第5学年 総合的な学習の時間の学習指導案
平成13年11月16日(金)
指導者 教諭 横山みゆき
1 単元名
「めざせ!土沢・米博士」
2 単元の目標
- 自分の地域の稲作に関心を持ち,稲作の体験や調べ活動に積極的に取り組む。
- 農業のすばらしさ,難しさを感じ取るとともに,米について自分なりの考えを持とうとする。
- 米について調べたことや考えたことを整理し,自分なりの表現方法で他の人に伝えようとする。
3 単元と児童
(1)児童の実態(男子5名,女子4名,計9名)
- 男女とも明るく素直でのびのびとしている。与えられた課題に対して,最後まで根気よく学習に取り組むことができる。しかし,自ら問題を見つけ,疑問に思ったことを調べて解決していこうという意識は低く,よりよいものを追求しようとするところまでは至っていない。友達の意見に流されやすい傾向もあり,自分の考えに自信を持って発表できる児童は少ない。
- これまでの学習では,デジタルカメラで撮影記録して,その画像を生かした全校朝会での発表や観察カード・新聞の作成などの活動に取り組み,表現の幅も広がってきている。
- 4年生の社会科では,北海道の様子について調べたことをプレゼンテーションソフト(JUSTSYSTEM「はっぴょう名人」)を使って,クラス内で発表会をしている。
- コンピューターの基本的操作は全員行えるが,文字入力(ローマ字入力)の速度には個人差がある。
- 9名中,6名の家で稲作に従事しており,米作りに対する関心は高い。1学期に社会科「稲作にはげむ人々」では,稲作の仕事の様子や稲作の工夫や努力,農業の機械化などについて,家庭からの聞き取り調査や資料集を使用した学習を行った。
- 理科「植物の発芽と成長」では,インゲン豆とトウモロコシを使って発芽の様子や成長に必要な条件を学習した。その後,バケツ稲のことを知り,種もみを入手し,発芽や成長の様子を観察している。
(2)単元の構想
- 霧出郷と称する学区は自然が豊かであり,地区の約80%が農業世帯で高齢者が多く,稲作について,こだわりを持っている方がたくさんおられ,育苗センターや農協などの施設も学校近くにある。
- 子ども達は学習の中で,このような地域の方や施設から情報を得ることによって,米作りの大変さに気づいたり,米を作っている人たちに対する尊敬の念を抱いたりしてくれると考える。
- PTAから「休校田で米を作ってみないか」「子ども達に稲作体験をさせたい」というお話があり,全校で6畝の田をお借りしてコシヒカリの栽培に取り組んだ。
- 米作りに焦点をあてて地域とかかわる活動を持つことは,子ども達と地域の方々とのつながりを深めることができ,郷土に誇りを持つことにつながると考える。
- 4月の社会科の時間に「バケツ稲」の説明をしたところ,種もみから育てたいというこだわりを見せた。こうした姿から,米作りは子ども達の意欲的な追求を引き出せる活動であると感じた。
- 「バケツ稲」の栽培の開始時に,土作り,種もみの入手方法などを家の人に相談し,適切な助言をいただいた。
- 地域の稲に比べて出穂が遅れたときにも,地域や家の方から苗の状態に応じた助言をいただいた。こうした交流の中で「おじいちゃん(お父さん)はすごい。」「この地域には米作りに詳しい人がたくさんいる。」など,地域には米を大事に考えている人がたくさんいるということに気づいていった。
- 学校田は離れていて日々の観察が困難なので,バケツ稲やペットボトル稲で日常的に成長の変化を観察し,夏季休業中でも自宅で観察が継続できた。自分の苗に親しみを感じるとともに,一粒の種もみからたくさんの米がとれる米作りのおもしろさや難しさを感じ取ることができた。
- 学校田での田植えや田の草取りなどの作業を体験し,米に関する関心意欲を持たせることができた。また,作業を通して地域の方との交流が生まれ,教えていただく環境が育ってきた。
- 米の収穫後,他地域産米や他品種の米を食べ比べる活動を取り入れ,この食味検査のデータを数値化してグラフにまとめた。この結果やこれまでの活動の振り返りから,子ども達の意識が「米の品質」に変わっていった。
- イメージマップ的な手法を取り入れたりして,おいしい米作りなどについて,自分なりの課題を見つけて,次の学習段階に活動を進めることができた。
- 自分の課題について,「どのような情報」が「どのような手段(誰に聞くのか,何で調べるのか)」で得られるのか確認させ,目的を持って活動させる。
- 得られた資料や情報のメモなどをポートフォリオにして,振り返りや発表ができるようにしておく。
- 情報が集まってきたら,収穫祭を企画するなどして,調査結果をたくさんの人に伝える場を設定する。
- 「より分かりやすく」「正確に」地域の方に伝わるように,学習成果を課題別グループごとにまとめさせ,協力して発表させる。
