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実践事例

宇宙と先進情報技術〜GPSの活用〜
テーマ名
宇宙と先進情報技術〜GPSの活用〜
実施学校情報
学校名 帝京高等学校
学年 高校1年生
生徒数 17名
実施日 2004年10月18日(月)・25日(月)
合計授業時間 150分
教科・単元 教科:情報
単元:
授業概要 本授業では、GPS衛星を中心に、GPSシステムについて扱う。授業は3時間構成とする。
1時間目はGPS機能付携帯電話で、GPSの機能をグループごとに体験する。現在位置の測定や、QRコードから読み込んだ目的地へのナビゲーションを体験する。その体験をふまえ、教材ビデオでGPSシステムの仕組みについて学ぶ。GPS衛星によって、地球上の位置がどのような仕組みで決定されるのか、また、GPSが作り出されたきっかけにも触れる。さらに、教材ビデオで現在研究段階である日本独自のGPS衛星である順天頂衛星について学ぶ。現在のGPSのマイナス部分を改善する新たな技術の開発について触れ、GPSについての理解を深める。授業では、ビデオを適宜停止し、産業界の講師から補足の説明や情報を話してもらう。

2時間目は、現在GPSはどのようなところで活用されているのか、その活用例をまとめた教材ビデオを使って紹介する。長距離バスでの活用や、荷物運送トラックでの活用、船舶での活用等を紹介し、現在GPSがどのように使われているかを確認する。その後、生徒はグループに別れ、GPSの活用方法にはどのようなものが考えられるかという課題に取り組む。ディスカッションの中で、問題点や新たなアイデアを出し合い、GPSのメリットデメリットを考えさせたい。

3時間目は、生徒が考えた活用アイデアを発表し、講師からそれぞれにコメントを与えた。新たな気づきを与える質問や、発展的なアイデアを加えることで、生徒の知識の定着と、興味関心の高まりをねらいとする。
GPSの仕組みや活用例といった知識理解とともに、GPS機能付携帯電話の体験や活用法のアイデアを考える活動を通して情報技術を身近に感じ、日常生活の中でも興味を抱けるような構成とする。
授業のねらい 現在、人工衛星を使った測位システムの利用は、カーナビゲーションなどにより一般にも急速に普及し始めている。また、防災システムなどでは、災害が発生する恐れのある崖や河川などをG」PS機能付携帯電話のカメラで撮影し、画像データ・位置情報・時間データをあわせて防災本部に送信、瞬時に対応ができるようになっている。さらに、児童福祉や介護、警備などにも利用されている。
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、宇宙開発事業の1つとして、測位衛星システム(GPS)を使った測位情報の発信や測位精度改善、さらに複数の衛星を用いて少なくとも常時1機が日本の真上に見えるように配置する衛星システム「準天頂衛星システム」などの未来の先端技術を開発している。
しかし、そうした先端技術である測位システムは、生活を支えている重要な存在であるにも関わらず、目に見えないため、生徒にとって身近なものとしてとらえにくく、その仕組みについてもなかなか理解することはむずかしい。
そこで、本授業では、JAXAの宇宙開発の中の測位衛星システムに焦点をあて、日常あまり身近なものと感じられない最先端技術について、GPS機能付携帯電話などの体験を通しながら学ぶ。また同時に、生徒がGPSの活用法を考えることによって、生徒たちが先端技術である測位衛星システムを実社会で活用することの意義を実感することを目指す。このことが、高等学校指導要領が言う「情報化の進展が生活に及ぼす影響」についての理解を深めるものと考える。
さらに、産業界で働く人の姿やおもいを見せることで、社会とのつながりを意識させ、キャリア教育の一役を担うことを期待する。


授業内容(1時限目)
実施単位 1時限目
テーマ GPS機能付携帯電話の体験とGPSシステムの仕組みと準天頂衛星システムについて
実施場所 コンピュータ教室
実施時間 50分
講師 独立行政法人宇宙航空研究開発機構
広報部教育担グループ
渡辺 勝巳
使用教材 (1)GPS機能付携帯電話
(2)オリジナル教材ビデオ(宇宙と先端情報技術〜GPSの仕組み・準天頂システムについて〜)
(3)Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント(教材ビデオ補足説明用)

