E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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「全国発芽マップ実践企画」実施報告書

2. 企画の実施
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2.1 実施体制

2.1.1 実施組織

2.1.1.1 幹事校

 全国発芽マップ2001プロジェクト幹事校を宮崎大学教育文化学部附属小学校とし,幹事を同校の中西 英教諭とする。
 幹事校は,本プロジェクトにおける協働的実践の中心として,以下のようなことを行う。
(1) 公式ホームページの管理・運営
(2) 参加校の募集・受付
(3) 教師用メーリングリストへの参加校の登録・解除の取り次ぎ
(4) 教師用メーリングリストの運営
(5) 栽培する植物の種子の手配と配布(必要な学校に対してのみ)
 以上のことを行いながら,プロジェクトの協働的実践全般にわたっての目配りをする。

2.1.1.2 参加校

 全国発芽マップへの参加は,参加を希望する教師から幹事校の幹事へ電子メールで申し込み,幹事が教師用メーリングリストへの登録を行ったことによって成立する。

 参加単位は,原則として小・中・高等学校,盲・聾・養護学校などの,いわゆる「学校」が単位であるが,大学の研究室や学校外の教育組織も「オブザーバー会員」として参加することができる。

2.1.1.3 事務局

 事務局を(株)宮崎県ソフトウェアセンターに置く。担当者を,井上英幸とする。
 事務局は,書類の発行をはじめとする事務的な手続きの中心となる。

2.1.1.4 技術開発

 技術開発責任者を,宮崎県ソフトウェアセンターの井上英幸とする。

2.1.2 プロジェクト委員会

2.1.2.1 プロジェクト委員会の設置と委員構成

 プロジェクトの企画・運営を遂行するため,プジェクト委員会を組織する。プロジェクト委員会は,取り組みの問題点を議論し,より活発な活動になるよう柔軟に運営を進めて行く。
 2001年度は,以下のメンバーでスタートし,必要に応じて追加や組織替えを行う。2001年度の委員長を,中山 迅とする。
 中山 迅 宮崎大学教育文化学部教授
 山口悦司 宮崎大学教育文化学部講師
 中西 英 宮崎大学教育文化学部附属小学校教諭
 岩切宏樹 宮崎大学教育文化学部附属小学校教諭
 奥村高明 宮崎県日向市立富島中学校教諭
 根井 誠 宮崎県椎葉村立椎葉中学校教諭
 井上英幸 株式会社宮崎県ソフトウェアセンター
 長友信裕 株式会社アボック西村
 原田静男 財団法人 コンピュータ教育開発センター
 また,プロジェクト委員会とは別に,プロジェクト委員に代表的な参加校の教師を加えた「推進委員会」を組織する。推進委員会は,プロジェクトの具体的な活動の活性化のために,活動現場に即した提案を行い,実行する。

2.1.2.2 プロジェクト委員会の活動

 プロジェクト委員会は,全国発芽マップのすべての企画・運営を司る。
 2001年度の活動内容は以下の通りである。
(1) 年間活動計画の作成
(2) 宮崎県,宮崎県教育委員会,宮崎市,ならびに宮崎市教育委員会への後援依頼
(3) 「全国発芽マップ2001の集い」の企画,運営
(4) 推進委員会の設置
(5) ソフトウエア開発への助言
(6) 成果の報告

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2.2 教育実践の実施

2.2.1 実施の準備(教育実践活動の実施体制)

2.2.1.1 共同で栽培していく植物の選定

 植物の栽培・育成・観測企画,特に全国発芽マップのような参加校が広く全国にわたる企画の場合,全国共通の植物を栽培することを通して観測データの共有を図ることができ,栽培活動や観察活動が活性化されるものと考える。
 例えば九州と北海道では,播種から発芽,開花,結実までの期間などは当然違う。その相違等から子どもたちや教師が興味や疑問をもち学習が始まっていく。また,調べていく過程においても,地域による気候の違いや特徴などの新しい学習が様々な方面に広がっていく可能性があるのである。また,電子メールやホームページ,テレビ会議などで成長の様子などを情報交換をすることで,観測データを正確にしかもリアルタイムに伝えるとともに,共同で栽培している共有感をもつことができるのである。
 2001年4月16日(月),幹事校である宮崎大学教育文化学部附属小学校から以下の内容のメールを全国発芽マップメーリングリストに流した。

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 全国発芽マップメーリングリストのみなさん。
 お久しぶりです。中西@宮崎附属小です。
 「全国発芽マップ2000」では,いろいろとお世話になりました。今年も少しずつ全国発芽マップに参加したいとのメールがきています。参加校がまた増えそうです。(ついに全国制覇なるか?)
 本年度は昨年からお知らせしている通り,参加校の児童・生徒が直接やりとりできるシステムを活用することができますので,更に充実した学習活動の展開が期待できそうですよ!
 「全国発芽マッププロジェクト」は2001年度も財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)のEスクエア(e2)・プロジェクト事務局推薦プロジェクトになる予定です。
 そこで,以下のような基本的な方針で進めていきたいと考えています。

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○ 今年度の方針
 (1) 参加校は基本的に(原則として)全体で1つの植物を栽培します。
 (2) 一斉種まき日は,昨年と同様に2回設定します。
 (3) 参加校の中からスモールプロジェクトを提案することができます。
 (4) 参加校は,中心植物の栽培の他に別のスモールプロジェクトに参加することができます。
 (5) スモールプロジェクトでは,中心植物以外の植物についての取り組みをおこなうこともできるし,それ以外の企画を立てることもできます。
 (6) スモールプロジェクトの提案者はそれぞれの幹事となり,会議室システムを使って協働学習を進めます。
 (7) スモールプロジェクトの情報を,随時中心のMLに流すよう心がけてください。
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 さて,本年度育てる植物についてですが,みなさんのご意見を伺いたいと思います。昨年度はケナフでした。また,種まきの期日についてもご意見ありましたらお知らせください。(ちなみに昨年は第1回目が5月20日で,第2回目が6月17日でした。)
 また,スモールプロジェクトで「中心の植物の他に○○を育てたい。」「○○のテーマで別プロジェクトを進めたい!」などの提案がありましたらお願いします。
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 1 育てる植物(         )
 2 第1回目一斉種まき期日(  月  日頃)
  ○ 第2回目の一斉種まき期日の設定については後日伺います。
 3 スモールプロジェクトの提案(植物やテーマについて)
 4 その他(要望等)
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 ご意見お待ちしております。
 全国発芽マップは,ほとんど制約のない自由な取り組みを行うことができるプロジェクトです!やりたいことをどんどん提案し,全国発芽マップをつかってください。 
 と,参加者が自由に提案し,それに賛同する参加者が自由に参加し,学習や活動をつくっていくというこれまでの全国発芽マップの考え方を踏まえた方向性を示した。それに対して,大阪市から参加の先生からの以下のようなメールが届いた。

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 いよいよですね。なんとなくわくわくしてきます。

 1 育てる植物( ケナフ        )
 2 第1回目一斉種まき期日( 5 月19  日頃)
  ○ 第2回目の一斉種まき期日の設定については後日伺います。
 3 スモールプロジェクトの提案(植物やテーマについて)
 4 その他(要望等)

 昨年は,はじめての参加で教えていただくだけでした。
 それでもなんとか紙漉きや種取りまでこぎつけました。
 児童のインターネット活用までは至らず中途半端になってしまいました。
 今年は,学校も変わりどこまでやれるかわからないのですが4年生と共に参加したいと思っています。
 紙漉きの件ですが,私が持っているノートのなかにさとうきびのしぼりかすから作っているノートと海草から作っているノートがあります。紙漉きは,いろんな植物からできておもしろいと思います。落花生や綿花もおもしろいなあと思います。ただどこまでやれるか自信がないです。
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 このメールからこれまでの参加校の方々の中には5年間続いた共同栽培植物である「ケナフ」の教育現場での有効性を認識しながらも,新しい植物の栽培の挑戦をしていこうとする参加者の主体的な意識の現れでもあると考える。また,インターネットを活用した協働学習の推進力としてより相応しい植物という点で今後,全国発芽マップのシステムの在り方にも関係する重要な部分である。
 ただ,全国発芽マップの趣旨及びこれまでの成果,ケナフの学校教育の場における有効性を踏まえ,2001度もケナフを共同観察の植物として選定した。
 共同で育てていく植物の選定については,参加している子ども,教師の活動及び学習の意識の継続にもかかわる重要な部分であるので,参加校の子ども,教師の意見,育てる植物の教育的な意義等を踏まえる必要があると考える。
 共同で栽培する植物の選定については,参加校が広く全国にわたり,参加校も200校以上にのぼる大規模プロジェクトを推進していく上で今後,重要な検討課題になることが予想される。このメールが,今後の全国発芽マップの内容やシステムの在り方の考えていく1つのきっかけになったことはいうまでもない。

