E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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ア・ラ・カルト方式による学社協働「こめのくに」

6.2 事例(2)

 「自然環境委員会活動における主食穀物と米の消費量調査」 新潟県新潟市立鳥屋野中学校教諭 野澤一吉

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6.2.1 自然環境委員会活動における主食穀物と米の消費量調査

 実践校:新潟市立鳥屋野中学校
 指導者:教諭 野澤一吉,栗林 操

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6.2.2 教育実践活動の概要

(1)教育実践活動名
 生徒会としての委員会活動 自然環境委員会「鳥屋野の米作り」

(2)関係教科名
 理科,社会科

(3)活動内容の概要
 昨年度,地域の農家の方から,休耕田を利用できないかというお話を学校へいただいた。平成13年4月に行われた生徒会のリーダー研修会で,生徒会役員と各専門委員長が話し合い,自然環境委員長が,委員会活動として,稲作活動を新しい活動として取り入れたいという意見のもと,計画・実行することになった。地域の方々からの願いと稲作の意義を全校に話をし,活動に参加する生徒を募集した。自然環境委員を含めて,100人以上の生徒が集まった。
 鳥屋野農協と農家の方々と相談し,田植えや稲刈りだけでなく,米ができるまでの作業を行い,田と長く付き合っていく稲作活動の内容を決め,取り組む。

(4)教育効果・成果等
(1) 稲作活動を通して,稲の生育,食べ物,鳥屋野の農業等,参加した子どもたちが,それぞれの課題を設け,調査・追究活動をすることができた。
(2) 地域の方々と交流により,鳥屋野の子ども達に,地域の方々から,生きていく知識や技 術を教えていただいた。地域の方々から,地元の子どもを育てるという取組がなされた。

(5)対象学年・人数
 中学校1から3年生 自然環境委員40名 ボランテイアによる参加 60名

(6)実施期間
 平成13年4月から10月

(7)利用施設・設備・メディア等
 地域住民の休耕田 5アール,地域の農家の倉庫,パソコン1台,デジカメ2台,デジタルビデオカメラ1台,図書館の書籍,地域の食料販売店

(8)協働機関・協力者等
 地元の農家(4世帯)
 JA鳥屋野農協職員2名
 調査協力校(長岡市表町小学校,山形県鳥海小学校・中中学校)

(9)スケジュール
 4月下旬   休耕田のゴミ拾い(鳥屋野地区クリーン作戦)
 5月上旬   田おこし
 5月上旬   田植え
 5月から8月 水の管理,
 6月から7月 稲の生育調査活動
 7月      草刈り,肥料やり
 10月上旬   稲刈り
 10月上旬   脱穀

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6.2.3 教育実践活動報告(活動の記録・経過等)

1 ホームページによる情報発信
 鳥屋野中学校のホームページに,活動あるごとに掲載し,活動を紹介した。
 http://www.niigata-inet.or.jp/toyano/H13/may/taue.html(資料参照)

2 生徒会掲示板の利用
 本校2階にある生徒会専門の掲示板にて,活動の様子をデジカメで撮影した写真や生育調査の様子を数値と絵で,全校生徒に紹介した。

3 学校だよりにて保護者・地域へ紹介
 活動の様子を「鳥屋野中だより」に掲載し,保護者・地域の方々(自治会長,後援会長,同窓会長等)に紹介した。
 県教委主管チャレンジ21教育推進委員会にも紹介し,地域と学校との連携による活動であると高い評価をいただいた。

4 生徒会奉仕活動「きのこ大作戦」にて発表
 生徒会による「きのこ大作戦」(きもちよく,のりよく,こころをこめて,奉仕=胞子をばらまけ)の時に,稲作調査活動と米の消費に関わる活動を行い,文化祭の時に,全校へ発表した。

