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校内研究における「21世紀型コミュニケーション力の育成」事例2:千葉県船橋市立丸山小学校【Q1. 21世紀型コミュニケーション力を学校の研究テーマに取り上げたいきさつ】A1. ICT機器の活用(教師・児童)やプレゼンテーション力の育成を研究の重点とし、研究を進めてきた。 しかし、様々な活動の中で児童相互のコミュニケーションが希薄で、学習の深まりが不十分という反省点と、新学習指導 要領の改訂で言語活動の充実が大きくクローズアップされてきたということで21世紀型コミュニケーション力の育成に取 り組むこととした。 【Q2 研究をどのような考え方で進めていったのか。】 A2. 始めに本校としての21世紀型コミュニケーション力の構造図を作成し、視覚的に研究内容がわかるようにした。 そこには、「話す」「聞く」について4つの段階ごとのめあてを位置づけ、そのめあてを各学年1実践の研究授業で検証 することとした。 また、コミュニケーション活動が円滑に行えるよう、教師の役割・支援を明確にした。そして、4つの段階を位置づけた 各学年別のコミュニケーション力育成の年間指導計画(1・2年生は国語科、算数科、生活科、3〜6年生は国語科、 算数科、理科、社会科)を作成した。さらに、コミュニケーション力の基礎的な力をつける活動として朝や帰りの会での スピーチを実施した。 【Q3 研究の組織をどのようにしたか。】 A3. 研究推進委員会―全職員で低・中・高の3ブロックで構成。推進委員会では、指導班・機器班・環境班を編成。 【Q4 具体的にどのように研究をすすめたのか。】 (1)どのように事前研究会をもったのか。 A4. 研究授業の約1週間前に、低・中・高のブロック別で事前授業を行い、その後事後研究会を行った。そこでは、 コミュニケーション力の育成が図られているか、教科や単元の目標に達しているか、指導方法や話し合いの進め方 は適切かなどを具体的に議論した。 (2)どのように研究授業に取り組んだのか。 A4. 全員が事前授業を入れて研究授業を行った。本時の展開では、コミュニケーション力の育成の場面が入るように配慮し た。授業後は、全員参加の事後研究会で意見交換し、講師の指導を受けた。 (3)発問、板書、ノート指導、机間巡視などで工夫した点は何か。 A4. 発問:児童の思考が深まるような発問(絡みと揺らぎを意識)を事前に準備した。 板書:1時間の学習の流れが分かることと、児童の発言を整理していくことを意識した。黒板と電子黒板(アナログと デジタル)のそれぞれの良さを活用した。 机間指導:主に個別指導(支援)・学習の観察・指名計画を意識して行った。 (4)授業者はどのような点に留意したか。 A4. 単元・本時のねらいを達成させるため、どのようにICT機器を活用すれば効果的なのか、どのような発問をすれば 児童の発表が絡み合うようになるかについて留意した。 (5)参観者はどのような点に留意したか。 A4. 単元・本時のねらいを達成させるため、教師と子どもたちとのかかわりはどうだったのか、教師の発問は適切だったか、 板書構成・ICT機器の活用の仕方は効果的だったのかを留意した。さらに、コミュニケーション能力の育成が図られてい るかについても意識して参観した。 (6)どのように事後研究会をもったのか。 A4. 全員で参加し、(5)の内容について話し合った。話し合いの時間を十分に確保し、中川一史先生を始め複数の講師の 指導を受け、その指導を基にして次の研究授業の内容を考えた。 【Q5 21世紀型コミュニケーション力がついたかどうかをどのように確かめたか。】 A5. 研究授業前と研究授業後に、児童対象の「話す・聞く」に関するアンケートをとり、その変容をみるようにした。 内容は「話すことが好きか」「自分の意見や考えを話すことができるか」「友達の考えを聞いて、新しい意見が言えるか」 などである。また、さらに毎授業時間、「ふり返りカード」を書かせ、後でその内容を吟味した。 【Q6 21世紀型コミュニケーション力をつける研究の成功のポイントは何か。】 A6. 市の研究指定を受けてICT活用の研究をしてきた平成21年度から、実践の積み重ねをしてきたことである。コミュニ ケーション力の育成に取り組んでからは、「話し合いがあって学習なし」とならないように子どもに何を考えさせ何をねら って話し合わせるのかを意識しながら授業を構成し、実践を行った。 【Q7 本研究での課題はなにか。】 A7.今回行ったアンケートだけでなく、子どものコミュニケーション力がどのように変容し、育成されたのかをわかりやすい方 法で検証する必要がある。 