2.2.1.2 全国一斉播種の期日の設定

 全国発芽マップの目的として,「同日,同時刻に一斉に全国各地で種子をまき,その成育の様子や子どもたちの活動を電子メールやホームページ等で情報交換し交流を図る。」がある。それは,1つには同日,同時刻に一斉に播種するということで,参加意識や活動の共有感が高まること,2つは植物の栽培・育成・観測企画ということで,気候,地域による成育の状況の違いを明確にするためである。
 そこで,育てる植物・一斉播種期日の返信を集計したところ,5月中旬から下旬頃が相応しいとの意見を多数頂いた。そこで,5月の中旬から下旬にかけて学校において行事を組み易い期日を洗い出したところ,5月19日(土)が適当な期日であろうと考えた。また,土曜日ということもあり,午前10時という時刻を設定した。ただ,この全国一斉播種の期日の設定については,栽培する植物の成長の特性等も考慮して設定する必要がある。
 また,2001年度は参加校が200校を超える多数にのぼり,第1回目の全国一斉播種期日以降も参加申し込みが相次いだため,播種期日を2回設定した。このため結果的に北海道・東北地方など寒い地方の参加校にとっては播種期日を合わせることができた。
 播種期日の設定については,この企画が全国規模の企画であるため,共同で栽培する植物の成長の特性,参加校の数,全国の参加校の各地の気候の様子,種子の有無,送付などについても見通して柔軟に期日設定する必要があると考える。

2.2.1.3 種子の有無の調査及び種子の送付

 2001年度は2000年度と同じくケナフを共同で栽培することが決定したため,2000年5月2日(火)に,ケナフの種子の有無についても参加校に以下のような電子メールをメーリングリストを通して流した。
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 発芽マップメーリングリストのみなさん。
 中西@宮崎附属小です。
 いつのまにかのスモールプロジェクトの提案やその広がりに驚いています。さすが,全国発芽マップの参加校のみなさんですね〜。植物の種子さえあれば自分で歩いていく,まさに幹事校いらずのプロジェクトだ!
 播種期日,共通して育てる植物等について多くのご意見をいただきまして本当にありがとうございました。ご希望に添えない部分もありますがご了承ください。以下決定したことについてお知らせ致します。

************  全体の部  ************
1 発芽マップ2001の全国一斉播種期日は,平成13年5月19日(土)に決定します。時刻は午前10時です。全国一斉に楽しみましょう!
 (※ 各学校の行事等の都合もありますので,期日や時刻については柔軟に考えてください。)
2 共通して栽培する植物については,5年目になりますが「ケナフ」に決定!ケナフの地位も揺るぎないものになってきた感がありますね〜!
3 ケナフの種子については鵜飼先生も送っていただいていますが,宮崎の幹事校からも送付致します。希望される方は必要事項を記入して返信してください。
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1学校住所(〒        )
(                      )
2学校名(                   )
3担当者名(                  )
-----------------------------------------
 発送の関係がありますので5/11(金)までに連絡をお願い致します。到着しましたらお手数ですが,確認のメールをお願いします。
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 この種子の送付に関しては,幹事校から送付するだけではない。これまでの実践校から送付される場合もあれば,地域のボランティア団体に問い合わせて種子を入手する場合も考えられる。つまり,種子の入手に関してもネットワーク上のつながりで交流が生まれるのである。
 また,種子の送付については幹事校だけが行う作業ではなく,昨年度に収穫した種子を自主的に送付したり,種子の送付先を募集したりすることも盛んに行われた。このように,全てのことを幹事校が行うのではなく,参加者が自ら新しい活動を生み出したり,交流をしていくという点は,全国発芽マップの特徴の1つと言える。
 今回の種子の有無の調査後,新しく参加した学校も含めて合計50校以上の参加校にケナフの種子を送付した。

2.2.2 スモールプロジェクトの推進

 全国発芽マップの昨年度までの課題として「児童・生徒の直接対話を通した協働学習」「全国190校を超える参加校の増加による活動の沈滞化」「共通して栽培する植物の多様な希望」が挙げられる。そこで,これらの課題を解決するために,全国発芽マップ2001の始動にあたって,メーリングリストを通して次のようなスモールプロジェクトに関する方針を伝えた。
(1) 参加校の中からスモールプロジェクトを提案することができる。
(2) 参加校は,中心植物の栽培の他に別のスモールプロジェクトに参加することができる。
(3) スモールプロジェクトでは,中心植物以外の植物についての取り組みをおこなうこともできるし,それ以外の企画を立てることもできる。
(4) スモールプロジェクトの提案者はそれぞれの幹事となり,会議室システムを使って協働学習を進める。
 つまり,参加者が自由に提案し,それに賛同する参加者が自由に参加し,学習や活動をつくっていくというこれまでの全国発芽マップの考え方を踏まえた方向性を示した。すると参加校から
「ケナフクラフトバザール」(ケナフを用いた工作等)
「ケナフ料理・お菓子づくりマッププロジェクト」(ケナフを用いた料理やお菓子作り)
「落花生プロジェクト」(落花生の栽培や観察や料理)
「BK(ブルーケナフ)情報部」(ブルーケナフの栽培)
「全国紙創り21」(様々な植物からの紙作り)
「綿マッププロジェクト」(綿の栽培や観察等)
「ケナフから広がる夢〜ぼくのたね,わたしの夢〜」(ケナフ栽培に関する情報交換)
などの様々なスモールプロジェクトの提案がなされた。

2.2.2.1 支援者,協力者の役割と要件

 先にも述べたが,全国発芽マップでは,幹事校のみが活動を推進していくプロジェクトではない。参加者が自ら企画立案して全体に提案して全体を動かしていく文化を守り続けている。2001年度のスモールプロジェクトについても同じことが言え,主体的に全国発芽マップの活動を支えていく人材が多く存在している。それは参加校の教師もいれば,学校の保護者でもある。
 その役割や要件としては,スモールプロジェクトを推進していただくことにある。
 中心植物1つに対して参加校が200校を超えると,あまりにも活動が集中し過ぎる面がある。しかも,参加校から栽培する植物の多様な希望を考えたときに,それに対応するためには栽培する植物を多様化し,それぞれの植物について代表者になっていただき,プロジェクトを推進していく方が望ましいと考えた。
 また,2001年度はボランティアの方の活動が目立った。というのも宮崎大学教育文化学部附属小学校の保護者である方が,全国発芽マップの活動に賛同してくださり,全国発芽マップの公式ページの半数程度の作成,Web掲示板での返信や英訳,和訳等を行ってくださった。

2.2.2.2 支援者,協力者との関係構築と維持方法

 全国発芽マップにおける支援者,協力者はあくまでもボランティアである。この活動の主旨に賛同し,自主的に活動をしてくださる方々を中心に協力をお願いしている。ただ,インターネットなどバーチャルなつながりだけでなく,全国発芽マップの集い等でface to faceの発表会において話し合いをしたり,協議をしたりして参加校同士,及び全国発芽マップ事務局と支援者,協力者との関係構築と維持を行ってきた。この関係構築と維持については,常時,掲示板やMLにおいて人間関係の醸成を行ってきている。

2.2.3 成長記録システムの活用

 2001年度からWeb掲示板と平行して植物の観察・成長記録システムの活用を始めた。この成長記録システムは,幹事校への登録申請をすればブラウザ上で観察した結果等を記録できるものである。2001年度は以下の21校が登録をし活用を進めてきた。