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6.2.4 教育実践活動の実施体制

 生徒会専門委員40名,募集したボランテイア60名と担当教師2名にて実施。

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6.2.5 指導計画および指導案

1 自然環境委員会の活動 稲作活動

2 活動のねらい
(1)休耕田(学校田)を利用した稲作活動を通して,米を取り巻く環境について自ら課題を見つけ,方法を工夫しながら他と協力して追究活動を行う。
(2)追究によって得られた成果をもとに自分の考えをもち,それを地域に発信する。

3 指導計画
時数 生徒の活動 教師の働きかけ・活動の成果
・ 生徒会リーダー研修会にて,自然環境委員長による私案作り
  4月から10月までの活動の計画作り
  委員の他に,参加を募集したり,活動の様子を全校に知らせる案作り
・ 田植え,稲刈りなどで本当の農業を体験できるのだろうか。
・ 全校の多くの生徒に参加して,一緒に農業の大切さを体験させたい。
・ 専門委員会にて,委員長の私案提案 ○ 新しい活動をしたいという委員長の考えが受け入れられた。
・ 生徒総会にて,自然環境委員の活動の了承
・ 募集開始
 
・ 委員長から,自然環境委員と募集して参加したボランテイアに,活動内容の説明 ・ 活動を通して,米に関する自分のテーマを決めてほしい。
・ 田起こしの作業
  ごみや側溝の清掃,肥料まき,土壌開拓
・ 農家の方や農協の方から,これから10月までの作業の説明
田起こしの作業(1)
・ 委員長から活動の決意
田起こしの作業(2)
・ 米作りの前に,土作りが ある。
・ ごみの種類から,どんな人たちが捨てたのか,考えてほしい。
○食べ物を作る場所に,ごみがある事実を知ることができた。
田植えの作業
田植えの作業
・ 農家の方と農協の方から,植え方を教えてもらい,自分の任された場所を植える。
・ 農協の方から,水の管理の仕方を教えていただく。8月まで担当者が,管理する。
○ はだしで田に入り,農家の方々からのアドバイスをもとに,真剣に作業をすることができた。
○ 田植えの作業後,自ら委員の数名が,残り,稲をきちんと整えた。
  ・ 稲の調査班を決めて,稲の生育調査を7月まで続けた。毎週1回調査した。
月日 6/1 6/11 6/21 7/4 7/13
丈本 3918 44 29 68 34 81 45 85 46
○ 稲は,本数と丈がある時期に成長し,ある時期に来ると止まることがわかる。
・ 肥料やり,草刈
  小さなばけつ一杯の肥料蒔き(例年よりは少な目に蒔く)
○ 休耕田だったから,隣の田の稲よりは丈が高い。
10 ・ 稲刈りの作業
  丈が高くなり,台風の影響もありすべて倒れてしまった。しっかりと根元をもって,残さずに刈ることを教えられた。
・ なぜ倒れたのだろう。
・ 農家の方から,コシヒカリの苗は,昔はほとんど倒れたものだということを教えてもらった。なぜ今はあまり倒れないのだろうか。
○収穫でき,お米をどうしたらよいのか考えた。
・ 脱穀の作業
  くず米がたくさん出たが,240kgほどの収穫を得た。
 
「きのこ大作戦」における活動
・ 米を取り巻く環境で問題になっていることは何かを考え,互いに意見を交換し,課題を設定する。
<課題1> 実際に農業をやる上で苦労していることは何だろうか。
<課題2> 米の輸入と消費の関係はどうなっているのだろうか。

・ 自分たちの課題を解決するためにはどのような方法で追究すればよいか考える。
  米の輸入量についてインターネットや本で調べる。
  世界の主食について調べる。
  コンビニエンスストアを訪問し,おにぎりの売り上げについて調査する。
  学校田でお世話になった地域の農家の方にお話を聞く。
  協力校(長岡市表町小学校,山形県鳥海小学校・中中学校)とともに図書館とインターネット,で世界の主食の分布と米の輸入量について調べる。
  地域のコンビニ5件を訪問し,おにぎりの売り上げについて調査する。

