E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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「全国発芽マップ実践企画」実施報告書

5. 参加校の実践事例(集いの事例発表)

全国発芽マップの集い 基調講演

メタ認知を支援するIT
−発芽マッププロジェクトに期待すること−

静岡大学教育学部 助教授 大島 純

1. はじめに
 来年度から本格的に導入される「総合的な学習の時間」において,各学校は自らのオリジナリティーをもった教授プランの作成が求められている。そこでは,子供たちの自発性を尊重し,自ら問題解決に臨む姿勢と,そのための能力の育成が主眼におかれなければならない。そうした自発的問題解決学習を支援する強力な道具として,ネットワーク技術をはじめとする情報テクノロジー(以下,IT)に対する期待は非常に大きい。しかし,その潜在的な力は誰もが認めているものの,「それでは,そうしたテクノロジーをいかに利用して何を実現したいのか?」という教育の根本的な問いを問いただす機会は少ない。そのために,やもすると,(情報リテラシーという名称のもとに)テクノロジーをうまく使いこなすことができるようになることを目指すという教授・学習目標のすり替えが意図的あるいは無意識的に行われてしまう。
 あくまでも私たちの考えるべきことは「学び」を実現するための努力の仕方であり,新しく「情報」という教科を作ることではない。教科の勉強となってしまった途端に,子どもたちの間に序列がつけられ,「できる子」と「できない子」が生まれる。「やる気のある子」と「やる気のない子」が分かれる。こうした現象は,私たちが「学び」を実現できていないもっとも顕著な結果であるのかもしれない。「総合的な学習の時間」では,誰もそんなことな願ってはいないだろう。本稿では,「学び」をデザインするという教授活動とそれにかかわってITがどのような役割を果たすべきか,また,そうした役割を果たすべく機能するために我々が何を考えなくてはいけないかについて,論じてみたい。

2. ITのもつ教育的効果
 一体ITはどのような教育的な効果を持っているのだろうか?学習研究者たちがこれまで展開してきたさまざまな研究成果(たとえば,Bransford, Brown, & Cocking, 1999)から次の2つのことは明らかになっていると考えてよいだろう。
 新しい知識表象・編集の道具。ITはこれまで人が紙や鉛筆を使ってうまく表現することができなかった複雑な現象やモデルを容易に表現するための道具として利用することができるようになった。代表的なものの中には,マイクロワールド(microworld)と呼ばれる仮想空間でのシミュレーションソフトや,ハイパーメディアに代表されるようなマルチメディア化された教材(CD-ROM)などがあるだろう。これらの道具は,「人が頭の中だけでイメージしていてはなかなかとらえづらいものを目に見える形で表現する」ことができたり,「実際にモデルを操作して何が起こるかを理想的な仮想空間で実験する」ことができる。開発当初は「子どもたちにとってわかりづらいものを分かりやすく提示する」ための道具であり,子どもたち自身が試したり,考えたりすること自体はデザインされることはなかった。ある子どもは考えていただろうし,考えない子どももいただろう。道具としてのマルチメディア教材は豊かな情報を提示してはくれるものの,本当に子どもに行って欲しい学習活動そのものを正確に子どもたちに伝える能力はなかった。
 ミシガン大学のhi-ceで開発されているソフトウエアはそうした問題点を克服している良い例の一つであろう。IT(ここではコンピュータ上で構築することができるモデルであるが)は,「学習者中心」で開発されている。eChemというソフトは高校生が物質の分子構造を理解するために開発されたものであるが,原子の配列を自ら考え構築してみることができ,さらにそれは3次元空間で回転することができる(図1参照)。「原子配列のモデルを作る」活動と,「作ったモデルを回転していろいろな角度から見る」活動は,そうした機能がマルチメディアの一般的な機能であるから導入されているわけではない。あくまで,「そういった機能が学びを実現するに必要であるから」そこにあるのである。「原子配列のモデルを作る」活動からは,原子の手の数やその結びつき方を考慮し,モデルの意味を理解することにつながるし,「3Dで回転してみることができる」機能の背景には,そうすることによって二次元表象(例えばH20)との対応付けを考えさせることもできる。
 新しいコミュニケーションの道具。ネットワーク・テクノロジーが一般的なものになるにつれ,こうした新しいコミュニケーション・チャンネルが学習の場にも取り込まれてきた。早くは,電子メールによる情報交換(「発芽マッププロジェクト」も当初はそうであった)に始まり,WWWからの情報の検索,掲示板機能などを利用した学習の履歴の作成などの試みがいたる所で展開するようになった。初めは「これまでにないコミュニケーションのチャンネル」が存在することだけに価値が見いだされてきたが(「教室の外とつながった」という言い方をよくする),それだけでは「学び」をより良くする効果はそれほど期待できないことも徐々に明らかになっている(大島,1998)。
 「ネットワーク・テクノロジーを利用して学びをこれまで以上によくできないか」という研究課題を集中的に追究している研究領域がある。「協調学習のコンピュータ支援(Computer Support for Collaborative Learning)」というもので,「ネットワーク・テクノロジーを利用して効果的な協調学習を実現しよう」という試みと,そのための科学的な知見を作っていくことがこの研究領域に携わる研究者たちの共通の願いである。CSCLの中では,もちろん新しい機能や技術的な革新も期待されてはいるが,それと同じ程度あるいはそれ以上に「テクノロジーを有効に活用するための教授デザインのための指針」を見いだす研究(「デザイン実験アプローチ」と呼ばれる)が盛んだ。著者が最近展開している研究プロジェクトもこうしたデザイン実験の一つであり,それをより広範な文脈へと拡張して行く先に,「発芽マッププロジェクト」のようなより大きな学習の機会をデザインする研究が位置づけられると考えている。

3. CSCLを中核においた「学びの共同体」構築の試み:Web Knowledge Forum@神戸大学発達科学部附属住吉小学校
 著者らの研究teamが現在行っているのは,Web Knowledge ForumというCSCLシステムを小学校の理科の単元の中で利用するために,学習環境を総合的にデザインするというものである(図2参照)。デザインの対象となるのは,「単元における教授目標(子どもたちから見れば「学習目標」)」,「それを実現するための具体的な活動(協調学習をも含む)」,「活動を支援するために必要なリソースの選定」,さらには「協調学習を支援するためのシステムの構築」,「システム・インターフェイスのデザイン」などである。これらの側面が「子どもたちが学びの共同体に参加している」ようにデザインするというのが最終的な目標であり,それに向けてフィールドでの実験を繰り返し行っているわけである。
 こうしたフィールドでのデザイン実験をとおして教育研究者として著者自身が得た最も重要な知見の一つは,「ネットワーク・テクノロジーが有効に機能するには,その利用が学びの中で必然でなければならない」という原則である。「それを利用することが学習者の(学びの)目標にとって意味のある活動でないかぎり,そのテクノロジーは単に余計なものである」可能性が非常に大きい。「本当に教えたいことは何なのか」,「それは子どもたちの活動の中にはどのように現れてくるのか」,「それを支援するために協調学習はどのように組み込まれるのが必然であり,有効であるのか」,「さらにそれを支援するためにCSCLはどのように利用されるべきなのか」・・・。こうした問題を真摯に問い続けていくと,自らがそれらを十分に明確にしないままに教授学習活動をデザインしていたことに気づかされるのである。そこから初めて新しいデザインのヒントが生まれてくる。

4. 「発芽マッププロジェクト」に期待すること
 著者らが現在展開しているデザイン実験は,教科を中心にした一つの教室での物語である。発芽マッププロジェクトは,(1) 子どもたちの教科学習とは違う活動を取り扱っており,(2) 教科書でなく「ケナフ」から始まり,そして(3) 様々なレベルで意見交換が可能である。こうした学習の文脈で,著者らが直面した問題をどこまで克服し,さらにどのような解決策を今後見いだしていかれるのか,貴重な知見を提供してくださるものと期待している。

《引用文献》
Bransford, J. D., Brown, A. L., & Cocking, R. R. (1999). How People Learn: Brain, Mind, Experience, and School. Washington, DC: National Academy Press.
大島 純,「コンピュータ・ネットワークの学習環境としての可能性」,岩波書店,『講座・現代の教育:第8巻,情報とメディア』(分担執筆),1998.

著者ノート
 神戸大学発達科学部附属住吉小学校で行われているデザイン実験は,文部科学省科学研究費助成,基盤研究B(研究代表者:稲垣成哲),特定領域A(研究代表者:大島純)の支援を受けている。

● プロフィール
名 前 大島 純(おおしま じゅん)
所属等 静岡大学教育学部 助教授
これまでの仕事
大島純「コンピュータ・ネットワークの学習環境としての可能性」,岩波書店,『講座・現代の教育:第8巻,情報とメディア』(分担執筆),1998.
Oshima, J., & Oshima, R.「Coordination of Asynchronous and Synchronous Communication: Differences in Qualities of Progressive Discourse between Experts and Novices」,Lawrence Erlbaum,『Computer Support for Collaborative Learning 2』(分担執筆),印刷中.
大島純「生産的な対話を促進するためのネットワークを用いたカリキュラム・デザイン」,『TELECOM FRONTIER』,2000,27,18-24.
専門は認知科学.トロント大学オンタリオ教育研究所応用認知科学センターにて,Computer-Supported Intentional Learning Environmentsの開発に携わる。主にネットワーク・テクノロジーを利用して学習活動の質を向上させるためのソフトの部分のデザインに研究の興味がある。
これからの仕事への展望
 ここ数年展開している研究プロジェクトでは,子どもたちの学習を中心に環境のデザインを進めてきたが,それを拡張する形でそこに関与する教師,またそれをサポートする教育研究者のネットワーク自身を「学びの共同体」として自立するための大きなシステム作りに着手したいと考えている。

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全国発芽マップの集い 事例発表

「ケナフでつながる,ひろがる」

三重県一志郡嬉野町立中郷小学校 教諭 鵜飼節夫

1. はじめに
 私が「全国発芽マップ」の活動にはじめて参加したのは,前任校に赴任してすぐの平成9年の春であった。その当時,私は,「ケナフ」という今までに聞いたことがない植物をはじめて育てるということで,どうなるのかと少し不安であった。この時,「ケナフ」が,そして,「全国発芽マップ」が,その後の私の実践を支える大きな原動力になるとは,予想していなかった。
 これから報告するのは,平成12年に現任校に赴任してからの約2年間の取り組みについてである。

2. 昨年度の取り組み
 本校では,昨年度から,「地域に学び,活動を拓く子どもを育てる」のテーマのもと,地域の自然,歴史,人,植物などの素材を学習に取り入れ,生活科・総合的な学習の時間を利用して,子どもが主体的に学び,学ぶ楽しさや喜びが味わえるような学習をどのように展開すればよいかについて研究してきた。
 子どもたちは,昨年度,総合的な学習「ケナフを育てよう,中郷で,全国で」に取り組み,主に次の3つの成果が得られた。
 1つは,中郷地区のお年寄りと交流ができたことである。子どもたち(13名)は,中郷地区にお年寄りだけで生活している家の庭先や畑を借りて,共同でケナフを育てるために何度も訪問し,いろんなことを体験したり教えていただいたりした。
 2つは,京都市立有済小学校と深い交流ができたことである。中郷小から種を郵送した学校の1つである,この学校の当時5年生の8名とケナフの生長についてや学校の様子,学校周辺の地域の様子などについて,TV電話や電子メールを使って学習交流を行ってきた。
 そして,3つは,ケナフでいろんな物をつくったということである。ケナフの若葉を使った料理,クッキー・薬づくり,皮を使っての紙すきなどである。インターネット上でケナフでいろんなことができるとわかったことから,これら様々な活動に意欲的に取り組んだ。