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
(1)講師は自己紹介(略歴・JAXAについての説明)をする。(2分)
(2)パワーポイントを使い、GPS機器(携帯電話)の使用方法(操作方法)について説明する。(10分)
(3)GPS機能付携帯電話を使い、自分の現在の位置の測定などを行い、GPSシステムとはどういったものであるかを体験する。(3分)
@現在地の測定
A目的地の設定
Bルートナビの体験
(4)GPSの仕組みについて、JAXA職員に取材し作成した教材ビデオを流した。教材ビデオを適宜一時停止し、パワーポイントを使って、GPSの仕組みについて、補足の説明を行う。(23分)
〈使用した教材:教材ビデオ、パワーポイント資料〉
(5)JAXAで現在開発中の、日本独自のGPS衛星である準天頂衛星システムについて説明する教材ビデオを流す。教材ビデオを適宜一時停止し、パワーポイントを使って、GPSの活用例について、補足説明を行う。
(10分)
(6)学習のまとめ、次回の予告をする。(2分)

■内容
(1) JAXA渡辺氏の紹介。JAXAの説明。

(2)パワーポイントを使い、GPS機器(携帯電話)の使
用方法(操作方法)について説明する。ワークシートを配布する。

(3)GPS機能付携帯電話を使い、自分の現在の位置の測
定などを体験させる。
@現在地の測定
A写真をとり、GPS情報を取得する。
BQRコードをカメラにとり、目的地情報を読み込んで、音声ナビゲーションを体験してみる。

(4)・教室に戻り、GPSの仕組みについて、教材ビデオを流す。
【ビデオの内容】
1.担当者紹介(内村氏・中村氏)
2.仕事紹介
3.GPSの仕組みについて
・ビデオを止め、パワーポイントを使い説明する。
・ビデオの続きを流す。
4.GPS衛星の個数について
・ビデオを止め、パワーポイントを使い説明する。
 ・講師から、人工衛星についての話。(47年前に人工衛星第1号が打ち上げられた。そこから47年間の間にいくつの人工衛星が打ち上げられたか?5500個。)
・ビデオの続きを流す。
5.クイズ1
Q1.GPS衛星にはひとつだけ日常我々が使っているものよりとっても高価なものが使われています。それはなんでしょうか?
1. 高価な時計
2. 高価な鏡
3. 高価な磁石
・生徒の回答となぜそう思ったのかを聞く。
 ・ビデオの続きを流す。
6.クイズの解答と解説。(原子時計の話)
ビデオを止め、パワーポイントで原子時計の説明をする。
・ビデオの続きを流す。
7.クイズ2
Q2.GPSは実は、ある必要にせまられて開発されました。そのきっかけは何でしょうか?
1.道に迷う人が多かったから
2.救急利用のため
3.戦争の時に兵隊の位置をしるため
・生徒の解答となぜそう思ったのかを聞く。
・ビデオの続きを流す。
8. クイズの解答と解説。(軍事利用の話)
・ビデオを止め、パワーポイントで軍事目的についての説明をする。
 ・講師からの説明。「軍事利用目的の物は大変精度が高い。一般に使われているものは、軍事でつかわれているものより、精度を落とした物である。」
・ビデオの続きを流す。
9.仕事で一番楽しいところ・メッセージ

(5)・GPS衛星の問題点に触れ、それを克服する技術である、準天頂システムについてのビデオを流す。
【ビデオの内容】
1.担当者紹介(岸本氏)
2.仕事紹介
3.準天頂システムの説明
4.どんなところで役に立つか
・ビデオを止め、パワーポイントで説明する。
 ・問題点と、日本でのGPSの需要の高さから、準天頂衛星の開発が行われていることを説明する。研究中の衛星の軌道(なみだ型、八の字型)の紹介をする。
・ビデオの続きを流す。
5.仕事で楽しいところ
6.メッセージ
・講師からの話。(今までに打ち上げられてきた衛星の種類について。気象観測関係のものと、通信関係のもの、そしてJAXAが一番力を入れいている宇宙観測関係のものといった人工衛星がある。)