1
2
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21

宮崎県北諸県郡三股町立三股西小学校
東村山市立東村山第三中学校萩山分校
香川県観音寺市立常磐小学校 
仙台市立幸町南小学校
兵庫県西宮市立広田小学校
福島県福島市福島明成高等学校
長崎県西彼杵郡野母崎町立高浜小学校
静岡県田方郡函南町静岡県函南町立函南小学校
愛知県半田市亀崎月見町半田市立亀崎小学校
富山県射水郡小杉町小杉町立中太閤山小学校
長野県長野市通明小学校
北海道室蘭市陣屋町室蘭市立陣屋小学校
大阪府松原市松原北小学校
大分県臼杵市中臼杵小学校
熊本県阿蘇郡阿蘇町立碧水小学校
茨城県行方郡北浦町要小学校
宮崎県宮崎市池内町池内小学校 
熊本県天草郡河浦町宮野河内小学校
兵庫県神崎郡市川町甘地小学校
宮崎県宮崎市宮崎市立青島小学校
奈良県生駒郡平群町平群南小学校

2.2.4 教育実践の実施(共通で育てる植物:ケナフ)

 本企画を実施する上では,ケナフが一年草ということもあり一年間の大まかなスケジュールをつかんでおく必要がある。ケナフを栽培したときの一年間の節目は,全国一斉播種,発芽,成長の観察,開花,災害,収穫及び紙すき等の流れである。この一連の流れの中でメーリングリスト,ホームページ,掲示板等で全国の子どもたちの活動や教師の活動が広がってきたのである。また,それぞれの地域の立場や状況でケナフや全国発芽マップに対する思いが見えてくる。このことは全国発芽マップのメーリングリストの数からも明確になっている。

2.2.4.1 教育実践活動の準備作業

 全国発芽マップの教育実践の準備はほとんどないと言ってよい。というのもこのプロジェクトは,植物の種子さえあれば実施・参加できるからである。つまり,教育実践をはじめるにあたっては,まずインターネットの環境を整備してあることと,植物の種子と栽培を行う場所を確保すれば実施できるという訳である。このことは初めてインターネットを活用した教育実践を行う学校等にも参加しやすく,汎用性のあるプロジェクトであると考える。

2.2.4.2 インターネットを利用した教育実践活動の概要とスケジュール

インターネットを利用した教育実践活動の概要とスケジュール

2.2.4.3 全国一斉播種

 2001年5月19日(土)午前10時,北は北海道から南は鹿児島の全国約200校の学校の子どもたちと一緒に「5・4・3・2・1!」の掛け声のもと全国一斉にケナフの種子を播いた。すべてはこの種まきから始まりまる。この時にはインターネットの存在は薄く,そこに大きく存在するのは,全国の仲間とその瞬間を共にしているという共有感とこれからの植物の成長に対する期待である。
 宮崎大学教育文化学部附属小学校のある子どもは,以下のようにその時の思いを綴っている。
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子どもの作文:
「いろいろな所のいろいろな人が一斉にケナフを植えました。これからどの地方が早くて,どのように成長していくかがとても楽しみです。」
「ただ,種を植えるだけなのにドキドキしました。午前10時に200校のみんなと一斉に植えました。全国でケナフが増えたかと思うと嬉しかったです。」
「お世話をしっかりして,大きくなったら私はいろいろな物を作ってみたいです。そのためには,やっぱり早く大きくなってほしいです。そして他の学校との情報交換もしていきたいです。」
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 子どもたちはケナフの種子を日本全国一斉に播いたことから,植物の成長の地域差に興味をもったり,ケナフから広がるものづくりに興味を示したり,更には栽培を共にしている人たちとの交流を願っていることが分かる。また,そこには全国の人たちと「時」と「活動」を共にしているという共有感があることも分かる。
 その時の思いをWeb掲示板では以下のように報告があった。
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 愛知県から子どもの報告:
「今日ケナフを10時ちょうどに189校のみんなといっしょに植えました。今日植えてから半年たてば大きくりっぱなケナフにできるといいなと思いました。これからは,ケナフで紙を作ってほしいなと思いました。」

 北海道から教師の報告:
「 天候があやしかったのですが,何とか全校で植えることができました。北海道のケナフと全国のケナフがつながっていると思うとワクワクしますね。芽がでたら,どしどし報告して下さい。」
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 このような子どもたちの思いや活動の様子をインターネットのWeb掲示板を通して報告していく。全国の参加校の友達や教師と,同じ日に同じ時刻に共通の種子を播くことで相手意識が生まれてくる。インターネットの威力が発揮されるとともに,相互の交流が始まっていくのである。
 このようにして,全国発芽マップ’2001は,ケナフとともに子どもたちと先生方の大きな夢をのせて始まったのである。

2.2.4.4 発芽

 2001年度は,早いところで2日後に発芽し,全国発芽マップのメーリングリストにおいてもぞくぞくと発芽の一報が寄せられた。

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 東京の○○です。今朝,教室に行ってみると,「三重県の○○小学校」からいただいた種から芽が出ていました。
 子どもたちももちろんですが,私も感激してしまいました。
 校庭の畑?いや花壇にまいた種はまだまだでしたが,教室の鉢にまいた種から芽が出ていました。
これからが楽しみです!!
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 ほとんどの参加校が5月21日から5月23日にかけて発芽報告がなされた。それに伴って,各地で発芽の状況を各学校のホームページにアップする活動やWeb掲示板で報告をやりとりする様子も盛んになってきた。

静岡県の参加校の子どもの掲示板での報告**************************************************************************************
全国のみなさん,こんにちは。静岡県○○小学校の○○です。
今日朝学校へ来てみるととてもビックリしたことがあります。
なんと!ケナフの芽がいっ〜〜ぱい出ていました。
おもわず,飛び跳ねて喜んでしまいました。
まだ,1.1センチの背丈しかありませんが,早く大きくなってくれるとうれしいです。
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2.2.4.5 成長の観察

 ケナフは数カ月で3メートルから4メートルにまで,急速に成長する植物である。そのため子どもたちにもその成長ぶりに驚きや感動がある。このことは継続観察していく上でもポイントとなることである。また,成長する過程において葉の形が変わったり,7月から10月にかけては台風も数多く接近することでも数多くの交流や活動が生まれる。
 観察の過程においては,教師自ら観察した結果をホームページに掲載したり,掲示板で情報交換する場が数多く見られた。また,子どもたち自身も観察したことを掲示板を使って他の学校に報告したり,ホームページを見たりしながら成長の様子を比較したり,それをもとに育て方を工夫するなどの取組が見られた。 
 また,子どもたちが観察をしていく上でその観点を与えて観察していくことも考えられる。今回は成長記録システムを活用し,観点を絞った観察活動を行ってみた。
 植物の成長の様子を実際に観察し,その結果をweb掲示板で報告したり,成長についての疑問やそこから広がっていく活動をそれぞれの掲示板を用いて報告したりして情報交換していく。
 それぞれの参加校は育てている植物の成長の様子を観察し,成長の喜びや,観察から生まれる疑問や問題点をweb掲示板を活用して意見交換をする。
 宮崎大学教育文化学部附属小学校のある児童はケナフの観察を行うことによって次のような疑問をもち,掲示板に投稿した。

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宮崎大学教育文化学部附属小学校の子どもの報告:
「ケナフにたくさんのアリが行列をつくっているのをよく見かけませんか。いったい何をめあてにのぼっているのかずっと観察していたのですが,今日,不思議なことに気付きました。すべてのケナフの葉っぱの裏に(どの葉っぱも同じところ)小さなアナのようなものがあって,そこでアリがまるでみつをすってるかのようにむらがっているんです!校内のどのケナフも同じなんです。みなさんのところのケナフはどうですか?この穴のようなものについてなにか知っていたら情報をください。」
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 それに対して参加校の教師から以下のような返事があった。

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 参加校の教師の返事:
 「本当にそうですね。私も,確認しました。アリは,必ずあの部分に来ています。
 私の場合,昨年,他の先生が提案されていたのを知って,それ以来,注目しています。
 あの部分に来ては,何かしています。単純な推測ですが,何か甘いものがあるのではないでしょうか?(中略)飲んでみるとそんなに甘さは感じないのですが,それでも,砂糖が2.6g/100mlという表示がありました。
 この結果から,単純に考えると,ケナフの場合,100ml中2gの濃度で糖分が含まれていることになります。多分・・・・」
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 このような児童・生徒,教師の直接対話を促すためにも観察活動を促す必要がある。そこで,MLを通して以下のように観察活動推進のための全国一斉観察日を設定した。