3. 今年度の取り組み
 新年度になり,私が子どもたちの担任を継続することになった。
 昨年収穫した,たくさんのケナフの種を前にして,子どもたちは全員,「今年は,隣の宇気郷地区で育てたらどうか」と言いだし,昨年に続き,ケナフを育てることから総合的な学習が展開した。
<宇気郷でケナフを育てよう>
 子どもたちは,中郷地区よりも過疎化が進む,宇気郷地区を訪れ,ケナフを共同で育てていただける家探しをした。
 その結果,約30軒から承諾をいただいた。
 後日,再び宇気郷を訪れ,担当の子どもたちが訪問し,先日直播きしたケナフの様子を調べたり,持参した苗を植えさせていただいたりした。
<全国ケナフ料理・お菓子づくりマッププロジェクト>
 全国発芽マップサイト上に,このプロジェクト専用の掲示板を開設した。
 この掲示板を利用して,ケナフを使った料理・お菓子に関する情報を交換したいと考えた。
 子どもたちは家庭科の時間に,育ってきたケナフの若葉を使った,ケナフ入り卵焼き,ケナフ入りみそ汁などを作り食べた。また,町学校栄養士の先生にはたらきかけ,町内小中学校全体の給食(約2千食分)用に,ケナフを使った「ケナフ入りちくわ天ぷら」を作っていただいた。
 このプロジェクトで,京都市立有済小学校,中郷小同名校など,中郷小からケナフの種を発送した全国の各小学校や,発芽マップ参加校と食に関する交流学習に取り組みたいと考えた。
<京都市立有済小学校との交流>
 京都市立有済小学校との電子メールやTV電話を活用した交流を繰り返してきた結果,直接会って交流したいという両校の子どもたちの思いが強くなっていった。
 本校の平成13年度の修学旅行では,京都を訪れることになっていたので,この機会を利用して交流できないか両校で調整を進め,5月19日の午前中に,有済小学校を訪れ交流活動を行った。
 有済小学校の全校児童38名による歓迎式の後,両校の6年生だけでドッジボールとサッカーをして遊んだ。この2つの種目については,事前のTV会議の中で,どんな遊びがしたいかについて両校で話し合った結果であった。
 午前10時,有済小学校で,今年の全国発芽マップ一斉種まきに合わせて,両校の6年生が共同して中郷小学校から持っていった4種類のケナフの種をまいた。
 次に,両校の子どもたちが3つのグループに分かれて,有済小学校から清水寺までウォークラリーを行った。京都らしいところや有済小学校の子どもたちのおすすめの場所を中心に見て歩いた。
 子どもたちはいろんな話をしたり,記念写真を撮ったりしながら楽しい時間を過ごすことができた。
 ゴール地点で,プレゼントを交換し,またの再会と今後引き続いての学習交流を約束して別れた。
 夏休み中の8月7日,今度は有済小学校の子どもたちが中郷小学校を訪問した。1学期末にTV会議やメール交換を繰り返し,昼食としてケナフ料理を合同でつくり,プール水泳,中郷の子どもたち4軒の家庭に分かれて両校の子どもたちが訪問する「ミニホームステイ」を計画し実施した。両校の子どもたちは,さらに強いきづなで結ばれた。
<同名校交流「中郷小」ネットワーク>
 子どもたちが昨年度,偶然見つけた県外の同名校と交流したいという願いを実現させるために,本校以外の全国の「中郷小学校」9校に,同名校交流プロジェクトへの参加協力依頼の書類を郵送した。その結果,4校から同意の返事を受け,「同名校交流」が始まった。
 子どもたちは,この4校にもケナフの種を郵送した。同名校からは,ケナフの生長の様子,学校の様子等についてのメールや手紙が継続して届いている。また,同名校間メーリングリストも活用している。
<宇気郷宿泊体験学習>
 「宇気郷でケナフを育てよう」の活動を通して,子どもたちは自分が担当するお年寄りの家を訪問し,ケナフを観察し,お年寄りの方々からいろんなお話を伺ってきた。その中で,子どもたちは「もっと長時間宇気郷にいたい」「もっと話をゆっくりと聞きたい」と思うようになってきた。
  そこで,< (1) 宇気郷のお年寄りの方々とのふれあいを通して様々なことを学ぶ。><(2) 宇気郷の食材を生かした食事を通して自分の食生活を見直す。>の2つのねらいを実現させるために,「宇気郷ホームステイ」を実施した。
 6月28日,5・6年生(合計21名)が2〜3名のグループに分かれて,10軒のお宅に1泊のホームステイをさせていただいた。
 ある家では,おじいさんとイノシシの肉を網焼きして食べ,野生の動物が農作物を荒らしていくことを教えていただいた。また,別の家では,おばあさんとズイキ(乾燥サトイモの茎)を使った,宇気郷地区でしか味わえない巻き寿司をつくって食べた。
 学校給食で好き嫌いが多くて,よくおかずを残してしまう子どもも,この宇気郷での食事は残さずに「おいしい」と言ってたくさん食べた。宿泊後の子どもたちの日記には,「もう一日泊まりたかった」,「宇気郷に住んでみたいと思った」という記述がたくさんあった。
<宇気郷学習発表会>
 宿泊体験学習の次の日,旧宇気郷小学校(現宇気郷公民館)で「宇気郷学習発表会」を実施した。 この発表会では,子どもたちが現在学校で学習している内容の紹介や,特技の発表,総合的な学習等で4月から宇気郷に関わる学習をしてきた経過などを発表する場になるようにした。
 6年生の子どもたちは,総合的な学習「宇気郷でケナフを育てよう」で,自分たちが4月からどのように宇気郷の方々と接し,ケナフを育てるようになったかについての4つのミニ劇を発表した。
 どの劇も,実際に宇気郷の方々とふれあってみないとつかめないような,人のあたたかさがあふれた劇で,参観の宇気郷地区の方々から笑いや拍手がわき起こった。
<給食交流>
 2学期が始まった最初の給食の時間に,「有済小学校の友だちは,どんな給食を食べているのか聞いてみたい」と言い出す子どもがでてきた。早速,次の日から,その日の給食の時間の様子についてのメールに,給食メニューの画像を添付して送信した。有済小学校からも,同じように返事が返ってくるようになった。
 このメールによる給食交流は,有済小学校だけにとどまらず,「中郷小」同名校メーリングリストにもメールを投稿するようになり,計6校間で給食に関する情報交換をした。
 10月上旬,有済小学校と,給食TV会議を行った。TV電話の前で,両校がいただきますをし,給食を食べながら,子どもの司会で会議をすすめ,その日の給食のメニューを紹介しあったり,給食に関するクイズを出し合ったりして,楽しい給食の時間を過ごした。
<中郷の食材を送ろう&クルミ交流記念樹>
 
秋,北海道花岡小学校から,とれたてのジャガイモが届いた。
 また,広島県東野小学校からも,セイタカアワダチソウやススキでつくった交流ハガキが届いた。(両校とは春,ケナフの種を交換した)
 子どもたちが,お礼に何を送ろうかと考えていた時,ある子どもの祖母から,「うちの畑の枝豆を採りに来ないか」とお誘いを受け,枝豆をたくさん採らせていただいた。
  また,その祖母から,クルミが採れる畑が中郷地区にあるという話を聞き,クルミ畑の持ち主にお願いして,クルミを採らせていただいた。有済小学校,花岡小学校,東野小学校,4校の同名校中郷小学校の計7校に,この枝豆とクルミを宅急便で送った。
 クルミについては,食用と植え付け用の2種類を送った。それは,枝豆をいただいた祖母からの発案で,「交流校全部でクルミの苗を記念樹にしたらどうか」というもので,子どもたちもこれに賛成し,メールで呼びかけ,福井県中郷小学校からの提案で,11月1日(または,2日)に7校一斉に実を植えた。
 その後,枝豆とクルミが届いたというメールや,調理して食べたというメール,クルミを植えたというメールが,各校から届いた。

4. 発芽マップ(ケナフ栽培)の成果と課題
 5年生理科「たねの発芽と成長」の学習に,ケナフの種を用いたことから始まったケナフ栽培が,2年間にわたり,様々な活動につながったり,広がったりしたことや,京都市立有済小学校他,いくつかの小学校との学習ネットワークがつくれたことが大きな成果であった。
 また,子どもたちは学習活動を通して,「こんなことがしたい」「あんなことがしたい」といった願いや思いを実現させる喜びを十分に味わうことができた。
  しかし,私がケナフを総合的な学習の題材として用いた意図の1つにあった,子どもたちにケナフ栽培を通して環境問題について考えさせ,一人ひとりが環境を守る行動を起こさせるということに直接つなげることができなかった。ケナフ栽培を通して,環境を守ろうとする実践力を育てることが必要である。

5. おわりに
 子どもたちは,全国に自分たちと同じ活動をする仲間がいることを嬉しく思い,仲間とのつながりを大切にしたいと思うようになった。「全国発芽マップ」の活動は,確かに,子どもたちの学習を強く支えている。
 今後も,全国的な学習ネットワークを生かした様々な取り組みを通して,子どもの意欲的,主体的な学びを育んでいきたい。

● プロフィール
名 前 鵜飼 節夫(うかい せつお)
所属等 三重県一志郡嬉野町立中郷小学校 教諭 (現在教職歴16年目)
これまでの仕事
平成 9年 三重大学教育学部附属小学校にて,はじめてケナフと出会う(3年間勤務)
平成12年 中郷小学校に赴任し現在に至る。今,総合的な学習の実践的な研究に取り組んでいる。

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全国発芽マップの集い 事例発表

楽しいな  ケナフクラフトって

広島県竹原市立東野小学校 教諭 河畑 南美子

1. ケナフとの出会い
 1997年5月12日 読売新聞「グリーンピア安浦でケナフ植草祭」の記事を見たときから私とケナフとのつきあいが生まれた。初めは5年生の理科の教材として導入し,発芽・生長・受粉・結実の観察実験をした。そして,子供たちはケナフの生長とともに紙資源や地球温暖化,ごみ問題,森林破壊にも目をむけ,調べたり発表をしたりして環境問題にも関心を持ってきた。そのようなとり組のなかで子供たちは観察しているケナフに「ケナフっち」と名前をつけ,生長を見守ってきた刈り取りの時は,その5メートルにもの大きさに驚き,別れを惜しんだ。そして,学習のまとめとして,パルプをつくり紙すきを楽しんだ。正直なところ初めてのパルプづくりは大変で,紙すき以外の活用法など思いもつかなかった。皮をはいだ茎はただのごみにしかならなかった。しかし,子供たちは,ケナフの生長をふりかえって,創作劇「のびろ ケナフっち」を創り学習発表会で演じた。そこでは,ケナフの生長の速さに驚くとともに,ケナフを通して知った命の大切さや資源の大切さ,自然を守っていくことについて堂々と発表した。

2. ケナフのすべてを使い切ってやろう 「How To ケナフ」の誕生
 ケナフを育てて4年目の2000年。ケナフの皮だけでなく,茎・葉・花・根すべてをクラフトにつかえることを子供たちが教えてくれた。その作品を集めて,「How To ケナフ」が生まれた。
 その後も,次々と新しい作品が子供たちの手で生み出されている。
茎・・・今年大ブレイクの携帯ストラップ すだれ風ケナフボード
葉・・・心やすらぐ香りのケナフ茶 ケナフ雛あられ
花・・・タオルを使った押し花つくり ケナフコサージュ
根・・・クリスマスリース
せっかく育てたケナフだから最後まで使い切ってあげる。この気持ちは命を大切にする行動につながるものと信じている。

