E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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ア・ラ・カルト方式による学社協働「こめのくに」

3. 「こめのくに」の概要
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3.1 バックボーンとしてのNICEと先行実践研究「ユキダス」

 本プロジェクトの概要を述べる前に,本プロジェクトのバックボーンである「NICE」(新潟インターネット教育利用研究会,Niigata Internet Conference on Education,ナイスhttp://www.nice.or.jp/)と「こめのくに」に至るまでの先行実践研究としての「ユキダス」(http://www.nice.or.jp/yukidasu/)ついて触れておく。

3.1.1 NICE

 NICEの前身は,1986年に新潟大学教育学部(現在の新潟大学教育人間科学部)に開局した教育情報パソコン通信ネットワーク「新潟ネット」(通称N-NET)である。「新潟ネット」は,新潟県内外の教育関係者を対象に人的ネットワークの形成と教育情報の蓄積,交換を主な目的として運営され,1995年のインターネット化を経て2000年の閉局まで継続的に運営された。
 こうした流れの中,1995年に新潟ネットをさらに発展させる形で,インターネットの教育利用を中心とするネットワークであるNICE(事務局新潟大学教育人間科学部)を発足するに至り,教員をはじめ教育センター等の教育関係機関,視聴覚ライブラリーや博物館等の社会・文化施設,大学等所属員で構成し,現在も活発にその活動を継続している。
 長大な新潟県では,教員および教育関係者相互の交流,情報交換を図る術は,人が一同に会しての方法しかなかったが,新潟ネットおよびNICEの展開により,遠隔地相互においての交流や情報交換を可能にし,従来では不可能であった人的ネットワークの構築とそれを活かした後述の「ユキダス」をはじめとする様々な実践研究を実現した。

3.1.2 ユキダス

 NICEでは,1995年に学校教育現場の教師や視聴覚ライブラリー,博物館,大学等所属員により企画制作した雪国のくらしに関わるプロジェクト「ユキダス」をスタートさせ,現在まで継続実施している。「ユキダス」は,学校教育へのインターネット導入増とその利用増を踏まえたWeb教材・資料のあり方,その作成・公開手法,プロジェクト推進方法などの実証実験を目的としてきている。
「ユキダス」で得られた成果は,公益に資するため余すことなくWeb教材「ユキダス」として公開している。
 毎年新しいテーマのもと,その内容を逐次更新することにより,学習情報を異なる切り口,視点で伝えることと全体の質的・量的向上を図ってきている。この「ユキダス」の活動の特徴は,次のようになっている。
(1)NICEで企画した実践研究を学校で実施する。
(2)NICE独自の企画特集を実施する。
(3)(1)の実施結果をフィードバックし(1)および(2)を改訂実施する。
(4)Web教材「ユキダス」を(1)および(2)の成果をもって構築し,追加更新する。つまり,学校現場の学習内容や課題,テーマの変化に応じて,あるいは,さらに必要とされる学習情報がある場合,それらを加味して改訂された実践研究および企画特集が繰り返し企画実施され,それらの成果がWeb教材「ユキダス」に反映されていくシステムである。
 また,取り扱う内容も多種多様である。学校や所属機関を超えたバックボーンであるNICEを活かし,会員個々が所属する学校や機関において継続的に実践研究を実施し,様々なノウハウおよび知見を蓄積してきたことは,単純なWeb教材作成だけのプロジェクトと大きく異なると言え,これも特徴として加えられる。

Web教材「ユキダス」
Web教材「ユキダス」

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3.2 「こめのくに」

 農業県としての特色を多く持つ新潟県の地域性,専門性,歴史的背景を活かして,稲作を軸に今も稲作と密接に関係するくらし,生活,文化,民俗等を含めて探り,小学校社会科における「食料生産」,中学校社会科地理における「日本とその諸地域」及び技術・家庭科の「食」と各校種における「総合学習」での利用および教科,単元の発展応用学習等で広領域・複合領域で幅広く活用可能なポータルサイトとしてのWeb教材「こめのくに」を,NICEを中心に地域住民,農業関係機関・団体,社会施設等からなる学社協働プロジェクトを結成し,プロジェクトが企画する実践研究案を参加学校が実状に応じア・ラ・カルト方式により選択実施し,それらの成果とプロジェクト全体による企画特集をもって制作公開する。

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3.3 「こめのくに」の目指すもの

 本プロジェクトは,基本的にWeb教材を企画制作し公開するものであるが,それを実現するための基本理念を述べる。
(1) プロジェクト遂行のために,人的ネットワークとしてのバックボーンであるNICEおよび地域の専門機関,専門家を含めて,双方にメリットのある協働とする。
(2) 先行実践研究として位置付けられるプロジェクト「ユキダス」で得られているWeb教材作成および地域的教育実践活動に関わるノウハウ,知見を最大限活用する。
(3) 教科学習はもちろんのこと総合学習,発展・応用学習等において有効活用できるWeb教材とする。
(4) インターネットの広帯域化(ブロードバンド)の進展を見すえ,その特性・特質を発揮できる先見性や将来性のあるWeb教材とする。
(5) 一過性のプロジェクトおよびWeb教材作成とせず,学習課題の進展に即して質的・量的な向上を継続的にはかる。
(6) 学習指導計画を支援する教育実践活動案,教育実践活動を実施するための協働(支援・協力等を含む)の支援情報により教師を側面的に支援するWebサイトおよびプロジェクトとする。
(7) (6)を前提として,従来型の教材に見られる制作者と利用者の単純な関係である「作り手」と「使い手」から,利用者である学校教育現場とともに進行し,作り上げていくプロジェクトとする。
 また,時代変革および社会構造等諸般の事情により農業県である本県の農家に生まれた児童生徒であっても農業の中心である稲作については,その多くが教科書で知る程度であり,農業の後継者不足をはじめ,稲作を通して営々と築かれてきた地域文化の衰退等種々の面でその地域性や独自性が薄れてきている現状にあることから,本県では,稲作を軸として農業や環境,文化という幅広い視点に立って,新しい時間枠である総合学習の試行を実施する学校も出てきている。
 本プロジェクトでは,学校教育現場が新学習指導要領実施やインターネット導入等による新しい学習形態をうまく活用し,こうした地域社会の現状と課題をどう取り込んで,地域との協働を実現していくのかのモデルを示すことも大きな課題でもある。

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