E-Square ProjectEスクエア・プロジェクトホームページへ 平成13年度 成果報告書
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ア・ラ・カルト方式による学社協働「こめのくに」

6.6 事例(6)

 「野中で食べられるもの全部食べちゃえ〜大作戦」 新潟県十日町市立野中小学校教諭 永井 茂

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6.6.1 「野中で食べられるもの全部部食べちゃえ〜大作戦!」

 実践校:新潟県十日町市立野中小学校
 指導者:教諭 永井 茂

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6.6.2 教育実践活動の概要

1 教育実践活動名
 「野中で食べられるもの全部部食べちゃえ〜大作戦!」
 以下3つは,「こめのくに」の協同テーマとして実践。
 1) 稲の生長記録を作ろう!
 2) 温度データからコシヒカリのうまさを探れ!
 3) 米の食味検定をしてみよう!

2 関係教科名
 ・ 社会科
 ・ 理科
 ・ 学級活動

3 活動内容の概要
 地域で食べられるものを観察・調査をして,オリジナル料理を作る。また,保護者全員が農家ということもあり,「米」を扱った学習は,家の田んぼと学校で協力いただいた田んぼとの比較をしてまとめる。そのために,ライブカメラを利用して生長記録をとり続けホームページで公開する。さらに,自動温度記録装置を利用し田んぼの水温と気温を計り,お米の味との関連性を考えていきたい。
 また,できるだけ多くの食物を採取し,オリジナル料理を作ることを通して,自然の恵みを実感したり,環境について考えたりしていく。
 そして,複式校として同中学校区の小学校と交流を図り,友達を多く作ることも目的とする。

4 教育効果・成果等
 ・ 長期間の継続観察を通して,観察力が高まった。そのことによって,先を見通した活動ができるようになった。
 ・ 「料理」が目的になることで,自分で判断し,行動していこうとする力が育った。
 ・ 「米」を見つめていくことで,お家の人の努力や苦労をあらためて感じ,家庭における自分の役割を再確認することができた。また,自分専用の田んぼをお家の人から譲り受け観察そして世話をし続けた。家族での取り組みができた。
 ・ メールを利用した情報交換や,直接交流などを通して,同中学校区の友達を多くつくることができた。
 ・ 異学年合同学習により,上学年と下学年の関わり合いがより一層強まり,信頼関係を確固たる物にできた。
 ・ 交流を通して,相手を意識した学習過程が,個々の表現力を向上することができた。

5 対象学年・人数
 複式校であることから,異学年合同学習を展開。
 ・ 小学校4年生(2名) 小学校5年生(2名) 小学校6年生(3名)  計7名
  (1年生,3年生は不在。2年生は5名。)

6 実施期間
 ・ 4月〜2月

7 利用施設・設備・メディア等
 ・ パソコン8台 校内LAN,デジカメ7台,一眼レフカメラ1台,デジタルビデオ1台,8mmビデオ1台(ライブカメラ用),ISDN回線によるインターネット接続,ホームページ,スキャナー1台,図鑑,電話,MD,自動温度記録装置。

8 協働機関・協力者等
 ・ 地区のみなさん(保護者含む)
 ・ 調理員さん,用務員さん。
 ・ 理科センターの先生
 ・ 十日町市立馬場小学校5年生のみなさん
 ・ 静岡県引佐町立久留女木小学校のみなさん
 ・ 「こめのくに」ホームページ

9 スケージュール
 ・ 詳細は,指導計画を参照(別紙1)
  4月から5月上旬 ……… 田んぼの雪解け観察,食物採取
  5月下旬〜6月上旬 …… 田植え,食物採取
  6月中旬〜10月中旬 … 田んぼ観察,食物採取
  10月下旬 ……………… 稲刈り,食物採取
  11月 …………………… オリジナル料理を作る

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6.6.3 教育実践活動報告(活動の記録・経過等)

1 ホームページによる情報発信・交流
 ・ ホームページ「野中小 こめのくに」を開設
 (http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/komenokuni/kome1.htm)で活動記録を公開。