3. 紙だってバージョンアップ
 5年前はじめて自分の紙を漉いたときの子供たちの誇らしげなあの笑顔が,今でも思い出される。
あれから,いろいろな紙漉きに挑戦し,新しい作品もうまれた。最近本校の二年生が考え出したのは,香りペーパーだ。紙漉きの途中で入浴剤をふりかける。そうすると乾燥後,かすかな香りが残る。なんと素敵な思い付きだと思いませんか?まさしく,夢ケナフです。
 ほかにもカラーペーパー,ざるで紙漉き,うちわで紙漉き(北海道花岡小学校作品)と面白い紙が続々誕生している。
 ケナフの紙は子供たちを包み込んでくれる。したがって,自由な発想でのびのびとしたタッチ・やさしい色使いでこんな作品も生まれる。

4. ケナフの楽しさを発信
 ケナフは自分だけで楽しんではもったいない。本校の子供たちの作品を,保護者や地域の人,そして,より多くの人に教えてあげたい。また,自分たちも,他校の子供たちの作品や考えが知りたい。そう思ったとき,パソコンとの出合い,全国発芽マップとの出会いがあった。デジタルカメラで撮った画像をカラーの学級通信で配ると「捨てられんね。」と喜ばれる。また,インターネットで交流することで,子供たちの活動がより活発になる。
 無謀にも私自身も掲示板「ケナフクラフトバザール」の管理者になって,情報を公開することになったが,たくさんの書き込みをしていただいて,感謝している。
 今後は学校のHPの立ち上げに努力し,よりたくさんの子供たちとケナフ仲間・パソコン仲間になりたいと願っている。

5. ケナフの茎は三度オイシイ?!
 ケナフの活用が幅広いものであり,楽しいものであることは,皆さんご承知のところですが,あえて,もう一度まとめさせていただく。
ケナフの茎一本が三度いえ四度も五度も変身し楽しめることを見てください。
ケナフのいかだでたっぷり楽しんだ後は,空き缶を使った簡単炭焼きに挑戦。みんなで協力して初めての炭

6. まとめ
 一本のケナフを植えたからといって地球を救えるわけではありませんが,陽の光が透けて輝くあのクリーム色のケナフの花を美しいと感じる感性と,育てたケナフをすべて使い切ってあげるというやさしさは,きっと美しい地球を守っていこうとする行動につながっていくものと信じています。

● プロフィール
名 前 河畑 南美子(かわばた なみこ)
所属等 広島県竹原市立東野小学校 教諭
これまでの仕事
ただひたすらに子供たちとともに歩んできました。
2000年6月「How To ケナフ」出版
これからの仕事の展望
これからもただひたすらに子供の半歩前を歩む。
そして,存分にケナフを楽しむ。

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全国発芽マップの集い 事例発表

ベルギーの子どもたちとケナフの紙漉き交流

こどもたちのための地域活動 「地球クラブ」井柳 強

1. はじめに 
 地球クラブの子どもたちと,外国の小学生がケナフを一緒に育て収穫し,共同で紙漉きをしてみたいと夢に描いてきた。それは,全国発芽マップの国際化にもつながるし,世界発芽マップの可能性を試す機会にもなると考えてきた。でも,交流相手が容易には見つからなかった。そんな時,偶然知り合ったベルギーの子どもたちとの出会いが,大きな夢の実現の第一歩となった。ケナフ紙を共同で漉きあげるまでいろいろな失敗があった。この1年間を振り返り,私とまだ英語学習をはじめていない地球クラブの子どもたちが,言葉の壁を乗り越え,植物の国際共同栽培をどのように進めてきたかレポートする。ベルギーの先生の了解を得て,メールの原文を引用しながら交流の様子がわかるようにした。

2. 交流ドキュメント
 12月 世界の子どもたちのネットワークKidlinkにベルギーから交流を求める1通の投稿があった。My pupils don't speak English yet. They are 11 years old, and we study French for the second year. The English language will be studied when they are 14 years old. といい,地球クラブの子どもたちと同じようにまだ,英語学習をはじめていない。アントワープ近郊のオランダ語圏に住む.子どもたちであった。さっそく,クリスマスカードを送った。メリークリスマスとオランダ語で書いた。 Can you explain how it is possible, that you can write Christmas wishes in our language, in Dutch ? That is magic to us...このカ一ドがきっかけとなり交流が急速に進んだ。メールのはじめと終わりに相手の母国語で挨拶を書くことで親しみが増した。英語圏の先生方と異なりJef先生との簡単な英語のやり取りは数学教師であった私も苦にはならなかった。最初の交流は非英語圏の国との方が教師や生徒に負担が少ないかもしれない。
 1月 デジタルカメラで撮影した画像を,メールに添付する手作り絵はがき交換からはじまった。「私たちの町」というテーマで,ベルギーの子どもたちは中世の歴史的な建造物が残る町の様子を,地球クラブからは,静岡の歴史を知ることができる駿府城の資料画像に短い英文をつけ紹介した。2月 Jef先生の学校にはまだホームページがなく,これを作りたいと聞いて協力することになった。手書きHTMLからはじまった。これを教えることは容易ではなかった。
<BODY><IMG SRC="1..jpg"></BODY>と1枚の画像を表示する方法から,<CENTER>を使って<BODY><CENTER><IMG SRC="1.jpg"></CENTER></BODY> と,タグをひとつずつ増やしながら学んでいった。ひとつの無料サーバーを共同で借り同じパスワードで,同じサーバー上のデレクトリーに国境のない場所を作り,HTML編集ができるようにした。。初めての共同制作ホームページがサーバーに載った。苦労が多かっただけに大きな感動が距離感を越えて伝わった。まず,先生同士がいっしょにやってみる。成功したら子どもたちがどの部分に参加できるか決定,発展させていくのが国際交流のひとつの方法である。
 3月 やさしい日本語とオランダ語の共同学習をはじめた。簡単なタグを使って地球クラブと,ベルギーの子どもたちがホームページの共同制作をした。地球クラブの子どもたちの創作童話にベルギーの子どもたちが絵をつける絵本の共同編集や,日本から送ったアニメ絵本“フランダースの犬”を見た子どもたちの質問に答える交流もあった。日本に興味を持った子どもたちが,ブラッセルの日本大使館に招待されて,1日体験講座を受講し,いっそう親密感がわき,音声ファイルをホームページに置き,日本語の簡単な挨拶をし合った。何回か植物の共同栽培提案をし,話題に上がったが消えてしまった。ベルギーの湿地帯に多く植栽されているクロハンノキについてこんな提案があった。Our government started a project to plant more of these trees, to give Flanders more oxigen. Over 500 schools joined. Would you like us to send you half of our seed so you can join the project. 日本の植物見本園にも植栽され繁殖に問題がないことを確認,ベルギー政府のプロジェクト事務局から検疫済の消毒された種を送ってもらった。ベルギーと地球クラブの子どもたちが,同じ種を同じ日に蒔くクロハンノキプロジェクトがはじまった。種まき・発芽・成長レポートの交換がベルギーの夏休み前の6月の終わりまで続けられた。ベルギーでは,参加500校による成長記録作成国内コンテストが行われていた。地球クラブの活動は3月で終了したが,何人かの生徒が継続してクロハンノキの成長観察を継続支援した。
 4月 ベルギーの子どもたちが成長記録をまとめてコンテストに応募した。Today a phone call from the ministry of agriculture came to our school.Someone said we won the fourth prize in the Alder Contest...と喜びのメールが届いた。約500校中から4位に入賞,「おめでとう!」のメッセージを送った。全国発芽マップで学んだ植物栽培の知識を生かして,ベルギーの子どもたちの活動を支援できたことをみんなで喜んだ。
 5月 ベルギーの子どもたちは,受賞した賞金で卒業旅行をかねて,日本がベルギーに作った日本庭園を見学することになった。今度は,地球クラブの活動を支援してもらうよいチャンスだと思い,ケナフの共同栽培を提案した。検疫証明書を添付した,ケナフの種がベルギーの子どもたちの元にに届いた。これからが大変,I looked everywhere, but I can find the word Kenaf nowhere. Does the plant have other names ? Is Kenaf the English or Japanese name ? ケナフの栽培についての情報はベルギーではみつからなかったようだ。種まきから栽培情報の提供をした。
 6月 日本語がわからなくても,ベルギーから全国発芽マップ掲示板の画像見たり,書き込みができれば栽培方法が伝わるのではないかと操作方法を根気よく伝えた。
 Jef先生がベルギーから発芽マップ掲示板への書き込みに成功,Communication through pictures は,私たちが考えた以上に情報を提供した。宮崎大学付属小学校の保護者の方がJef先生の英文を日本語に直す翻訳ボランティアをしてくださり,ベルギーの情報も日本の子供たちに伝わった。ベルギーでもComputer Mama と呼ばれるボランティアの主婦が週2回,子どもたちの翻訳支援をしていた。種蒔き,成長の様子が掲示板でレポートされた。ケナフ葉が昼間ひらき,夜には閉じる開閉運動を利用したケナフ時計つくりの観察がベルギーと日本であった。ベルギーの学校は6月の終わりから8月のはじめまで長い夏休みにはいった。
 7月,8月 鉢植のケナフは生徒が家庭に持ち帰ると同時に,Jef先生の自宅近くのGreen house へ移された。ジョーク好きなJef先生はメールにジョークをつけたして交流を楽しくしてくれた。それに加え子どもたちや私にほめ上手っだった。A mail from you always brings some sunbeams on my computer screen. この年齢になってもほめられるのはうれしいものだ。これまで,どの交流も8月・9月は休止状態になってしまったがJef先生のケナフの成長の様子は,夏休み中も掲示板にレポートされ続けた。同時にフロントページ2000を利用したホームページ作りの共同学習が続いた。9月にはじまるベルギーの子どもたちとの紙漉きにそなえ,一人,ひとりが紙漉き枠を自作した。キッチンネット,市販のラワン材の棒を使ってホチキス,ボンドだけで完成した。材料費は120円程度であった。地球クラブの子供たちの牛乳パックパルプを利用した紙漉き実習がはじまった。1m足らずの幼ケナフから繊維を取り出し,これを牛乳パックパルプに混ぜて紙をすいた。加熱・薬品・漂白剤を使わない紙作りの研究をした。
 9月 作業手順をデジカメで撮影,画像に簡単な英文をつけ紙漉きテキストを編集して掲示板に置いた。私たちのように独自のサ?バーを持たない発芽マップ参加者には,WEB Meeting Systemは交流を成功させる大きな原動力となった。多くの画像を使って相手に紙漉きの手順を伝えることができた。ベルギーの子どもたちは,この画像をWordでオランダ語のテキストに編集し直した。。英語からオランダ語への翻訳,紙漉き枠作りは,Computer Papa, Mama と呼ばれる2人のボランティアが実習授業に参加して,多忙なJef先生を支援していた。
 10月 地球クラブの子供たちの紙作りも,牛乳パックパルプ70%,ケナフ繊維30%の混合比でハガキとして投函できるまで成長した。紙作りの過程でベルギーでは紙パックが使われていないことを知った。代替に食パンの包装紙を,ハサミで細かく切ってパルプ化したものとケナフ繊維を混合する紙作りがベルギーで行われた。
 11月 まだ,英語の学習をはじめていない地球クラブの小学生であるが,デジタルカメラ画像によるコミュニケーションは,ベルギーと,地球クラブの子どもたちの連携プレ?を確かなものにしていった。地球クラブから送った画像を見たベルギーの子どもたちの言葉をJef先生はつぎのような英語で伝えてきた。Thank you for your nice pictures. They look really great They realy show the co-operation between East and West. They really show that both cultures are working the same way to get the same results. And they really show that the children love to do what they are doing. 牛乳パックパルプが食パンの包装紙パルプに変ったが東と西が同じ方法で紙作りに成功した。

