。
発表時にpHに関して補足説明を行う。

演示装置の調整補助
 

pH7以下ではなく5.6以下である理由を問い理解が深まるようにする。

秋穂だけではないことや都市部の結果に注目させ原因を問うことでまとめでの意見が言えるようにする。

身近でできることや,自分がやらなくてはならないことを喚起する。
 

活動をふりかって要点をまとめる。

興味・関心
 

 

 

 

知識・理解

意欲・態度


 

知識・理解
 


 
 

関心・意欲
 
 

興味・関心

 ○自分なりの考えを文にまとめることができたか。
 生徒の感想より
  降っていると聞いていたけど本当だということがわかってびっくりしました。被害がはっきりしていないので,まだ土がそれを中和してくれているのだと思います。でも,いつまでももつかわからないと聞いて本当に大変なことだと思いました。身近に少しずつこうした環境破壊が進んでいることがわかりました。燃やさなくていけないものを減らすことや電気の無駄使いをやめることなどをできるだけやっていきたいと思います。

6.3.3 活動を進める上での評価の基準

・酸性雨の測定方法を理解できているか。操作方法の点検を行う。
・酸性雨に関する知識を持ち説明できるか。
・問題を解決する方法について自分が何をすればいいのか言えるか。

6.3.4 支援者・協力者との関係

 平賀先生提唱のチャットにはかなり関心はあったが自分から積極的に発言できるだけの力量がある生徒までには育っておらず参加できなかった。
 なお環境問題に関しては,山口県のカブトガニ研究家である原田直宏先生からご指導をいただいた。

6.3.5 教育実践活動における留意点

  • 長期的活動であるので当初,当番を決めるなど交代制で行ったが雨が不定期であり忘れてしまうことが多かったので希望を募り1名にしたことで忘れずに測定できた。
  • 雨が降ってすぐに生徒が測定するのは日常の学校生活内では難しく降ってから数時間後の測定になりやすかった。時間が経過するとpH値が上がることに気づき教師側で採取し容器に保存することにした。しかし教師側も忘れてしまうことが多くデータ数が少なくなった。
  • 酸性雨が植物にどのような影響を与えるのかをハツカダイコンの種を使って発芽実験を行った生徒がおり,その結果を知らせることで理解が深まった。
  • 送付された伝導率測定器具の電池交換の際に接触部を破損してしまいしばらく測定ができなかったので電池交換には注意したい。
  • レインゴーランドのバネがさびて?折れてしまい蓋なしで測定しなくてはならなかった。2台目は潤滑油を塗布した。このバネは長期使用ではだんだん劣化していくように思われる。
  • レインゴーランドの固定が悪く突風で倒れてしまうことがあったので固定はしっかりしたい。また屋上ではコンクリートにあたった雨が跳ね返って入る場合もある様子でpH7以上になることがあった。
目次へ戻る

6.4 化学部における実践

愛媛県立新居浜工業高等学校  渡辺 洋志

6.4.1 本企画に参加したねらい

 30数年にわたって雨水のpHを測定しており,化学部の活動として参加する。

6.4.2 実践の経過と指導計画の概要

 2001年1月〜12月間に渡って,初期降雨のpH値・電導度・1降雨毎とのpH値の測定及びプロジェクトへのデータの送信

6.4.3 授業の実践記録

 文化祭で酸性雨について資料等を展示し,測定データも公開する。また,生徒研究発表会でも測定結果を発表する。

6.4.4 実践を終えて

(1)実践で得られた成果

  • 測定をとおして生徒は環境の汚染に強い関心を持つようになり,熱心に取り組んだ。
  • データの整理・コンピュータの操作にも習熟した。
  • 校内の環境化学の浸透にも寄与した。
  • 季節や降雨日の間隔がpH値に影響すること,周辺の環境によって影響された疑いもあった。
  • pH値と電導度には同一傾向は見られにくいが,時間の経過とともにいずれも一定値に向かって収束する。

(2)反省・課題

  • 本校で測定したデータをまとめ,生徒の関心を引き起こすような資料を作成し,授業の中に取り入れてみたい。
  • コンピュータの使用の関係でデータの送信・メールの交換などが十分に行えなかった。
  • 24時間内に数度降り始めたり,降り終わったときのデータをどう扱うか。

(3)今度の実践にあたってのワンポイントアドバイス

  • 観測日の気象情報の収集することが器具や情報源などで難しい。
  • 数日間連続する雨の取扱をどうするか。
  • 「ひらけごま」セットでふたがあくまでにかなりの雨が必要で,初期降雨の開始時間が遅れる。
  • 1降雨毎の平均pH値が必要ではなかろうか,環境への影響への目安になる。
目次へ戻る

6.5 科学部における活動

高知県立清水高等学校 科学部顧問  山崎 扶美

6.5.1 参加のねらい

 本校科学部では平成7年度から部の活動の一部として酸性雨の測定を続けている。高知県生徒理科研究発表会でも,酸性雨について4度発表(昨年度・本年度は学校行事と日程が重なり不参加)しており,平成10年度には最優秀賞を受賞している。
 部では,平成10年度に,実際に植物を栽培しながら酸性雨の植物への影響を調査している。また,「(有)環境クラブ」(東京都豊島区)に雨水サンプルを郵送し,採取した雨水に含まれる無機イオンの濃度分析等を依頼している。そのような中で,測定を続けていく上での課題の1つとして,以前から全国各地とのpHの比較が挙げられていた。そこで,全国各地との情報交換ができるこのプロジェクトへの参加を希望し,平成12年度に加入した。