【Q8 手引きを参照したときに、どの部分が参考になった(影響を与えた)か。】 A8.○「各教科等における21世紀型コミュニケーション能力表」 ・21世紀型コミュニケーション力とはどのようなものかを理解するのに役だった。それを基にして本校の研究の構想を練ること ができた。 ・各項目の内容を児童の実態と照らし合わせることで、児童の実態把握に役だった。 ○「21世紀型コミュニケーション力学習活動案」 ・研究授業を構想するときに実践を参考にできた。 【Q9 21世紀型コミュニケーション力がついたと感じた部分はどこか。その要因は何か。】 A9.「討論」、「説得・納得」の授業が、いくつか実践されるようになった。授業では、子どもたちが、自分の立場を明らかにし、 論点を明確にして、討論を深めた。さらに、討論を進めながら、根拠を示し相手を説得するような活動も見られた。 また、低学年では、「対話」、「交流」が比較的円滑に行われていた。要因は、話し合いを活性化させる教師の支援(振舞い) があったこと、ICT機器の効果的な活用がなされたこと、また、事前の発表準備のための時間を確保したことである。 【Q10 21世紀型コミュニケーション力がつかなかったと感じた部分はどこか。その要因は何か。 A10.学級または授業によっては、話し合い(討論)が続かない、深まらないことがある。要因は、学級内で何でも自由に言い合 える雰囲気作りができていなかったり、いい発言を取り上げて次の発言に上手につなげることができなかったりするなどの教 師の力量不足の部分がある。 【Q11 21世紀型コミュニケーション力をつけることとICTの活用の関係はどうか。 A11.全学年を通して、ICT機器を使用し話し合いや伝え合う活動に活用している。 ICT機器を使うことで、クラス全員で情報を共有しながら話し合うことができたり、子どもたちの考えを見える形にすることが できたりするので、コミュニケーション力が向上するだけでなく、授業そのものが深まった。 まとめ本校は、平成21年度から市の教育委員会指定を受け、情報教育の研究を進めてきた学校である。指定研究が終了した平成24年度より、「情報を活用したコミュニケーション力の育成」を研究主題にして、教育活動全体を通して意図的に話し合う場を作り、コ ミュニケーション力を育成している。一言で言えば、「21世紀型コミュニケーション力」を全面に出して、取り組んでいる学校で ある。 具体的には、「対話」、「交流」、「討論」、「説得・納得」の4つの段階を位置づけた各学年別のコミュニケーション力育成の 年間指導計画(1・2年生は国語科、算数科、生活科、3〜6年生は国語科、算数科、理科、社会科)を作成し、計画的に21世紀 型コミュニケーション力を育成している。 研究を進めていく上で、いつも問題になる一つに、年度ごとに教員が入れ替わるので、毎年、本研究に初めて取り組む教員がいて 、研究の質が保てないことがある。そこで本校では、毎年度始めに、21世紀型コミュニケーション力に関する基礎的な研修(理論、 能力表等)を行い、まず全教員が同じラインになって研究が進められるように配慮している。研究に対して全教員が共通理解して取 り組むことは、校内研究を進めていく上で大変重要なことである。 一方、子どもたちの基礎的なコミュニケーション力のスキルを身に付けさせるための一つの活動として、朝や帰りの会でのスピー チを実施している。ただ、スピーチをやらせるのではなく、低・中・高学年ごとに「話す・聞く・書く」のめあてを定め、それを一つ の評価基準としてスピーチを評価し、内容を高めている。地道な活動であるが、一人一人のコミュニケーション力を育成していくた めの一つの有効な方法である。 また、授業実施前と授業実施後にコミュニケーション力に関する同じ内容の実態調査を行い、その単元・本時の学習がコミュニケ ーション力の育成や単元・本時のねらいにどのような効果があったのかを検証している。この実態調査では、「話を聞くことが好き ですか」のようなコミュニケーションに関する子どもたちの興味・関心から、「自分の考えとくらべながら聞いていますか」のよう に4つの段階の評価になるような項目があり、回答だけでなくその回答を選んだ理由まで聞いているので、子どもがどのようにどの ような理由で変容したのかがわかりやすく記載されている。 このように、長年情報教育の研究に取り組んだ後、21世紀型コミュニケーション力の研究に正面から取り組んでいる本校は、 研究方法、研究授業への取り組み方などオーソドックスであるが、大切なことをしっかりと押さえられている研究である。 今後、21世紀型コミュニケーション力の研究を進める学校には、大いに参考にして欲しい実践である。 |