雨の汚染の状況は,その雨雲の生成・発達過程,雲の移動経路,ローカルな大気汚染の状況などの諸条件で違ってくる。ここでは,具体的に,雨雲の進路でどのような雨が降ったかを考察する。
台風は北太平洋南西域で発生した低気圧が発達して生じる。熱帯地方のあたたかい海では海水が蒸発して低気圧に向かって吹き込み,大量の水蒸気が供給されることで熱帯低気圧から台風へと発達する。こうしてできた台風の場合,大気汚染の影響が少ないとともに,ローカルな汚染物質も強風により飛ばされるため比較的きれいな雨となる。また場合によっては,雨の中の海水成分により比較的pHが高く観測されることもある。
2000年9月11日の台風14号は東海地方に1時間に110mmもの記録的な雨をもたらした。この日の雨の酸性度は各地でpH6前後の比較的低い値となり,導電率も小さくなっていた。特に東海地方では台風により巻き上げられた海水成分の影響でpH6を越えた。
これに対して,梅雨は梅雨前線によって発生する。梅雨前線は日本の北側のオホーツク海高気圧から吹く冷たい風と,南側にある太平洋高気圧から吹く暖かく湿った風がぶつかってできる。この梅雨前線で上昇気流が生じ,湿った空気が上昇して雲ができ,雨をたくさん降らせる。停滞した梅雨前線がもたらす長雨では,ローカルな汚染物質が溶け込んだ雨になると考えられる。また,雨が続き降水量が増えるに従い比較的きれいな雨になる。
以上のような分析は,プロジェクトでの観測データだけでなく,気象協会などから提供されている天気図や雲の様子と合わせて検討すると興味深い。
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