- 地域の方から学んだことを地域の方から聞いてもらい,感想を伺うことで,これまでの調査活動に充実感を味わわせるとともに,今後の活動に自信を持たせたい。
- これまでの学習を振り返るとともに,自分たちの地域の将来の米作りについて「米論文」にまとめさせることにより,「地域に生きる自分」の課題として米作りをとらえ直させたい。
- 自分達もインターネットを通じて情報発信ができることを知らせ,Webページ作成意欲を持たせたい。
- 作成にあたっては,収穫祭で発表したものを生かすようにしていきたい。また,著作権についても教えていきたい。
■この単元を通して子ども達に育てたい力
○情報の活用
- 地域の米のおいしい理由を探るために,地域の人や専門施設の人に,納得するまで聞いたり,質問したりする力
- 本やインターネットなどで自分が必要とする情報があったとき,メモしたり,印刷したりして,得た情報をポートフォリオファイルにつづっていく力
- 調べたことを文字だけでなく,図や表,グラフにまとめたり画像を使ったりするとともに,内容の配列などにも工夫して,相手によく分かるように表す力
○自己を見つめ直す
- 米について調べたことを自己評価,相互評価することにより,自分の活動を振り返り,友達のよいと思ったところを取り入れ,自分の活動を改善する力
○郷土から学ぶ
- 米作り体験や調査活動を通して地域の米作りを探りながら,地域の自然の豊かさや農業問題について主体的に考え,日本全体の農業を考える力
本校の研究仮説に対しての取り組み
研究仮説(1) 伝えたいことや伝えたい相手を明確にし,表現に対する見通しをもつことによって,進んで表現するようになる
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○「伝えたいこと」は米に関して自分なりに持った問題について調べたことである。自分なりの課題を持たせるために,バケツ稲や学校田での作業,米の食味検査の体験活動を想起させる。
○「伝えたい相手」は,2次では地域の人である。3次では,2次でまとめたことに自分の考えを付け加え,Webページに載せる。よって3次の「伝えたい相手」はWebページを見てくれる不特定多数の人である。
○「表現に対する見通しをもつ」とは,次のようなことが分かることである。
(1)米について何について調べたいのかが分かる。
(2)自分が持った課題について,どのような方法で調べるのかが分かる。
(3)調べた結果,分かったことは何か,もっと知りたいことが分かる。
(4)どのような表現方法(機器,実物,紙に書くなど)で伝えるのかが分かる。
(5)収集した情報をどのように(図や表など)表したらよいかが分かる。
(6)収集した情報を相手に分かりやすく伝えるにはどのような構成で発表したらよいか,イメージすることができる。
そのために次の手立てをとる。
(1)何について調べるのか,記録させ,目的を持って調べ活動ができるようにする。
(2)調べて分かったこと,もっと調べたいこと,疑問に思ったこと等をメモさせる。
(3)収集した資料やメモした情報をポートフォリオファイルにつづり,自分の活動を振り返られるようにする。
(4)これまで経験した表現方法を確認し,どのような場面でどのような機器を使うとより効果的か考えさせる場を設定する。
(5)課題別のグループで発表方法や発表内容について相談させ,何をどのように伝えたいのか明確にさせる。
(6)発表内容を簡単にメモさせ,どうすれば相手に分かりやすい情報になるか考えさせる。
(7)6年生や他の学校のものを参考にしながらWebページを作成する。収穫祭で発表したものを生かし,紙にかいた図や表はスキャナーで読み取る。「はっぴょう名人」を使用し,Webページを作成する方法を教える。
研究仮説(2) 評価の観点を明確にし,自己評価したり相互評価したりすることによって,自分の表現を見直すようになる
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○発表についての評価項目を設定し,課題検討会や他教科でも,自己評価および相互評価を行うことによって,内容を吟味したり,自分の表現を見直したりする機会を持たせる。評価項目の設定については,自分の発表のめあてを自己評価項目に,クラスで話し合った発表の観点を相互評価項目に取り入れる。
○評価カードをファイルして,自分の表現の変容を振り返らせるとともに,児童個々に対する支援・援助を行って,表現方法の工夫を促す。
○収集した情報のメモや資料などをポートフォリオファイルにつづり,自分の調べ活動の足跡が分かるようにし,調べ活動の成果を自己評価させ,新たな活動へ自信を持たせる。
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