 5月25日 映像は,「田かき」,終えているところです。
 5月31日 今日,田植えをしましたよ。見てください!
 6月15日 4月から5月上旬までの様子を,簡単にアニメーションしてみました。雪がとけていく様子ですよ。
 6月16日 15日から16日の24時間の田んぼの水温をはかりました。
 6月21日 15日〜21日までの,気温と田んぼの水温
 7月13日 5月中旬から田植えまでの様子(アニメーションで)712kb   
 7月16日 田植えから7月12日までの稲の生長の様子(アニメーションで)456kb  
 8月 3日 ライブカメラの田んぼを,上から見た様子!  
 8月 6日 米の観察記録(途中経過) 〜pdf〜 
 9月12日 コメの花だよ! (9月3日に見てきましたよ!)  
 9月21日 田んぼの様子(360度映像) 
 9月27日 緑色の稲がのびていく様子(アニメーション)474kb
10月 6日 稲刈りしました!(13時30分ぐらいから14時40分ぐらいまで)
10月 9日 棚田(たなだ)の風景写真
10月12日 稲刈りアニメーションクイズ
11月 6日 米クイズが誕生!

2 他校とのメール交換
 ・ ホームページ公開により,2校よりメール交換の依頼があった。比較検討の場をホームページ「こめのくに」だけでなく,メールをきっかけに学習の場を広めることができた。例えば,「棚田」を共通テーマにして静岡県引佐町立久留女木小学校と交流を深めた。
 また,本校が力を入れている同中学校区の交流として,馬場小学校とメールで情報交換をすることができた。例えば,生長過程を随時報告しあったり,お米食べたよと味比べの話し合いをしたりするなど,「いつごろ」「どこで」「なにをするか」をお互い比較し合いながら,生長過程をより一層深めることができた。そして,秋の遠足では直接訪問して,友達を増やすことができた。

3 ホームページのデータ活用
 ・ ホームページ「こめのくに」を参考にして,他地域の田んぼの様子について比較検討。特に,米の生長の様子や水温と気温の関係を利用した。
 ・ 少人数では,比較検討の機会がなかなか少ない。そこで,より多くの比較検討する機会を求め,利用した。上記のメール交換も,このホームページがきっかけである。

4 ライブカメラの設置(以下4,5は「稲の生長記録を作ろう!」の実践)
 ・ 米の生長を毎日ライブカメラを撮影し,ホームページで公開する。田んぼの変化していく様子を見ることができた。その他にも,ライブカメラの映像は,野中地区の様子や今日の天気としても伝えることができた。子どもたちも,興味をもち,いつの間にか自分たちでライブカメラの担当を決めるなど自主的な活動が見られた。そのため,ちょっとの変化も気づくことがあり,報告会をすることもあった。アドレスを参照。
 「現在の映像」http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/image/livephot.html

野中小学校のライブカメラ(定点観測カメラ)のしくみ
野中小学校のライブカメラ(定点観測カメラ)のしくみ
※定点観測ソフト「Actiview」のホームページは,http://www.profire.co.jp/actiview/

5 アニメーションの作成
 ・ ライブカメラで記録された映像をアニメーション化した。(1)雪解けの様子 (2)田植えまでの様子 (3)稲の生長(7月上旬まで) (4)稲の生長(稲刈り前) (5)稲刈りの様子 と5パターンを作成。
 ・ 子どもたちの稲の生長記録は,数字で表現される。しかし,このアニメーションを利用することで,数値が映像となって表現することができる。一年間の米作りのまとめを事前に行いそれと比較しながら,ライブカメラの映像を見つめていくことができた。よって,「だいだいこの時期は,48pくらいだな」といった感想が聞くことができた。また,田かきの日にちや,水見の様子,生長していく様子,稲刈りの様子などライブカメラの映像と自分の家の田んぼの生長とを比較して,学習を進めることができた。
 ・ また,このアニメーション作成を利用して,他の植物の生長過程も,観察を進めることができた。トマト,トウモロコシ,にんじん,大豆,なす等畑で育てていた食べ物をデジカメでとり続けてまとめた。さらに,雪の多いこの地域ならではとして雪の降る様子を冬休みにとりつづけるなど,子どもたちの表現力向上につながった。アドレスを参照。
 「こめのくにアニメーションシリーズ」
 http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/komenokuni/anime/tanbo-anime.htm