(6)学習のまとめ、次回の予告をする。

(3)GPS機能付携帯電話体験





(4)講師からの説明









授業内容(2時限目)
実施単位 2時限目
テーマ GPSの活用例の紹介と、GPSの活用法を考える
実施場所 コンピュータ教室
実施時間 50分
講師 独立行政法人宇宙航空研究開発機構
広報部教育グループ
中川 人司
使用教材 (1) オリジナル教材ビデオ(宇宙と先端技術〜GPSの活用〜) (2) Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント(教材ビデオ補足説明用)
(3) Microsoft(R) Office Word(R)ファイルドキュメント(活用法アイデア記入例)
(4) Microsoft(R) Office Word(R)ファイルドキュメント(活用法アイデア記入用)
授業の進行・内容 授業の様子
■進行
(1) パワーポイントを使い、JAXA講師から新しいGPSの活用法を考えてみてほしいと依頼し、そのために今回は現在のGPS活用例について学ぶことを伝える。
(2)現在のGPSの活用(@路線バスでの活用、Aさまざまな活用)についての教材ビデオを流した。教材ビデオを適宜一時停止し、パワーポイントを使って、教材ビデオの内容について、補足の説明を行う。
(3)講師から、宇宙飛行士の訓練の中でGPSが活用されている例を紹介する。
(4)課題テーマを繰り返し、GPS活用法アイデアの例を見せる。
(5)グループ単位でGPSの活用法のアイデアを考える。講師は、机間指導をしながら、生徒のアイデアにアドバイスを行う。
(6)学習のまとめを行い、次回はアイデアを発表してもらうので、発表の準備をしてきてほしいことを告げる。

■内容
(1) ・JAXA中川氏の紹介。
・宇宙開発の過程から生まれる技術が日常生活に役立っているものがある(例えばマジックテープ)ことなどに触れる。
・パワーポイントを使い、新しいGPSの活用法を考えてほしいと告げる。
・活用法を考えるにあたり、現在のGPS活用例について紹介することを告げる。

(2)・路線バスでの活用についての教材ビデオを流す。
【ビデオの内容】
1.導入のきっかけと仕組み
2.システム
・ビデオを止め、パワーポイントで説明を加える。
3.システムのメリット
4.クイズ
Q.このシステムが全く使えない場所があります。それはどこでしょうか?
1.羽田空港
2.東京湾アクアライン
3.新宿
・生徒の解答と、なぜそう思ったかを聞く。
・ビデオの続きを流す。クイズの解答と解説。(アクアラインでは使えないという話)
・ビデオを止め、解説に補足を加える。
・ビデオの続きを流す。
5.生徒たちへのメッセージ
・その他のさまざまな活用を紹介することを伝える。
・その他の活用についてのビデオを流す。
 【ビデオの内容】
1.自己紹介
2.物流システムの話
・ビデオを止め、パワーポイントで説明を加える。
・ビデオの続きを流す。
3.船の位置確認システムの話
・ビデオを止めパワーポイントで説明を加える。
4.災害時の活用の話(事前調査、災害発生時)
5.メッセージ
・ビデオを止め、パワーポイントで説明を加える。

(3)JAXAの仕事の中でGPSが活用されている例の紹介2点。1点目は、2000年2月に、宇宙から地上の地形を調べ、地図を作った際、GPSが使われたことについて。補足として、GPSには相対性理論が使われていることについて話す。2点目は、宇宙飛行士の特殊訓練(海の中に宇宙ステーションのモジュールと似たものを作り、船外活動の訓練を行ったり、野外での訓練を行ったりする)の際に、宇宙飛行士1人1人にGPSを持たせる。これにより、事故の時にすぐに対処できるように、1人1人がどのような行動をとったか確認できるようにしている。
(4)・課題を伝え、コーディネーターから、発表形式にそった形で、活用例を1つ紹介する。(家庭訪問の際の活用)
・活用例を考える際のポイント(場面を考える。目的を考える。方法を考える。)を説明する。ワークシートを配布する。

(5)・準備にとりかからせる。
・講師は、机間指導をしながら、生徒のアイデアにアドバイスをする。

(6)・学習のまとめを行い、次回はアイデアを発表してもらうので、発表の準備をしてきてほしいと告げる。
・JAXAの情報がほしい人は、ホームページをチェックしたり、「JAXAi」に見学に行ったりしてほしいと伝える。
・発表はパワーポイントか、画用紙で行うことを告げる。

