動き始めるとコンクールの魅力が分かる。
とりわけ「マイタウンマップコンクール」には思い入れがある。かつて3年間中学校長を務めていたが、その学校ではいずれの年もマイタウンマップコンクールへ応募し、入賞することができたからだ。
務めていたのは新興住宅地にある学校で、学区のごく一部に昔の集落が残っているという地だ。全国各地から集まってきた人たちによって構成された街だ。失礼だが、子どもも大人も、この街には「マイタウン」と称するほどの愛着を持っていないのではないか、そんな感じを持っていた。
だからこそ校長として、この地を「マイタウン」という呼びたくなるような子どもを育てたいと思った。「総合的な学習の時間の成果をマイタウンマップコンクールへ応募する」というゴールを設定した。正直なところ、子どもたちの地域研究に対する意欲付け・目標づくりとして、コンクールを使わせていただいたというわけだ。
さて、ゴールを設定したものの、初めはどうなるか、まったく予測がつかない状態だった。ところが課題を「桃花台百話づくり」と決めて、この土地が住宅地に変容する前の様子を地域のお年寄りに聞き始めてから、子どもたちの様子は俄然変わってきた。お年寄りのこの地への思いを直接聞き、子どもの心が動き出したのだ。勢いが出た子どもたちは凄い。優れた教師の指導もあって、子どもたちは一気にゴールまで突っ切った。初年度は、見事、共同通信社賞を獲得した。
次年度も次次年度も、子どもたちの勢いは止まらなかった。3年目は、県と市が出資して出来た新交通システムが15年目に廃止になった年だ。幼い頃から身近にあった鉄道がなくなるという事実は子どもたちにとって衝撃的な事実である。子どもたちの思い入れは強い。私たちの手でこの地にこのようなシステムがあったことを残しておかなければいけないという強い責任を感じていた子どもたちが多くいた。
3年間の取組を通して、いつしか「マイタウン」という言葉がしっくりいくようになった。コンクール3年連続入賞、続いて、おやじの会も入賞と続き、「マイタウン」と言えば「マイタウンマップコンクール」の省略と捉えられるほどになった。とりあえず動いてみて本当に良かった。
皆さんに伝えたい。とにかく動き始めればよい。動き始めると、このマイタウンマップコンクールはなんとも魅力的なものであるということに気づくはずだ。
(2010.11.29/めるまが M・A・P Vol.19 掲載)