青森県・アップリアンに会いに行く

あの頃のままに。

 少し早めに職員室にお伺いすると、まもなく担任の奈良岡先生がお見えになった。当時のことを伺いながら、再認識することもたくさんあった。インフルエンザが流行して8人のメンバーがなかなか揃わなかった2年生の時に始めたパソコンの勉強がきっかけになったこと。8人のうち、ひとりは中学生の頃に転校してしまったこと・・・。正直なところ、取材とはいっても、高校生になったばかりの彼らにあの頃をふり返ってもらうのはまだ早すぎるとも考えていた。でも。ひとりでも来てくれれば、彼らの残したものが草薙小学校だけでなく、全国で大きく育っていることを伝えておきたかった(※1)。

※1
草薙小学校のはからいでアップリアンや担任の奈良岡先生に呼びかけをして頂いていた、小学校を卒業後は全員とも裾野中学校に進学していたが、今年はそれぞれ高校へ進学し、部活や学校行事など何人来れるのか予想できない状況だった。

 やがて廊下が騒がしくなり、4人のアップリアンが登場。分かっていたこととはいえ、だいぶ大人に近づいた彼らにとまどってしまう。先に来た4人のうち、3人は今でも野球、ソフトボール(部活を休んで来てくれたらしい)に頑張っているという。もうひとりは工業系の高校に進んで、出来るだけ多くの資格を取ろうと頑張っているらしい。しばらくして2人が加わって6人になった。これだけ揃うと徐々に小学生の頃のイメージを重ねることができる。みんな男らしく、娘らしくなっている。成長した彼らと雑談しているうちに、思い出話よりも(既に奈良岡先生にたくさん伺っていたので)、これから就きたい職業や目標などについてを聞いてみたくなった。自信がないとあまり友だちの前では話したがらない内容だが、そこは他の質問よりも戸惑うことなく即答してくれた。それは6年前に表彰式に来てくれた時のハキハキした面影そのままだった。(※2)みんなにはその目標に向かってしっかり歩いてほしいと思う。

※2
第8回(当時4年生)の表彰式には全員が来てくれた。当時は先生だけの参加が多い時代だったが、他校の子どもたちと一緒になって元気で会場を盛り上げた。ハキハキと質問にこたえる彼らには強い印象が残っている。

 帰りの時間までには少し余裕があったので、校庭裏のおじいちゃん(須藤さん)に会い行くことになった。あの頃と同じように校庭を抜けて須藤さんの家に向かう・・・。須藤さんに案内されてアップリアンの木の前に・・・。須藤さんも私と同じように、彼らの成長ぶりに驚いていた。入賞の記念写真を頼りに子ども達と話し掛ける目の奥は確かに潤んでいた。須藤さんにとっても彼らとの出会いは得がたい体験だったのかも知れません。「農薬だとか危険なこと以外は、本当にこの子たちが一生懸命やったんだよ!」と思い出しながら話して頂いた。しかし、最近では開発が原因であの頃の自然がどんどん失われていることには嘆いておられた。

 先にきてくれた4人は、4年生の時に全員で表彰式に来てくれた時以来だったので懐かしさと驚きは倍加した。5年生の時にも来てくれたふたりが加わったところで「ポポタンって誰?リリーは?」なんてことも聞いてみたい気もあったのだが、彼らに会って話を訊いているうちに気持ちが変わってしまった。あのアップリアンは彼らだけが知っている寓話として、このままそっとしておきたい・・・と。
 ご覧のように、アップリアンたちは次のステップを踏みだしました。彼らの作品に感動をもらった方はどうか心の中で応援してあげてください。同時に、あの頃のアップリアンはネットワークの中でずっと生きています。もし始めてアップリアンのことを知られた方は、一度アップリアンの作品を楽しんでいただきたいと思います。そこにはいつまでも心を温かくしてくれる感動が詰め込まれています。

 奈良岡先生が何度も「とても純朴でいい子たち」と口にされていた。私もそれ以外の言葉が見つからない・・・。どうかいつまでもあずましい(※3)仲間のままでいて欲しい。そして今度は、アメリカの何処でもいい、メジャーリーガーになるという夢をかなえた「はろころ」を応援するアップリアンたちを見てみたいものだ。その時はきっとりんごの絵を描いた垂幕を掲げているような気がする。 (2007.07.22/kun.)

※3
「あずましい」は津軽弁で「気持ちいい」「心地よい」という意味

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15  まえへつぎへ
ページトップ
ページトップ