6 自動温度記録装置の活用(「温度データからコシヒカリのうまさを探れ!」の実践)
 単調で,長期間にわたる観察は子どもたちの意欲を低下させてしまう。この機械を利用することで,そのような心配がなくなる。また,他の活動(食物採取等)を組み込むことができ学習範囲が広げることができた。

田んぼで使用した自動温度記録装置
田んぼで使用した自動温度記録装置
Thermo Recorder “おんどとり” TR-71S(TAND社)

グラフ作成やデータファイル作成のソフトが標準添付されている。性能や製品を説明するホームページは,
http://www.tandd.co.jp/thermo/tr-7/tr-701.htm

 ・ 田んぼの水温と気温の2つを自動的に記録していく。1週間や1ヶ月ごとにデータを集約し子どもたちに見せた。晴れの日,雨の日,曇りの日,と気温の違いが分かる。また,晴れの日は,たいへん暑くなることが分かった。
 ・ 自動温度記録装置は,一カ所でしか計れない。田んぼの四隅で計ることを考えて,記録することをしばらく行った。すると,水の温度が違うところもあることに気づき理由を考えてみた。この疑問を各家庭にもちかえり情報を集めた。そして,水見という作業がとても大切だということが分かった。また,その温度差が米の生長過程に大きな影響を及ぼすことが米の花の観察をしてはっきりした。同じ田んぼでも,花の咲き終わって実ができているところと,まだ咲いていなく青々しているところに気づいた。水の取り入れているところはまだ青いことが分かった。「コメの花だよ!」で公開。また,これを題材にしてクイズを作成した。なんで,夏場に田んぼなんか見に行くのだろう?という疑問がこれで解決した。温度データを毎年とり続けて比較しようと声もあがり,来年度の課題として持ち越された。データが蓄積されることで,いろいろな比較ができそうである。もちろん,味の比較もできそうである。アドレスを参照。
 「野中小学校ライブカメラの田んぼの水温と気温」
  http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/komenokuni/kion/kion-615-621.htm

7 食味検定の実施(「米の食味検定をしてみよう!」の実践)
 ・ 規準米と検定米を比較する。あまみ,かたさ,ねばり,みため,総合評価と自分の口にコメを含み,味わう。そして評価するという活動。実際に行っている食味検定の厳しさを体験した。自分の家で作っているコメの味は,規準米とどうなのだろう?と疑問があがった。実際に行い,比較してみた。よくわからない,うまい,等様々な意見が出たが統一性がないと検定士としてはまだまだだなということでまとまった。また,今後の活用方法として先ほどの,温度データを蓄積していくことで,今年はうまいのかふつうなのか判断していくことが期待できる。さらに,毎年の積み重ねれば,本校の異学年合同授業においては,上学年に対して,経験の積み重ねによる優れた感性が育つといった学習効果を期待することができる。

8 クイズ作り
 ・ まとめをするときは,相手を意識せず,自分よがりなまとめをしてしまう。そこで,クイズを公開することで,相手の反応をうかがうことができる。そして,もう一度考え直しクイズを作り上げていくことができる。つまり,まとめ方が上手になり,また,表現力も向上する。以下クイズのアドレスを参照。
 「稲刈りクイズ」
 http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/komenokuni/anime/tanbo-anime.htm
 「魚沼産コシヒカリクイズ」
 http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/komenokuni/qizu/kuizu.htm