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 幹事校からの提案:
 「平成13年5月19日午前10時全国一斉に種蒔きをして,今日で96日,あと4日でで100日目です! 100日目前後の成育状況をみなさんで報告し合いませんか?MLで報告していただいてもいいですし,もし,画像があれば掲示板に画像つきでお願いします。」
 ケナフから広がる夢〜ぼくの種,私の夢〜掲示板
  1 調査日   月  日( )
  2 学校名(            )
  3 都道府県と市町村名(       )
  4 担当者名(       )
  5 成長の様子
   ○ ケナフの背丈(    センチ)
   ○ 根元の幹の太さ(直径   ミリ)
  7 害虫の被害の状況
  8 その他

 この後,参加校からぞくぞくと全国各地の成長の報告がなされた。

2.2.4.6 開花

 ケナフは大抵の場合,9月から10月にかけて開花する。クリーム色をしたハイビスカスに似た花である。
 開花の状況も全国各地から報告されたが,開花だけでなく,ケナフの花を使ってのジュース作り,工作,ケナフ染め物など,開花1つとっても様々な活動が生み出されてきている。
 本年度は2001年7月17日に開花の第1報が,2001年度初参加の沖縄県から全国発芽マップのメーリングリストを通して流された。

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沖縄の○○小学校です。
16日,ケナフの花が咲きました。
昨年より,20日ほど遅れました。これは,4月11日に種蒔をしたものです。
みなさんと一斉に蒔いたものはまだまだです。
先ずは報告まで。
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 また,このメールに呼応して,
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 ○○さん,全国のみなさん,こんにちは。
 中西@宮崎附属小です。
 最近はほとんど掲示板での交流を中心にしていますので,MLはご無沙汰でした。
 沖縄が開花全国一番のりですね。おめでとうございます。昨年は7/29に宮崎で開花しています。

http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/HomePage/kyoudoupuro/hatuga12/isei/kaika/kaika.html

 昨年はこの時期にすでに1メートル50センチ程度になっていたのですが,今年は若干育ちが悪いようです。なぜでしょうか?(鵜飼さんも以前そのようにおっしゃっていましたね。)
 今週でほとんどの学校が1学期を終了します。全国発芽マップ2001もしばらくは夏休みですね。夏休み中は台風などで心配なこともありますが,登校日などでも報告できるといいですね。
 それでは,また。
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 その開花の報告に連動する形で,宮崎大学教育文化学部附属小学校の保護者の方が,全国開花マップを作成してくださった。

2.2.4.7 収穫及び紙すき等

 10月頃からは,収穫の段階に入る。収穫といっても紙すきをするために茎を用いたり,工作をするために茎や葉を用いたり,ケナフを使っての料理をするための収穫である。ケナフは素材的にも捨てる部分がなく,ほとんど全てを使うことができる。茎は紙の原料や工作の素材,葉は料理の材料,手作り葉書の飾り,花はジュースの材料,押し花など使い方次第で様々な活動を行うことができる。
 宮崎大学教育文化学部附属小学校では,全国発芽マップでの一斉播種を学校行事「ケナフとともに」として教育課程に位置付け,そこから生まれる子どもたちの自由な発想を生かした活動を展開した。子どもたちは主に総合的な学習の時間に全国発芽マップから生まれる学習や活動に取り組んでいる。以下はケナフで紙すきをしたときの子どもの作文とその時の様子である。
「今日,1時間目から5時間目まで,ケナフで紙を作りました。1年生たちとペアになってしました。まず,作り方は,前に用意していた繊維などを細かくしたものを道具を使って四角いして,タオルで水分をとって布にくっつけてアイロンにかけます。1年生と6年生どちらもとってもうまくできました。そしてできた葉書を全国の参加校に送りました。送ったのは,僕達が作った葉書と相手の作った葉書をくらべるためです。早く,葉書を比べて場所によってどう違うのか確かめたいです。」
「今日は1時間目から5時間目まで,総合でした。2時間目からは,1年生と一緒にケナフの紙作りをしました。紙作りをしたことは何度かあったけれど,1年生に教えながら作ったのは,初めてでとてもドキドキしました。でも,1年生と紙を作り終わって一緒に振り返りカードを書いていた時,ほとんどの子が『とても楽しかった!』と書いていて,顔を笑顔でした。それを見ていて一緒にやれてよかったと思いました。」

2.2.5 幹事校,参加校の授業実践活動

2.2.5.1 幹事校の活動

○ 参加校に対する種子の提供及び送付 
 本企画の準備段階で全国の参加校に対して,種子の有無を全国発芽マップのメーリングリストで問いかけ,種子のない学校や新しく参加した学校については幹事校から種子を送付する必要がある。
 2001度も昨年度と同じく,ケナフを共同で栽培していくことに決定したため,これまでの参加校は種子を収穫している場合もある。しかし,成育の状況,地域差による気候の違いによっては種子を収穫できなかった場合もあった。しかし,各地のボランティア団体や近隣の参加校から種子を分けてもらうなど新しいネットワークも広がってきている。
 本年度の場合は新しく参加した学校を含め,全国50校以上の参加校にケナフの種子を送付した。

○ 全国発芽マップのメーリングリストの使い方の共通理解
 参加校の先生方のコンピュータや電子メールの使い方は一律ではなく,初心者の方もいればベテランの方もいる。そこで,全国発芽マップのメーリングリストの使い方をある程度共通理解しておく必要があると感じた。そこで,以下のような内容で全国発芽マップのメーリングリストの使い方を共通理解した。

 昨年度までの取組からいくつかの「とりきめ」がありましたので,お知らせします。

1 全国発芽マップのメーリングリストへのアドレスの新規登録及び変更,削除については私の方で集約して申請します。アドレス,所属等を明確にしてお知らせください。また,変更については旧アドレスと新アドレスを併せて送ってください。
2 参加している学校のホームページへのリンクは自由です。ただし,画像,文章など作成者の許可を得る必要があると考えられるものの使用については,個人的に承諾をえるようにします。
3 電子メールには差し支えない項目について以下のようにな署名をつける。
4 メールへ写真等,画像の添付は原則的にしません。ホームページを公開できない学校等はできるだけ画像等の容量を小さくして添付してください。
5 メールをHTML形式ではなく,メール用のソフトの初期設定を「テキストメール」とか「書式なし」でお願いします。

 このようにある程度のメーリングリストの使い方を共通理解しておくことで,参加校のそれぞれの環境にも対応できるとともに,事務処理の手間を省くことができた。

○ 観察結果の共有化(Web化)
 観察結果の共有化については,本企画が全国規模でしかも観察データの活用が望まれていることから,子どもたちでも容易に活用することができるホームページを作成する必要がある。
 幹事校として,2001年度は参加校の数,学校名,場所等を一目で確認できる参加校一覧のページを作成した。しかし,現時点では参加校の子どもたちや教師が,発芽や成長の様子等の比較を容易にできるようなホームページではないため,今後は一覧比較できるようなホームページの在り方の検討していくことが必要である。また,子ども同士が直接観察した結果などをもとに意見をやりとりする掲示板機能を備えたページなどを整備していく必要もある。

○ 観察活動の推進
 観察活動の推進については,幹事校として以下のことを行ってきた。
 まず,全国一斉観察日を設定したり,観察結果のweb化をしたりして情報の共有化を図ることである。全国一斉観察日を設定することは植物の成長の特徴にも左右されるが,継続的に観察活動を続けていく上では有効であると考える。また,観察結果のweb化については観察結果の記録の役割も担っているので,今後も進めていきたいと考える。ただ,参加校の環境によっては自校のホームページを持つことができない学校もあるため,ホームページを持つことができなくても観察結果の共有化をすることができるシステムの運用を始めたところである。
 次に全国発芽マップメーリングリストを通して,観察活動の呼び掛けを行ったり,参加校の活動を紹介したりして活動への意欲を高めることである。この点については幹事校のみならず,参加校同士の電子メールのやりとりによって成り立っている場合も多い。つまり,参加者同士が刺激し合って次の活動が生まれてくるのである。
 全国発芽マップの活動や学習は,参加校にまかされている部分が多い。このことは,各参加校の教師や子どもたちが自主的な活動を期待しているとも言える。
 観察活動の推進については,2002年度へ向けての全国発芽マップの構想,システムの改善の面でも重要な部分である。共同で栽培する植物,参加校の数等を考慮しながらどのような方法が効果的か検討していきたいと考える。