3. 最後に
 ベルギーのこどもたちは,なんでも自分たちの手でよく活動した。地球クラブの子どもたちは,その半分にも満たなかったが,異文化圏の子どもたちとインターネット上の仮想空間ではあるが,ケナフ栽培と言う実体験を協力し合った。全国発芽マップ掲示板で皆さんの協力を得ながら成果をあげることができうれしく思った。私はJef先生にこう書いて送った。Yes, through growing plants we can practice together with people from all nations. Perhaps good international understanding that results will led to a better for world peace. 国境,言葉の壁を越えて,小学生時代からこのような助け合いの体験をすることは,子供たちが大人になったとき,平和な世界を作る力になるのではと願っている。集いではこのドキュメントを多くの画像で紹介する。みなさんの参加をお待ちしています。

● プロフィール
名 前 井柳 強(いやなぎ つとむ)
所属等 地域の子どもたちのための社会教育活動「地球クラブ」
    <静岡県生涯学習振興財団 「ふじのくにゆうゆうクラブ」のひとつの活動>
これまでの仕事
子どもたちにだまされつづけて20年
 私立中学・高校に在職中は数学教師であったが,「これからの若い人たちは,地球上の皆となかよくしなければ」と20年前に地球クラブを作った。郵便からはじまり,スライド・録音テープ・ファックス・ビデオテープ・パソコン通信・インターネットといろいろなメディアを使って海外交流プロジェクトを楽しんだ。インターネットが個人に開放された1992年より,この活用に興味を持ち,世界の子どもたちといろいろな共同作業をした。在職中,100校プロジェクトに参加。この成果を地域の子どもたちに還元しようと,小学生対象の学校開放講座を開講,3年前に退職,地球クラブを継続しようと近くの公民館に中古のパソコン1台を持ち込み活動をはじめた。本年度は,小1-小6年生,32名が参加,土曜休日,活動時間は9時から12時まで。「ケナフを育て,紙漉き枠も自作,自分で漉いた紙で創作絵本を作る」が活動目標。地域の社会教育活動であるが,全国発芽マップ参加の機会を与えてもらった。子どもたちが「赤い花のケナフはないの?」と聞かれれば,「作ればできるかも」とハイビスカスの花粉をケナフに受粉,赤い花の咲くケナフ創作している。「先生,ケナフが短期間にこんなに大きくなるのはケナフの葉の中に植物を大きくする素があるのだから,それを取り出して野菜にあげれば,大きな野菜がすぐできるよね。」といえば本気になって,子どもたちとそのことをどのように確かめたらよいのか実験・観察をする。子どもたちにだまされるのが私の仕事。ケナフの栽培を通して,子どもたちに植物栽培の面白さを教えたいと願い,ケナフの科学教材化する試みもしている。しかし,子どもたちの保護者から地球クラブの活動は,学校の成績にリンクしていないといわれることもある。

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全国発芽マップの集い パネルディスカッション資料

参加者が状況的に構築していく綿マッププロジェクト

宮崎県日向市立富島中学校 教諭 奥村 高明

1. 種の提案と広がり
○ 4月23日に宮崎県,富島中学校,奥村が全国発芽マップのMLでスモールプロジェクト綿マッ ププロジェクトを提案。種は,アメリカわた(タキイ種苗株式会社。衣類などをつくる白い綿)。
○ 4月26日に静岡県,「地球クラブ」,井柳氏が,アメリカテキサス州綿研究所から検疫手続 きを得て輸入した綿を日本の気候に順化させるために5年ほど試験栽培をしている綿(綿の色 が茶褐色)とそれを染める中国藍を提案。
○ 4月29日に大阪府,春日出小学校,太田氏が 和泉木綿の会の種を提案。(河内木綿という伝 統工芸を残そうとしているボランティアグループの提供する白い綿)
  何事かが,あらかじめ決められて,その計画通りに実施するのではなく,提案が提案を生んだり,計画立てられていく。プロジェクトが常に新しく読み替えられながら生成される発芽マップ文化を表していると思われる。

2. 参加状況
○ 本年度の参加状況は下記30カ所 ( )は担当者等 敬称略
北海道勇払郡鵡川町花岡小学校(宮脇),北海道室蘭市立陣屋小学校(菅原・野村),宮城県仙台市東北学院中学高等学校(井口),山形県長井市立平野小学校(竹田),山形県山形大学教育学部附属養護学校(荒井),福島県郡山市立三代小学校(新田),山梨県上野原町立甲東小学校(大場),群馬県勢多郡新里村立中央小学校(竹内),静岡県清水市地球クラブ(井柳),静岡県清水市地球クラブ(ベルギーの小学校),静岡県清水市地球クラブ(ペルーの中学校),長野県長野市立通明小学校(坪井),長野県松本市立並柳小学校(小林),長野県諏訪市立湖南小学校(相良),富山県富山市立水橋中部小(深井),大阪市立春日出小学校(太田),大阪府松原市松原北小学校(佐藤),兵庫県神崎郡市川町立甘地小学校(松本),兵庫県尼崎市立若葉小学校(山田),岡山県鶴喜小学校(渋谷),広島県東野小学校(河畑),兵庫県小野市(西尾),山口県楠町立万倉小学校(田中),愛媛県松山東雲中学・高等学校(國原),宮崎県椎葉村立椎葉中学校(根井),宮崎県八代中学校(小松),宮崎県新富町立富田小学校(岩切),宮崎県延岡市立東海小学校(川崎),宮崎県宮崎大学教育文化学部(中山),宮崎県日向市立富島中学校(木野田・奥村)
 ほぼ全国の地域から参加している。ケナフ,落花生など,他のプロジェクトと合わせて参加している例がほとんどである。ただ,現在までに,綿と他のプロジェクトとが関連した例はない。参加者は同時に栽培しているが,それぞれ独立したプロジェクトとして見えているのかもしれない。

3. 掲示板実施状況
○ 掲示板開設後は,実践の報告はほとんど掲示板で行われている。
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
総メール数 19 57 70 44 26 15 13
画像数 7 18 31 23 21 13 4

 画像は,発芽,開花,綿の結実などの写真が多い。各地で開花結実した7〜9月には,画像添付も増えている。
○ 清水国際クラブの井柳氏を通してペルーやベルギーの子どもたちが掲示板に参加する。そこから,英語翻訳ボランティア勝池氏の参加も生まれ,より交流が円滑になった。彼女の存在がなければ海外との交流は,困難だったであろう。
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
総メール数 19 57 70 44 26 15 13
海外から 0 8 19 5 1 5 2

主にベルギー(de Kriebei,elementary school ,5th class, Olen,Belgium,)のJef Theyvs (teacher)や生徒たち,ペルー13才のDaniel Basilloなどからメールがきている。中にはユーモラスな合成画像などもある。また,海外との交流から,掲示板のシステムの改善が行われたり,綿に関する用語の英訳などの話題が展開されたりしている。
○ 自分たちの綿を使った作品や,絵日記などを画像で紹介する活動が見られる。
 掲示板の活動は,お互いの活動が見えやすく,交流が図りやすいように思われる。また,子どもと教師がともに参加できるので,お互いの役割という枠組みが生まれにく,ともに綿マップを楽しんでいるメンバーとして組織されていると思う。ただ,掲示板を見る機会が,学校や家庭で生まれにくい状況がある。また,他のプロジェクトの様子がほとんどわからなくなっている。

4. 生育状況
まだ,詳しくまとめられていないが,発芽後,各地とも1,2週間で順調に発芽し,7月から8月にかけて開花が始まっている。結実は,早い地域で8月から。結実したものから,順に綿になっている。宮崎県日向市では,まだ開花が見られ,今後も結実が期待できる。寒い地域では,綿がはじけるのは11月からのようである。北海道花岡小では,屋外では霜枯れして,結実しなかった。また,成長の記録の仕方は,参加校それぞれであり,栽培観察と言うよりも,むしろ栽培そのものを楽しんでいる様子がある。

5. 収穫した綿の利用
○ 「綿を紡ぐ方法を教えて」というメールから,ホームページや本の紹介などが行われている。
○ 紡いだ綿を使った人形製作,コースターや壁掛け,共同製作の呼びかけなどが見られる。
 現在収穫が進んでいるところなので,今後様々な活動が期待ができると思う。

6. 今後の展望と課題
 様々な綿の提案があるたびに,その播種や栽培の方法が話題になる。その答えは,教科書にも,WEBにも掲載されていない。井柳氏は,「教科書に答えが書いてない,わからないことがいっぱいあります。勉強しないと。。。」とメールで語っている。このことから分かるように,発芽マップにおいて,知識や技能は固定的でない。また,教師も全てを知っている存在ではない。子どもとともに学ぶ人,発見する人,喜ぶ人である。今年も,海外との交流,翻訳ボランティアの参加など,思いがけぬ出来事が多く起こった。これらは,発芽マップが,参加者が状況的に構築していくプロジェクトであり,同時に,失敗や創造を含む可変的なプロジェクトであることによるものだと思う。そして,忘れてはならないのは,綿マップが,参加者一人一人のダイナミズムによって支えられているということであろう。

● プロフィール
名 前 奥村 高明(おくむら たかあき)
所属等 宮崎県日向市立富島中学校 教諭
これまでの仕事
編著:インターネットがひらく総合学習(明治図書)1999,分担執筆:新小学校教育課程講座図画工作編(ぎょうせい)1999,教員養成基礎教養シリーズ新訂図画工作・美術教育研究(教育出版)2000,小学校新学習指導要領Q&A図画工作編(教育出版)2000,等
ビデオ製作:文部省指定制作映像教材「たのしいぞうけいあそび いいこと考えた?
(東映教育映像部,日本視聴覚教育協会)2001
 専門は美術教育。子どもの造形行為の形成過程における相互性に着目し,相互行為分析をもとに状況的な行為と身体的な意図,道具の使用などを検証中。また,宮崎Art&Music協会を設立し街づくり今ダートやイラストレーション,デザインなどを行っている。
これからの仕事の展望
 美術教育からの知見を,教育だけでなく,街づくりなど幅広く生かしていきたい。

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全国発芽マップの集い パネルディスカッション資料

中学生を夢中にさせる栽培活動とインターネット

宮崎県日向市立富島中学校 教諭 木野田 毅

1. ケナフを植えた平成12年度
 日向市立富島中学校に,宮崎大学教育文化学部附属小学校から奥村高明氏が転任してきた。画像データベースでお世話になったような気がした。もっと以前に会ったような。そうそう,昭和57年4月に私たちは延岡市で新規採用の中学校教師でした。
 同じ学年所属となり「インターネットがひらく総合的学習」(明治図書)を呼んでの感想などで再会を喜んだ。奥村氏もケナフ栽培を継続したい,私も興味あり,でも理科の授業や年間35時間の総合的な学習の時間では扱いにくい。バスケット部の指導をしながら,生徒指導主事であることを承知の上で,さらに「科学同好会」なる準部活動を立ち上げてケナフ栽培を行った。奥村氏も2年2組の生徒及び美術部員で栽培に協力。
 芽が出ては喜び,本葉が出ては写真をとり,台風に気をもみ,10月に入って初めて見たケナフの花に感動した。生徒より私のほうが感動していたと思う。この年の後半,私の仕事上なかなか科学同好会への指導の時間が生み出せず,種子は取ったが紙漉きまでは手が回らなかった。

