徳島県・阿南市「伊島」の旅



このシリーズ取材は、受賞者の誰とも連絡を取らずに訪問することをコンセプトとしているが、この島にあってはそういうことも意味をなさないので、先生には事前に島に行くことを連絡してあった。
途中から校長先生のはからいでド素人私も釣りに参戦。

夜釣り大会

 台風の中、島へ渡ることを強行したのには理由があった。この日の夜に伊島小学校の夜釣り大会のイベントが予定されていたからだ(※)。旅館に荷物をおろさせてもらって、ひと休みしてから新波止と呼ばれる場所へむかった。

 校長先生をはじめ、5人の先生方が準備を開始。釣竿の先に小さな籠が付けられていて、その籠で餌(アカアミ)を汲むように入れ、岸壁から海中に垂らす。糸には複数の針がついており、餌の入った籠が海中に入った瞬間に散らばった餌に寄ってきた魚を釣り上げるらしい。やがてお父さんたちに連れられて、子供たちも集まってきた。今年こそ我が家が一番と意気込むお父さんたちによって、それぞれの仕掛けの説明が始まった。

6時になった。全校児童4名が整列して開会式。つづいて開始の合図がかかる。私は正直なところ、この場所でそんなに釣れるというイメージを持っていなかった。がっ、なんと釣り糸を海に垂らしてから、1匹目が釣り上がるまで1分も必要としなかった。もうその後は、どの家族ともどんどん糸を上げていく、まさに「入れ食い」とはこういう状況を言うのだろう。しつこいようだがここは決して釣堀ではない。
 この日の釣果は大きさと量などで争い、1時間ほどの間で用意してきたボックスの中は満杯。どの家も大漁だ。

 途中からは卒業生や地域の人達も参加して盛大なイベントとなって大成功に終わった。私には子供はもちろん、お父さん達の方がやる気満々(共に楽しもうとしていた)に映った。近年、このような地域と学校の良いコラボレーションがコンクール入賞作品の中に数多く見受けられるようになっている。それぞれの地域性に根ざしてもっと拡がって欲しいと、このコンクールを見る全ての人が願っているはずだ。

 この日の光景を見ながら、ふとこんな話が頭に浮かんだ。

「情報教育というのは決して、コンピュータの前に子供を縛りつけるものじゃなくて、「魔法の力」を生かして、いかにコンピュータから離れて行動させるかが、真の狙いだと思います。その意味が子供たちを見て本当によくわかりました。そこから生きる力というのを学んでいくんじゃないかなと思います。そうやって地域の人たちとつながり、人と人とのかかわりが形成されていくんでしょう。」

 これは、今春の十周年記念対談の中で、兄弟揃って秀作を提供してくれた内橋姉弟のお母さんである内橋恵子さんからでた言葉だ。

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