2.2.5.2 参加校の活動(スモールプロジェクトを中心に)

 2001年度は,2000年度までの課題を解決するために,スモールプロジェクトを募り,以下のプロジェクトが参加校から立ち上がってきた。

「ケナフクラフトバザール」(ケナフを用いた工作等)
「ケナフ料理・お菓子づくりマッププロジェクト」(ケナフを用いた料理やお菓子作り)
「落花生プロジェクト」(落花生の栽培や観察や料理)
「BK(ブルーケナフ)情報部」(ブルーケナフの栽培)
「全国紙創り21」(様々な植物からの紙作り)
「綿マッププロジェクト」(綿の栽培や観察等)
「ケナフから広がる夢〜ぼくのたね,わたしの夢〜」(ケナフ栽培に関する情報交換)

 それぞれのスモールプロジェクトの活動の様子については,全国発芽マップの集い2001の論文集に掲載されているため,ここでは割愛する。

2.2.5.3 授業実践指導案等

1 理科においての実践

2. 総合的な学習の時間においての実践

2.2.5.4 教育実践活動における留意点,課題の抽出

 全国一斉にケナフの種子を播き,育て,観察し,そこから生まれる活動に主体的に取り組む児童の姿を見ることができた。これらの活動の中に子どもたちの学び方を学ぶ姿を見い出すことができる。全国発芽マップは教科の目標を達成するだけでなく,総合的な学習で期待されている学ぶ力の育成,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に取り組む態度を育てる可能性を大いに秘めていると考える。
 全国発芽マップを活用した教育実践活動の留意点として以下のことが挙げられる。
 まず,活動に取り組む時間的な問題である。学校の教育活動を進めていく上では,教科等,道徳,特別活動,総合的な学習の時間と教育課程上で1年間を計画的に学習活動を組織している。ましてや,中学校の学習になると教科色が更に強くなり,その時間でしか活動をするまたは指導をすることができないといった具合である。年間指導計画の中にインターネットを活用した学習活動をどのように位置付けて実践していくのか,如何にして時間を確保していくのかが重要なポイントになてくる。
 次に指導者のかかわりについてである。子どもたちは興味関心が高まるような教材には目の色を輝かせて取り組む。その教材を準備し,如何にして提示するかは指導者の力量である。つまり,教師が子どもたちの学習環境をどのように構築し,事象をどのように提示していくかによって,その後の子どもたちの教育活動に大きな変化が見られるのである。全国発芽マップでは,協同で栽培する植物は毎年変わる可能性があり,スモールプロジェクトにおいては,様々な取り組みが生まれてくる。教師が知っていることもあれば,全く初めて出会うこともあるのである。つまり,教師の子どもへのかかわりとして,教師は子どもたちに教えるという立場ではなく,共に考えていくという姿勢が大切であると考える。その中に子どもとともに感動し,喜び,発見していくのである。この教師の立場を大切にしていきたい。
 これからの課題として,本年度から運用を始めたweb掲示板を用いた子ども同士の直接対話の中で教師がどのようにかかわっていくべきなのかが挙げられる。また,国際的な広がりを見せてきていることで掲示板が英語と日本語の入り交じったものになっている。そのことで日本の 子どもたちがどのように掲示板の活用を進めていけばよいのか,迷う場面もでてきている。これらのことについては,来年度の全国発芽マップでの実践を進めていく中で,より充実した学 習や交流に発展するよう全国の参加校の意見なども取り入れながら改善していきたい。

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2.3 集会の実施

2.3.1 実施の準備

「全国発芽マップの集い2001」をプロジェクト委員会で,以下のように計画・実施した。
(1) 目的
 全国発芽マップの参加校の教師と一般の参加者が対面してこれまでの活動流れについて語り合い,今後の活動の方向性を見いだし,あわせて全国発芽マップの活動を広く普及することを目的とする。
(2) 日時と場所
 日時は,2001年12月8日(土)の13:00〜17:00で,開催場所は,宮崎市のシーガイア内のワールドコンベンションセンターサミットである。
(3) 開催についての告知
 「全国発芽マップの集い」の開催について,印刷物,電子メールの配布,Web上での案内の3通りの通信手段を用いて告知を行った。また,申し込みは,Webページ,電子メール,Fax,申込用紙の提出などの方法で行った。
 宮崎県内の各学校に配布した文書は,以下のようなものである。

(4)プレゼンテーション
 当日のプレゼンテーションは,原則的にプロジェクタにパソコンを接続して行うことにした。そのため,あらかじめ発表者からファイルを送ってもらい,会場用ののパソコンにインストールして動作確認をした。
(5)配付資料
 「全国発芽マップ2001の集い発表論文集」を作成した。これには,当日のプログラムの他,講演,事例発表,パネルディスカッションのパネラからの原稿を掲載した。

2.3.2 集会の実施内容

 当日のプログラムは,前掲の通りで,祝辞,講演,事例発表,パネルディスカッション,及び,全国発芽マップ宣言から構成される。
 祝辞では,宮崎県情報政策課長 松本啓朗氏から,これからのIT産業ひいては教育分野における取り組み等を説明していただいた。
 全国発芽マップの集いでの提案内容については,以下に当日の実践発表の内容を順に掲載することで示したい。

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ごあいさつ

 21世紀を迎え,全国発芽マップも節目の年となりました。今年度は,新たに次のようなことを始めました。
1. Web上に植物の成長記録システムを設置
2. Web上に専用の電子掲示板を設置 (アクセス制限機能付き)
3. 中心植物の栽培に加えてスモールプロジェクトを開始
 これまでは,教師用のメーリングリストと各校のWebサイトによる運営でしたが,成長記録システムと電子掲示板の導入によって,児童・生徒が直に対話を行いながら協働的な学習を行うことができるようになりました。これらの仕組みを利用して,ささやかではありますが,学校間の協働学習の実践が前進しつつあります。
 ケナフに関しては,スモールプロジェクトとしての「ケナフから広がる夢 〜ぼくのたね,わたしの夢〜」,「ケナフクラフトバザール」,「BK(ブルーケナフ)情報部」,ケナフ料理・お菓子づくりマッププロジェクトが,学習の場となっています。
 また,「綿マッププロジェクト」と「落花生プロジェクト」スモールプロジェクトとして立ち上がり,ケナフ以外の植物に関する学習への広がりで出てきました。
 さらに,「全国紙創り21」,「21世紀農業のわっ!」,「全国発芽マップ何でも掲示板」などのような掲示板が,個々のスモールプロジェクトをつなぐ役割を果たしています。
 こういった一つひとつのスモールプロジェクトは,全国発芽マップ参加校の有志の先生によって提案され,運営されています。イニシァチブとコミュニティ形成の重視という全国発芽マップの文化はここにも生かされています。
 今日の「全国発芽マップの集い」では,それぞれのスモールプロジェクトの活動を代表する先生方や,学校間訪問を実現させた先生,海外との交流を実現させた先生から具体的な実践報告や提案をしていただきます。
 この「集い」が,私たちの明日の教育実践へのヒントを得る場となれば幸いです。
 また,このような機会を実現するための具体的なご支援をいただいているEスクエアプロジェクト事務局の情報処理振興事業協会(IPA)と財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC),さらに,ご後援をいただいている宮崎県,宮崎県教育委員会,宮崎市,宮崎市教育委員会この場を借りて心から感謝の意を表明いたします。
 ありがとうございます。

全国発芽マップ2001プロジェクト委員長
宮崎大学教育文化学部 教授
中山 迅
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「全国発芽マップの集い」 (Eスクエアプロジェクト 協働実践企画)