2. ケナフと落花生の平成13年度
 ケナフは伸びが非常に速く,web上でその変化を追うのに大変優れている材料だと思えた。本校のホームページでも,毎月の写真で明らかにその丈が変わっていた。しかし,中学生にとって,紙漉きに代わる魅力的な材料はないだろうかと考えていた。綿と落花生,フウセンカズラ,サツマイモ,千成ひょうたんなどが頭に浮かんだ。綿という植物と木綿や木綿糸が一致していない生徒はざらにいる。落花生=ピーナッツすらわかっていない生徒もいて,ましてや,花が咲いた後に豆は土の中で太るなんぞ知っている生徒のほうが少数派です。そして,落花生は食べることができる,ケナフもサラダにして食べるそうだが,この食べるという引力によって落花生もケナフの横に同時に植えようと考えた。綿も植えたかった。実がはじけて白い実を,綿の原料を生徒に見せたかった。落花生の殻を砕いて,紙漉きもできるはず,植物なら必ず紙は出来ると思った。本校の夏休み自由研究作品の中にも,キャベツ紙の例があった。

3. 落花生を栽培してみて
 落花生は,まず芽の出方が遅かった。ケナフはその生命力の強さか,すぐに発芽した。落花生は1週間も待った学校もあった。茂るまではweb上の毎月の写真にも変化があった。でも夏の盛り,花が咲く前,しばし停滞。やっと黄色い花が咲いたが,葉に隠れて見えにくい。ミヤコグサに似てとてもかわいらしい花なんだが。その後,花の時期は日向市ではだらだらと続き,ケナフの花ほどのインパクトはなかった。よく観察しないと花が終わって子房柄が伸びてくるのが落花生の落花生たるゆえんだが,葉に隠れて見えにくい。観察上手にならないといけない。廊下にデジカメの写真を印刷して掲示し,興味を引こうとしたが,大多数の生徒にとっては関係のない写真であったようだ。自分で種をまくから成長が気になる,ということを再認識した。11月の収穫となったが,まだまだこれから太る豆もあった。現在乾燥中。半分は塩ゆでして,生落花生の味を楽しむことにしている。もう半分は炒って,食べることになるでしょう。そして,殻を取って置いて,落花生の殻から紙ができるかやってみます。これは3学期になりそうです。

4. 中学生と活動して
 現在の中学校では,選択理科ででも扱わないと,継続的な栽培活動は不可能に近い。クラブも無くなり,必修の理科では扱えず,特別活動に割って入る時間は無い。今後の希望は総合的な学習の時間だと考える。地方の学校は部活動も吹奏楽部以外は運動系のみであり,文科系の部活動は本校でも吹奏楽部と美術部があるのみ。私が指導している科学同好会は部活動に入部していない生徒で組織している。平成14年度からは総合的な学習の時間が年間70時間でスタートする。1学年200名ほどの生徒に,栽培活動やインターネット等限られたパソコン台数をどのようにローテーションさせていくのか,他の活動とどのように組み合わせていけば発芽マッププロジェクトを総合的な学習に組み込めるのか検討していかなければならない。
 インターネットに関しては,個人用途の多いメールよりも,掲示板が適していると思う。中学生でも,書き込んだ内容をすぐに確認できて,画像もすぐに見ることができるということで,好評であった。練習中という状況で,本稿からの書き込みは少なかったが,昼休みにパソコン室を部員に開放すると,掲示板へのアクセスは活発であった。スモールプロジェクトの担当として,掲示板への返信をもっとこまめにする必要があったと反省している。

● プロフィール
名 前 木野田 毅(きのだ たけし)
所属等 宮崎県日向市立富島中学校 教諭
これまでの仕事
 宮崎県高等学校教育研究会理科・生物部会編「宮崎県の生物」(鉱脈社)1992.
 宮崎学術振興財団助成研究・平嶋義宏編「東諸県の生物」1995
 学生時代に理学部生物学科でホタル上科ジョウカイボン科を研究領域として系統分類学を学ぶ。以後,宮崎昆虫同好会会員として県立総合博物館のリニューアルに際しての協力スタッフ。日本鞘翅学会や日本甲虫学会会員として活動し,夏休み中の昆虫教室の講師としても各地で活動している。宮崎県版レッドデータブック作成検討委員会ワーキンググループ,国土建設省五ヶ瀬川水系環境調査昆虫部門アドバイザー。
 昆虫の研究の時間よりも,パソコンとのかかわりの時間が多くなり,情報科学研究会(宮崎大学教育実践研究指導センター)に所属し,中学校で何ができるか,何をすべきかを模索中。
これからの仕事の展望
 理科教育や総合的な学習の時間において,野外活動や校外施設での学習等の場面でデジタルカメラやデジタルビデオカメラとインターネット等の情報通信機器やネットワークを児童生徒が使いこなす分野を研究したい。情報通信ネットワークが,児童生徒が学習内容について詳しく探求したり深く考えたり,その結果をまとめる段階で表現力や発表力を高めるような学習活動について,学校現場で具体的に実践していきたい。

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全国発芽マップの集い パネルディスカッション資料

少人数学級における『コミュニケーションボード』の活用

北海道勇払郡鵡川町立花岡小学校 教諭 宮脇 公治

1. これまでの発芽マップの取り組み
(1)過去3年間での成果
 平成10年度に参加してからの過去3年間は,全国の学校のWebページやメーリングリストの配信から,ケナフに関する情報を収集できた。北海道からの唯一の参加校と注目されたことで,児童の興味関心も持続し,継続した取り組みを行うことができた。また,参加校の中の数校と掲示板を使用したりTV会議を行うなどして,直接交流にまで発展させることができた。
 昨年度については年度当初からカリキュラムに位置付けることにより,一斉種まきの日以前から活動を始めることができた。児童達が自ら自校のWebページに参加校の「クリッカブルマップ」を作成するなど意欲的に取り組む姿勢が見られた。本校のように少人数の学級でも参加することができる敷居の低いプロジェクト,それが『全国発芽マップ』なのである。

2. 本年度(2001年度)の取り組み
(1)総合的な学習の時間への位置付け
 移行期一年目の昨年は年間35時間という「情報教育」に関する取り組みの中で,「発芽マップ」に取り組んだ。しかし「ケナフ」という植物は,単に植物の成長記録の交流という活動よりも,非常に幅広い活動へと派生しうる題材である。今年度は,ワクワクタイム※1の時間の中のみならず,日常的に取り組めるような体制を作った。「朝の会」「放課後」の時間を活用し,児童が自主的・継続的に取り組めるような環境作りをした。
(2)学習環境の整備
 4月に地域でネットディを企画し,校内LANを構築した。これにより 全ての教室からネットに接続することが可能になった。中古のPCを活用し,全校児童8名全てに自分のマシンが当たるように教室にPCを配置した。好きな時間にいつでも教室からネットへ接続することができるという環境を構築したことは,児童が以前にもまして「発芽マップ」に関心をよせる要因となった一つであろう。また以前から開発され運用が待たれていた「コミュニケーションボード※2」が5月から稼動していることは非常に重要なポイントである。この「コミュニケーションボード」を利用し,スモールプロジェクトとして,数校の提案によりいくつかのプロジェクトが進められている。本校は4年1名,5年1名,6年1名である。児童の興味関心を最大限考慮し,一人一つのプロジェクトに参加し,少人数という閉鎖的な環境を解消しつつある。個に応じた対応ができるという小規模校ならではの利点であろう。特に中学年は児童,教師とも1名だがいっしょになり,全国の学校と協働作業にあたっている。

3. コミュニケーションボードの活用例の紹介
(1)中学年「一人学級の場合」
 落花生プロジェクトに参加。自校のwebページに「わかりやすい落花生プロジェクトのページ」を作成。FD媒体タイプのデジタルカメラで撮影し,教室のパソコンからデータをアップ。他校の生長の記録をノートや画用紙になどにまとめる。中・高学年合同の授業も行い,3名の児童を2名の担任で指導。時には5・6年生が4年生にスキルを伝達する場面も。コミュニケーションボードは中学年でもなじみ易く,自分達だけで活用できるインターフェースである。
(2)高学年「一人一プロジェクトへの参加」
 昨年栽培し失敗した綿の栽培。偶然タイミングよく「綿マッププロジェクト」が提案され参加することにした。(6年)今年は単に栽培するだけではなく昨年の失敗から学んだ教訓やさらに工夫するために,コミュニケーションボード上で質問したり,情報収集をする取り組みを行った。もう一人(5年)はブルーケナフ(以下BK)の栽培に力を入れた。
(3)コーディネーターとして「BK(ブルーケナフ)情報部の運営」
 昨年譲っていただいたBKの種だが,全く栽培方法や生態についての情報がない。そこで,情報収集の場として「BK情報部」を立ち上げた。学校間のBKの情報だけではなく,一般の方や専門家からの情報などを参加校で共有できた。ネットを活用した情報収集能力を養う良い場になった。将来的には児童達だけでやり取りをしていけるリテラシィーやスキルを確立していくことが望ましい。参加校の増加にともないMLへの投稿が抑制気味になってきているだけに,コミュニケーションボードの役割は重要である。スモールプロジェクトとは別に目的に応じたコミュニケーションボードの立ち上げ・運用が必要である。

4. 成果と課題
(1)成果
コミュニケーションボードは,webを作成できない環境の学校の児童でも,簡単に画像を通して「思い」を伝えることができる。
今までのように,文字で表現することが苦手な児童でも,画像を通して伝えることができる。またその効果は絶大である。
文字では決して伝えることのできない微妙な雰囲気や表情を受け取った時の児童の反応がそれを示している。また,パスワードを設定することにより肖像権などの危惧する点もクリアできているといえよう。そして「発芽マップの仲間」から,「個別の交流」へと自然に発展していくのは,やはり見えない連帯感が,「一斉種まき」によって形成されているからであろう。
(2)課題と展望
・スモールプロジェクトを「コーディネートする能力」
 今年度で参加校が200校を超えた。(9月11日現在204校)この数は多くのインターネットを活用しているプロジェクトの中では,少なくはない。(参加校のない県も福井,佐賀のみ)そのため,MLへの投稿が遠慮がちになっている。またケナフという植物も5年目に入り,「未知の植物」ではなくなってきた。発見の喜びがなくなってきているのも投稿が少ない原因かもしれない。(MLの投稿数だけが取り組みの指標ではないが。)魅力ある植物(題材)の選定こそ,基本となる「一斉種まき」を盛り上げ,「発芽マップ」を持続させる一つの方法ではないだろうか。また「スモールプロジェクトをコーディネートする能力」が教師に問われることになる。自校のねらいをふまえつつ全体の流れもくみ取り,各校同士の直接交流を盛んにしていく。そのような魅力ある「スモールプロジェクト」が生まれた時,発芽マップは新たな局面を向かえ,また新しい文化を生み出す。参加校のアイディアで発展,進化しつづける「発芽マップ」はついにブロードバンド時代を迎えた。今後も注目すべき壮大なプロジェクトなのである。
(3)ワンポイントアドバイス
 「発芽マップ」では,学習の進め方についての取り決めはほとんどない。教育目標は各参加校の担当教師に委ねられるので,どの学校の子ども達も主役となって活動していくことができる。教師も子どもといっしょになって学ぶ人に徹し,知っていることを教えるのではなく,知らないことや知られていないことを,いっしょに学びとる姿勢が大切である。それが「発芽マップ」の文化の一つである。ある意味「自己満足の活動をネットで紹介する」程度の気軽な気持ちも大切なのではないでしょうか。
※1 本校の「総合的な学習の時間」の名称。 ※2 発芽マップの画像添付型掲示板の名称。
参加協力校
三重県一志郡嬉野町立中郷小学校(http://www.mie-c.ed.jp/e2naka/)広島県竹原市立東野小学校
参考文献
インターネットがひらく総合的な学習 中山迅 奥村高明 根井誠 編著 明治図書
全国発芽マップの集い2000研究発表論文集
第27回全日本教育工学研究協議会全国 富山大会 研究発表論文集
平成12年度Eスクエア・プロジェクト成果報告 改訂版(CD-ROM)