・ 追究によって得られたことや考えたことをポスターにまとめる。
○設定した課題
・農家の後継者不足や高齢化
・減反問題
・農薬の使用
・外国の米の進出
・米の消費の落ち込み
○自分の課題に対して,何を調べればよいのか決めて,まとめることができた。
(わかったこと)
(1) 農家の人のお話から
 (1) この地域は亀田郷という海抜0m地帯のため排水との戦いで,排水機場が完成する昭和25年以前は船に乗って田植えをした。
 (2) 昭和の中頃は安全より効果が優先されたため,害虫を殺す農薬の使用で具合が悪くなる人もいた。
 (3) 若い年代の農業離れによる人手不足等から機械化が進み,3〜5年に1度新しい機械を購入する。
 (4) 昔の自然乾燥の頃は,稲わら焼却などの被害はなく製紙工場に持っていってわらばん紙の材料にしたり,田んぼを耕す牛のえさにした。現在は機械で乾燥し,畑の敷きわらや堆肥にする。
 (5) 今一番気を使うことは,台風や雨など毎年気候が違うので,昨年のやり方が通用しないことである。
 (6) 減反問題は経済的にも水害という点でも農家にとって深刻な問題になっている。

(2) 米の自給率は100%以上なのに米の輸入量はなぜ増えるのか。
 (1) 1990年から1995年にかけて米の輸入量は爆発的に増加した。
 (2) その理由は新食糧法が施行され,米の部分的輸入が始まった。
 (3) アメリカ合衆国,タイ,オーストラリア,中国が主な輸入先である。

(3) 世界の主食の分布について調べる。
 (1) ヨーロッパ,北アメリカはパン(小麦)
 (2) アフリカ,中東アジア,南アメリカの一部はイモ
 (3) 日本や中国をはじめとする東南アジア,南アメリカは米

(4) コンビニにおけるおにぎりの売り上げはどうなっているか。
 (1)平日は1日120〜270個程度,休日は200個〜350個程度の売り上げがある。
 (2)パンとおにぎりを比べると多少おにぎりの売り上げが多い。
 (3)年間を通して5月の連休,夏場やイベントのある日,新米が出る時期の売り上げが多い。
 (4)よく売れるおにぎりの種類としてはさけ,めんたいこ,シーチキンマヨネーズが多い。
 (5)おにぎりの売り上げの上昇に伴い,最近ではジュースよりもお茶の方が売り上げが伸びてきている。

(5) 文化祭でポスターセッションによる発表を行い,地域に発信する。
  ○ 学校田で稲作活動を行うとともに,地域を支えてきた稲作や米を取り巻く現状および中学生にできることは何かを積極的に考える。
  ・ 「きのこ大作戦」で校区の校区の一人暮らしのお年寄りの家に訪問し,清掃活動をする際に,収穫したお米を差し上げた。

・ 地域のために貢献することはできないだろうか。
○人に喜ばれ感謝されることから,ボランテイアのよさを意味することができた。
11 ・ 特別養護老人ホームに,収穫したお米を差し上げた。  
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6.2.6 教育実践活動の準備作業