 ■開催日 2001年12月8日(土)
 ■場 所 シーガイア・ワールドコンベンションセンター・サミット オーチャードホール
 ■主 催 全国発芽マッププロジェクト委員会
 ■後 援 宮崎県,宮崎県教育委員会,宮崎市,宮崎市教育委員会
 ■協力団体 (財)コンピュータ教育開発センター

        【プログラム】12月8日(土)

  13:00〜13:15  開会行事
   挨拶   中山 迅(宮崎大学教育文化学部教授)
   祝辞   松本啓朗(宮崎県情報政策課長)

  13:15〜13:45  基調講演
          テーマ:メタ認知を支援するIT:発芽マッププロジェクトに期待すること
   講演者   大島 純(静岡大学教育学部助教授)

  13:55〜14:55  事例発表
   発表者  鵜飼 節夫(三重県一志郡嬉野町立中郷小学校教諭)
          テーマ:ケナフでつながる,ひろがる
          河畑南美子(広島県竹原市立東野小学校教諭)
          テーマ:楽しいな!ケナフクラフトって
          井柳  強(静岡県清水市 地球クラブ代表)
          テーマ:ベルギーの子どもたちとケナフの栽培・紙漉き交流

  15:10〜16:50  パネルディスカッション
       〜テーマ:スモールプロジェクトの連携〜
   コーディネータ 奥村 高明(宮崎県日向市立富島中学校教諭)
   パネリスト   木野田 毅(宮崎県日向市立富島中学校教諭)
             宮脇 公治(北海道勇払郡鵡川町立花岡小学校教諭)
             根井  誠(宮崎県椎葉村立椎葉中学校教諭)
             中西  英(宮崎大学教育文化学部附属小学校教諭)
   コメンテータ  大島  純(静岡大学教育学部助教授)

  16:50〜17:00  閉会行事
   挨拶  中山 迅(宮崎大学教育文化学部教授)

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全国発芽マップとは…

1. プロジェクトの目的
 「全国発芽マップ」は,1995年(平成7年)に100校プロジェクトの中の企画の一つとして始められた,インターネットを活用した栽培学習です。この企画は,新100校プロジェクト,Eスクエアプロジェクトに引き継がれて,今に至っています。この企画での約束事は,同日,同時刻に一斉に全国で同一の植物の種子を蒔いて栽培するということだけです。参加校は,その成長の様子や児童・生徒の活動を電子メールやホームページ,さらには電子掲示板等で情報交換します。さらに,データをまとめて発表するなどの交流を図ります。このようにインターネットを活用する協働的な学びの場が「全国発芽マップ」です。
 ここには,「すべての活動を参加者がつくっていく」という文化があります。そして,児童・生徒と教師の能動的なかかわりが大切にされます。また,この企画には,栽培する植物などの「自然」そのものから,あるいは,インターネットを通して接する人々から直接学ぶことが重視されるという特徴があります。インターネット上の二次情報から学ぶということを,児童・生徒に期待するのではないのです。こういった活動を通して,理科や社会科等の教科のねらいを実現すると同時に,総合的な学習へ発展することをねらっています。

2. プロジェクトの実施内容
2.1. 実施概要
(1) Web上での,児童・生徒の直接対話の実現
 今年度は,Web上に各学校で撮影したデジタル画像を公開したり,Web上で児童・生徒が直接対話を行うための掲示板を設置しました。これによって,各学校の様子を,すべての参加校が日々共有できるようになりました。また,いくつかのグループで学校間協働の対話学習を進めることもできるようになりました。
 現在10のスモールプロジェクトが展開中です。それぞれの詳しい内容については,http://map2k.robox.org/mb.cgi をご覧ください。
(2) 「全国発芽マップの集い」の実施
 代表的な参加校が一堂に会して交流・協議を行う「全国発芽マップの集い2001」を開催します。この催しは,ネットワーク上の活動とface to faceの活動をつなぐことによって,ネットワーク上の活動をいっそう深化・拡大することを目的とします。

2.2. 年間スケジュール(予定)
  平成13年5月 参加校の募集,第1回種まき
  平成13年6月 参加校の決定,第2回種まき,「集い」での発表者や実行委員を,参加校の中から募集
  平成13年5月〜平成13年末 観察と,協働的学習の実践
  平成13年12月 「全国発芽マップの集い」開催
  平成14年2月 実施報告書,実践マニュアル作成
  平成14年3月 成果発表会(東京)

3. 参加条件
  参加校は,原則として学校教育法に定める学校,または,それに類する学校であること。ただし,この条件にあてはまらない団体等での参加ご希望につきましては,当企画の委員会において個々に検討させていただきます。その場合は,「オブザーバー会員」としての登録となる場合があります。
  参加校の条件
  ○ 学校からインターネットにアクセス可能であること。
  ○ 指導される先生がメーリングリストに登録し,電子メールの送受信が可能なこと。

4. 主な実践内容
 ・ 全国一斉種まき (2001年5月19日午前10時)
 ・ケナフの観察・記録。(ケナフの背丈,根元の幹の太さ,葉の枚数,葉の形,葉の長さ,葉の幅,葉の色,つぼみの数,花の数など)
 ・スモールプロジェクトの実践
 ・紙すき,葉書作り,ケナフの料理などを自主的に実施
 ・観察結果,実施内容,各校からの提案などを,メーリングリスト,画像掲示板,各校のホームページを利用して自主的に情報交換

5. 事務局の支援内容
 (1) 実践マニュアルの提供
  平成11年度に「全国発芽マップ・プロジェクト」で作成した実践マニュアルを下記のURLで参照できます。
  http://www.cec.or.jp/es/E-square/books/11nendo/kyoudou/hatumanu.pdf
 (2) メーリングリスト,掲示板の運営
  プロジェクト実施中は,メーリングリスト,掲示板を運営して生徒及び教師が情報交換を行います。
 (3)ホームページの運営
  プロジェクト実施中は,全国発芽マップ公式ホームページを運営して参加校間の情報交換を行います。
  (http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/HomePage/kyoudoupuro/hatuga13/hatuga13.html

6. 実施体制
<プロジェクト委員会メンバー>
 中山 迅 宮崎大学教育文化学部教授
 山口悦司 宮崎大学教育文化学部講師
 中西 英 宮崎大学教育文化学部附属小学校教諭
 岩切宏樹 宮崎大学教育文化学部附属小学校教諭
 奥村高明 宮崎県日向市立富島中学校教諭
 根井 誠 宮崎県椎葉村立椎葉中学校教諭
 井上英幸 株式会社宮崎県ソフトウェアセンター
 長友信裕 株式会社アボック西村
 原田静男 財団法人 コンピュータ教育開発センター

7. 応募方法
 全国発芽マップ2001の参加申し込みページ
 http://karen.dev-nul.com/form21.php3 から直接申し込んで下さい。
 また,電子メールでの申し込みも受け付けます。電子メールに以下の項目を記入し,
 iwakiri@fes.miyazaki-u.ac.jp 宛にお送り下さい。
・ 担当の先生のお名前(ふりがなもお付け下さい)
・ 所属する学校名(例:○○県○○市 □□小学校)
・ メーリングリストに登録するメールアドレス
・ 学校等のホームページのURL(学校にホームページがある場合)
・ ご意見等

8. 募集期間
 平成13年5月1日(火)から平成13年6月22日(金)
(種まき日の都合で上記期間を設定していますが,基本的に参加時期に制限は設けておりません。募集期間以外でも,参加のご希望があれば是非ご参加ください。)

9. プロジェクトの期間
 平成13年5月から平成14年1月末まで

10. 参加申し込みに関する問い合わせ先
 財団法人 コンピュータ教育開発センター(CEC)
 ネットワーク利用促進部
 E-Mail:net@cec.or.jp
 TEL:03-3593-1804
 FAX:03-3593-1806

11. 実施内容に関する問い合わせ先
 全国発芽マップ幹事校 宮崎大学教育文化学部附属小学校
 担当者:中西 英(全国発芽マップ・算数担当)
 E-Mail:nakanisi@fes.miyazaki-u.ac.jp