● プロフィール
名 前 宮脇 公治(みやわき こうじ)
所属等 北海道勇払郡鵡川町立花岡小学校(http://www2.ocn.ne.jp/~hanaoka/) 教諭
これまでの仕事
 全国発芽マップの集い2000「実践発表者」
 小規模校ネットワーク(http://www.s-school.com/)の各プロジェクトに参加。推進委員。
 北海道胆振情報教育研究会 会員
 鵡川町教育研究会コンピュータ部会サークル長(H10,11)副サークル長(H13)
これからの仕事の展望
 極小規模校におけるインターネットの活用の探求。特に準同期型・非同期型コラボレーションに関わる研究をしていきたい。また低学年でも参加できる敷居の低いコンテストなどを企画し,協働研究しながら全体をコーディネートする実践に取り組みたい。「ビートプロ」を企画中。

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全国発芽マップの集い パネルディスカッション資料

「紙創りから生まれる子どもの学び」
〜プロジェクト交流活動が生み出す学びの扉〜

宮崎県椎葉村立椎葉中学校  根井 誠

1 「紙創り21」誕生の意味
 紙に触る,紙に描く,紙を切る,紙で作る,紙に書くというように,生徒はこれまでに「紙」と日常生活において様々なかかわりをしている。それはこれから科学がいかに発達しようが不変であると思われる。それだけ身近な紙ではあるが,生徒自身がつくり出すという行為はこれまでの教育内容の中には,ほとんど見られない現状がある。一部の生徒が小学生時代に,牛乳パックを再利用して,紙づくりを体験している程度である。生徒の「紙」に対しての意識は日常ほとんど無く,意識させられると気付く程度で,あまりに身近で,あまりに日常的になっているあまり「紙」の大切さやその魅力の本質にに気づいていない。
 しかしながらこの「紙」が植物の繊維から出来ていることを考えるとき,改めて人間と自然との関係が浮き彫りになる。人間は大昔から様々な手段で衣・食・住に植物を利用してきた。古代エジプトではナイル河畔のパピルス草の茎を裂き,縦横に並べ重ねて水を注ぎ,強く圧着させてパピルスを得ている。これは衣料には向かなかったが書写用に役立ち,後に Paperの語源となった。さらに興味深いことは,17世紀初め,フランスの科学者レオミュールは蜂の巣造りを見て,木を砕いてつなぎ合わせれば紙のような物が作れるであろうと予言している。ドイツ人のシェファーはこれをヒントに,いろいろな植物体を砕いた繊維を使って紙を試作した。木材をすりつぶす砕木機が発明されて,砕木パルプ(機械パルプ)を大量に製紙原料にする道が開かれた。これより少し遅れて化学パルプが実用化された。原料も製造法も一変して,パルプ工業と製紙工業は近代産業に成長した。この機械生産の紙「洋紙」は逆にアジア諸国に進出し始めた。紙が中国大陸から東方の島国日本に渡来して美しい和紙に変身し,独特の文化を咲かせている間に,大陸を西方に進んだ紙は長いヨーロッパでの旅を経て西洋風に見事に成長した。それぞれの紙は1000年以上も別々の歩みを経た後に,地球を一周して日本の地でめぐり会い東洋と西洋との文化が新しく融合したのである。そしてこの融合反応は現代も続いている。新しい紙「洋紙」は日本で20世紀の一大工業に発展した。しかし日本人はこの便利な洋紙を消費しながら,伝統の和紙も手作りして芸術的価値を忘れない。楮紙,雁皮紙,三椏紙などがあり和紙の文化を形成してきた。このような歴史的な見地からみても「植物から紙をつくる」という学習は,様々な学びの教育効果が期待できるのである。

2 インターネットで広がる,共有感と学びの絆
(1)新企画スモールプロジェクト学習
 今年度「全国発芽マップ」では,幹事校の呼び掛けで「スモールプロジェクト」が発足した。その中の1つである「紙創り21」企画はその名の通り,植物栽培体験活動を核として, 紙創りを純粋に楽しみ,学びに生かしていくことを目的としたものである。その学びは,森林保護や温暖化などの環境学習への発展,さらに紙創りそのものから,パルプ化,廃液処理,紙すき,などの 学びの扉が存在する。紙の原料になる植物には,何が適しているのか,それは栽培可能なのか,また地域の身近な植物では適するものは無いのかなど,栽培採集計画を立てることも,この企画の魅力の1つである。また,他のプロジェクトとのかかわりも当然探れる。「落花生プロジェクト」「綿マッププロジェクト」などとは,繊維が抽出できる点でも活用が図れる。またそれぞれのプロジェクトに参加することで共有感が強くなり,学びの意欲が高まることも期待できる。このようにスモールプロジェクトは,参加校が自由な発想で独自な教育企画を推進できるという,これからの学校教育の根本につながる画期的なことでもあり,連携を模索していくことでより教育効果が大きくなる可能性がある。そして,これまで以上に栽培体験が,生徒の学びに大きな役割を果たすと考えられる。実際にケナフ以外に,「2種類の綿の種子」,「落花生の種子」,「トロロアオイ」などを送ってもらい多種植物栽培の機会に恵まれ,共有感をもった学びがスタートすることになった。
(2)「選択理科学習」や「ひえつきの時間」での活用〜ケナフ等植物栽培と紙創り〜
 「選択理科学習」のねらいに「生徒の特性等に応じ多様な学習活動が展開できるよう」と述べられている。すなわちそれを支える直接体験は大きくその役割を果たすと考えられる。また「課題研究,野外観察,補充的な学習,発展的な学習などの学習活動を各学校において適切に工夫して取り扱う」とある。まさに「全国発芽マップ」に参加する学習を展開することは,このねらいに合致することになる。
 椎葉中では,ケナフ栽培は3年目を迎え,生徒たちにとっても親しみやすい植物になってきた。実は,現在の中学校教育の中での栽培体験がとても乏しいという問題点がある。理科授業の中でも,種蒔きして成長を観察し,収穫し直接体験を通して,学び方を学ぶ機会は乏しい。だからこそ,生徒に学び方を学ばせるにも,好素材ということである。ケナフ等植物を栽培しながら,疑問や驚きを感じながら課題をみつけたり,考えたり,迷ったり,問題解決的な学習を自ら収得していく学び方が可能なのである。また「ひえつきの時間」(椎葉中「総合的な学習の時間」)でも栽培体験に着目して,自然体験,観察・実験,ものづくり,問題解決的な学習を行うことを 計画できた。すなわち,きっかけとして全国発芽マップに参加することは学ぶ全ての人に,「驚き」「疑問」「感動」を生み出し,生徒と,学びの専門家の教師が様々な学習を共有し,創造していく力を生み出し,発見した「事実」に基づく学習がさらに次の学びに生かされていくのである。まさに学びがインタラクティブに展開されていくことになる。
(3)本物の活動へのアプローチ
 体験(栽培等)さえさせればいいのではない。そこに社会で現に行われている活動に近い活動を,意図的に仕組むことが重要である。土づくりから栽培の世話に至っては,農業生産活動から多くのかかわりを求めたり,パルプ化に至っては,製紙産業活動との関連を考えさせ作業したり,現在行われている環境保全活動と結び付けたりすることが重要である。すなわち教師はこの発芽マップの栽培等の体験活動を,社会との接点を見いだし,本物の活動へ近付けることを念頭においた指導計画をつくるべきである。

3 子どもにとっての学びと今後の展望
(1)学びのネットワーク
  四月から選択理科園を整備していった。その途中で届いた種に,ケナフだけの種蒔きではないことにびっくりし,富島中や地球クラブから届いた種に興味津々であった。「この種なんですか?」,「へー綿にも2種類あるだ。」「静岡の先生からだって。」「えつほうってどんな植物?」などケナフ以外の植物に話題が集中した。「ここに発芽マップの掲示板ができるよ。」「掲示板って何ですか?」「自由に参加者と話ができるってことですね。」「種蒔きが楽しみですね。」このように学びの仕掛けをする中で,この1年間の学びの見通しや楽しみが持てることになった。種蒔きを迎えるころには,土づくりの肥やしのように,仕掛けがこれからの学びの意欲に次第に浸透していくことになる。
 このようなネットワークを介した学びは,それを指導者と子どもが自由に選択できることになり,主体的な学習づくりにつながる。まさに栽培を核にした栽培体験活動が,ネットワークにつながっている多くの学び手(教師及び子ども)に場を与え,学びの扉を与え続けるのである。
(2)学びの芽生えと変容
 紙創りへの様々な手順は,栽培,裁断,煮る,水洗い,混ぜる,漉く,乾かす,描き,書くなどの創作活動が考えられる。その活動を効果的にするためには,様々な体験の連続から,学んだことを明らかにし,その意味や意義を考え,意識化を図る必要がある。そのことは,掲示板の活用からも明らかである。生徒は,節目の活動ごとに掲示板に感想や活動内容を書き込んでいく。その能動的な行為から,さらに次の活動へと学びは継続していくことになる。そこには,1つの学習集団だけの学びだけではなく,ネットワークを通してつながった大きな学びの集団の絆が生まれていくのも事実である。生徒は他の学校の生徒からの発信にも触発され,自らの学びを見つめ直し,再び発信することになる。
(3)「紙創り21」の成果と課題
 この企画は,紙にするまでの工程から様々なことが学べるというのが大きなポイントであった。生徒は,栽培した植物(ケナフ,綿,落下生,トロロアオイ)や集めた植物(ひまわり,とうもろこし等)を紙にした。また紙にしたあと「ラブ&ピースメッセージ」と題し,愛と平和へのメッセージ制作を参加校に呼び掛けた。また文化祭や学校の掲示板を通して広く地域社会に発信した。
 成果
  ○ 意欲をもった学習活動を生徒とともに考え実践できる。
  ○ 本物の活動の一端を体験することで,社会との接点を見い出し,学びに生かされた。
 課題
  □ 掲示板等へのアクセスが不定期なため,学習がとぎれる傾向があり教育課程の一層の弾力的計画的な運用が不可欠。
  □ 学習の場が多くなり,教育目標をよく吟味して活用を図らなければ,「使った」「やった」で終ることになる。
  □ 担当教師の熱意と生徒へのはたらきかけが重要である。
参考文献「インターネットがひらく総合的学習」中山迅 奥村高明 根井誠 編著  明治図書
参考URL 世界の紙と日本の紙  http://www.kippo.or.jp/culture/washi/world/
     和紙 http://inpaku.washi.ne.jp/

● プロフィール 
名 前 根井 誠(ねい まこと)
所属等 椎葉村立椎葉中学校 教諭
これまでの仕事
 1999年からは,椎葉中にてEスクエアプロジェクト学校企画を担当し,「へき地校での,産・官・学・民の連携を重視したインターネットの活用」をテーマに推進している。その実践成果を「全国中学校理科教育茨城大会」,「九州地区へき地教育鹿児島大会」,「宮崎県へき地教育研究大会」にて発表。編著書として中山 迅,奥村高明,両氏とともに「インターネットがひらく総合的学習」,明治図書,1999.を出版。
これからの仕事への展望
 「宮崎椎葉ならではの教育」を模索し,なお一層産・官・学・民と連携を強化し,教育の情報化を推進する。