(1))講師自己紹介



(5)アイデアを考える生徒の様子








■改善点
1時限目はコーディネーターであるNPO法人企業教育研究会のスタッフが主となり授業を進めたが、本授業からは、産業界の講師主導の授業の流れとし、スタッフはTTとして授業に関わった。



授業内容(3時限目)
実施単位 3時限目
テーマ GPSの活用法アイデアを発表する
実施場所 コンピュータ教室
実施時間 50分
講師 独立行政法人宇宙航空研究開発機構
広報部教育グループ
中川 人司
使用教材 (1)Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント(課題確認
授業の進行・内容 授業の様子
■進行
(1) 講師は、パワーポイントで、新しいアイデアを発表してもらうことを告げ、準備にとりかからせる。
講師は、机間指導をしながら、生徒のアイデアにアドバイスをする。
(2)グループごとに発表をした。講師は、1 グループの発表ごとに感想、アドバイスをする。また生徒の中からも質問を受け付け、また発表内容に対しより深めるための質問も行う。
(3)最後に講師からまとめや感想を伝え、生徒から質問などを受けつける。

■内容
(1)・導入として、先週1週間から今日までに宇宙で起こったことについて話す。(先週は国際宇宙ステーションに5人の宇宙飛行士が滞在していたが、今日は2人になっている。というのは、国際宇宙ステーションには常時2人が滞在していることになっていて、先日、滞在の交代をするために‘ソユーズ’がドッキングして、3人が訪れていた。無事交代し、現在新たな2人が宇宙ステーションに滞在している。)
・また、週末に新潟で地震があった点に触れ、国土地理院では、GPSを利用した計測観測を行っており、今回の地震に関する地殻変動のデータが発表されたニュースを紹介する。
このデータから、GPSでは、地中のことも分かる点、また、0.5cm単位の計測も可能である点、平面位置だけでなく立体位置の計測も可能であるといった点が分かることを説明する。
・発表の準備のまとめをすることを伝える。机間指導をしながら、生徒のアイデアにアドバイスをする。