12. 2001年度の試み
 〜成長記録システム〜
 Web上に植物の成長記録システムを設置しました。
 ● 各学校の成長の記録を残すことができます。写真などの画像も併せてることができます。
 ● 紙すきや料理などの2次的活動を記録できます。
 ● 一度,記録した成長や活動の記録を書き換えることができます。
 ● 自校の記録を一覧することができます。
 ● 観察した記録の全国一覧表示ができます。

 〜電子掲示板〜
 Web上に,あるテーマや企画に基づいて児童・生徒が直接やりとりできる電子掲示板を設置しました。
 ● 自分で話し合いたいテーマや活動をもとに掲示板を開設できます。
  <スモールプロジェクトでの取り組み>

『ケナフクラフトバザール』 管理者名 河畑南美子 (かわばたなみこ)
『ケナフ料理・お菓子づくりマッププロジェクト』 管理者名 鵜飼節夫 (うかいせつお)
『落花生プロジェクト』 管理者名 木野田毅 (きのだたけし)
『BK(ブルーケナフ)情報部』 管理者名 宮脇公治 (みやわきこうじ)
『21世紀農業のわっ!』 管理者名 清野裕司 (せいのゆうじ)
『全国紙創り21』 管理者名 根井誠 (ねいまこと)
『綿マッププロジェクト』 管理者名 奥村高明 (おくむらたかあき)
『全国発芽マップ何でも掲示板』 管理者名 中西 英 (なかにしすぐる)
『ケナフから広がる夢〜ぼくのたね,わたしの夢〜』管理者名 中西 英 (なかにしすぐる)

 なお,本プロジェクトは「情報処理振興事業協会(IPA)」及び「財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)」が主催するEスクエアプロジェクトにおいて,協働実践企画プロジェクトに採択され,支援を受けて実施されてきたものです。

情報処理振興事業協会(IPA)
 http://www.ipa.go.jp/
財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)
 http://www.cec.or.jp/CEC/
Eスクエアプロジェクト
 http://www.cec.or.jp/es/E-square/

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2.4 教育実践活動の対外的な公開,普及方法

今年度の活動に関し,対外的に公開・普及するために,下記の活動を行った。
(1) 「全国発芽マップの集い」の開催
 学校関係者約100名が集まって,基調講演,全国発芽マッブの先進的実践校からの発表,パネルディスカッションによる協議などを行った。特に,宮崎県内の学校関係者へのPRを行った。
(2) 「全国発芽マップの集い」の資料集の内容全国発芽マップの公式ホームページで公開することで,「集い」に参加していない学校に対して,実践の趣旨と今後の展望の周知を行った。
(3) 学習研究社の教育雑誌「パソティア」(2001年9月号,特集: 環境教育と学ぶ力)に「全国発芽マップ」の実践を紹介した。

2.4.1 成果物の公開

 今年度の成果物に関しては,下記のURLにて公開し,利用を希望する学校にはWebからの申し込みで利用できるようした。

http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/HomePage/kyoudoupuro/hatuga13/hatuga13.html

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2.5 幹事役,取りまとめ校の役割と要件
 全国発芽マップのように参加校が多数にのぼり,参加校が日本全国にわたる協働プロジェクトを推進していく上で,幹事校として次の点に留意してプロジェクトを推進してきた。

2.5.1 参加校の募集

 「全国発芽マップ」は,インターネットを活用した栽培学習である。
 この企画での約束事は,同日,同時刻に一斉に全国で同一の植物の種子を蒔いて栽培するということだけである。当然,その植物の成長の違いが表れてくる。参加校は,その成長の様子や児童・生徒の活動を電子メールやホームページ,さらには電子掲示板等で情報交換する。さらに,データをまとめて発表するなどの交流を図る。このようにインターネットを活用する協働的な学びの場が「全国発芽マップ」である。

2.5.2 参加校の募集にあたっての視点

2.5.2.1 広く全国各地からの参加校を募るようにすること。

 全国発芽マップでの約束事は,同日,同時刻に一斉に全国で同一の植物の種子を蒔いて栽培するということだけである。
 植物の成長は気象条件に左右される。当然,日本全国では成長の違いがでてくる。もちろん同じ地域でも子どもたちの学びは成り立つのであるが,気象条件による成長の違いがより表れた方が学習の効果が期待できる。また,植物の観察,成長の違いにとどまらず,そこから生まれてくるであろう地域の学習にも発展していくことで,社会科の学習,さらには総合的な学習の時間のテーマとしても発展していく可能性を秘めている。そのような観点からも広く日本全国から参加校を募ることが望ましいと考える。

2.5.2.2 それぞれの参加校がインターネットにアクセス可能であること。

 全国発芽マップ」は,インターネットを活用した栽培学習である。また,参加校は,その成長の様子や児童・生徒の活動を電子メールやホームページ,さらには電子掲示板等で情報交換し,データをまとめて発表するなどの交流を図るのが目的である。この企画への参加する最低条件として,参加校がインターネットにアクセス可能であることが挙げられる。

2.5.2.3 参加校の指導者がメーリングリストに登録し,電子メールの送受信が可能なこと。

 現段階では,参加校の活動の様子,連絡事項は主に全国発芽マップメーリングリストを通して行われる。つまり参加者の情報収集手段として,もっとも重要なものがメーリングリストといってもよい。インターネットへのアクセスと同じように電子メールの送受信が可能なことは最低条件として挙げられる。

2.5.3 参加校の募集にあたっての留意点

2.5.3.1 参加校の募集の案内は,全国一斉播種日の1月以上前から実施する。

 参加校の把握,共同で栽培する植物の選定,種子の調達,種子の送付などの作業を考えた場合,少なくとも,全国一斉播種日の1月以上前から参加校の募集を行う方がよい。

2.5.3.2 参加にあたっては,学校長の承認を得て申し込みをしていただく。

 参加校名は全国発芽マップ公式ホームページに参加校一覧としてweb上に掲載される。そのため指導者のみの判断ではなく,学校長の許可を得た上で参加していただく必要がある。

2.5.3.3 参加申し込みにあたっては,学校名,担当指導者名,電子メールアドレス等の必要事項を記入して申し込みをしていただく。

 幹事校はこのプロジェクトが進んでいく中で様々な連絡調整が出てくる。また,メーリングリストへの登録申請,変更申請,削除申請,参加校一覧の作成,参加校への連絡事項など参加校の情報を管理する必要がある。そこで,以下の内容を参加校の担当指導者に記入していただき,参加校の情報を管理することが重要な作業となる。ただ,入力の手間を考えると以下のように最低の項目数にとどめておくことも必要であろう。

(1) あなたのお名前
(2) 所属先
 例:宮崎県宮崎市○○小学校
(3) 登録希望の電子メールアドレス
 ※ 学校用でも個人用でも構いません。
(4) 学校等のURL http://
(5) 発芽マップに対するご意見等

2.5.4 参加校の募集の方法

 全国発芽マップ2000の参加校は200校を超えている。昨年度は163校であった。その参加校の増加には驚かされる。
 参加校の募集の方法も数多く考えられるが,全国発芽マップ2001では以下のような方法で参加校の募集を行った。

2.5.4.1 メーリングリスト及び参加者のネットワークを大切にする。

 全国発芽マップには,現在のところ教師専用のメーリングリストが設置されている。そこで,そのメーリングリストを通して,これまでの参加者の方々へ参加の呼び掛けをしもらった。つまり,参加者のネットワークを大切しているのである。これは全国発芽マップの文化ともいえる,参加者がこの企画の推進者であることを物語っている。
 このことは全国発芽マップ企画に限らずインターネットを活用した学習を進めていく上では重要な考え方である。

2.5.4.2 公式ホームページ等を活用する。

 全国発芽マップには公式ホームページが存在する。そこに以下のような参加申し込みのフォームを作成し,そこから申し込みができるようにした。また,作成する際にできるだけ記入する項目を減らし,記入者の際の煩雑さを避けるようにした。

2.5.5 全国発芽マップメーリングリストの登録等

2.5.5.1 全国発芽マップメーリングリスト(hatsuga-map@cec.or.jp)への登録申請・変更申請・削除申請を行う。

 幹事校は参加校の担当者のメールアドレスを全国発芽マップメーリングリストへ登録する必要がある。以下の表は2000年度の登録申請・変更申請・削除申請の数であるが,ほとんど場合,4月,5月,6月に集中している。この時期には毎日のように登録申請をしているといっても過言ではない。そこで,事務処理をできるだけ簡素化するためにwebからの参加申し込みのページからのメールには必要事項が自動的に明記されるように設定した。