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全国発芽マップの集い パネルディスカッション資料

Web会議室システムを活用した協働学習の挑戦
〜ケナフから広がる夢,ぼくの種,私の夢〜

宮崎大学教育文化学部附属小学校 教諭 中西 英

1. はじめに(全国発芽マップ幹事校として)
 全国発芽マップは以下のような特徴のあるプロジェクトである。
 (1) 植物の種子さえあれば実施できること
 このプロジェクトでは,教師用のメーリングリスト(以下MLと表記)を通して,栽培する植物を募りそれをもとに栽培する植物が決定される。インターネット環境の整った学校等であればすぐに参加できる。
 (2) 自然や人から直接学ぶということ
 基本はあくまでも自然や人から直接学ぶということである。植物を直接観察し,その成長の様子や疑問等をインターネットを活用して全国の参加校の教師や子ども・生徒同士が話し合っていく。また,学習や活動の過程において地域のボランティアの方々等との交流も生まれ,学びが広がる。
 (3) 参加者が全てを「つくる」活動であるということ
 あらかじめ設定された教育目標はなく,参加校の教師,子ども・生徒に学習内容が立ち上がるプロジェクトであるということ。また,教師用のMLを通して全てが話し合われ,決定され,さらに参加者が自発的に追究したいことや取り組みを提案することができる。つまり,参加者自身がつくっているプロジェクトである。
 全国発芽マップのこれらの特徴は,参加校の急激な増加やこのプロジェクトを7年間支えてきた考え方である。
 昨年までの全国発芽マップの取り組みから明らかになった課題の1つとして「子ども・生徒の直接対話を通した協働学習」がある。これまでの活動は,教師専用のMLやWebページを通して主に教師間で情報交換を行い,それを子ども・生徒に伝えていた。これまでも子ども・生徒の協働学習の手段として,電子メール,テレビ会議,ケナフの葉書等が活用されてきたが,教師間のそれと比較すると十分とはいえない状況であった。また,参加校の多くの教師がこの点については認識しており,子ども・生徒の直接対話を望む声も挙がってきた。
 全国200校を超えるという参加校の増加,共通して栽培する植物の多様な希望という課題を考慮したときに,参加校から立ち上がってきたスモールプロジェクトを推進して活動の分散化を図っていくことが望まれた。そのスモールプロジェクトを推進していく手段として,本年度から本格的にWeb会議システムの運用を進めてきた。

2. ケナフから広がる夢 〜ぼくのたね,わたしの夢〜掲示板
(1) ケナフから広がる夢 〜ぼくのたね,わたしの夢〜掲示板の目的
 全国一斉播種(2001年5月19日午前10時)の5日前,愛知県の参加校の先生から
「同じ取り組みをしている子どもたちと種まき直後に感想を交換できたらと思っています。」
というメールがMLに流された。そこで幹事校(宮崎大学教育文化学部附属小学校)として「ケナフから広がる夢〜ぼくのたね,わたしの夢〜」という名称で掲示板を立ち上げ,スモールプロジェクトを実施することにした。この掲示板は,全国の200校を超える参加校の仲間とケナフの種子を播く思いや成長についての願いや疑問等を意見交換することを目的とした。

(2) 書き込みの内容とその変化
 2001年5月16日の掲示板開設から11月中旬までに,書き込みの総数は200件に迫る勢いである。
 書き込みの内容について,当初はケナフの種子を播くまで,播いた時の思いや願いが中心であった。しかし,ケナフの成長が進むにつれ,「今,○○pまで成長しました。」という成長の報告が主な内容となり,しだいに,ケナフという植物の観察を通して起こる疑問や質問というように発言の内容が変化してきている。初めは単なる自分のケナフの成長の報告に終わっていた発言が,現在では植物の成長の観察や世話を行うことによって疑問が生まれ,子ども対子ども,子ども対教師,子ども対ボランティアの方とのやりとりに発展している。
 これらの書き込みの中で宮崎大学教育文化学部附属小学校のM君に着目してその学習活動の在り方を探ってみた。
 10月中旬に学級でケナフの観察を行った。そこで,葉や実の数を調べていたM君はケナフの葉のあまりの多さに以下のような書き込みを行った。
M君:ケナフが,成長するにつれて,葉の数が数えられなくなってきました。誰か簡単に多くの葉の数を数えられる方法を知っている人はおしえてください。
 その後,宮崎大学附属小学校の保護者であるKさんから以下のような返事をいただいた。
Kさん:展開葉(くきから直接出ている大きな葉)だけを数えるのなら,下から数えて30枚目(自分で分かりやすい数に変えてくださいね)の葉の根元をリボンやひもで結んで目印にします。次からは,その目印の葉より上の部分だけを数えればいいので楽になります。参考までどうぞ。
 これを見てM君は実際にケナフの茎に目印をつけ葉を数え出した。
 10月下旬の観察の時間には,M君はケナフの花の花粉を顕微鏡で調べる活動に入った。
M君:ケナフの花粉を顕微鏡で,50倍と,100倍にして見ました。左が50倍,右が100倍です。
 というように単なる花粉の報告というよりは,倍率の変化を行い,観察の視点の広がりが見られる。
 この時間の中でM君は次のようなことも行っている。M君は自分の育てているケナフの葉にもう一度着目し,以下のような書き込みを行った。
M君:ケナフの葉っぱを見たところあることに気付きました。それは,下の方の葉っぱは,1の写真と,3の写真のように虫に食われているようで1〜3まいぐらいしかないのに,上のほうに行くと2の写真の様に5〜7まいもあります。何かこのことについて知っている人は,情報をください。
 この時にM君は画像を2つまたは3つ投稿したいと思ったらしく,いろいろと試していたが,なかなかできず,参観者の方に聞いて画像処理する方法を学んだ。その後は自分自身で必要に応じて使いこなすようになった。
Kさん:私も毎日観察して葉の変化に気付きました。いろいろな形に葉が変わるって面白いね。私が知っている情報とまなと君の写真を使って絵でまとめてみました。どうして葉の形が変化するか…それはすぐる先生がお持ちの「広島発ケナフ事典」P64に載っています。こちらも読んでみてね。ケナフの何気ない思いやりに気付きます。

(3) ボランティア方の存在
 このようなやりとりの中で見逃せないのが,ボランティアの存在である。地球クラブの井柳代表の尽力で全国発芽マップの掲示板は海外からの子どもの書き込みが増えてきた。そこで,宮崎大学教育文化学部附属小学校の保護者の方が自ら翻訳を引き受けてくださったのである。また,全国発芽マップの公式ホームページの開花マップ,ケナフリンク集等,数多くのページを作成していただき,現在もアドバイスもいただいている。また,宮崎大学教育文化学部附属小学校の学校行事「ケナフとともに」の活動では,宮崎ケナフの会の方々に紙すきの講師として参加していただいた。この全国発芽マップの活動は,子どもや教師だけでなく,地域のボランティアの方々とともにつくられているのである。

3. 掲示板に対する子どものとらえ方
 宮崎大学教育文化学部附属小学校の子どもが,この掲示板の活用をどのようにとらえているか把握するためにアンケートを実施した。
 子どもは,掲示板を活用した学習についてほとんどが「楽しい」と答えている。その理由としては,
「全国の人たちと情報交換できて,ふれあい,そして私たちの中が深まっていくから。」
「いろいろな人と交流を深め,いろいろな地方の人と話ができるから。」
などそのほとんどが交流,人とのつながりという点を理由に挙げている。また,掲示板について子どもの考えているイメージを絵に表現してもらったところ右のようなものが表現された。
 この子どもは掲示板について「掲示板はみんなとふれあえるもの」と答えている。右の子どもは「掲示板はたくさんの人の考えを知ることができるもの」と答えている。
 これらの子どもの答えからも分かるように子どもは掲示板での交流を通して,植物について全国の情報ひいては人とのつながりを意識していることが分かる。このことは,全国発芽マップという植物を直接観察する活動や,人々と直接接して何かを学ぶ活動を重視している結果であると考える。
 また,掲示板でのやりとりの中でM君の学習活動からも分かるように,はじめにリテラシーがあるのではなく,子どもの活動の中に必要感が立ち上がり,その結果としてリテラシーが身についていくことが見えた。

4. 今後の展望と課題
 全国一斉にケナフの種子を播き,育て,観察したり,全国の友だちと意見交換したりしてきた。そこから生まれる子どもの学びや感じたことは教師の予想をはるかに超えていた。分からないことがでてきたら教師も一緒に考えたいし,学びたい。内容や目標はあらかじめないが,子どもたちの中には学習したい,調べたい内容が活動をしていく中で立ち上がってきたし,それは常に変化していた。
 これからの課題として,本年度から運用を始めたweb掲示板を用いた子ども同士の直接対話の 中で教師がどのようにかかわっていくべきなのかが挙げられる。また,国際的な広がりを見せてきていることで掲示板が英語と日本語の入り交じったものになっている。そのことで日本の子どもたちがどのように掲示板の活用を進めていけばよいのか,迷う場面もでてきている。こ れらのことについては,システムの運用も含め,来年度の全国発芽マップでの実践を進めていく中で,より充実した学習や交流に発展するよう全国の参加校の意見なども取り入れながら改善していきたい。

● プロフィール
名 前 中西 英(なかにし すぐる)
所属等 宮崎大学教育文化学部附属小学校 教諭
これまでの仕事
 「インターネット活用で授業が変わる」授業研究21 2001年2月号,No527 
 「子どもの学びに着目してみよう」授業のネタ教材開発 2001年6月号,No162
 専門は算数教育。しかし,宮崎大学教育文化学部附属小学校勤務3年目から根井教諭の転勤によ伴い,降って湧いたように全国発芽マップの幹事を任され,1999〜2001全国発芽マップ幹事。いまでは,全国発芽マップにはまっている。
これからの仕事の展望
 教科でも総合でも子どもと対象とのかかわりの中で,何が立ち上がるのかをビデオ分析で探していきたい。全国発芽マップでは掲示板の書き込みをもとに子どもの学びを探っていこうと思っている。

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2001 Fourth Annual American Kenaf Society Conference

アメリカ・ケナフ学会発表参加報告書

 全国発芽マップ委員会・井柳 強 共同研究

1. はじめに 
 6月29日,中山先生がメーリングリストTanemakiに「高知大学の鮫島先生から以下のようなメールが来ました。11月15〜17日,アトランタで開かれる,国際的なケナフ学会での発表のお誘いです。旅費は,すべて自分持ちで,しかも英語での発表ですが,だれかいってみようという人はいませんか」というポストを目にした。このような会議に参加すれば,インターネットを通して,日本のこどもたちとケナフの国際共同栽培してもらえるグループが,みつかるかもしれないと考え参加を申し出た。鮫島先生も「世界で全国発芽マップのような形で,学校教育にケナフの栽培を取りいれているのは,日本だけだから発表してみては」と勇気づけられ参加を決意した。今後,参加される方の参考資料となるようにこの報告書を作成した。

