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実践事例

『CGアニメ入門』−CGアニメーションをつくろう−
テーマ名
『CGアニメ入門』−CGアニメーションをつくろう−
実施学校情報
学校名 羽衣学園高等学校
学年 高校3年生
生徒数 40名
実施日 2004年11月1日(金)
合計授業時間 90分
教科・単元 教科:情報A
単元:(3)情報の統合的な処理とコンピュータの活用
授業概要 (株)ドーガが開発したCGソフト「DOGA-E」シリーズを用いて短時間のあいだにCG制作の一端を体験する。

1時限目:パワーポイント教材「CG入門」および(株)ドーガの過去のCG映像作品を用いて「CGアニメとは」「パーソナルCGアニメの現状」「CGアニメ制作の流れ」についての講義を行った後DOGA-E1を用いて「空を飛ぶもの」というテーマでモデリングの自由制作を行う。自由制作中は講師および補助講師が生徒に適宜アドバイスを与える。

2時限目:DOGA-E2を用いて1時限目に制作したモデルに動きやカメラワークをつけてアニメーションの自由制作を行う。アニメーションのレンダリング中にプロのCG映像作品およびアマチュアCGコンテスト入選作品を鑑賞する。最後に補助講師が生徒全員のアニメーションを繋いで上映会を行う。
授業のねらい 今日、日本の産業界においてコンテンツ産業は最も重要視されているものの一つである。なかでもCG映像制作は映画やゲームなどで幅広く使用され花形産業となっている。しかしながら現在CG映像業界で使用されている主なCGソフトは操作が複雑で習得にも時間がかかり、CG制作を体験するために“少しだけ操作を覚える”ということが難しいのが現状である。
本授業では(株)ドーガが開発したCGソフト「DOGA-E」シリーズを用いて短時間のあいだにCG制作の一端を体験することで、生徒が今後職業を決定していく過程においてコンテンツ制作産業に興味を持ち、CG制作がその選択肢の一つとなることを目的とする。
また今回の授業では高等学校学習指導要領の情報A(3)「情報の統合的な処理とコンピュータの活用」に基づきCGの基礎、カメラワーク、視覚効果など映像表現の基礎技術の理解とともに3DCGにおいて3次元情報がどのように扱われ、コンピュータがデザイン分野においてどのように活用されているかを学ぶ。さらに自由制作を通して自らの創造性を生かした“モノづくり(デザイン)”を体験することで、その楽しさを知ってもらうことをねらいとした。


授業内容(1時限目)
実施単位 1時限目
テーマ 導入およびCGアニメ制作1(モデリング)
実施場所 パソコンルーム
実施時間 45分
講師 株式会社ドーガ 鎌田 優
使用教材 (1)CGアニメ入門ソフト「DOGA-E1」
(2)Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント
(3)株式会社ドーガ CG作品映像DVD

授業の進行・内容 授業の様子
■進行
(1)「CGアニメとは」「なぜCGアニメを始めたか」
パワーポイントおよび株式会社ドーガの過去のCG映像作品を上映しながらの講義(6分)

(2)「パーソナルCGアニメの現状」
パーソナルCGアニメーション『ほしのこえ』を取り上げたNHK朝のニュースの録画を上映しながらの講義
(6分)

(3)「CGアニメ制作の流れ」
パワーポイントを使用しながらの講義
(8分)

(4)「CGアニメ制作1」
DOGA-E1を使用しての自由制作
(25分)

■内容
(1) 「CGアニメとは」「なぜCGアニメを始めたか」
CGアニメとは広い概念ではコンピュータを使って映像をつくること。最近ではあらゆる映像にCGアニメが使われるようになっている。
学生時代に実写での映像制作を始めるが、ものすごく大変な作業であることに気づく。そこでもっと簡単に映像制作を行う方法はないものかと考えていたときCGアニメと出会う。

●生徒への質問
鎌田「CGアニメは従来のアナログの実写と比べどこが優れているか?」
生徒「実際にできないことができる」
鎌田「模範てきな解答ありがとうございます(笑)。そうですね実際にはないモノでもCGなら作ることができます。それにデータをいろいろな形で使いまわすことができるというのも大きなメリットです。」

(2)「パーソナルCGアニメの現状」
これからの日本の重要な産業であるコンテンツ制作の中心になるのではと注目されている分野。数年前に新海誠氏が全てを一人で制作した「ほしのこえ」が大ヒットしたことは有名。NHKのニュースでも取り上げられていた。