9 料理作り
 ・ 学校区で採れた食材を食べる。「いつ」「どこで」「なにが」「どれだけ」等様々なことを考えた。わからない植物は,料理員さんや理科センターの先生などに尋ね,またはいっしょに採取したり遠足で採りにいったりすることができた。それらの計画は子どもたち自ら考えるなど,活発に行うことができた。一つの料理が終わると,「次は何食べようかなぁ」という次への期待がうかがえた。
 また,料理するときも栄養のバランスを考えたり,給食のメニューとしてお願したりした。次第に,地元料理として発展していくことができた。
 冬場は,採れた食材の保存食として,取材活動を進め実際に活動を行った。米は,餅としてかたちをかえた。さらに,餅をきっかけにして,地域行事への由来も学習し,冬休みや小正月の地区行事への参加意識が芽生えた。

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6.6.4 教育実践活動の実施体制

 複式校のため異学年合同(4,5,6年生)による学習活動。教師1名による実施。

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6.6.5 指導計画および指導案

 資料を参照。

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6.6.6 教育実践活動の準備作業

 ・ 協力者への依頼と事前の打ち合わせ。
 ・ ホームページの作成。
 ・ LANやメディア環境の整備。

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6.6.7 教育実践活動における留意点,課題の抽出

 本校児童全員の保護者が農家である。今後5年間は変わらない環境になる。そのため,「米」をテーマとしても,子どもたちは米作りの手伝いを毎年しているので,およその過程は知っている。家庭でも米についての話題があり,子どもたちから情報を集めることが容易である。しかし,他と比べることはなく,友達同士でのやりとりで米作りの違いを発見できた。また,人数が少ないこともあり,ホームページ「こめのくに」を利用することで,野中だけでない他の地域の情報を取り入れることができ,活発に活動を展開することができた。ただ,異学年合同による授業展開のため,翌年に同じ様な授業を展開する場合,下学年との関わりに目を向け学習目的を少しずつ修正していかなければならない。
 パソコン操作は,4年生は1年前から,5年生は2年前から,6年生は3年前か操作し始めている。よって,文字入力は抵抗なくできた。デジカメで撮影した写真の取り込みも友達同士で教え合いながら上達していった。しかし,米の花など接写して撮る技術が必要であり,デジカメの撮影上達は子どもたちの満足感に比例していった。食材を集めるには,子どもたちの日頃の生活の中からある程度はできる。しかし,キノコ類は専門知識が必要であり,収穫して食べることは子どもたちだけでは難しい。キノコ類やその他植物に詳しい人を支援者として必要である。
 長期にわたる学習活動のおかげで,観察力そして表現力を高めることができた。また,友達同士のかかわり方や家庭における自分の役割を再確認することができ,自分を見つめ将来を考えるようになった。ただ,異学年合同学習活動をいかに興味深く行うかが今後の課題である。全校で行うことも考えられるので,短期間の活動も取り組むことが必要である。

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6.6.8 教育実践活動の対外的な公開,普及方法

 ホームページによる公開。
 ・ 「野中で食べられるもの全部食べちゃえ〜大作戦!」
   http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/sougou/sougou.htm
 ・ 「野中小 こめのくに」
   http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/komenokuni/kome1.htm
 ・ 現在の映像(ライブカメラ)
   http://www.city.tokamachi.niigata.jp/edu/els/nonaka/image/livephot.html

 普及方法としては,保護者や地域の方が,インター年と環境が整っていないため,お便り等でお知らせする。また,公民館と協力して,インターネットの公開を宣伝していただく。同中学校区の小学校にも交流を行っていく。(複式校として必要なこと)

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6.6.9 協働機関,支援者,協力者の役割と要件および関係構築と維持方法

 ・ 支援者は,各家庭の親や祖父母を中心に展開。また,地区のおじいちゃんやおばあちゃんにも依頼。他に,支援者としての要件は,「稲作に詳しい人(農家)」「食べられる植物を知っている人」「昔から地域に住んでいる人」「料理ができる人」のいずれかであればよい。
 ・ 関係構築としては,保護者からの紹介や学校独自の人材バンク,担任の今までの人脈,理科センター,栄養士さん調理員さんの活用と考える。また,維持方法としては,子どもを通してのお便りや電話連絡などや,地域行事への参加と考える。例えば,ボランティア活動として,冬場の雪かきをするなどである。(チャレンジ21として)

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6.6.10 資料

指導計画および指導案
指導計画および指導案

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