(2)・グループごとに発表する。
●「空港で、荷物がなくならないように、荷物にシール型GPS受信機を付けるアイデア」(劇を交えて発表)
■講師からのコメント
  「寸劇も楽しく、よいアイデアでした。実現性は高い。荷物がなくなった話を聞いたことがあるので、これがあれば安心。バックに埋め込んでしまい、自分ので管理することで、空港だけでなく、現地でも自分で自分の荷物の管理が可能になる。」
●「親が子どもの居場所を知ることができるように、子どもの荷物にGPSを付けるアイデア」
■講師からのコメント
  「子どもが端末を人に貸したり、どこかに置いてきたりしてしまうといった点も考えるとよい。すぐに利用可能で、需要の高いアイデアであると思う。」
●「ショッピングビル内で、行きたいお店にたどり着けるよう、GPSで検索するアイデア。」
■講師からのコメント
「商業的な視点から、こういったサービスはお店が出すのか、個人が出すのか、といった点を考えるとおもしろい。お店側からのサービスとするなら、ある範囲内にいる人に、タイムサービスの情報を送るといったことも考えられる。商業的に行う際のハードルになる部分も考えるとよい。」
●「子どもの居場所を見つけるためにGPSを活用するアイデア」
■講師からのコメント
似たようなアイデアが出てきたので、生徒の中から質問がないかを聞く。
「子どもが誘拐されたとき、端末を取り上げられてしまったらどうするのかといった点も考えるとよい。‘オレオレ詐欺’で、「子どもを誘拐した」と言われても、位置情報が確認できれば、詐欺だと分かる。こういったところでもGPSは利用できるのではないか。
人の位置情報を管理していくことは、よいことなのかも、考えてほしい。プライバシーの問題や、悪用されるおそれなども考えてほしい。」
●「ぺットがいなくなった時、見つけられるように、ぺットにGPSを付けるアイデア。」
■講師からのコメント
  「野生動物の生息地の検証をする際に、動物につけることがすでに行われている。」
  講師「もし犬を飼っていたら、いくらぐらいだっ
たらこういったシステムを付けたい?」
  生徒「5000円くらいなら付ける。」
  「商業的に利用されていくには、コストの面も考えなければいけない。あまりに高いと広まらないかもしれない。
希少価値の高い、イリオモテヤマネコや鯨などにも応用すると、研究が進むだろう。野生動物につけるには、いつどうやって付けるのかというのは問題ですね。
最近のニュースで、米粒位のマイクロチップを体に埋め込むという研究が進められている。マイクロチップには、個人情報を入れておき、事故で病院に運ばれた際に、その情報を活かして治療を行うといった活用が考えられている。そのマイクロチップをGPSと連合させ、位置情報も把握できるようにするということも考えられる。
しかしやはり、プライバシーの問題は考えなければならない。」
●「ぺットの犬が逃げてしまった時、見つけられるようにGPSを活用するアイデア。」
■講師からのコメント
  生徒の中から質問はないか聞く。
  生徒「犬以外の動物でも付けられるのですか?」
  発表者「猫、牛、いろいろ付けられると思う。」
  生徒「犬が動き回って、情報が来た場所にいったら、犬が別な所に移動してしまっているのか。」
  発表者「ぺットの動きを予測しながら先回りする。」
講師「商業的にする場合、どんな問題があると思うか?」
  発表者「首輪につけてもとれないくらいに、あるいはぺットが拒絶反応しないくらいの(不快感をもたない程度の)大きさにしなければならないと思う。」
  講師「そうだね。軽ければいいというのではなく、ぺットの体に電磁波が影響しないのかどうなのか、といった点も考える必要があるね。」
  講師「これがいくらくらいなら買う?」
  発表者「1万円くらい。」
  講師「そういった点からも考えていく必要があるね。」
●「車にGPSで目的地を指定し、自動運転で目的地に行けるという未来のアイデア」
免許がいらなくなる、あるいはある程度お酒を飲んでいても車に乗れるようになるといったようにきまりの面も変わるかもしれない。
■講師からのコメント
  「これもすでに研究がされているものだが、出回るのはいつ頃になるかは分からない。カーナビを応用すれば、車の自動運転は可能であろう。ただ、カーナビも、古いものだと、道じゃないところに道があったりするといった点も考えなければならない。
車の自動運転では、車自体にカメラを付け、障害物まで何メートルといった機能を活用する方法も考えられている。
この2つを組み合わせていくと、よりよいものができるのかもしれない。将来に夢のある提案だった。」
●「漫画本を無くした場所を把握できるようにGPSを活用するアイデア。」
■講師からのコメント
  「物にGPSを付けて、物がどこにあるかを把握するというものは、価格の高い物から実用されていくだろう。車などではもう開発されている。
コストが安くできるようになれば、いろいろな物にも実用されていくだろう。このシステムを実現するためにはどうしたらよいかを考えていってほしい。」

(3)・総括としてのコメント
「自分たちが考えたものを、社会に広めていくにはどんなことが必要なのか、考えてみてほしい。
GPS以外でも、先進分野の科学について、学んで、社会に役立ててほしい。
新鮮なアイデアで、新しい利用方法を提案していくと、社会がより豊かになっていく。若いみんなの力が必要とされているので、がんばってください。」
・ あいさつをして終了。
(授業後質問を受け付ける。)