6.5.2 実践の経過と指導計画の概要

(1)酸性雨調査
 前述の通り,pHの測定は平成7年7月から,導電率の測定は平成9年4月から続けて行っている。測定は科学部の生徒が交代で行う。
 採水器は学校の屋上に設置。以下のような調査を行い,その結果をファイルに記入する。その際,容器を出していた時間,雨が降っていた時間,雨水の様子(にごり・におい等)も記入する。
(1)雨量の計算
 採水器の漏斗の直径と,採水器にたまった雨の量から,雨量(mm)を計算する。
(2)サンプルの採取
 雨水の一部をサンプル容器(マイクロチューブ3本)に取り,前述の環境クラブに郵送して無機イオン濃度等を分析してもらう。
(3)pHの測定
 pHメーター(HORIBA twin pH)を用いて,採水器にたまった雨水のpHを測定する。
(4)導電率の測定
 導電率計(HORIBA Twin Cond)を用いて,採水器にたまった雨水の導電率を測定する。
(5)初期降雨のpH・導電率の測定
 採水器の側に設置してあるレインゴーランドにたまった雨水のpH・導電率を上記と同じ器具を用いて測定する。

 (2)窒素酸化物調査
  本年度は実施していない。

6.5.3 実践を終えて

(1)実践で得られた成果
 昨年度行った窒素酸化物の調査により,科学部の生徒は酸性雨の原因にも目を向けるようになり,自分たちが住む土佐清水市の環境についても考え始めたようである。また,以前はただpH測定などの調査をするだけであったが,最近では,例えば晴天が続いた後の降雨と雨天が続いた後の降雨のpHには違いがあるかなど,生徒自らがさまざまな疑問をもち,それについて調べようとするようになっている。

(2)反省・課題
 生徒用パソコンの導入・設置が本年度当初の予定であったが,設置後の環境整備等が遅れ,実際に生徒用パソコンが利用できるようになり,インターネットへの接続が可能になったのが2学期半ばであった。そのため,ホームページの閲覧やチャットへの参加もできず,昨年同様,データの入力・処理を教員が行っており,測定以外については生徒が主体となって積極的に活動することがあまりできなかった。また,部員が少数である上,全員3年生で,2学期には受験や就職試験があり,さらに学校行事の文化部発表会が11月にあったため,酸性雨調査については満足な活動はできなかった。生徒が自分たちで行った酸性雨調査について考え,疑問の解決にはさらにどのような調査をすればよいか,など自ら進んで考えるようになったところだが,3年生はまもなく卒業となり,引き続いて活動をする1・2年生の部員が現時点ではおらず,部の活動そのものについても考えなければならない状況である。

目次へ戻る

6.6 美化・緑化委員会での実践

愛知産業大学三河中学校  久保田 英慈

6.6.1 実施のねらい

 本校は3年前からこのプロジェクトに参加している。今まではどちらかというと教員の勉強のためにこのプロジェクトに参加していたが,昨年度末から生徒主体の活動に切り替え,生徒と共に身近な環境について考えようと試みた。

6.6.2 指導計画及び指導案

平成13年

平成13年
4月

9月

1月
前期 酸性雨調査班結成
活動開始
後期 酸性雨調査班結成
活動開始
酸性雨調査新聞(レイン・ニュース)発行

6.6.3 活動を進める上での評価の基準

●降雨後,休憩時間にきちんと集れたか。
●データの精度は妥当か。
●次の調査の準備をきちんとできたか。

6.6.4 支援者・協力者との関係

 このプロジェクト以外,協力いただいた所はないが,このプロジェクト内で広島大学総合科学部中根教授により,イオン・クロマトグラフィ分析を行っていただいたことはたいへんありがたかった。この分析の結果,雨水の中に何が溶けているのかを知ることができた。生徒たちは分析を楽しみにしていたが,いざ,結果が出ると,知識の少なさから,そのデータを有効に利用することは難しかった。今後の指導の視点にしたいと考えている。
 詳しい分析は学校では不可能である。こういった分析の協力を今後も希望している。
 また,本プロジェクトのWebページの作成もたいへん役に立った。このWebページのおかげで,データをスムーズに入力でき,かつ,いつでも好きな情報を取り出すことができた。このような協力体制も今後,希望している。
 ただ,本年度から,気象庁による,気象データのe-mailによるデータ配信サービス(MailDeAMEDAS)が廃止されてしまった。この結果,気象データを集めることにたいへん苦労をした。今後は,こういったデータを提供してもらえる機関の協力,また,こういったデータを測定できる装置の貸与,等があるとありがたいと感じた。

6.6.5 教育実践活動における留意点

 長い間生徒と共に観測を続けていくとだんだんマンネリ化してくる傾向がある。一つ一つのデータをじっくり考える週間をつけさせたいと思っている。そのためには,詳しい気象データを集めることが必要と考える。
 また,マンネリ化の結果,しばしば出る以上データに“よろこぶ”といったゲーム的な発想をさせないよう,調査以外の活動,知識を大切にしたいと考えた。

目次へ戻る

前のページへ次のページへ このページの先頭へ戻る


CEC