***********************
氏名=○○○○
学校名=○○県○○市立○○小学校
アドレス=
URL=http://
***********************

2.5.5.2 メーリングリストの使用にあたっては,署名をつけていただく。

 活動が始まり,メールが頻繁にやりとりされるようになることは,インターネットを活用した学習を展開する上では大変喜ばしいことである。ただ,参加校が100校を超えると相手が見えなくなってくる恐れがある。そこで,できるだけ相手が分かるように差し支えない範囲において署名をつけていただくことを参加校のみなさんにお願いした。

(例)
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
 学校名:宮崎大学教育文化学部附属小学校
 住 所:〒880-0026 宮崎市花殿町7-49
 名 前:中西 英(全国発芽マップ・算数担当)
 Name: Suguru Nakanishi
 TEL:0985-24-6706 FAX:0985-24-3176
 URL:http://www.fes.miyazaki-u.ac.jp/
 e-mail:nakanisi@fes.miyazaki-u.ac.jp
 Address :7-49 hanadono-cho ,Miyazaki City,Miyazaki,Japan 880-0026
 School Name:Elementary school attached to College of
 Education,Miyazaki.University


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

2.5.5.3 メーリングリストの使用の際の留意点の共通理解

 参加校のインターネットの接続環境は様々である。ダイアルアップ回線環境もあれば専用線環境もある。それも含めてメーリングリストの使用の際の最低限の取り決めをしておく必要がある。
 そこで,以下の内容を年度当初に取り決めとして共通理解を図った。

a. アドレスの新規登録及び変更,削除については幹事校が集約して申請すること。
b. アドレスの変更については旧アドレスと新アドレスを併せて送ること。
c. 参加している学校のホームページへのリンクは自由であること。ただし,画像,文章など作成者の許可を得る必要があると考えられるものの使用については,個人的に承諾をえるようにすること。
d. メールへ写真等,画像の添付は原則的にしないこと。
e. ホームページを公開できない学校等はできるだけ画像等の容量を小さくして添付すること。
f. メールをHTML形式ではなく,メール用のソフトの初期設定を「テキストメール」とか「書式なし」にすること。

2.5.6 共同で栽培する植物及び全国一斉播種期日の設定

 全国発芽マップでの約束事は,同日,同時刻に一斉に全国で同一の植物の種子を蒔いて栽培するということである。この唯一のきまりがあるからこそ,子どもたち及び教師の学びが生まれてくるのである。また,全国発芽マップの活動は参加者自らがつくっていくという特徴がある。
 それらのことを考慮すると,共同で栽培する植物及び全国一斉播種期日の設定については以下の2点が重要なことになってくる。

2.5.6.1 共同で栽培する植物の選定については,広く意見を求めた上で決定する。

 このプロジェクトの活動は参加者の主体的な活動によってつくられる。共同で栽培する植物の選定についても参加者がかかわって決めていくことで,その後の活動へのかかわりも主体的になってくると考える。
 また,共同で栽培する植物の選定については,1年間の活動を左右する重要な事柄であるため,その植物の特性,教育的な意義等を十分検討して決定していくことが大切になってくる。
 例えばケナフは,1997年から2000年の4年間連続で全国発芽マップの共同栽培植物に選定されている。その教育的な意義ととして以下のことが考えられる。

a ケナフが1年草で,播種,発芽,開花,結実の成長過程が,学校の1年間の流れに合っていること
b 栽培管理が比較的容易で,しかもその成長は速く,子どもたちに驚きや感動があり,継続観察を行う上で魅力的であること
c 活動を行う中でケナフの会などボランティア団体の協力を得やすいということ
d 収穫の時期になると観察だけでなく,紙すき,料理,工作などの活動に発展する可能性があること
e 電子メールなどの電子媒体での交流から,ケナフの葉書などの非電子媒体での交流につながること
f ケナフの特性を考えることで,環境問題を考えていくきっかけになること
g 平成14年度から実施される総合的な学習の時間のテーマとしての可能性を秘めていること

 以上のような教育的な意義があるため,これまでの参加校の教師から共同栽培の植物として選定されているものと考える。
 つまり,上記のような学校現場での教育的意義を十分ふまえた上で共同で栽培する植物の選定を参加者との意見交換をしながら進めていく必要がある。

2.5.6.2 全国一斉播種期日を設定する。

 このプロジェクトを進める上では同日,同時刻に播種することで成長の違いから学習が生まれてくる。ただ,全国規模のプロジェクトのため,植物の特性や全国の気象条件などを考慮しながら全国一斉播種期日を設定する必要がある。
 設定した播種期日については,栽培する場所の確保,耕作の時間などを考慮し,少なくとも1ヶ月前には連絡しておく必要がある。

2.5.7 参加校に対する種子の提供及び送付

 全国の参加校に対して,種子の有無を全国発芽マップのメーリングリストで問いかけ,種子のない学校や新しく参加した学校については幹事校から種子を送付する必要がある。
 ただ,幹事校から全て種子を送るのではなく,これまでの参加校のネットワークを生かすことにより,準備段階からも参加校同士の交流が始まることも考えられる。

2.5.7.1 共同で栽培する植物の種子の有無についての問い合わせ

 共同で栽培する植物の選定及び全国一斉播種期日の設定と同時に種子の有無について参加校に問い合わせを行う。
 種子の手配,参加校への送付などの作業を考えるとやはり全国一斉播種の1ヶ月前にはその問い合わせをしておくべきであろう。

2.5.7.2 送付先の郵便番号,住所,氏名等の連絡

 事務局の種子の発送作業をできる限り簡素化するために,以下の項目を記入していただくようにする。

------------------------------------------------------------------
種子の送付希望書
種子の送付先
郵便番号:(   -    )
ご住所:(                )
学校名:(                )
お名前:(                )
------------------------------------------------------------------

2.5.7.3 参加校への種子の送付

 全国発芽マップ2001では参加校が200校を超えたため,種子の送付についても全国50校以上に送付した。

2.5.8 観察結果の共有化(Web化)

2.5.8.1 全国発芽マップ公式ページの作成

 全国発芽マップ公式ページを作成し,これまでの活動の様子や,最新情報を得ることができるようにする。トップページは内容を精選し,利用者が見やすい,使いやすいものを目指した。項目は以下の通りである。

a 全国発芽マップの趣旨
b これまでの発芽マップでの活動の様子(平成7年度から平成12年度)
c 参加校募集の案内
d 参加校一覧 
e 参加申し込み
f 宮崎大学教育文化学部附属小学校
g 宮崎大学附属小学校の活動
h ケナフリンク集
i 開花マップ
j 全国発芽マップの集い関係
k 成長記録・掲示板開設について
l スモールプロジェクトについて

2.5.8.2 参加校一覧のページの作成

 参加校がそれぞれの活動の様子を把握することができるように参加校一覧のページを設けた。全国発芽マップ2001では,参加校が多く200校を超えたため,アンカーを設けて地域毎に表示されるように工夫した。

2.5.9 観察活動の推進

2.5.9.1 全国一斉観察日の設定

 参加校の活動は基本的に各参加校の主体性にまかせている部分が多い。ただ,植物の観察という点で期日を設定し,観察の観点をある程度焦点化した方が観察結果の共有化を図る上でも有効であると考える。

 そこで,以下のような観点を全国発芽マップのメーリングリストを通して流し,観察結果を共有することにした。

2.5.9.2 観察活動の呼び掛けや参加校の活動の紹介

 各参加校の観察や植物の成長の様子を共有し,それに対する反応を電子メールでできる限り行うことで観察活動への意欲付けを図る必要がある。また,参加校のホームページで観察や活動の参考になるものがあれば,メーリングリストを通して積極的に紹介していく。

2.5.10 観察結果を活用した授業を実践

2.5.10.1 全国発芽マップを活用した学習の在り方を研究する。

 観察結果等を活用して,各教科,特別活動,総合的な学習の時間の各領域において授業を実施するとともに,全国発芽マップを活用した学習の在り方を研究する。
 ※ 授業実践例参照

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