(2)生徒の発表











授業の成果
 本授業では、GPSを一例とした先端情報技術を、生活の中で身近なものとして感じられるようになることが大きなねらいであった。これについては、実際にGPS機能付の携帯電話を体験した点、例を身近な物の中から提示した点、身の回りの生活を振り返りGPSの活用法のアイデアを考えたといった点を通して、多くの生徒がGPSシステムについて身近に感じてもらえたと考えられる。CEC指定アンケート(生徒用)の結果でも、質問7「今回の授業のテーマに興味をもちましたか。」において、17人全員が「強い興味を持った」(5人)、「興味を持った」(12人)と興味が高まったと回答している。
また、産業界の講師による授業の成果として、CEC指定アンケートの問9「講師による授業を受けて、普段の授業と違うことがありましたら記入してください。」の項目では、「色々な専門家にきてもらい、くわしく授業がうけられて、たのしかった。」「その道のプロが講師として来てくださるのは実感の湧き上がりが2倍・3倍と違ってくる」といったように、17人中8名が講師による専門的な知識や詳しい説明へのプラスの評価に触れている。専門的な知識といった点で、産業界の講師による授業の成果は大きいと言える。
また、本授業は参加型で楽しかったという意見もあった。生徒のアンケート回答の中には「授業が能動的に進んでいった」といった点にふれているものもあった。これは、携帯体験や、グループでのアイデア検討、またそれをプレゼンする活動とそれに対し講師から質問やコメントをもらう活動が、生徒にとって主体的な授業に感じられる要因になったと考えられる。
さらに、本クラスの授業の3時限目には、他学年の生徒1名が特別に参加した。その生徒はJAXAに興味を持っており、主体的に授業に参加し、講師に仕事について積極的に質問をしていた。このことは、その生徒はもちろん回りの生徒にとっても、社会で働くことを意識するといった大きな意味があったと考えている。あるいは今回、教材ビデオの中で、出演しているJAXAの職員から、仕事のやりがいや高校生へのメッセージをもらい、生徒に見せている。キャリア教育の意味からも産業界の講師による授業、産業界の方が関わる授業の成果は大きかったと考えられる。
これにより、生徒が考えたGPSの活用アイデアも、GPSの仕組みを理解し、生活を振り返って考えられた物となった。また、生徒は授業に積極的に参加しており、アンケートからは「楽しかった」「またこういった授業を行いたい」という声も多く、今回の授業は生徒のやる気を引き出せるものであったと言える。

生徒の作品(空港での手荷物管理の際の活用)
場面、目的、方法について
授業実施環境
・パソコン (Windows(R) XP・Windows(R) 2000)
・プロジェクタ
・スクリーン
・ビデオカメラ(Sony  DigitalHandycam DCR-TRV17 NTSC)
・GPS機能付携帯電話 (au EZナビウォーク機能付)
・実物投影機

※本クラスでは、GPSの活用法アイデアの発表の際、パワーポイントでの発表と画用紙を用いての発表から各グループが選択することにし、数班がパワーポイントでの発表を選択した。
※画用紙での発表時は、実物投影機を活用した。
使用機材
教材1 宇宙と先端技術〜GPSの仕組み・準天頂システムについて〜
教材仕様 RMV形式
内容 GPSの仕組みについて、またJAXAが現在開発中の技術である「準天頂衛星システム」について、JAXAの筑波研究センターを訪問し、研究者・開発者に取材しまとめたもの。
内容は次の通り。
○仕組みについて
1.担当者紹介(内村氏・中村氏)
2.仕事紹介
3.GPSの仕組みについて
4.GPS衛星の個数について
5.クイズ1
Q1.GPS衛星にはひとつだけ日常我々が使っているものよりとっても高価なものが使われています。それはなんでしょうか?
1. 高価な時計
2. 高価な鏡
3. 高価な磁石
6.クイズの解答と解説。(原子時計の話)
ビデオを止め、パワーポイントで原子時計の説明をする。
7.クイズ2
Q2.GPSは実は、ある必要にせまられて開発されました。そのきっかけは何でしょうか?
1.道に迷う人が多かったから
2.救急利用のため
3.戦争の時に兵隊の位置をしるため
8. クイズの解答と解説。(軍事利用の話)
9.仕事で一番楽しいところ・生徒たちへのメッセージ
○先進技術について
1.担当者紹介(岸本氏)
2.仕事紹介
3.準天頂システムの説明
4.どんなところで役に立つか
5.仕事で楽しいところ
6.生徒たちへのメッセージ
教材2 宇宙と先端技術〜GPSの活用〜1時限目
教材仕様 Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント (19枚)
内容 「GPSの仕組み・準天頂システムについて」オリジナル教材ビデオの補足説明用の資料。
GPSの仕組みについて、一点の位置情報が決定する理論や、衛星の数について、
また、日本独自に開発を進めている、準天頂衛星システムについて、教材ビデオの内容のまとめと補足。
教材3 GPS機能付携帯電話取扱説明書
教材仕様 Microsoft(R) Office Word(R)教材:A4 1枚
内容 auのGPS機能付の携帯電話(EZナビウォーク)の、ナビゲート機能、現在位置の確認、QRコードを利用した目的地検索などの使い方を簡単に示したもの。
教材4 宇宙と先端技術〜GPSの活用例〜
教材仕様 RMV形式
内容 GPSの活用例について、路線バスでの活用をバス会社に取材した内容と、その他さまざまな場面での活用についてを、GPSシステムの開発企業に取材した内容をまとめたもの。
内容は次の通り。
○路線バスでの活用
1.導入のきっかけと仕組み
2.システム
3.システムのメリット
4.クイズ
Q.このシステムが全く使えない場所があります。それはどこでしょうか?
1.羽田空港
2.東京湾アクアライン
3.新宿
5.生徒たちへのメッセージ
○さまざまな活用
1.自己紹介
2.物流システムの話
3.船の位置確認システムの話
4.災害時の活用の話(事前調査、災害発生時)
5.生徒たちへのメッセージ
教材5 宇宙と先端情報技術〜GPSの活用〜2時限目
教材仕様 Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント (13枚)
内容 「GPSの活用例」オリジナル教材ビデオの補足説明用の資料。
GPSを活用したシステムについて、教材ビデオの内容のまとめと補足。
教材6 宇宙と先端情報技術〜GPSの活用〜3時限目
教材仕様 Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント (5枚)
内容 課題の提示と、発表方法の確認。
教材7 GPSの活用法を考えよう(記入例)
教材仕様 Microsoft(R) Office Word(R)教材:A4 1枚
内容 2時限目の後半、生徒が実際にGPSの活用法をグループ単位で考える際に参考にする。
・GPSの活用法を考える際のポイント整理
・例の提示
教材8 GPSの活用法を考えよう(記入用)
教材仕様 Microsoft(R) Office Word(R)教材:A4 1枚
内容 2時限目の後半、生徒が実際にGPSの活用法をグループ単位で考える際に参考にする。
・GPSの活用法を考える際のポイント整理
・アイデア記入欄
授業協力メンバー