(1) 協力者への依頼と事前打ち合わせ
 鳥屋野農協の方と地域の農家の方と,1月と3月の会合を持ち,期日と活動内容を確認した。

(2) ホームページの作成準備
 本校のホームページに,稲作のコーナーを検討した。

(3) 用具の準備
 年間の活動内容から,必要な用具を生徒と考え,整えた。

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6.2.7 教育実践活動における留意点,課題の抽出

・ 鳥屋野地区は,昔から農業が盛んであり,女池菜など県内では有名である。地盤が低く,水田としては厳しい時代もあり,生徒は,「総合的な学習の時間」の試行において,亀田郷の歴史を学んだ人もいる。また,小学校のときに稲作の作業を経験済みの生徒もたくさんいる。このように,生活している環境や過去の学習経験から,農業に関心がある生徒が多く,ボランテイアとして募集しても,たくさんの生徒が,意欲をもって集まることができた。
・ 稲作活動を通して,来年度から全面実施される「総合的な学習の時間」として,地域学習の一環として,学習内容として指導計画の中に組み入れることができるかどうか検証しながらの実践であった。参加した生徒は,稲作活動を通じて,「鳥屋野の農業の現状」「現在の米の消費の様子」「世界の主食」「衛生的な食べ物」など,それぞれ追求したい自分のテーマをもつことができ,協力校とともに調査できた。
・ 今後,教育活動の一環として,継続的にこの稲作活動を取り入れるならば,活動時間の確保,担当職員の仕事分担など,学校という組織に中での位置づけをはっきりとしなければならない。

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6.2.8 教育実践活動の対外的な公開,普及方法

・ 学校だよりの発行
・ ホームページによる公開

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6.2.9 協働機関,支援者,協力者の役割と要件および関係構築と維持方法

1 支援者,協力者の役割と要件
・ 農作業全般に渡り,生徒と職員に,作業日程と方法,準備するものなどアドバイスをしていただく。
・ 地元の地域の方で,本校の教育活動の狙いに賛同していただける方が望ましい。

2 維持方法
 鳥屋野地区の農業組合の会合に出向き,学校側としての要望と組合の方の農業の繁栄させたいという要望を両方かなえる方法を,協議し,協力し合って生徒に稲作体験を通じて何を教えたらよいのか,共通理解を図った。

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6.2.10 資料

公開したホームページ
公開したホームページ

製作した穀物世界地図
製作した穀物世界地図

アフリカ南部の主食穀物調査結果(長岡市立表町小学校)
国名 主食(名前) 説明
ケニア ウガリ トウモロコシの粉
タンザニア ウガリ トウモロコシの粉
マダガスカル  
南アフリカ共和国 パン,米,トウモロコシの粉  
西アフリカ共和国 フーフー タロイモやヤムイモ,キャッサバといったイモ類,それとプランタインが主食になっている。プランタインは料理用のバナナ
ザンビア ミルミル ミルミル(Mealy meal)というメイズ(トウモロコシ)を粉にしたもの
ナミビア ?? ??
ボツワナ パパ トウモロコシの粉
モザンビーク トウモロコシ粉,マンジョーカ,米  
ジンバブエ サザ トウモロコシの粉
アンゴラ ??  
マラウイ シマ トウモロコシの粉
コモロ諸島  
モーリシャス パン  
ウガンダ マトケ バナナ
ソマリア トウモロコシの粉  
エチオピア テフ テフという穀物を発酵させてクレープ状にしたインジェラの上に主に豆をすりつぶしたようなおかずをのせて食べる
セイシェル諸島  
中央アフリカ キャッサバ,トウモロコシ  
コンゴ共和国 キャッサバ  
ガボン ??  
カメルーン プランテン バナナ
ナイジェリア エバ イモの一種を1週間水に浸し,ミキサーにかけてこして乾かした後フライにした「ガリ」と呼ばれる食材を,お湯に溶かしてつくる
ガーナ フーフー ヤム芋粉とキャッサバ粉を練って作る蒸しパン状のもの
コートジボワール キャッサバイモを天日干しにしたもの  
ギニア  
ルワンダ 芋や豆 バナナとじゃがいも

中国・アジアの主食穀物調査結果(山形県山辺町立鳥海小学校・中中学校)
中国・アジアの主食穀物調査結果(山形県山辺町立鳥海小学校・中中学校)

コンビニ調査結果
コンビニ調査結果

輸入米調査
輸入米調査

稲作をまとめたポスター
稲作をまとめたポスター

稲作のビデオ記録
稲作のビデオ記録

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