I.「特殊教育支援機器
活用相談ネットワーク・センター」の実践研究


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4.支援機器活用に関するニーズと課題

4.1 支援機器活用に関するニーズ

       本センターを開設した平成12年9月7日(木)から平成13年1月26日(金)迄に28件の相談の申し込みを受けた。表8.の障害種別では肢体不自由の相談、表9.の相談内容では入力支援装置関連の相談が多い結果となっている。障害種別の肢体不自由と分類した子どもたちの中には、肢体不自由と知的障害が重複してるケースが多い。肢体不自由と知的障害が重複する子どもたちは、コミュニケーション手段として音声や運動能力を必要とするサイン等の使用が難しく、「入力支援装置」の機能が有効に利用できる。このため「入力支援装置」に関連する相談は、肢体不自由と知的障害が重複する子どもたちのコミュニケーション手段として、今後も増加していくことが予想される。

       肢体不自由があり知的障害が重複していないケースでは、教科学習を進めるため、あるいは、進学先でノートをとるときに「パソコン」を利用したいという相談があった。学習を効果的に進めるためには学習内容を記録する手段が必要であり、紙と鉛筆という通常の手段を使うことが難しい肢体不自由児においては、「パソコン」と「入力支援装置」を組み合わせた利用が今後も一層の拡大すると考えられる。また、「操作スイッチ」や「入力支援装置」に関する相談では、使ってみたいが手元にない、または、購入を判断する情報がない等の理由で、貸し出しを希望するケースがいくつか見られた。このことは、これらの支援機器の有用性に対する認識が確実に広まってきていると考えられる。一方で、購入に踏み切れないのは、購入を考えている機器が本当に子どもの状態にあったものなのか判断する情報が少なく、購入費用が高額であるためと思われる。このような相談には、実際に貸し出して試用してもらうことが、購入を判断する材料として役立っている思われる。

       「視覚障害」「聴覚障害」については特定の機器についての相談があり、すでに校内等で広く利用されている状況が伺える。

       実際に障害の種別としては大多数を占めているのは「知的障害」であるが、相談件数は少なかった。「知的障害」に関しては機器利用についての相談を受け、コミュニケーション手段としてコミュニケーションエイドの貸し出しを行った。

4.2 支援機器活用に関する課題

      (1)対象者について

         相談の申し込みは肢体不自由に関するものが多く、運動障害に対するニーズが高いことが伺われる。支援機器を使った場合の効果が明確に結果として現れることもあり、支援機器利用に対する理解も広まってきていると考えられる。

         一方で障害のある子どもたちの数としては一番多い知的障害に関する相談が少なかった。これは障害の状態が外見からは判断が難しいこと、操作能力には一見支障がないように見えること等により、支援機器利用に対する意識が低い状況にあるのではないかと思われる。知的障害におけるパソコンの利用では、操作面での理解しやすさ等を考慮する必要があり、そのような意味でもソフト関連の相談が少なかったのは残念であった。しかし、知的障害児に対してパソコンの利用を積極的に進めて効果を挙げている事例(インターネットで自己紹介、http://www.cec.or.jp/books/H08InetJirei1/sp-01.html)もあり、キーボードに替わる入力手段にも工夫があったことを考えると、知的障害についても支援機器の有効性は高いと考えられる。今後は相談センターのホームページでより多くの事例を紹介する等、積極的に機器利用に対する啓蒙活動を行っていく必要がある。

         相談ケースの中で、子どもが養護学校に通っているという保護者からの相談が3件あった。いずれも「肢体不自由」に関するケースの相談であった。これらの相談は、支援機器の利用について相談を行っている機関が近くにない、または、相談しても解決手段を提示してもらえなかった等の状況が推察できた。一部のメーカーについては、自社の製品をショールームのような形で展示、サービスを行っているところもあるが、多方面に渡るニーズに対処できるような体制ではない。メーカー各社の協力も得ながら地域に根ざした支援センターのへ要望は、今後益々強くなっていくと思われる。

      (2)障害状況の評価について

         本センターはインターネットを利用して相談を受け付けているため、障害の状態は相談者からの情報のみとなっている。このことは、もし相談者からの情報が欠落していたり間違っていたりする場合には、よりよい支援方策があっても提示できなかったり、相談者のニーズを満たすことができなかったりすることにつながる可能性がある。相談者に身近な支援者が簡単に評価できるようなチェックリストの利用(例.PCA Checklist)、相談者にかかわりを持っている関係者(施設や病院等)との協力を模索していくことも必要である。

      (3)機材の準備について

         現在、本センターで用意している貸出支援機器は、以下のURLで公開している。

         特殊教育支援機器活用相談ネットワーク・センター 貸出支援機器一覧
         http://www.apricoweb.ne.jp/senc/machine.html

         平成12年度に購入した支援機器もあるが、ほとんどの支援機器については平成11年度に購入したものである。約5ケ月間の相談で、貸し出しの希望が重なったことが1件あったが、どうにかこれらの機材で対応することができた。しかし、今後、相談件数が増えるに従い、数量が限られていることから貸し出し対応が厳しくなることが予想される。特にスイッチ類については、単体での利用ではなく他の機器と組み合わせて使用するため、数に余裕があることが望ましい。また、メーカーから寄贈の申し出がある等、本センターの活動に対する理解が広がり、多方面からの人的・物的な協力が得られるようになることを願う。



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