(3)「CGアニメ制作の流れ」
CGアニメ制作を人形劇の制作に例えながら「モデリング」「モーションデザイン」「レンダリング」「その他」
の流れに沿って説明。

(4)「CGアニメ制作1」
「空を飛ぶもの」をテーマとしたモデルの自由制作。
最初に講師が簡単に一連のモデリングの操作を実際に行い、それに続いて生徒が自由制作に入る。講師及び補助講師はその間生徒の机の間を廻り質問に答えたり、アドバイスを与えたりする。作品が完成したら一旦全てのデータをサーバに保存する。

(1)「CGアニメとは」を解説する鎌田講師



(4)-1モデリングをする生徒


(4)-2人間型の物体の制作は難しい・・・


(4)-3モデリング指導(ムービー)

−授業映像−

(4)-4モデリング指導(ムービー)
−授業映像−


■改善点
前回よりさらに時間配分のバランスをとるよう心がけた。



授業内容(2時限目)
実施単位 2時限目
テーマ CGアニメ制作2(モ−ションデザイン)
実施場所 パソコンルーム
実施時間 45分
講師 株式会社ドーガ 鎌田 優
使用教材 (1) CGアニメ入門ソフト「DOGA-E2」
(2) CGアニメコンテスト入選作品映像DVD
授業の進行・内容 授業の様子
■進行
(1) 「CGアニメ制作2」
DOGA-E2を使用しての自由制作

(2)「CGアニメ作品鑑賞」
レンダリング待ちの間にプロおよびアマチュアCGコンテストの入選作品を鑑賞

(3)「生徒作品の上映」
完成した全員のCGアニメーション作品を鑑賞する。

■内容
(1) 「CGアニメ制作2」
1時限目に完成したモデルに動きをつける。テーマは「空中レース」で長さは5〜10秒程度。背景となる空間データは講師側で準備したものを使用する。サーバに保存されている他の生徒の作品も自由に使ってレースをさせ、アニメーションを制作する。最初に講師が簡単に一連のモーションデザインの操作を実際に行い、それに続いて生徒が自由制作に入る。講師及び補助講師はその間生徒の机の間を廻り質問に答えたり、アドバイスを与えたりする。モーションが完成したらレンダリングの作業に入る。
(2)「CGアニメ作品鑑賞」
モーションが完成したデータのレンダリング作業を行う間にCGアニメ作品「ほしのこえ」の一部および2003〜2004年度CGアニメコンテスト入選作品を数本鑑賞する。レンダリングが上がった全員の完成アニメーションを補助講師が繋ぎ合せてBGMを付け1本のムービーに仕上げる。

(3)「生徒作品の上映」
完成した全員のCGアニメーション作品を鑑賞する。
まとめ「CGアニメが簡単に作れるようになったからと言ってそれは映像作品が簡単に作れるということではりません。単にソフトの使い方が簡単になっただけなのです。CGというのは実は映像を制作する一つの道具に過ぎないので、これをきっかけに映像制作に興味を持っていただけると幸いです」


(1)-1モーションの作成。みんな真剣。


(1)-2モーション作成指導(ムービー)

−授業映像−

(1)-3モーション作成指導(ムービー)

−授業映像−


(3)-1生徒作品の1カット


(3)-2生徒作品の1カット


(3)-3最後に自分の名前の入ったスタッフロールが出て感動!

■改善点
前回モーションデザインのカメラ設定のインターフェイスが難しくうまくいかなったので、今回はカメラには動きを付けずにアニメーションを作成するように指導した。それにより前回より作業の混乱は少なくなった。



授業の成果

(1)目標の達成度
生徒・先生・オブザーバー (授業参観者)に対して行ったアンケート結果からみて目標である「CGの基礎およびカメラワークや、視覚効果など映像表現の基礎技術の理解」は、ほぼ達成できたのではないかと考える。アンケートの「授業のどのようなところが楽しかったですか?」に対する自由記述として「自分で考えて作ったモデルが動くところがすごく良かった」という内容の回答が多かったことからも“モノづくり(デザイン)”の楽しさを感じてもらえたのではないかと考える。