授業実施担当者
1 時限目

独立行政法人宇宙航空研究開発機構
渡辺 勝巳
授業実施担当者
2・3時限目
独立行政法人宇宙航空研究
中川 人司
授業補助 NPO法人企業教育研究会
塩田 真吾
資料写真撮影 NPO法人企業教育研究会
石井 和恵
資料ビデオ撮影 NPO法人企業教育研究会
中島 隆洋
授業の感想 授業実施者
・ それぞれが持つノウハウを学校現場で授業をできる機会を利用して、宇宙教育の推進に役立てたい。
・ 教材ビデオがよくできていた。

担任の先生
・ 生徒は4月からアイデアを考えるという授業を行ってきたため、アイデアがよく出ていた。
・ (今回はコーディネーターとの打ち合わせが中心だったので)講師と教師の直接の打ち合わせが必要であろう。

生徒
・身近なものが例に出ていて、とても理解しやすかった。
・最初に(1時限目に)GPSについて学ぶ事によって、今後、どんなことができるようになりそうか、予想もできて、分かりやすかったと思う。(活用法アイデアにつながった。)
・途中で絵やGPSやPCを使っての説明だったので、すんなり理解することができてわかりやすかった。
・興味を持っていても情報などが不確かな場合があるので、その道のプロが講師として来てくださるのは実感の湧き上がりが2倍・3倍と違ってくるのですごくいい経験になるので、是非次もこういった授業を受けたい。
・受動的な授業ではなく、いろいろ自分たちで考えたりして能動的に授業が展開していったこと(が普段の授業とは違った)。
・講師による授業では普段とちがい、くわしく説明してくれた。実演などがありわかりやすかった。
・宇宙規模の課題でとてもおもしろかった。
・普段の授業では学ぶことのできないことがたくさん体験できて、とても新鮮でした。

授業情報提供者
・体験を通してGPSの仕組みを学んだので、興味を持ちながら学ぶことができた。
・アイデアを人に見てほしいという気持ちが強く表れていたので、よい発表だった。

オブザーバ
・情報は社会と切り離しては学べないので、今回は正に社会とのつながりから授業が構成されていてよかった。
・先進技術を扱う部分がもっとほしかった。
・グループ活動で生徒の学び合いの姿が見られ、よかった。
・1時限後にGPSのしくみを簡単にまとめたA41枚くらいを配布することで理解深まる。
・教材が練られていた。教材ビデオの後のPPTでの反復説明で、理解度があがった。