2. 参加準備
 全国発芽マップのメーリングリスト,TanemakiとHatsugaで歴史と特徴,なぜこのプロジェクトがこのように大きく成長したのか,問題点,成果をみなさんからお聞きしながら発表テーマを探った。同時に,これまでのCECへの報告書に目を通し,発表テーマを全国発芽マップの活動紹介だけに絞り込んだ。8月15日締め切りの発表仮題は口頭発表とポスター展示の2部門に参加申し込みをした。英語力がない私は,今回の発表原稿完成までに多くの人たちの助けを借りなければならなかった。インターネットは人とひとが助け合うすばらしいツールであることを再確認した。
口頭発表 "Growing and Learning Together:THE GERMINATION MAP OF JAPAN"
「共に学び育てる全国発芽マップ」
Poster "Kenaf for Japanese Children: Activities and Learner Outcomes"
「日本の子どもたちとケナフ - 活動と学んだもの」
 発表予定原稿はA4 2枚だけであったが苦戦した。原案をベルギーのJef先生,中山先生が目を通し,最後に宮崎付属小学校の保護者のカレンさんが直してくださった。スピーチ原稿,ポスターの写真コメントは,インターネットでアメリカ綿の栽培を通して友だちになった,アトランタ歴史センターのSueさんが添削を引き受けてくれた。発表はできる限り日本の子どもたちの顔・活動風景画を通して語りかけるを演出をした。全国発芽マップ掲示板に投稿された4校と地球クラブ員の保護者から画像掲載の許可を得て利用した。

3. 発表
 北米,南米,アジア,ヨーロッパから約60人の参加があり,会場は1部屋だけの,和気あいあとした学会であった。発表は質問時間を入れて20分,準備された液晶プロジェクターはパソコンとの整合性が悪く中断があった。ロスタイムの延長がないので発表者は自分のパソコンと液晶プロジェクターの故障にそなえOHPシートも用意した。私はOHPシートだけにした。発表プログラムについては http://www.kenafsociety.org/ を参考にしてください。
ポスター  掲示面積は1.2mx1.2mと狭く,日本からの4件だけであった。私はデジカメラ撮影画像をハガキサイズ用紙に印刷,4こまの組写真を1グループにしてコメントをつけた。一斉種蒔き・成長データ交換・開花マップ・Web Meeting Room・紙漉き枠作り/紙漉き・ケナフ料理・絵本作り・クラフト・海外交流・綿栽培・「感想ポスト」の11グループと展示テーマ解説を掲示した。アメリカ人にはケナフを食べるという発想はなく,ケナフ料理に関心を示した。同時にケナフクラフトについても女性参加者が興味を持った。
 口頭発表  発表内容は各国ともケナフパルプと木材質パルプの比較が多かった。 品種・栽培・収穫方法・繊維の分離・歩留まり・繊維の性質・加工・利用・経済性・消費量・環境問題との関わりなどの広範囲にわたる調査研究がレポートされた。世界ケナフ学会設立案の発表が1件ありこのテーマについてはパネル討論もあった。各国の現状,組織,設立予算などの問題があり時期尚早と先送りされた。大部分の発表がケナフの生産加工技術・消費に関するものであったため私の発表に関心が集まる結果となった。日本で今年,約202校がケナフを栽培,そのうち60校が小学校である。小学生がどのように栽培に取組んでいるのか。なぜこのプロジェクトが7年間に11校から202校まで増加したのかなど,参加者が大きな関心を示した。次の4分野についてスピーチした。
1. 全国発芽マップの歴史
2. この学校間共同プロジェクトとは
3. このプロジェクトが大きく育った理由
4. 今後の課題・メイン植物ケナフからサブ植物へ
OHPシートは日本の子どもたちの顔が見える画像で構成した。例えば,このプロジェク参加校が急増した理由のひとつとして,来年度から始まる総合学習のとの関連を
画像<ケナフの種を蒔く北海道立花小学校生と,台風で倒れたケナフを起こす子どもたち>解説「農夫のようになってケナフを栽培する子どもたち。」
画像<ハガキの紙漉きに挑戦する立花小学校の子どもたち>
解説「技術者になって物つくりに挑む!」
画像<できあがったケナフのハガキに絵を描く地球クラブの子どもたち>
解説「郵便屋さんのようになって活動する子どもたち」
画像<卒業証書を手に微笑む立花小学校の子どもたち>
解説「自分たちの手で育て,漉いた卒業証書を手に小学校を去っていく,これがケナフと取組む日本の子どもたちだ。」
短いコメントだったが,参加者の大きな感動が私に伝わった。最後のまとめをする前に時間切れのサインがでた。Mr. Chairman,more 2 minutes, please というと会場から大きな拍手が起こり異例の時間延長が認められた。そしてベルギーの子どもたちと,言葉の壁を越えたケナフの紙漉きを紹介した。植物栽培を通して世界のみんなが力を合わせ,国際理解をはかることができればと結んだ。Through growing plants we can practice working together with people from all nations. Perhaps the good international understanding that will led to a better chance for world peace.再度,大きな拍手が起こり次のようなメッセージが日本の子どもたちに託された。

4. 日本の子どもたちへのメッセージ
Dear school children in Japan,
What you are doing is very good. Keep up the good work. I want to have a project like this in Sacramento, California. My city has large Japanese population. Please help me with some Ideas to get this started. Thank you. Mr. Ken McGhee
Dear Girls and Boys,
We are very glad that you are learning about how to grow plants, especially Kenaf and cotton. I am a cotton and Kenaf farmer. It is very important to know about the plants. We have 3 children, They would love to communicate with you. Sincerely, Gabriela and Brent Brasher
Dear Japanese Children,
I am very proud of your work with Kenaf. Our children in the U.S. could learn very much working with you. I hope to start a program in my son's school. Good luck to you, Andy

日本のこどもの皆様へ
 アメリカケナフ学会の最終日に井柳先生が皆さんのケナフ栽培活動の様子について紹介され,前日の堅かった空気がほぐれて笑いも起こっていました。私は5年前からこの学会に出ています。そのときは1人でしたが今年はテロなどで困難な年(旅行に)でしたが日本から9人が出席,井柳先生もそのひとりでした。この学会はもともとケナフの経済面(農業と収穫物の製品)でしたが日本の影響で環境問題(ケナフの環境への寄与)が段々大きく持ち上げられるようになっています。物を大切にする,周囲の人に配慮するいうう日本の美徳が世界中をおゝへば住みよい世界になります。ケナフを通して世界の子供たちと仲良く進むことの楽しさを心掛けて一層努力して大きくなったら地球環境をよくするために取組んでください。鮫島座長と井柳先生の講演の成功を皆に伝えてメッセージの一部にします。

アトランタにて 日本ケナフ協議会会長 稲垣 寛

5. 最後に
 私がアメリカの学会で発表するなんて無謀すぎると心配でしたが,全国発芽マップの皆さんが快く提供してくださった約30枚の画像と,私の短いコメントを通して日本の子どもたちが,ケナフに取組む姿を伝えることができて大変うれしかった。「このプロジェクトのすばらしさを私の子どもの学校にも呼びかけてみたい」と語ってくださった海外のみなさんと友だちになり,世界発芽マップの実現の可能性がチョッとだけ前進したことをとてもうれしく思った。発表は画像・テキストの表示があり,どのようなことをスピーチしているのか想像できたが,ノーマルスピードの英語を話すパネル討論はほとんど聞きとれなかった。学会に先立ち,全国発芽マップ綿プロジェクトが縁で知り合ったアトランタ歴史センターのSueさんに招待され,農場で綿摘み,糸作り準備,糸作り,機織実習,昼食会.,歴史センターなどを見学した。センターの好意で日本語を自由に話す通訳のKenさんをつけて下さり綿を通して交流の輪が大きく広がった。展示ポスターと地球クラブの「薬品,漂白,加熱,多くの水を使わない紙作り」のパネルはアメリカ市民団体の要望で学会の後,カリフォルニアでも展示されることになった。初日,アトランタの空港が,テロの疑いで5時間も閉鎖されるなど混乱があったが無事帰国できた。学会で知り合ったフロリダの友だちは,「こんどは,家の農場でいっしょにトラクターにのってケナフの種蒔きををしようよ。」と誘われ約束し,アトランタを後にした。この学会参加については,私と全国発芽マップ委員会との共同研究とし,全国発芽マップ代表として発表させてもらったことと,委員会から参加費用の1部を助成くださるとの決定があったことに厚くお礼申し上げます。

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"Growing and Learning Together:
THE GERMINATION MAP OF JAPAN"
Tsutomu Iyanagi, The Earth Club 1-1-23 Uwahara Shimizu-city Shizuoka 424-0871 Japan,
e-mail: diyanagi@mail.chabashira.co.jp and the Project Committee for The Germination Map of Japan, Hayashi Nakayama (Prof. of Miyazaki University)
e-mail: e04502u@cc.miyazaki-u.ac.jp

Since April 2001, Japanese pupils, students and teachers are growing Kenaf in 202 schools. This project is called "GERMINATION MAP OF JAPAN". It has a history for 7 years and we grew Kenaf for 5 years in this project. We want to report to you what this collaborative learning between schools is all about. Why does it grow so big in Japan?

These are the numbers of participating schools in this project:

Year
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
Schools
11
24
50
77
53
162
202

This project was created by "100 Schools Net Working". That was the first trial to import the Internet into Japanese school education. In this project, we sow the same plant seeds at the same time in different areas. We grow it, we keep our common topics, and exchange information through the Internet. But the educational goals or objectives are determined by each school teachers. Here, we have very wide activities about Kenaf. They are:
different cultivating ways, harmful insects, flowers, cooking by Kenaf leaves, making postcards from Kenaf, exchange post cards, communication through e-mail, etc.
We will have a display "Kenaf for Japanese Children : Activities and Learner Outcomes" Welcome to our poster section. We have a lot of reasons why this project grew so big... This is one of them. Pupils and students learned about Kenaf, not only from books or WEB-Pages, but they grow it in practice with their teachers.
" We had the first flower!.", " Our Kenaf doesn't have any bud yet", " How tall is your Kenaf?", " How many leaves do you have?", " What is the expected time for flowering?"
We reported our impressions and questions to each other on the Internet. Then, we worked to make the answers. They came from our real activities. We have a lot of educational projects in Japan, but this project runs a long time, because the opinions of the participants have reflected well to it. We grow and learn together on it.

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"Kenaf for Japanese Children:
Activities and Learner Outcomes"

Tsutomu Iyanagi, The Earth Club 1-1-23 Uwahara Shimizu-city Shizuoka 424-0871 Japan,
e-mail: diyanagi@mail.chabashira.co.jp and the Project Committee for The Germination Map of Japan, Hayashi Nakayama (Prof. of Miyazaki University)
e-mail: e04502u@cc.miyazaki-u.ac.jp

Our display is to make a communication board between you and Japanese children. We will report what activities Japanese children do and what they learn from Kenaf. And we would like to ask you after you watched it: what did you learn or expect, did you have any new ideas about Kenaf that you didn�t have before? We would be very happy if we could pass your answers to Japanese children.

   2000: number of participating schools in "The Germination Map of Japan"

Kindergarten school Elementary school Junior high school High school Junior & high mixed school Nursing school University study
1
62
26
6
4
1
2

Our project is called "The Germination Map of Japan" In this project a lot of children from 6 to 12 years old are growing Kenaf in their elementary schools. Here are some of their activities. Sowing seeds together, growing differences under different climates, information exchange about Kenaf growing on mailing list and WEB board meeting system, flowering and flowering map, expected time flowering, Kenaf leaves cooking, harvest and paper making, making and exchanging post cards, picture book editing, fancy article making, survey: What kind of Kenaf products can we use in school? Kenaf growing with foreign schools through Internet, etc.
Why do we learn about Kenaf so widely? This is one of the reasons. The New Japanese curriculum has introduced "Integrated learning". The lessons we learned in different subjects are integrated into it. For example, it tries to learn the primary, secondary and tertiary industry through Kenaf growing, manufactures and how to use.
We wish you set up a big Kenaf bridge between Japanese children and children from your countries.
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