(2)産業界の講師としての効果
CG制作における表面的な技術については教材であるDOGA-Eシリーズを用いることでCGの知識があまりなくても教えることは可能である。しかしオンタイムなCG技術の動向や流行などはやはり産業界に身を置いていないと教える事は難しい。それは生徒に見せる作品例の選び方などにも現れてくる。また実際に仕事として作品を作っているからこそ、たとえ基礎的、表面的な技術を語っていても机上の理論ではなく、言葉に重みがあり、生徒はそれを敏感に感じ取っていたのでないか。それこそが産業界の講師が授業を行うことの最大の効果であると感じた。

授業実施環境
サーバーPC(1台)
・DOGA-Eシリーズをインストール
・講師がDOGA-Eシリーズを操作
・生徒のモデルオブジェクトデータおよび
  アニメーションデータを保存
・(株)ドーガCG作品DVDおよび
  パーソナルCG作品DVDを上映

プロジェクタ
       

クライアントPC(生徒人数分)
・DOGA-Eシリーズをダウンロードおよび操作
・他の生徒のモデルオブジェクトデータをダウンロード
・完成したモデルオブジェクトデータおよび
  アニメーションデータをサーバーへアップロード






使用機材
教材1 DOGA-E1
教材仕様 CGアニメ入門ソフト
内容 「DOGA-E1」は、CGアニメ入門ソフト「DOGA-Eシリーズ」のファーストステップ。物体の形状を作成する(モデリング)ソフト。
教材2 DOGA-E2
教材仕様 CGアニメ入門ソフト
内容 「DOGA-E2」は、CGアニメ入門ソフト「DOGA-Eシリーズ」のセカンドステップ。物体やカメラの動きおよびライトの設定を作成する(モーションデザイン)ソフト。
教材3 CGアニメ入門
教材仕様 Microsoft(R) Office PowerPoint(R)ファイルドキュメント(15枚)
内容 CGアニメ−ションの意味や優れている点、制作における基本的な流れ、さらに話題のパーソナルCGアニメーションについてなどを解説。
教材4 株式会社ドーガ CG作品映像
教材仕様 DVDビデオ
内容 株式会社ドーガが過去に制作したCG映像作品集
教材5 CGアニメコンテスト入選作品映像
教材仕様 DVDビデオ
内容 PROJECT TEAM DoGA主催CGアニメコンテスト入選作品集
授業協力メンバー
授業実施担当者 株式会社ドーガ
鎌田 優
授業実施補助 株式会社ドーガ
高津 正道
授業実施補助 株式会社ドーガ
森山 昇一
資料写真撮影 有限会社カヤ
平井 良信
資料ビデオ撮影 有限会社カヤ
佐野 一郎
授業の感想 授業実施者
この授業も3回目で慣れてきたこともあり流れはよかったと思う。ただ最後に「CG制作が面白かった人」の問いに上がった手が少なかったのはちょっと残念。やはり(デザイン系でなく)普通科の生徒だとこれぐらいの反応なのだろうか。でも生徒の作業中の反応を見る限りは楽しんでいたようではあったのだが。またこの学校は設備がとても充実しているので授業の流れもスムーズでテンポよく行けたのも良かった。

担任の先生
回を重ねるごとにこの授業も洗練されてきた感がある。生徒は皆熱心に制作に取り組んでいた。大変良い授業だった。今後もこのソフトを使用したカリキュラムを計画しています。

生徒
・初めてすることばっかで驚きました。自分が思う通りに動いてくれてうれしかった。意外とかんたんなんだなぁと思いました。
・ CGを作るっていう過程は全体的に楽しかったけど、一番楽しかったのはパーツを組み合わせてどういう風にするか考えること。
・いろんなパーツをくみあわせて一つの物をつくるのが楽しかった。自分たちで作ったものをくみあわせて一つのものができたのをみてすごいと思った。

授業情報提供者
生徒はみな楽しんで取り組んでくれていた様子だったのに最後の「CG制作は面白かったですか」の問いに対する反応が良くなかったのは意外だった。普通科、3年生(進学間際)、女子というシチュエーションの影響なのだろうか。もっと時間があればメカではなく生物系のモデリングを積極的に行うことができ、そうすればまた反応も違ったかもしれない。

オブザーバ
・作品、製作だけでなく、コンテンツによっては他教科の説明にも生かせる。内容の濃い汎用性の高いものでした。部分的にも教員では考えられない説明も多々あり大変参考になりました。特に最後のまとめも見事でした。
・ソフトウェアが素晴らしい。それが殆どすべてですね。開発者(側)による授業というのも希少で価値が高いと思う。で切れが良く、達成・到達度がはっきりしていて、大変よかった